太陽光パネルの廃棄費用・処分方法は? 1枚あたりの処分費も家庭用・産業用別に解説
「太陽光パネルはどうやって処分するの?」
「廃棄費用はいくらかかるの?」
自宅や事業用、投資用として運用している太陽光パネルの処分方法・廃棄費用がわからないとお悩みの方も多いでしょう。
この記事では、以下についてわかりやすく解説します。
東京電力の一次下請け工事会社で配電工事に従事。東北震災後、太陽光発電所の開発・工事会社に転職し、全国の太陽光発電所開発に携わる。開発実績は1000件以上。10年以上、低圧太陽光発電所、高圧太陽光発電所、屋根上太陽光、住宅太陽光の開発工事経験がある太陽光発電所開発、工事、メンテナンスのプロフェッショナル。
保有免許
- 第1種電気工事士
- 太陽光評価技術者
- 太陽光メンテナンス技師
太陽光パネルを廃棄する方法
太陽光パネルを廃棄する方法は、個人が利用する「家庭用」そして企業や投資家などが利用する「産業用」で違います。まずは、太陽光パネルの廃棄方法をまとめました。
住宅屋根に設置した太陽光パネル
家庭用の太陽光パネルは、次のように廃棄する理由によって依頼先が変化します。
- 自宅の建て替え:解体業者(リサイクル業者)
- 太陽光パネルの故障・損傷:施工会社・販売会社
- 太陽光パネルの処分のみ:お住まいの市区町村の役所
まず自宅の建て替えや解体の場合、建物の解体に合わせて解体業者が対応してくれるケースが多いです。また、解体業者が対応できなくても、解体業者経由でリサイクル業者を紹介してもらえます。
次に太陽光パネルに不具合が生じて交換や修理が必要になった場合には、太陽光パネルを設置した施工会社や販売会社への依頼が可能です。なかには撤去・回収(収集)・処分を無料対応してくれる業者も見つかります。
ほかにも自分で太陽光パネルなどを設置した後で処分するのなら、お住いの市区町村といった自治体に相談するのが一般的です。太陽光パネルは金属を含むすべての部品が産業廃棄物に該当するため、専門の処分受け入れ先を紹介してもらえます。
FIT認定の産業用太陽光パネル
FIT認定の産業用太陽光パネルの処分は、以下に示す目的によって依頼先が変化します。
- 太陽光パネルのみを撤去する:設置に対応した施工会社
- 太陽光発電設備一式を撤去・廃棄する:解体業者
まず、太陽光パネルの張替え(リパワリング)を目的として、パネル単体を廃棄する場合には、リパワリングを施工業者に依頼するついでに太陽光パネルの処分に対応してもらえます。
また、事業や投資の撤退などが理由で太陽光発電設備をまとめて廃棄する場合には、解体業者に依頼するのが一般的です。パネルの処分はもちろん、基礎までまとめて解体を依頼できます。
上記で登場したリパワリングの意味や具体的な方法を知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
関連記事 リパワリングとは
太陽光パネルの1枚あたりの廃棄・処分費用
施設の管理者が太陽光パネルを処分する際には、専門業者に依頼するための費用がかかります。参考として、太陽光パネル(太陽電池)の種類ごとの1枚あたりにかかる廃棄・処分費用を整理しました。
家庭用太陽光パネルの撤去・廃棄・処分費用
家庭用として屋根などに設置されている太陽光パネル撤去・廃棄・処分にかかる費用は、相場として20枚あたり15~20万円程度だと言われています。つまり、1枚あたりに換算すると7,500~1万円程度になるイメージです。参考として、費用内訳を以下にまとめました。
- 人件費:10万円程度
- 足場費用:3万円程度
- 運搬費:2万円程度
ちなみに足場費用は1㎡あたり1,000円程度であるため、設置面積の広い家ほど高額になりやすいです。またお住いのエリアによって、最終処分場までの運搬費が高額になるケースもあります。
産業用太陽光パネルの撤去・廃棄・処分費用
資源エネルギー庁が公開している「太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを担保する制度に関する詳細検討」の資料によると、産業用として利用されている太陽光パネルの処分費用は「kWあたり0.57万円」と試算されます。
また、国土交通省の「太陽光発電装置(標準型)標準仕様書」によると、標準型の太陽パネルの出力容量は、5~50kWまで複数種類に分かれています。参考として、出力容量ごとに1枚あたりの処分費用の目安を下表にまとめました。
