太陽光発電投資の利回り計算方法 表面・実質利回り・IRRの違いと平均値
太陽光発電等を始めるにあたり「利回りはどれくらい?」「何年で元が取れる?」「本当に儲かるの?」といった疑問があると思います。
今回は、太陽光発電投資の利回りについて、以下を解説します。
また、利回りに関するよくある質問も詳しく解説します。太陽光発電投資を始める参考情報として、ぜひ最後までご覧ください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
太陽光発電投資の表面利回りは平均どれくらい?
太陽光発電投資の表面利回りは、平均して約7~10%です。
どのような計算で表面利回りが算出されるのか解説します。
年間収益の計算
年間収益は、次の計算式を用いて算出します。
【年間収益の式】
年間発電量 × 売電単価
【年間発電量の式】
平均日射量 × ソーラーパネル出力 × 365日 × 損失係数
まず平均日射量は国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が提供する「日射量データベース閲覧システム」から算出します。ここでは平均的な値を出すために、東京都内における平均日射量を調べてみましょう。
上図から、東京都内の日射量は12だと分かります。
次にソーラーパネル出力量は、産業用の10kW以上50kW未満の太陽光発電システムを設置した場合と想定し、最低値の10kWと設定します。また、損失係数は一般的に0.8~0.87程度だといわれています。よって本記事では平均値を取り0.835と設定しました。
各種値を【年間発電量の式】に当てはめて計算してみましょう。
年間発電量 = 12 ×10kW × 365日 ×0.835 = 36,573kwh/年
2023年度の10kW以上50kW未満の売電価格は10円/kwhとなります(資源エネルギー庁の「なっとく!再生可能エネルギー」に掲載)。
この値を【年間収益の式】に当てはめると、太陽光発電投資から得られる収益は次のとおりです。
年間収益 = 36,573kwh × 10円 = 365,730円/年
ちなみにFIT制度の取り決めによって、上記金額のうち30%は自家消費、また災害時の活用などを含めると合計50%活用しなければならないため、50%を考慮した365,730円×0.50として、182,865円/年が実際の収益となります。
関連記事 固定価格買取(FIT)制度とは
太陽光投資にかかる費用の計算
太陽光投資にかかる「初期費用」「ランニングコスト」は資源エネルギー庁の「太陽光発電について」をベースに算出します。
初期費用は23,600円/kW程度の費用がかかると解説されているため、前述したソーラーパネル出力に合わせて10kWとして計算すると2,360,000円となります。
表面利回りの算出
前述で計算した以下の値を用いて、実際に表面利回りを計算しましょう。表面利回りは「年間の売電収入÷初期投資費用×100」で計算します。
表面利回り = 182,865円 ÷ 2,360,000円 × 100% = 7.75%
つまり、最低でも表面利回りは7%以上を獲得可能です。また、太陽光発電投資の表面利回りは一般的に10%程度だといわれています。以上より、太陽光発電投資は7~10%程度の高利回りを期待できます。
表面利回りを計算する際の注意点
本計算では、FIT制度の新規案件における固定買取を対象に金額を計算しました。FIT制度の条件で太陽光発電投資を行えば20年間まるごと固定買取を利用できるため、上記の表面利回りを適用できます。
しかし、中古案件に投資すると固定買取期間が途中からスタートすることに注意が必要です。残存期間によって利益獲得に大きな差が生まれるため、投資物件を選ぶ際には投資収支の計算を徹底してください。
また表面利回りはランニングコストを考慮していない利率ですので、実際にはもう少し利回りが低下します。太陽光発電投資では利回りの種類と計算方法を覚えることが重要です。次に詳しく解説します。
太陽光発電投資における利回りの種類と計算方法
太陽光発電投資の利回りには、以下に示す3種類があります。
- 表面利回り
