【2024年最新】太陽光発電は今後どうなる? 将来性と課題、活用方法を紹介
太陽光発電を所有している投資家の中には、以下のようなお悩みを抱えられている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「発電量が低下して売電収入が下がってきたので、発電効率を回復させる方法を知りたい」
「卒FIT後、売電価格が下がったら太陽光発電はどうなる?」
太陽光発電には「もう遅い」や「太陽光発電やめたほうがいい」など、否定的な意見もあるのが現状です。
そこで本記事では、太陽光発電の今後の活用方法や、将来性と課題についても紹介します。
太陽光発電ビジネスの今後の動向が分かる内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
今後の太陽光発電の将来性と課題
パリ協定やSDGs、カーボンニュートラルの目標達成に向けて対策が必須な状況の中で、再生可能エネルギーを利用した発電設備の増加が必要になっています。
大規模な設備が必要な風力発電などと比較すると設備の設置条件が厳しくない太陽光発電は、日本で最も普及している再生可能エネルギーの発電施設です。
しかし太陽光発電には「未来はない」「やばい」など、後ろ向きな意見を持った人も少なくありません。
以下では、太陽光発電ビジネスの将来性と抱えている課題や問題点を、わかりやすく説明します。
将来性があると言える理由
結論からお伝えすると、太陽光発電には将来性があります。なぜ将来性があると言えるのか、理由は以下の2つです。
- 再生可能エネルギーの導入を国が推奨しているため
- 機器の発電効率が向上しているため
それぞれどのような点に将来性があるのか、詳しく説明します。
再生可能エネルギーの導入を国が推奨しているため
世界中で地球環境を守るための取り組みが、実施されています。
日本では以下3つの目標を実現するため、政府が再生可能エネルギーによる発電設備の導入を推奨しています。
取り組み | 実現する目標 |
---|---|
パリ協定 | 2030年までに2013年度と比較して温室効果ガスの排出量を26%削減する取り組み |
SDGs | 2030年までに世界中の全ての人が豊かな生活を送れる環境を目指す取り組み 太陽光発電は7番目と13番目の取り組みに関連している ・7番目:クリーンエネルギーをみんなに届ける ・13番目:気候変動の具体的な対策を実施する |
カーボンニュートラル | 2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする取り組み |
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これらの目標達成には、電気を作る際に温室効果ガスの1つである二酸化炭素を排出する火力発電での発電量を減らす対策が必須です。
太陽光発電を始めとした再生可能エネルギーでの発電設備導入を推進するため、政府や地方自治体が補助金事業で支援しています。
このことから、太陽光発電には将来性があると言えるでしょう。
機器の発電効率が向上しているため
太陽光発電設備はメーカーの企業努力によって、太陽光パネルやパワーコンディショナーなど年々発電効率が上昇しています。
太陽光パネルのモジュール変換効率を例にすると、2013年に16%だったモジュール変換効率が、2020年は22%まで性能が上がっていました。
さらに下図からも分かるように、2030年にはモジュール変換効率は25%まで上昇する見込みです。
発電効率が高くなれば、従来と同じ規模の太陽光発電所でも生み出せる電気量が増えます。反対に少ない設備で発電量が多ければ、初期費用を抑えて太陽光発電を導入できるようになります。
これまでコスト面で太陽光発電の導入にハードルを感じていた人も、初期費用が下がったことで購入しやすい状況になりました。
太陽光発電の導入量が増えれば、二酸化炭素を排出せずに発電する電気量が増えます。
このことから機器の性能が向上している太陽光発電には、将来性があると言えるでしょう。
太陽光発電の課題は2030年問題
将来性がある太陽光発電ですが、環境破壊の懸念や2030年問題など解決するべき課題と対策の検討が必要です。
経済産業省 資源エネルギー庁のホームページでも、以下3点が懸念事項として公表されています。
- 機器の不法投棄
- 有害物質の流出による環境破壊
- 最終処分場のひっ迫
ソーラーパネルの太陽電池には、鉛や銀など環境にも人体にも被害が発生する有害物質が含まれています。
このため有害物質を取り除かないまま埋め立て処分されてしまうと、環境破壊に繋がりかねません。
また産業廃棄物として太陽光発電設備を処分する際、2012年度に購入した設備は1kWあたり1.7万円程度の費用がかかるため不法投棄の頻発も予想されています。
