太陽光発電のメンテナンス費用はいくら? 維持費の相場と内訳を解説
「太陽光発電メンテナンス費用や維持費はどれくらいかかるの?」
「太陽光発電でメンテナンスが必要な理由は?」
「メンテナンスは何をすればいいの?」
上記のように、太陽光発電投資を始める前にメンテナンス費用について悩まれることはありませんか?
太陽光発電には、メンテナンスフリーと言われていた時期もあります。
しかし適切にメンテナンスしなければメーカー保証の対象外となり、故障や事故が起きた場合に想定外の損失発生の原因になりかねません。
そこで本記事では、太陽光発電のメンテナンス費用や維持費がいくらになるかを紹介します。
太陽光発電でメンテナンスが必要な理由や実施項目も分かる内容になっていますので、メンテナンスでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
太陽光発電メンテナンス費用・維持費の早見表
太陽光発電メンテナンス費用・維持費が年間でいくらかかるのか、種類別の金額を早見表にまとめました。
項目 | 住宅用太陽光発電 | 産業用太陽光発電 |
---|---|---|
設備容量 | 5kW | 1,000kW |
年間維持費合計 | 2.8万円 | 340万円 |
日常運転管理・監視 | 0.75万円 | 70万円 |
除草作業 | 0.5万円 | 60万円 |
定期点検 | 0.3万円 | 60万円 |
事故対応・修繕 | 0.4万円 | 40万円 |
保険加入 | 0.4万円 | 60万円 |
土地賃借料 | 0.45万円 | 50万円 |
設備容量に応じた1kWあたりの年間で発生する平均コストを、次に紹介していきます。
固定価格買取制度が適用される10年間、20年間にかかる出費の目安を計算する際の参考にしてください。
太陽光発電メンテナンス費用の相場
太陽光発電のメンテナンス費用、維持費の相場は、以下のとおりです。
- 低圧(50kW未満):0.56万円/kW/年
- 高圧(50kW以上2,000kW未満):0.34万円/kW/年
- 特別高圧(2,000kW以上):0.28万円/kW/年
メンテナンス費用の内訳を表にまとめました。
内訳 | 低圧 | 高圧 | 特別高圧 |
---|---|---|---|
日常運転管理・監視 | 0.15万円/kW/年 | 0.07万円/kW/年 | 0.07万円/kW/年 |
除草作業 | 0.10万円/kW/年 | 0.06万円/kW/年 | 0.05万円/kW/年 |
定期点検 | 0.06万円/kW/年 | 0.06万円/kW/年 | 0.04万円/kW/年 |
事故対応・修繕 | 0.08万円/kW/年 | 0.04万円/kW/年 | 0.02万円/kW/年 |
保険加入 | 0.08万円/kW/年 | 0.06万円/kW/年 | 0.03万円/kW/年 |
土地賃借料 | 0.09万円/kW/年 | 0.05万円/kW/年 | 0.08万円/kW/年 |
太陽光発電設備でメンテナンスが必要な3つの理由
太陽光発電設備においてメンテナンスが必要な理由は、以下の3つです。
- 太陽光発電のメンテナンスが義務化されているため
- 故障を防いで高い発電効率を維持するため
- 安全面でのリスクをなくすため
以下では、なぜ発電設備のメンテナンスを実施するのか、その必要性について詳しく解説します。
太陽光発電のメンテナンスが義務化されているため
2017年4月に施行された改正FIT法により、メンテナンスが義務となったことが太陽光発電でメンテナンスが必要な理由です。
太陽光発電でメンテナンスが義務化されているにもかかわらず、怠った場合は以下の罰則が課せられる可能性があります。
- 地方自治体から指導または改善命令が入る
- 上記に従わないと最悪の場合は、FIT認定取り消し
FIT認定が取り消されると、固定価格での売電ができなくなるため、定期点検を忘れないよう注意が必要です。
故障を防いで高い発電効率を維持するため
定期的に太陽光発電を点検して、経年劣化による故障を予防し発電効率が下がらないように保つ効果を得ることも、メンテナンスが必要な理由の1つになります。
屋外に設置している機器は、以下のようなことが原因で汚れが付着したり破損したりしやすいです。