- 実質利回り
- IRR(内部収益率)
上記の利回りは、計算する理由や計算式が異なります。太陽光発電投資の利回りについて理解するために必須の内容のため、それぞれ詳しく説明します。
表面利回り
「表面利回り」とは、太陽光発電投資にかかるランニングコストを考慮せずに算出した収益率のことです。以下に示す計算式のとおり、年間の売電収入と投資費用だけで利回りを算出します。
年間の売電収入 ÷ 初期投資費用 × 100
表面利回りは、物件販売の目安値として利用するのが一般的です。物件ごとに異なるランニングコストを考慮した場合、太陽光発電ごとの整合性が取れなくなることから、平均的な目安をざっくりと知るために算出します。
継続的にかかる費用のこと。主に運転費用や維持費用を意味し、業務を継続するうえで必ず支払い続けなければなりません。
実質利回り
実質利回りとは、太陽光発電投資にかかるランニングコストを考慮し、現実的な値を算出した収益率のことです。以下に示す計算式のとおり、年間の売電収入から年間支出(ランニングコスト)を差し引いて利回りを算出します。
(年間の売電収入-年間支出)÷ 初期投資費用 × 100
実質利回りは、投資家本人が投資先を決めるために計算する利回りです。投資物件にかかるコストを抽出したうえで利回りを算出し、良質な投資先を選ぶために計算します。
IRR(内部収益率)
IRR(Internal Rate of Return:内部収益率)とは「初期投資額」と「将来得られるお金」をもとに、いつまでに資金回収できるか判断する割引率のことです。計算方法は少し複雑であり、経年的にフリーキャッシュフローを表に整理しながらIRRを算出します。
IRRは投資資金をどれくらいの期間で回収できるのか知るために用います。IRRの値が大きくなるほど短い期間で利益を得られるイメージです。
ちなみにIRRの計算は、環境省から提供されている「太陽光発電キャッシュフロー簡易計算表」を用いて自動計算できます。
太陽光発電投資で損をするのは実質利回りを見ずに投資されるため
「太陽光発電投資は損をする」という話をよく聞きます。高い利回りを期待できる投資方法ですが、なぜ損するといわれるのでしょうか。
その答えは、投資家の大勢が「実質利回り」ではなく「表面利回り」を見て投資先を選んでいるためです。
太陽光投資の物件ページには、表面利回りの値が掲載されています。これに対し、実際に投資する際の収益率は、ランニングコストを考慮した実質利回りで算出しなければなりません。
つまり、太陽光投資で損する話は、実質利回りを計算せずに投資し、表面利回りとの差にギャップを感じた人たちから伝わったのです。
物件選びの際に実質利回りを計算しておけば、しっかりと利益を出せます。
太陽光発電投資の利回りで損をするポイント
太陽光発電投資では、損をしないために次のポイントにも注意が必要です。
- 太陽光パネルの廃棄について考えなければならない
- 太陽光事業シミュレーションから外れる場合がある
- 卒FIT後の売電価格や土地の更新契約を想定しておかなければならない
関連記事 卒FITとは
太陽光発電投資では「残存年数 × 実質利回り」が100を超えれば利益を生み出せます。このとき、FIT制度が終了した後に開始する廃棄費用積立制度によって実質利回りが下がる場合もあるので注意してください。
10kW以上のFIT/FIP認定を取得した太陽光発電設備の「廃棄等費用」を確保する制度です。原則として源泉徴収的な外部積立てを行うため、太陽光発電投資で得られた利益から費用を差し引かれます。
太陽光パネルの廃棄費用や処分方法、発電設備の廃棄費用積立制度については以下の記事で解説しています。
関連記事 太陽光パネルの廃棄費用・処分方法
また、電力の需要バランスを確保するために、太陽光発電所の「出力抑制」が行われて利回りが低下する場合もあるので注意しましょう。
関連記事 出力制御(出力抑制)とは
ほかにも、FIT制度終了後の動き方、更新契約が行えない場合の撤去費用など、複数の視点からコストを考えておくことが現実的な利回りを想定する参考となります。
利回りからみて、太陽光発電投資は儲かる?儲からない?