廃棄費用の想定額
2022年7月から産業用太陽光発電の事業者に廃棄費用の積み立てが義務化されています。
この積み立て制度により不法投棄の懸念が減り、さらにリサイクルやリユースの技術開発も進めば2030年問題による課題は緩和されるでしょう。
太陽光発電ビジネスの今後の活用方法3選
現状は固定価格買取制度を適用中の太陽光発電設備がほとんどですが、卒FIT後は電気の買い取り価格が大幅に下がります。
このため、所有している太陽光発電を今後どのように活用していくかの検討が必要です。太陽光発電の今後の活用方法には、以下の3つが考えられます。
- 売電先を変更して単価を上げる
- リパワリングで発電効率向上を図る
- 太陽光発電所を売却してまとまった利益を得る
それぞれどのように活用するのか、詳しく解説します。
売電先を変更して単価を上げる
固定価格買取制度を適用していない、またはFIT期間終了後の太陽光発電では、大手電力会社のほかに以下2つが売電先の選択肢として増えます。
- 電力会社を変更する
- オフサイトPPAスキームを導入する
売電先を変更すれば、大手電力会社への売電を継続するよりも買取価格を高くできる点がメリットです。
以下ではそれぞれの売電先に、なぜ大手電力会社よりも高く売電できるのか説明します。
電力会社を変更する
発電した電気の売電先を大手電力会社から新電力に変更すれば、買取価格が上がるため売電収入を増やせます。
新電力では電気の買取価格を大手電力会社よりも数円高く設定したり、自社サービスとのセット利用でさらに高い単価を設定したプランがあります。
このため卒FIT後も大手電力会社に売電を継続する場合と比較して、新電力では高い売電収入を得られるでしょう。
オフサイトPPAスキームを導入する
売電先にオフサイトPPAスキームを利用するのも、卒FIT後またはFITを適用していない太陽光発電で売電収入を向上させる方法の1つです。
契約によりますが、オフサイトPPAでの売電価格は10~12円/kWhが相場です。
固定価格買取制度が適用されない太陽光発電では、買取価格が10円/kWhよりも低い大手電力会社よりもオフサイトPPAを利用すれば高く売電できるでしょう。
関連記事 オフサイトPPAとは
リパワリングで発電効率向上を図る
リパワリングを実施して発電効率を回復させ、発電コストを下げるのも太陽光発電の今後の活用方法です。
全ての製品は時間の経過とともに劣化します。この劣化が進むにつれて太陽光発電では製品が持つ最大で発電できる量よりも実際の発電量が減っていきます。
パワーコンディショナーはパネルよりも寿命が短いため、リパワリングで電気の変換効率を回復させて発電量を増加させる対策が必要です。
発電量を増加できるリパワリングは、今後も太陽光発電所を所有し続ける場合と、中古物件としての売却を検討している場合の両方で有効と言えます。
関連記事 リパワリングとは
太陽光発電所を売却してまとまった利益を得る
太陽光発電所の売却も、今後の太陽光発電の活用方法の1つです。
近年電気料金が高騰して値上がりしたままの状況が続き、電気代など光熱費節約のために太陽光発電の導入を検討する法人が増えています。
このため、中古市場(セカンダリー)の市況環境が良く、太陽光発電の売却に注目している投資家も多いです。
中古の太陽光発電所を購入する場合、以下2つのメリットがあります。
- FIT期間中の物件なら高い売電収入が得られる
- 既に発電実績があるためシミュレーションで収支の計算に失敗がない
中古物件が注目されている状況から、太陽光発電所を売却してもなかなか買い手が見つからないといったことも考えにくいです。
さらにリパワリングで設備の発電効率を上げていれば、評価が上がり高額での売却も期待できるでしょう。
太陽光ビジネスの現状
2024年時点での太陽光ビジネスの動きや現状を、以下3つの項目に分けて説明します。
- 太陽光発電の売電単価推移
- 太陽光発電の導入費用推移
- 日本における太陽光発電の導入状況
それぞれがどのような状況になっているか、順に見ていきましょう。
太陽光発電の売電単価推移
2009年に開始された余剰電力買取制度では、出力容量10kW未満の太陽光発電の買取価格は48円/kWh(税込)でした。
固定価格買取制度による買取価格は、以下の表のような推移です。
なお、毎年数円ずつ買取金額が下がってきた固定価格買取制度ですが、2024年度は2023年度とほぼ同じ価格になることを経済産業省が発表しています。
太陽光発電の導入費用推移
経済産業省 資源エネルギー庁の調査によると、太陽光発電導入時にかかる費用は年々低下傾向で推移しています。
