太陽光発電投資

【卒FITとは】FIT終了後の太陽光発電設備はどうする? 活用方法や買取価格を解説

卒fitとは
阿部希

「卒FITって何?」「FIT終了後は売電価格が下がるので、売電収入がどうなるか不安」
「卒FIT後の太陽光発電設備は、どうするのが正解?」と不安に思われている太陽光発電の所有者様も多いのではないでしょうか。

FIT期間が終了すると電力の買取価格が下がるため、売電収入も減少します。

このため、卒FIT後も安定して売電収入を得られるようにしたいとお考えの場合は、対策が必要です。

そこで本記事では、以下について解説します。

卒FIT後の太陽光発電設備の活用方法が分かる内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。

当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。

太陽光発電の卒FITとは

太陽光パネル

卒FITとは、「固定価格買取制度(FIT制度)」による電力の買い取りが終了することです。

FIT制度は、国が取り決めた価格での電力の買い取りを、電力会社に義務付けた制度です。
2012年7月に施行されてから、太陽光発電の普及が急速に進みました。

関連記事 固定価格買取(FIT)制度とは

FIT期間中に適用される買取価格は、太陽光発電の設備IDを取得した年度に応じて決まります。

買取価格の適用期間は、以下のとおりです。

出力容量買取期間
10kW未満(住宅用)10年間
10kW以上(産業用)20年間

2009年11月に開始した余剰電力買取制度を含めると、FIT期間が10年間の住宅用太陽光発電は、2019年11月から卒FITが始まっています。

産業用の太陽光発電所はFIT期間が20年間のため、2032年7月以降に順次卒FITしていきます。

2012年度の10kW未満の太陽光発電のFIT価格は42円/kWhでしたが、卒FIT後は9円/kWh前後になり、買取価格の差がとても大きいです。

早い段階で購入した太陽光発電所ほど卒FIT後の買取価格の差額が大きく、売電収入が下がりすぎないようにするための対策が必要になります。

なお、住宅用太陽光発電の10年後について詳しくは以下の記事をご覧ください。卒FITした太陽光発電をお得に利用する方法についても紹介しています。

関連記事 太陽光発電の10年後はどうする?

FIT終了後におすすめの設備活用方法

卒FITした太陽光発電におすすめの活用事例として、以下7つの方法を紹介します。

FIT終了後におすすめの設備活用方法
  1. 太陽光発電所を売却する
  2. オフサイトPPAでの売電に変更する
  3. 新電力会社への売電に変更する
  4. 大手電力会社への売電を継続する
  5. 自家消費する(住宅用太陽光発電の場合)
  6. 蓄電池と併用する(住宅用太陽光発電の場合)
  7. エコキュートを設置する(住宅用太陽光発電の場合)

どのように太陽光発電を活用するのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

太陽光発電所を売却する

卒FITのタイミングで発電所を売却するのも、選択肢のひとつです。

FIT期間が終了していると、高額売却は見込めません。

しかし、CSR活動に力を入れている企業なら、卒FIT後の太陽光発電所も需要があります自己託送によって、自社の設備で太陽光発電の電気を利用できるためです。

CSR活動とは、企業が追う社会的責任という意味を持つ言葉です。
収益をあげる事業活動のほかに、環境保護などで地域に貢献する活動を指します。

2030年の温室効果ガス46%削減、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、企業は社会的責任を果たす必要があります。

関連記事 カーボンニュートラルとは

太陽光発電の中古物件に注目する企業が増えると予想できるため、売却も卒FITした太陽光発電の活用方法と言えます。

なお、太陽光発電所を売却する方法については以下の記事をご覧ください。売却の際の注意点や、高額査定のポイントについても解説しています。

関連記事 太陽光発電所の売却方法と高額査定のポイント

オフサイトPPAでの売電に変更する

卒FIT後も太陽光発電を所有する場合の活用方法のひとつに、オフサイトPPAによる需要家への売電があります。

オフサイトPPAは、発電事業者と電気を自社の設備で利用したい事業者が売買契約を結び、電力会社の送電網を利用して電気を売り買いする仕組みです。

オフサイトPPAのイメージ
出典:オフサイトコーポレートPPAについて|環境省・みずほリサーチ&テクノロジーズ

発電事業者にとって、卒FIT後の価格で大手電力会社に売電するよりも、高い単価で売電できる点がメリットになります。

需要家のメリットは、以下の2つです。

オフサイトPPA 需要家のメリット
  • 電力会社から購入するよりも電気代を抑えられる
  • 企業として二酸化炭素排出削減に貢献できる

FIT終了後もできるだけ高く売電したい発電事業者と、電気代などの固定費を抑えたい需要家とで、オフサイトPPAならニーズが一致します。

卒FITする発電所が増えていく中で、オフサイトPPAはますます注目される太陽光発電の活用方法になるでしょう。

オフサイトPPAについては、以下の記事で詳しく解説しています。オンサイトPPA、自己託送との違いや、オフサイトPPAのメリット・デメリットについてまとめていますので、参考にしてください。