結論として、太陽光発電投資は儲かります。その理由は以下のとおりです。
- 当初と比べて初期投資費用が安くなっている
- 節税効果がある
- 株や投資よりもローリスクで運用できる
① 当初と比べて投資費用が安くなっている
太陽光発電投資の初期投資費用は、投資がスタートした時期に比べて大幅にコストが減少しています。参考として、資源エネルギー庁が発表した太陽光発電コストの将来見通しの図を掲載しました。
上図から分かるように、太陽光発電のコストが毎年のように減少している状況です。
将来、太陽光投資が普及する後押しになることはもちろん、リパワリングにかかるコストを抑えられると予測できます。
太陽光発電所の品質をチェックして、修繕工事することです。本来の能力を下回った場合に実施し、発電量を100%に近づけます。
リパワリングの意味やメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事 リパワリングとは
➁ 節税効果がある
太陽光発電投資は、毎年の納税額を減らす節税対策としても効果を発揮します。
たとえば、資源エネルギー庁が定めた「再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置(固定資産税)」は、広範囲に設備設置する太陽光発電投資で、大きな節税効果をもたらします。
10kW以上の太陽光発電設備に対し、次のような節税が可能です。
- 発電出力1,000kW未満:固定資産税をもとに課税標準3/4
- 発電出力1,000kW以上:固定資産税をもとに課税標準2/3
また、法人として投資する場合には、太陽光発電設備を減価償却資産として適用可能です。大きな節税効果を期待できるため、利回りを高める要素として役立ちます。
③ 株や投資よりもローリスクで運用できる
太陽光発電投資には、売電に投資インセンティブのあるFIP制度といった、高い利回りを生み出しやすい制度が設けられています。
FIP制度は以下のように長期間適用されるため、収益率を維持しやすくローリスクで運用できるのが魅力です。
再生可能エネルギーの普及支援を目的とした政策のひとつです。発電事業者に対して、販売した売電収入と一定のプレミアム(補助額)を上乗せして交付することにより、発電事業者の投資インセンティブを促し、再エネの普及促進を目指します。
FIP制度:2022年4月~2042年3月(20年間)
現在、売電価格が一定化するFIT制度が運用されていますが、FIT価格の調達価格では事業採算が厳しい水準まで下がっています。そこで、FIT制度に代わる制度としてFIP制度の運用がスタートしました。
執筆時現在(2023年7月)では、50kW以上の発電所でFIP制度を適用可能です。
今後、太陽光投資の普及増加に向けて、FIP制度を活用できる太陽光発電所の開発が期待されています。
再生可能エネルギーの普及支援を目的とした政策のひとつ。発電された電力の取引を行う際、一定の価格で電力会社が買い取ると政府が約束する制度です。
再エネ発電事業のリスクを抑え、日本全体で再エネ発電普及を目指します。
関連記事 固定価格買取(FIT)制度とは
利回りのよい投資先を選ぶポイント
太陽光発電投資で利回りのよい投資先を選びたいなら、以下のポイントを押さえましょう。
- 相場やコスト内訳をしっかり把握する
- 将来的な収支をIRRからシミュレーションする
まずは、太陽光発電における投資先の情報を集めることが重要です。たとえば、以下の情報を整理して、実質利回りを計算・比較することをおすすめします。
- 投資物件の表面利回り
- 初期投資額
- ランニングコスト
- 利益率
太陽光発電のランニングコスト、つまりメンテナンス費用については以下の記事をご覧ください。維持費の内訳や相場について、詳しく解説しています。
関連記事 太陽光発電のメンテナンス費用(維持費)
また、どれくらいで利益を出せるのか、IRRの計算を行いましょう。いつ投資資金を回収できるか把握できれば、余剰金を用いて新たな投資先を見つけるチャンスが生まれます。
利回りのよい投資先を見つけるためには、入念な情報収集と検討が欠かせません。
太陽光発電投資は高い利回りをキープし続ける
太陽光発電投資は、前述したとおり約7~10%の利回りを期待できます。以下に示す他の投資方法と比べても、高い値を示していると分かります。
- 債券投資利回り:約2%
- 不動産投資利回り:約3~5%