- 黄砂や鳥の排泄物などによるパネル表面への汚れ付着
- 石やボールなどの飛来による太陽電池やパワコンの破損
機器の汚れや破損は発電量を削減させる原因となり、売電収入をロスしてしまうためこまめな清掃や不具合の修繕が、寿命を長くするために欠かせません。
また雑草が伸びすぎるとパネルに影を作る懸念もあるため、定期的な草刈りや必要に応じて除草剤を散布するなどの対策も必要でしょう。
安全面でのリスクをなくすため
太陽光発電設備の管理不足による事故を防ぎ、安全面でのリスクをなくすためにもメンテナンスが必要です。
事故の原因には、以下のようなものがあります。
- 台風などの強風でソーラーパネルが飛ぶ
- 地震や突風で架台が転倒する
- ケーブルやパワコンの劣化が原因で発火する
自然災害が原因で起きた事故でも、近隣住民や建物に被害が発生したら、太陽光発電設備の所有者に損害を補償する責任があります。
メンテナンスの不備でケーブルや機器が発火してしまった場合も、メーカーからの保証は受けられません。
定期的なメンテナンスで故障や事故の原因になりそうな箇所を修繕しておけば、危険を減らして安全性を確保できるでしょう。
太陽光発電で実施するメンテナンスの内容
太陽光発電メンテナンスは、太陽光発電システム保守点検ガイドライン(2016年・日本電機工業会と太陽光発電協会が制定)に記載されている要領例に従って実施するケースが多いです。
以下では「定期点検」と「日常点検」に分けて、メンテナンスの内容を説明します。
定期点検
太陽光発電の定期点検では、主に以下の内容を確認する決まりです。
- 機器やケーブルに汚れや破損がないか
- 正常に動作しているか
- 電圧や抵抗値の測定結果が規定の範囲内か
住宅用と産業用太陽光発電での、定期点検項目の詳細を説明します。
住宅用太陽光発電の場合
発電設備の出力容量が、10kW未満の住宅用太陽光発電の定期点検項目は、以下の表のようになります。
点検箇所 | 点検する内容 |
---|---|
屋根材 | 破損していないか |
屋根裏 | 結露や雨漏りしていないか |
排水路 | 目詰まりなどしていないか |
太陽光パネル(モジュール) | 目立つ汚れや破損がないか フレームに破損や変形、腐食がないか |
電線管 | 正しく固定されているか 腐食や変形、破損がないか |
周辺環境 | 設備周辺の樹木や電柱などが安全な状態か 太陽光パネルに影を作らないか |
接続箱 | 本体に目立つ汚れや破損がないか 問題なく動作しているか ケーブルとの接続に異常がないか など |
電力量計 | 正しく動作しているか |
漏電遮断器 | 本体に目立つ汚れや破損がないか 配線に異常がないか 電圧が正常値か など |
パワーコンディショナー | 本体に目立つ汚れや破損がないか 異常音や異臭がないか 正常に動作しているか など |
データ収集装置 | 通信に問題ないか 運転時に異常音がしていないか など |
産業用太陽光発電の場合
発電設備の出力容量が50kW以上の、産業用太陽光発電の定期点検でチェックする項目を表にまとめました。
点検箇所 | 点検する内容 |
---|---|
フェンス | 破損や傾きがないか |
標識 | 表面の汚れで文字が読めなくなっていないか |
周辺環境 | 設備周辺の樹木や電柱などが安全な状態か 太陽光パネルに影を作らないか |
排水路 | 目詰まりなどしていないか |
太陽光パネル(モジュール) | 表面や裏面に目立つ汚れや破損がないか フレームに破損や変形、腐食がないか |
コネクタ・ケーブル | 確実に結合されているか 汚れや破損がないか |
電線管 | 正しく固定されているか 腐食や変形、破損がないか |
架台 | 損傷やズレが生じていないか ボルトに緩みがないか など |
接続箱 | 本体に目立つ汚れや破損がないか 問題なく動作しているか ケーブルとの接続に異常がないか など |
電力量計 | 正しく動作しているか |
漏電遮断器 | 本体に目立つ汚れや破損がないか 配線に異常がないか 電圧が正常値か など |
パワーコンディショナー | 本体に目立つ汚れや破損がないか 異常音や異臭がないか 正常に動作しているか など |
データ収集装置・遠隔監視装置 | 通信に問題ないか 運転時に異常音がしていないか など |
