【いつ終了?】固定価格買取(FIT)制度とは 価格推移やメリット・デメリットをわかりやすく解説
「固定価格買取(FIT)制度とはどのような仕組みで、いつから始まったのか知りたい」という方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
固定価格買取(FIT)制度は、再生可能エネルギーによる発電を普及するために2012年7月に開始された制度です。
これから太陽光発電の投資を始めるには、固定価格買取制度の詳細把握は必須になります。
そこで本記事では、固定価格買取制度について以下の内容を解説します。
買取価格の推移や固定価格買取制度の期間終了後の選択肢も分かる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
固定価格買取(FIT)制度とは? わかりやすく解説
「固定価格買取制度」とは、発電に必要な燃料に再生可能エネルギーを利用した電気を、国が決めた価格での買取を電力会社に義務付けた制度です。
英語で固定価格買取は「Feed-in Tariff(フィード・イン・タリフ)」となり、日本でも頭文字を取って「FIT(フィット)」と呼んでいます。
以下では固定価格買取制度の仕組みや目的など、制度の詳細を解説します。
固定価格買取制度の仕組み
固定価格買取制度では、以下のような仕組みで発電事業者が電力会社に電気を売電し、利用者に供給しています。
- 発電事業者の設備で再生可能エネルギーを燃料にして発電
- 発電事業者の設備から電力会社の送電網に電気を送電
- 電力会社は買い取った電気を一般の利用者に供給
電力会社は固定価格買取制度に応じた単価に従って、発電事業者に買い取った電力の費用を支払う仕組みです。
再生可能エネルギーで発電した電気は、私たちの家庭に電力会社を経由して供給されています。
電気を購入している全員が、固定価格買取制度を適用して発電された電気を利用していることになります。
固定価格買取制度の目的
固定価格買取制度が開始された目的は、以下の3つです。
- 再生可能エネルギーを利用する発電設備を普及させるため
- 日本のエネルギー自給率を上げるため
- 二酸化炭素の排出量を削減して環境負荷を減らすため
以下より、2020年度の年間発電量に対する日本の再生可能エネルギーによる発電の割合は、19.8%でした。
日本では、石炭などの化石燃料を利用する火力発電が76.4%と8割近くを占めています。
再生可能エネルギーの普及率は低く、環境負荷も大きいのが現状です。
しかし、日本で採掘できる化石燃料は少なく、火力発電に使用する燃料のほとんどを海外から輸入しています。
輸入品は国際情勢などの影響を受ける為替相場に応じて価格が変動するため、値段が安定しません。
つまり、固定価格買取制度の目的は、再生可能エネルギーの発電所を増やして日本のエネルギー自給率を向上し、電気代を安定させることです。
買取対象となる5種類の再生可能エネルギー
固定価格買取制度で買取対象となっている再生可能エネルギーは、以下の5種類です。
再生可能エネルギーの種類 | 特徴 |
---|---|
太陽光発電 | 太陽光のエネルギーをパネルに集めて発電する 日本でもっとも普及している |
風力発電 | 風で風車が回ったら発電機が稼働して発電する 風が吹いていれば時間や季節に関係なく発電できる |
水力発電 | 水が上から下に落ちる力で水車を回して発電機を稼働させて発電する 農業用水路や上水道施設を利用する水力発電の普及が進んでいる |
地熱発電 | 地下1,000~3,000mの層付近の地球内部にある熱の蒸気を利用して発電する 日本は火山国のため地熱の資源が豊富にある |