5kW | 10kW | 15kW | 20kW | 30kW | 40kW | 50kW | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0.57万円/kWの場合 | 2.85万円 | 5.7万円 | 8.55万円 | 11.4万円 | 17.1万円 | 22.8万円 | 28.5万円 |
所有する太陽光パネルの出力容量×枚数で金額を算出してみてください。
太陽光発電設備の撤去費用
太陽光パネルと一緒に設備を撤去する場合には、資源エネルギー庁が公開している「太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを担保する制度に関する詳細検討」より、基礎の条件で撤去費用が変化します。
- スクリュー基礎の場合:1.0万円/kW程度
- コンクリート基礎の場合:1.4万円/kW程度
前述した産業用太陽光パネルと同様に、標準出力容量に分けて、目安の金額をまとめました。
5kW | 10kW | 15kW | 20kW | 30kW | 40kW | 50kW | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
スクリュー基礎 (1.0万円/kW) | 5万円 | 10万円 | 15万円 | 20万円 | 30万円 | 40万円 | 50万円 |
コンクリート基礎 (1.4万円/kW) | 7万円 | 14万円 | 21万円 | 28万円 | 42万円 | 54万円 | 70万円 |
杭を埋め込むスクリュー基礎は抜き取ることで対応できますが、コンクリート基礎はコンクリートの破砕作業が必要である分、高額になりやすいです。
太陽光パネルを廃棄する際の注意点
太陽光パネルは精密機器であることはもちろん、蓄電している危険物でもあることから、廃棄する際には細心の注意が欠かせません。注意するポイントを3つ整理しました。
産業廃棄物として処分しなければならない
太陽光パネルは家庭用・産業用を問わず、産業廃棄物として処分する必要があります。家庭用のごみとして処分することはできないことから、十分に注意してください。
太陽光パネルは設置した業者や解体業者によって処分してもらえます。また、不法投棄による罰則・罰金は次のとおりです。
5年以下の懲役、1,000万円以下の罰金又はこれらの併科(法人に対して、
3億円以下の罰金刑)引用:環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部「廃棄物処理法
の改正について」
企業における罰金は、最大3億円にのぼります。処分費用と割に合わない程度の罰金が発生するため、必ず適切な手段で処分してください。
留意事項を把握したうえで廃棄を始める
太陽光パネルやモジュールを撤去する際には、事前に環境省が公開している「太陽光発電設備を廃棄処理する際の留意点について」のガイドラインを理解したうえで動き始めることが重要です。
- 有害物質等の情報伝達について
- 撤去時の書類提出について
- 被災した太陽光パネルの取り扱いについて
上記の内容は解体・撤去業者や廃棄物処理業者に向けた内容です。しかし撤去・廃棄を依頼する側も安全のため、そして依頼した業者が正しく廃棄してくれているのかを確認するために、あらかじめ内容を理解しておくことをおすすめします。
太陽光パネルの被災について不安をお持ちなら、以下の記事をチェックしてみてください。
関連記事 太陽光パネルは台風で飛ばされる?
関連記事 太陽光パネルから火災が起きる原因
被災した太陽光パネルは安全対策を実施したうえで取り外す
災害といった外的要因により被災・破損した太陽光パネルを廃棄する際には、次の4項目の注意が必要です。
- 感電の防止
- ケガの防止
- 水漏れの防止
- 立ち入りの防止
上記のなかで廃棄の依頼者が注意すべきなのが「立ち入りの防止」です。被災した太陽光パネルは漏電などのリスクがあることから、不用意に近づいてはいけません。
また、近隣住民などが近づかないように注意して回ることも重要です。上記4項目の対応はすべて専門業者が実施してくれるため、必要最低限の対策を施したあとは、専門業者が来てくれるまでなるべく離れた場所に避難することをおすすめします。
太陽光パネルが抱えている廃棄問題とは?