関連記事 オフサイトPPAとは

新電力会社への売電に変更する

FIT期間終了後に、電力の売電先を新電力に変更する方法もあります。

新電力とは2016年4月に全面自由化された、電気の小売り事業に参入した大手電力会社以外の電力会社を指します。
ガス会社や携帯キャリアなど、メイン事業が電力ではない企業が参入している点が特徴です。

新電力の買取価格は、大手の電力会社よりも数円程度高めの設定が多いです。

住宅用の太陽光発電の場合は、自宅で利用する電力会社を新電力に乗り換えると、買取価格がさらに数円高くなるケースもあります。

電力の買い取り対象を出力容量10kW未満に限定している新電力もあるため、主に住宅用の太陽光発電向けの活用方法です。

大手電力会社への売電を継続する

FIT期間中と変わらずに大手電力会社への売電を継続するのも、卒FIT後の太陽光発電活用方法の1つです。

大手電力会社の場合、執筆時現在(2023年8月)の買取価格は9円/kWh以下になります。

オフサイトPPAや新電力と比較すると、買取価格が低めです。

新しい売電先を探したり、申し込みしたりするのが面倒な場合は、大手電力会社への売電継続が希望に合う太陽光発電の活用方法と言えるでしょう。

自家消費する(住宅用太陽光発電の場合)

住宅用の太陽光パネル

住宅用太陽光発電の場合、卒FIT後は売電をせずに自家消費のみでも活用できます。

日中に家族が在宅しているケースなどは、太陽光パネルが発電している時間帯に集中して家事を行い、夜間に使用する電力を減らせば、電気代を節約できます。

また、自立運転機能付きのパワーコンディショナを設置していれば、停電が起きた際にも携帯電話の充電などに電気を使えて安心です。

日中に電気の使用量が多いご家庭では、卒FIT後も自家消費で太陽光発電を有効活用できるでしょう。

蓄電池と併用する(住宅用太陽光発電の場合)

太陽光発電のFIT終了後、蓄電池を自宅に設置して、発電した電気を溜めながら利用する方法があります。

電気料金が日中は高くて夜間は安い、オール電化住宅の太陽光発電と蓄電池を組み合わせれば、電気代を節約できます。

昼間に発電した電気を自家消費して残りを蓄電池に溜めれば、電気の購入は夜間のみにできるのが節約できる理由です。

蓄電池に溜めた電気を夜間に利用すると、さらに電気代の支出を抑えられます

ただし、卒FIT後に蓄電池を導入するデメリットとして、初期費用がかかることがあげられます。

蓄電池の購入に地方自治体の補助金を利用できる可能性があるため、確認してからの購入検討がおすすめです。

エコキュートを設置する(住宅用太陽光発電の場合)

エコキュートを組み合わせて利用するのも、FIT期間終了後の太陽光発電を活用する方法の1つです。

エコキュートは、空気中の熱の力を使ってお湯を沸かす給湯機です。
給湯にガスを使わないため、二酸化炭素が発生せず環境に優しい特徴があります。

従来は、電気料金が安い夜間に給湯するように設定して、電気代を抑えるのがエコキュートで節約する方法でした。

卒FIT後は、太陽光発電の電気でエコキュートがお湯を昼間に沸かすように設定すれば、晴れている日はさらに電気代を節約できます。

環境に優しく電気を作ったり、お湯を沸かしたりしたい場合には、卒FITした太陽光発電とエコキュートのセット利用が向いています。

FIT終了後の売電先別の買取価格

卒FIT後の電力売電先は以下の3種類あり、どこに買い取ってもらうかで売電単価が異なります

卒FIT後の電力売電先
  1. オフサイトPPAで需要家に売電
  2. 新電力会社に売電
  3. 大手電力会社に売電

それぞれの売電単価がいくらになるか、詳しく見ていきましょう。

オフサイトPPAで需要家に売電する場合

オフサイトPPAで売電する場合の売電価格は、10~12円/kWhが相場です。

出力容量が50kW以上2,000kW未満の高圧太陽光発電所の場合、需要家が実際に支払うコストは以下の図表のとおりです。

オフサイトPPA需要家のコスト
出典:コーポレートPPA 日本の最新動向|自然エネルギー財団

発電コスト以外の費用は電力会社に支払われるため、発電事業者の売電価格は10~12円/kWhになります。

関連記事 オフサイトPPAとは

新電力会社に売電する場合

太陽光発電が卒FITした後に、新電力会社に売電する場合の買取価格が高い順のランキングを、一覧にまとめました。

新電力の
小売り事業者
買取価格対象エリア
伊藤忠エネクス株式会社・東京電力管内:14.5円/kWh(税込)
・中部電力管内:12.5円/kWh(税込)
・北海道電力管内:11.5円/kWh(税込)
・東北電力管内:11.5円/kWh(税込)
・関西電力管内:11.5円/kWh(税込)
・中国電力管内:11円/kWh(税込)
・四国電力管内:11円/kWh(税込)
・北陸電力管内:10.5円/kWh(税込)
・九州電力管内:8円/kWh(税込)
沖縄を除いた全国
京葉瓦斯株式会社13.8 円/kWh(税込)東京電力管轄エリア
RE100電力株式会社・蓄電池購入プラン:16円/kWh(税込)
・太陽光発電プラン:12円/kWh(税込)
東京・中部・北陸・関西・中国・四国電力管轄エリア
※ 執筆時現在(2023年8月)の価格