2013年には設置費用を含めて1kWあたり40万円以上の費用が発生していましたが、2022年には1kWあたり30万円以下にまで下がりました。
太陽光発電(10kW以上)の設置年別コスト動向
導入時の費用が下がったのは、太陽光パネルの価格が大幅に値下がりしていることが影響しているとグラフから推測できます。
日本における太陽光発電の導入状況
日本の国土面積に対する太陽光発電の導入量は、世界でもトップレベルです。
面積あたりの各国太陽光設備容量
固定価格買取制度が開始された2012~2015年頃と比較すると、太陽光発電の設置件数は減少傾向で推移しています。
しかし日本の広くない国土面積・平地面積に対して、世界トップレベルで太陽光発電を導入しているため、平地ではない土地や場所に導入できる太陽光発電の開発が急務です。
次の項目では、平地以外にも設置できる次世代の太陽電池を紹介します。
太陽光発電に代わるものとして期待されるペロブスカイト太陽電池とは
現状の太陽光発電システムでは、シリコン製の太陽電池を搭載したパネルを使用するのが主流です。
シリコン製の太陽電池はもろく破損しやすいため両面を強化ガラスで覆う構造で、重量や寸法が大きく施工方法や設置場所が限定されます。
国土面積が狭い日本では、太陽光発電の設置に適した土地が不足してきている状況です。
以下では設置場所の不足解消も期待できる、ペロブスカイト太陽電池について説明します。
ペロブスカイト太陽電池とは
ペロブスカイト太陽電池は日本の桐蔭横浜大学の特任教授が発明した、薄いシート状の太陽電池です。
シリコン系太陽電池のような強化ガラスでの補強が不要で、軽く折り曲げられるといった特徴があります。
しかし耐久性や変換効率の低さなどの課題があり、世界中のメーカーが技術開発を進めている段階で、製品化の事例が少ないのがペロブスカイト太陽電池の現状です。
ヨウ素を含む化合物が主原料のペロブスカイト太陽電池は、原材料にレアメタルと呼ばれる希少金属を含みません。
このため製品化されたときに、シリコン系太陽電池よりもコストが低くなる予測もされています。
従来の太陽光パネルでは叶わなかった壁面への設置も可能になるため、ペロブスカイト太陽電池の技術開発に期待が高まっています。
ペロブスカイト太陽電池のメリットとデメリット
製品化の課題が残るペロブスカイト太陽電池ですが、量産体制が整って一般的に利用されるようになったら得られるメリットがあります。
以下では、ペロブスカイト太陽電池にはどのようなメリットとデメリットがあるのか、見ていきましょう。
メリット
ペロブスカイト太陽電池のメリットは、以下の4つです。
- 軽量でフレキシブルなため、設置場所を選ばない
- 室内の明かりや曇天でも発電できる
- 主原料は日本国内で採取できる
- 製造コストがかからない
薄い膜のようなシート状のペロブスカイト太陽電池は、軽くて柔軟性があります。
このため、設置工事の負担が少なく、曲面や耐荷重が少ない屋根に設置での需要が想定されています。
また室内の蛍光灯や曇天など、少ない光エネルギーからも発電できる点が特徴です。
主原料のヨウ素は、日本には世界で2位の埋蔵量があると言われており、化石燃料の輸入に頼らない電気の自給自足が実現できます。
ペロブスカイト太陽電池は印刷技術を応用した方法で製造できるため、製造コストが低く、製品の価格も抑えられる見込みです。
デメリット
現時点で考えられるペロブスカイト太陽電池のデメリットは、以下の4つです。
- 変換効率が低い
- 耐久性が低い
- 実用化の事例が少ない
- 原料にヨウ化鉛など有害物質を含んでいる
以下の図から分かるように、ほかの太陽電池と比較するとペロブスカイト太陽電池は変換効率が低いです。
屋外に設置するものですが、光や水分に弱い性質をペロブスカイト太陽電池は持っており、発明された当初の寿命は5年程度と短いものでした。
様々な企業やメーカーがペロブスカイト太陽電池の技術開発に取り組んでいるため、変換効率と耐久性のデメリットは将来的に少なくなる見込みです。
ペロブスカイト太陽電池を実用化して使用している事例が少ないため、長期間発電を継続するとどのような不具合が起きるかなどが分からないこともデメリットです。
原材料に有害物質が含まれており、廃棄するときに適切に処分できないと環境破壊の懸念があるため注意が必要になります。
太陽光発電の今後についてのまとめ
太陽光発電には将来性がありますが、固定価格買取制度が満了になると売電価格が下がるため今後の活用方法を検討する必要があります。
本記事で紹介した太陽光発電の今後の活用方法は、以下の3つです。
- 売電先を変更して単価を上げる
- リパワリングで発電効率向上を図る
- 太陽光発電所を売却してまとまった利益を得る
卒FIT後も太陽光発電を有効に活用するためには、自分の希望と一致した活用方法を見つけることが重要です。