太陽光パネルは現在、2つの廃棄に関わる問題を抱えています。
主にパネルを撤去してもらった後の問題ですが、環境問題にも関わるため、ぜひ全容を把握してください。
太陽光パネルはそのまま処分できない
太陽光パネルは、パネルに用いられている電極やシリコンといった素材が何層にもわたり強固に接着されている影響で、分解して再利用するのが難しいと言われています。
また機能的にも問題のない太陽光パネルは再利用される場合もありますが、使えないと判断された製品については、産業廃棄物の処分場に埋め立てて処分する以外に方法がありません。
今後「太陽光発電」が普及したとしても、どのように処分すべきか答えが見つからない限り、いずれ埋め立て対応が難しくなるおそれがあります。
太陽光パネルの廃棄時に有害物質を排出する
前述した内容に引き続き、太陽光パネルを埋め立て処分することにも問題があります。なぜなら、太陽光パネルに含まれる以下の成分には猛毒が含まれており、土壌を汚染し河川へと流れ、生物そして人体への影響をおよぼすおそれがあると考えられているためです。
- カドミウム(骨粗鬆症・イタイイタイ病の原因になる)
- 鉛(鉛中毒による血液障害を引き起こす)
- セレン(内臓・皮膚・神経障害を引き起こす)
太陽光パネルの処分や売却を検討されている方は、「太陽光パネルの買取相場」をご覧ください。価格推移や買取業者の選び方も解説しています。
今後、太陽光パネルの普及に伴い大量のパネルが埋設される影響で、次第に土壌汚染が悪化していくと予想されます。再生可能エネルギーの普及を目指している日本ですが、今後は環境への影響を視野に入れた対策が欠かせません。
太陽光パネルの課題である有害物質について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
関連記事 太陽光パネルには有害物質が含まれる?
太陽光パネルの廃棄対策
太陽光パネルを処分・廃棄する際には膨大なコストが必要です。とくに、太陽光パネルの出力容量が大きくなるほど、設置枚数が多くなるほど高額になります。
もし太陽光パネルの廃棄費用を抑えたいなら、本項で説明する3つの対策をスタートするのがおすすめです。
賠償責任保険に加入する
災害の影響を受けて太陽光パネルを廃棄する費用を抑えたいなら、賠償責任保険に加入するのがおすすめです。次のような災害が該当します。
- 火災
- 落雷
- 風災(台風)
- 水災(洪水)
また、上記に関連する自然災害(土砂崩れなど)を受けた場合に「廃棄費用」が補償されます。
賠償責任保険の例として、東京海上日動火災保険が2021年12月から販売している専用保険の特徴を以下にまとめました。
- 対象者:FIT認定を受けた太陽光発電事業者(設備容量10kW~2,000kW)
- 廃棄費用:設備容量1kWあたり1万円(最大1,000万円)
地震リスクの場合は1kWあたり2,000円(最大200万円) - 対人対物事故の場合:1事故あたり1億円(初期対応費用・事業継続費用1,000万)
- システムのサイバーリスクの場合:1事故あたり最大1億円
もしものトラブルが起きても太陽光パネルの廃棄費用を抑えられるように、ぜひ太陽光発電事業者は、パネル導入に合わせて保険を検討してください。
太陽光発電設備廃棄費用積立制度を活用する
将来の太陽光パネルおよび設備の廃棄のために準備を進めたい人は、「太陽光発電設備廃棄費用積立制度」を活用するのがおすすめです。
太陽光発電設備廃棄費用積立制度は、以下に示す太陽光発電所の廃棄等費用の確保を担保してくれる制度のことを指します。国からも推進されており、制度利用者が徐々に増加している状況です。
対象 | 10kW以上の全ての太陽光発電所(FIT案件に限る) |
---|---|
金額 | 調達価格/基準価格の算定において想定してきている廃棄等費用の水準 |
時期 | 調達期間/交付期間の終了前10年間 |
取り戻し条件 | 廃棄処理が確実に見込まれる資料の届出 |
太陽光発電所の発電量に応じて廃棄する費用を自動的に徴収する仕組みであり、資源エネルギー庁が公開している「太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について」によると、最新の積立金は次のとおりです。