日常点検
太陽光発電設備の日常点検では、目視できる範囲での点検を実施します。
- 設備に汚れや破損がないか
- 異音や異臭がないか
日常の目視点検で異常を発見した場合は、専門の業者に現地確認を依頼し、必要に応じて修理や機器を交換すれば発電量の低下を防げます。
太陽光発電のメンテナンス実施頻度
太陽光発電の点検義務は、電気事業法と太陽光発電システム保守点検ガイドラインで、以下のように頻度が定められています。
規模 | 発電所 | 点検頻度 |
---|---|---|
50kW未満 | 低圧太陽光発電所 | 稼働から1年後 以降は4年に1回 |
50kW以上 | 高圧、特別高圧太陽光発電所 | 半年に1回 |
メンテナンスは頻度も含めて義務化されているため、決まった期間での実施が必要です。
太陽光発電の保守点検責任者とは
太陽光発電の保守点検責任者は、発電所の点検と維持管理について責任を持って実施する人を指します。
発電事業者または、保守まで対応している販売店が保守点検責任者となるケースが一般的です。
保守点検責任者の氏名や連絡先を太陽光発電所に設置する看板に記載することと、「事業計画策定ガイドライン」で定められています。
事業計画策定ガイドラインは経済産業省 資源エネルギー資源庁によって2017年3月に策定され、2018年4月以降は毎年内容が改定されています。
太陽光発電のメンテナンスは自分でできるか
太陽光発電メンテナンスは、太陽光発電システム保守点検ガイドラインで専門の技術者による点検実施が推奨されています。
ただし、「機器に目立った汚れがないか」などの目視による日常点検は、太陽光発電の所有者も実施可能です。
太陽光発電のメンテナンス事業者選びのポイント3選
太陽光発電のメンテナンスを依頼する業者を選ぶ際のチェックポイントは、以下の3つです。
- 施工からメンテナンスまで一貫して対応しているか
- 太陽光発電の点検に関する有資格者が在籍しているか
- 太陽光発電の点検費用が適切か
なぜ業者選びで注目するポイントになるのか、それぞれの項目について詳しく説明します。
施工からメンテナンスまで一貫して対応しているか
太陽光発電の販売業者が施工からメンテナンスまで一貫して対応できるかは、メンテナンス業者選びで確認したいポイントの1つです。
設備の導入時に施工した業者は製品のメーカーやストリングなど詳細を把握しているため、メンテナンスに必要な情報を共有する手間が発生しません。
発電設備の状況を把握している業者であれば、トラブルが発生した場合に比較的短期間で修繕が完了できるメリットがあります。
太陽光発電の点検に関する有資格者が在籍しているか
太陽光発電メンテナンス技士など、点検に関する資格を所有する作業員が在籍しているかどうかも、メンテナンス業者選びでは重要です。
定期点検では、目視できない部分に機器の劣化がないかを確認するため、メンテナンスについての専門的な知識が必要になります。
太陽光発電設備の基礎からメンテナンスまで、幅広い知識を持った有資格者がいる業者には、安心して依頼できるでしょう。
太陽光発電の点検費用が適切か
太陽光発電のメンテナンスにかかる費用が、適切な金額かどうかも業者選びの段階で確認したいポイントです。
定期点検の費用相場は、以下のようになります。
- 低圧(50kW未満):0.06万円/kW/年
- 高圧(50kW以上2,000kW未満):0.06万円/kW/年
- 特別高圧(2,000kW以上):0.04万円/kW/年
点検項目はガイドラインで決まっていますが、対応範囲や費用は業者によって異なります。
メンテナンスを契約する前に、1度見積りをとって対応範囲や料金が適切か検討した上で、業者を選ぶと良いでしょう。
太陽光発電メンテナンス費用についてのまとめ
太陽光発電メンテナンス費用・維持費の相場は、以下のとおりです。
- 低圧(50kW未満):0.56万円/kW/年
- 高圧(50kW以上2,000kW未満):0.34万円/kW/年
- 特別高圧(2,000kW以上):0.28万円/kW/年
メンテナンスは義務化されている以外にも、発電設備を良い状態で稼働させ続けるために重要です。
太陽光発電の投資を始める際は、初期費用だけでなくランニングコストも含めて収支を考える必要があります。