バイオマス発電 | 木材や農産物の廃棄物、家畜の排泄物などの生物資源を原料にして発電する 廃棄するだけの生物資源を使用するため、廃棄物を削減できる |
再生可能エネルギー発電促進賦課金
再生可能エネルギー発電促進賦課金(ふかきん)は、固定価格買取制度の仕組みのひとつで「再エネ賦課金」と呼ばれています。
固定価格買取制度では、再生可能エネルギーの発電を普及するために買取価格が高く設定されており、国だけでは買取にかかる費用をまかなえません。
このため固定価格買取制度で電気を買い取る費用の一部を、再エネ賦課金として国民も負担しています。
再エネ賦課金は電力会社が全世帯から回収しており、電気料金の明細は以下のような内訳です。
- 基本料金
- 使用量に応じた電気料金
- 使用量に応じた再エネ賦課金
固定価格買取制度で買い取った電気は、一般家庭に供給されており、各世帯で再生可能エネルギーの電気を利用しています。
これが再エネ賦課金の負担が、全世帯に義務化されている理由です。
2022年度の再エネ賦課金は3.45円/kWhでしたが、2023年5月から2024年4月までは1.4円/kWhと、大幅に負担額が下がっています。
改正FIT法
2012年7月の固定価格買取制度開始後、太陽光発電の普及が急速に進みましたが、制度の問題点が浮き彫りになり2016年に一部が見直しされました。
改正前の固定価格買取制度の問題点は以下のとおりです。
- 導入が太陽光発電に偏っているため、確保できる電力量が安定しない
- FITの認定を取得しても稼働しない発電所が、30万件以上あった
FIT法改正後のポイントは以下になります。
- 設備だけでなく事業計画を確認して認定する方法に変更
- 定期的なメンテナンスを義務化
- 太陽光発電のみ運転開始期限を設定
- 買取価格目標の設定
- 設置容量が大きい太陽光発電の電力買取に入札制度を導入
改正された制度は2017年4月に施行され、「改正FIT法」と呼ばれています。
固定価格買取(FIT)制度の買取価格推移
固定価格買取制度による太陽光発電の買取価格は、10kW以上の場合に44円/kWh(税込)からスタートし、以下のグラフのように推移しています。
10kW以上50kW未満の太陽光発電にFITを適用する場合の買取価格は、2023年現在11円/kWh(税込)です。
太陽光発電に限らず、再生可能エネルギーを利用して発電する電気の買取価格は定期的に見直しされ、市場の動向に合わせて推移しています。
固定価格買取(FIT)制度が終了するタイミングはいつ?
FIT制度の買取価格を適用して売電できる期間は、10年と20年のどちらかです。
太陽光発電は出力容量に応じて大きく以下の2つに分類でき、固定価格買取制度がいつまでになるかは種類によって異なります。
- 産業用太陽光発電の場合:20年
- 住宅用太陽光発電の場合:10年
産業用太陽光発電の場合:20年
産業用太陽光発電でFIT制度を適用する場合の買取期間は、20年です。
出力容量が10kW以上の、以下全ての太陽光発電が該当します。
- 低圧(10kW以上50kW未満)
- 高圧(50kW以上2,000kW未満)
- 特別高圧(2,000kW以上)
買取期間が20年間で、発電した全ての電気を売電できるため、安定した売電収入が見込めます。
住宅用太陽光発電の場合:10年
出力容量が10kW未満である住宅用太陽光発電のFIT制度による電力の買取期間は、10年です。
住宅用の太陽光発電では、自家消費した後の余剰電力が買取対象になります。
2022年から住宅用太陽光発電で、卒FITを迎えた方が出てきています。
関連記事 卒FITとは
なお、住宅用太陽光発電の10年後について詳しくは以下の記事をご覧ください。卒FITした太陽光発電をお得に利用する方法についても紹介しています。
関連記事 太陽光発電の10年後はどうする?