解体等積立基準額 | 調達価格 | |
---|---|---|
10kW以上50kW未満 | 1.33円/kWh | 12円/kWh |
50kW以上250kW未満 | 0.66円/kWh | 11円/kWh |
250kW以上 | 0.66円/kWh | 落札者ごと |
たとえば、50kW未満の発電施設かつ1年間で10万kWの電力を得ている場合における積立金は次のようになります。
- 1年間:年間想定発電量を10万kW×1.33円=13万3,000円
- 10年間:13万3,000円×10年=133万円
源泉徴収のように自動で積立金が差し引かれるため、手間をかけずに廃棄費用を用意できるのが制度の仕組みです。
太陽光パネルをリユース・リサイクルする
太陽光パネルは「リユース」「リサイクル」により廃棄が可能です。
近年では、太陽光パネルのリユース・リサイクルに対応したサービスなども数多く登場しています。中古の太陽光パネルを買い取ってもらうことにより、廃棄費用を節約できるので、選択肢のひとつとして検討してみてください。
太陽光パネルの処分や売却を検討されている方は、「太陽光パネルの買取相場」をご覧ください。価格推移や買取業者の選び方も解説しています。
太陽光パネルの廃棄・処分費用に関するよくある質問
太陽光パネルの廃棄方法や処分費用についてよくある質問と、その回答をまとめました。
- 台風で太陽光パネルが壊れました。放置していると有害物質がでるの?
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太陽光パネルには、少量ですが「鉛、セレン、カドミウム、ヒ素」という人体及び環境に有害な物質を含む製品があります。
産業廃棄物として許可を受けた産業廃棄物処理業者に処理を依頼する必要があります。
関連記事 太陽光パネルは台風で飛ばされる?
- 蓄電池も同時に廃棄できますか?
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蓄電池は危険物です。自治体に相談する必要があります(自治体でも処分できない可能性があります)。メーカーに問い合わせて処分方法を確認することをおすすめします。
設置する前の方は、広域認定制度を取得したメーカー製品を購入するのが良いでしょう。
関連記事 太陽光発電に蓄電池の併用は必要?
- 太陽光パネルの大量廃棄問題とは?
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日本国内では2012年FIT制度の導入以降、急速に太陽光発電所が建設されました。2022年末時点では約70GWまで普及しました。さらに2030年には約120GWまでの拡大が予想されています。
普及が急速に拡大するきっかけとなったのがFIT制度でした。FIT制度の買取期間は20年間です。
「買取期間の終了」+「太陽光パネルの寿命」を考えると、2030年以降に太陽光パネルの大量廃棄が発生するにも関わらず、廃棄処理設備不足(太陽光パネル処分場)、リサイクルの仕組み、リユースの仕組みができていないのが、太陽光パネルの大量廃棄問題です。
- 太陽光パネルの寿命は何年?
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太陽光パネルの寿命は、一般的に25~30年程度とされています。
しかしながら、塩害や風害が多い地域では劣化が早まる可能性があるため注意してください。
また、昨今では太陽光パネルの技術進歩により、発電効率と耐久性も向上しています。近年設置された太陽光パネルは30年以上持つとも言われています。
関連記事 太陽光パネルの寿命
太陽光パネルの廃棄・処分費用まとめ
太陽光パネルの廃棄・処分は太陽光発電事業者の責任です。「太陽光発電設備廃棄費用積立制度」もスタートしますが、想定以上に撤去・処分費用が掛かるおそれもあります。
また太陽光パネルは有害物質を含んでいるため、適切な処理が必要です。地球環境に優しい再生可能エネルギー投資が、環境汚染に変わってしまいSDGsの趣旨に反します。
関連記事 太陽光発電とSDGsの関係
今後は、太陽光パネルのリユース、リサイクル事業も増加してくる見込みです。太陽光発電事業者として、太陽光パネルの責任ある廃棄・処理が求められます。