新電力会社では定期的に買取価格の見直しをしているため、申し込みのタイミングによっては、価格が低くなっている可能性が考えられます。

また上記以外にも、卒FIT後の電力買取に対応している新電力会社が何社もあります。

対象エリアや買取プランなど、希望に合う新電力会社を探してみてください。

大手電力会社に売電する場合

大手電力会社にFIT終了後に売電する場合の買取価格を一覧で紹介します。

電力会社買取価格
北海道電力8円/kWh(税込)
東北電力9円/kWh(税込)
東京電力8.5円/kWh(税込)
北陸電力8円/kWh(税込)
中部電力7円/kWh(税込)
関西電力8円/kWh(税込)
中国電力7.15円/kWh(税込)
四国電力7円/kWh(税込)
九州電力7円/kWh(税込)
沖縄電力7.7円/kWh(税込)
※ 執筆時現在(2023年8月)の価格

オフサイトPPAや新電力と比較すると、大手電力会社の買取価格は低めです。

しかし、大手電力会社は倒産しないと言われており、廃業の可能性があるオフサイトPPAや新電力よりもリスクが少ないと言えます。

買取期間満了日の確認方法

FIT価格の買取期間満了日を確認する主な方法は、以下の3つです。

買取期間満了日の確認方法
  1. 電力会社からのお知らせメールで確認する
  2. 購入実績お知らせサービスで確認する
  3. 電力会社との契約書を確認する

どのようにして買取期間満了日を確認するのか、詳細を説明します。

電力会社からのお知らせメールで確認する

買取期間満了日が近づくと、電力会社からお知らせメールが届きます。

執筆時現在(2023年8月)では、書類を郵送してお知らせしている電力会社もありますが、ペーパーレスに運用を変更して、メールでの通知になる可能性が高いです。

電力会社には、買取期間満了日の4ヶ月前と1ヶ月前を目安に、発電事業者への通知が義務付けられています。

卒FITの時期が近づいたら、メールや郵便物をチェックするようにしましょう。

購入実績お知らせサービスで確認する

買取期間満了日は、電力会社が提供している「購入実績お知らせサービス」でも確認できます。

購入実績お知らせサービスは、発電事業者向けに各電力会社が提供しています。

利用方法などを確認したい場合は、電力会社への問い合わせが必要です。

電力会社との契約書を確認する

太陽光発電での売電を開始する際に電力会社と交わした契約書にも、買取期間満了日が記載されています。

電力会社からの通知を待たずに買取期間満了日を確認したい場合は、契約書で確認できます。

太陽光発電に関連する書類一式は、いつでも確認できるように揃えておくのがおすすめです。

卒FITまでに完了したい手続き

電力会社への売電を継続する場合としない場合では、FIT期間の終了前までに必要な手続きが異なります

以下の2つのケースで、対応するべき手続きを紹介します。

  • 売電を継続する場合
  • 住宅用の太陽光発電で自家消費に切り替える場合

それぞれでどのような対応が必要なのか、見ていきましょう。

売電を継続する場合

卒FIT後も売電を継続する場合は、あらためて電力会社に申し込みが必要です。

同じ大手電力会社に売電を継続するのでも、契約が自動更新される場合と、申し込みが必要なケースに分かれます。

FIT期間終了後に、契約が自動更新されない大手電力会社や新電力会社に売電したいとお考えの場合は、早めに申し込みするようにしましょう。

住宅用の太陽光発電で自家消費に切り替える場合

FIT期間終了後は売電せず自家消費に切り替える場合は、電力会社の送電網に電気が流れ込まないようにするため、RPRの設置が必要です。

RPRは、自家消費している太陽光発電の電気が電力会社の送電網に流れそうになった場合に、自動で発電を停止させる装置になります。

自家消費による消費電力が発電量よりも大幅に少ない場合、使われなかった電気が電力会社の送電網に流れる可能性があります。

電力会社の送電網に電気が多く流れて受け入れの許容量を超えてしまうと、停電などの不具合が発生するため、RPRの設置が必要です。

電気の流れ込み防止対策が完了したあとに、配線図や対策の詳細を記した資料を大手電力会社に提出が必要なため、早めの業者への問い合わせをおすすめします。

卒FITについて まとめ

卒FITを迎えると、固定価格買取(FIT)制度による電力の買い取りが終了します。

FIT終了後は売電先の選択肢が増えますが、買取価格が大幅に下がるため売電収入が少なくなります。

売電収入の減少額を少なくしたいとお考えの方には、大手電力会社よりも買取価格が高い「オフサイトPPA」がおすすめです。

卒FIT後の太陽光発電の活用方法にお悩みの方は、オフサイトPPAを含めて自分に合う方法を検討されてみてはいかがでしょうか。

関連記事 オフサイトPPAとは

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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