※太陽光発電所投資の場合、発電所の最終価格(売却・処分)が債券や不動産よりも予測しづらい点にご注意ください
- 参考① 株式投資の利回り
- 参考② 不動産投資の利回り
また、世界的な脱炭素を目指すカーボンニュートラルの目標達成に向けて、太陽光発電投資の需要は、今後も増加していくと予想されます。
2050年までにCO2を含む温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする取り組みのこと。 地球温暖化や異常気象への対策として、世界的に取り組まれています。
また、排出せざるを得ない温室効果ガスについては、同じ量を「吸収」または「除去」することにより差し引きゼロを目指します。
関連記事 カーボンニュートラルとは
FIPプレミアムの交付期間はFIT期間と同じく20年間です。FIP制度を活用する事によりFIT制度による投資と同等以上のパフォーマンスが期待できます。
(執筆段階2023年7月、低圧太陽光案件はFIP制度対象外です)
太陽光発電投資の利回りに関してよくある質問
太陽光発電投資の利回りについて、よくある質問と、その回答をまとめました。
- 太陽光発電投資は何年で元が取れるの?
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元を取れる年数は、投資物件やランニングコストによって異なりますがおおよそ8年で元が取れます。国立国会図書館の下記資料をご参考ください。
日本で展開されている補助金制度や、FIT制度やFIP制度といった国の支援を活用すれば、および8年で初期投資額を回収可能です。今後もカーボンニュートラルの実現へ向けて環境対策が加速する流れであるため、安定した回収率を期待できます。
- 太陽光発電投資の投資効率は?
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太陽光発電投資は、さまざまな投資分野の中でも高い投資効率を期待できます。その理由は次のとおりです。
他投資分野の利回り- 株式投資の利回り(約2%)や不動産投資の利回り(約3~5%)に比べて高利回りである
- FIP制度によってローコストで投資を行える
太陽光発電システムは、その脱炭素目標に欠かせない存在ですので、今後も高い投資効率を維持可能です。
- 収支に関わる太陽光パネルの寿命は何年くらい?
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太陽光パネルの寿命は、25~30年程度とされています。メンテナンスを継続すれば長期間の運用が可能であり、投資回収できた後も継続して利益を生み出せるのが特徴です。
ただし、太陽光パネルは機械であるため、経年とともに少しずつ性能が劣化するため、リパワリングが必要になります。
- 太陽光発電投資の失敗事例は?
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太陽光発電投資において、以下のような失敗事例があるようです。
よくある質問- 想像よりも発電量が少なくなった
- 発電事業者とのトラブルが発生した
- 出力制御により損失が生まれた
もっと詳しく失敗事例を把握したい方は以下の記事をご覧ください。
関連記事 太陽光発電投資の失敗事例
太陽光発電投資においては、物件の事前確認が欠かせません。
なお、「太陽光発電をやめたい」と言われる理由や、その失敗事例については以下の記事で解説しています。
関連記事 太陽光発電やめたいと思ったら?
- 利回りからみて、太陽光発電投資はやめたほうがいい?
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太陽光発電投資は、高利回りを期待できる魅力的な投資対象だといえます。むしろ、これからスタートすべき投資です。
また、表面利回り10%を長期的に維持できるので、ぜひ太陽光発電投資を検討してください。
関連記事 太陽光発電はやめたほうがいい?
太陽光発電投資の利回り まとめ
太陽光発電投資を始めたい方の中には、自身で利回りの計算できるか不安な方もいるはずです。
また、太陽光発電投資は、約10%という高い表面利回りがあることはもちろん、FIP制度など、長期的に利回りを維持しやすい要素の多い投資対象です。
しかし、もちろん投資にはリスクが存在するため、十分にリサーチしたうえで開始する必要があります。
税金・売却などお気軽にご相談ください!