固定価格買取(FIT)制度終了後の選択肢
固定価格買取制度での電力買取が終了した後の、大手電力会社に売電を継続する以外の選択肢は以下の6つです。
引き続き売電収入を得たい、電気代を削減できるように自家消費したいなど、太陽光発電を利用する目的に応じて卒FIT後の活用方法が変わります。
当サイトでは、卒FITについても詳しく解説しています。卒FIT後の太陽光発電設備の活用方法について知りたい方は、以下を参考にしてください。
関連記事 卒FITとは
固定価格買取(FIT)制度のメリット
固定価格買取制度を利用して売電するメリットは、以下の2つです。
- 単価が下がらずに売電を継続できる
- 環境負荷の削減に貢献できる
単価が下がらずに売電を継続できる
FIT単価が適用される期間中は、一定の単価で売電できることが固定価格買取制度を利用するメリットです。
太陽光発電の出力容量が10kW以上の場合は20年間、10kW未満の場合は10年間、単価が固定されます。
固定価格買取制度を適用せずに大手電力会社や新電力会社に売電する場合、市場価格に合わせて買取価格が増減する可能性があります。
買取価格が値上がりすれば良いですが、値下がりすることもあるため、固定価格買取制度は安定した単価で売電を継続したい方に向いています。
環境負荷の削減に貢献できる
再生可能エネルギーを燃料として電気を作り出す際に、環境負荷の原因となる二酸化炭素は排出されません。
固定価格買取制度は、二酸化炭素を減少させる再生可能エネルギーでの発電量を増やすことも目的のひとつとして開始された制度です。
よって、FIT制度を利用して太陽光発電の電気を売電するのは、環境負荷の削減に貢献していると言えます。
固定価格買取(FIT)制度のデメリット
固定価格買取制度にはメリットだけではなく、以下のデメリットもあります。
- 卒FIT後の運用方法について検討が必要
- 再エネ賦課金がかかる
卒FIT後の運用方法について検討が必要
卒FIT後の太陽光発電をどのように運用するか検討が必要な点が、固定価格買取制度を利用するデメリットです。
期限があっても自動更新になる売買契約であれば、改めての運用検討は必要ありません。
しかし固定価格買取制度は適用期間が決まっているため、卒FIT後の運用を決めて手続きをしなければ、売電も自家消費もできなくなります。
太陽光発電の運用方法が決まらないまま卒FITを迎えて損失が発生しないよう、早い段階で検討を始めて、時間に余裕を持った手続きがおすすめです。
再エネ賦課金がかかる
固定価格買取制度を適用して売電収入を得る発電所の件数が増えると、1世帯あたりが負担する再エネ賦課金が増えるデメリットがあります。
再エネ賦課金は固定価格買取制度が開始した当初は1kWhあたり1円以下でした。
しかし太陽光発電の普及が進み、2015年度の再エネ賦課金は1.58円/kWhと、前年度の0.75円/kWhから倍近く負担額が増えました。
2022年度の3.45円/kWhまで年度ごとに1kWhあたりの再エネ賦課金は微増傾向でしたが、2023年度は1.40円/kWhに下がっています。
1年で2円近く下がったのは、住宅用太陽光発電で2022年から卒FITする人が出てきたことが理由と考えられます。
2023年以降も卒FITする太陽光発電は出てくるため、今後は再エネ賦課金の負担額は減っていく見通しです。
固定価格買取(FIT)制度についてのよくある質問
固定価格買取制度に関する、よくある質問の回答をまとめました。
- FITとFIP制度の違いとは?
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FIP制度ではFITのように電力の買取価格が固定されず、基準価格で電気が売買されます。
基準価格は、以下の2つを合算した金額です。
・参照価格:電気の市場価格
・プレミアム:補助額
- FIT制度はなくなるのですか?
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2023年現在、FIT制度自体がなくなる予定はありません。
新たに認定を取得して、売電を開始する件数は減少傾向です。
- FIT制度終了後の売電単価はいくらですか?
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売電先によって、FIT制度終了後の売電単価は異なります。
大手電力会社に売電する場合は7~9円/kWhで、発電に使用している燃料代が単価に影響しています。
オフサイトPPAの相場は10~12円/kWh、新電力への売電は7~14円/kWhの間が相場です。
関連記事 オフサイトPPAとは
- FIT制度はいつからはじまったのですか?
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固定価格買取(FIT)制度は、2012年7月に開始されました。
固定価格買取(FIT)制度についてのまとめ
固定価格買取(FIT)制度とは、再生可能エネルギーによる発電を普及するために開始された制度で、以下の3点を目的にしています。
- 再生可能エネルギーを利用する発電設備を普及させるため
- 日本のエネルギー自給率を上げるため
- 二酸化炭素の排出量を削減して環境負荷を減らすため
FIT期間中は電気を売電する単価が固定されるため、長期間安定した売電収入を得られるメリットがある制度です。
安定した売電収入を得られる方法で太陽光発電の投資を始めたいとお考えの方は、以下の記事もご参考ください。
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