太陽光発電量をシミュレーション! 確認方法と発電量減少の原因を紹介
「住宅用の太陽光発電は、どれくらい発電量があるのか知りたい」
「季節で発電量が変わるのは本当?」
このように、太陽光発電量について疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
太陽光発電システムの発電能力や日射量など条件によって、発電量は変わります。自宅に適した太陽光発電の容量を選ぶためにも、シミュレーションでおおよその発電量を知ることは大切です。
そこで本記事では、容量別の発電シミュレーションや年間で発電量がどのように推移するかなどを紹介します。
発電量の確認方法や発電量が減少する原因と対策法も解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
太陽光発電システムとは? 基本事項を簡単に解説
太陽光発電は、地球に届く太陽の光エネルギーを利用して発電する設備です。
発電量を知る前に、どのような機器と仕組みで太陽エネルギーを電気に変換するのかなど、基本情報を押さえておきましょう。
太陽光発電システムの構成
太陽光発電システムは以下の図と表に示すとおり、主に6つの機器で成り立っています。
機器 | 詳細 |
---|---|
太陽光パネル | 太陽電池モジュールまたはソーラーパネルとも呼ばれる 太陽の光が当たると内部の太陽電池で発電する ここで作られる電気の種類は直流 |
パワーコンディショナー | 略してパワコン 直流の電気を家電製品の動力として利用できる種類の交流に変換する機器 自立運転機能が付いている場合は、停電時に太陽光発電の電気を利用できる |
接続箱 | 太陽光パネルの電気を集約して、パワコンに送る機器 パワコンと一体型のケースもある |
分電盤 | パワコンから各部屋のコンセントまで電気を分配する機器 |
電力量計 | 電力の量を計測する機器 売電用と買電用の2種類ある |
モニター | 発電量や消費電力量がリアルタイムに表示される専用のモニター 専用アプリがある場合、スマートフォンやタブレットで発電量をチェックできる |
ここに充電して繰り返し使用できる蓄電池を追加すると、電気代の削減効果を高めたり、災害に備えられたりします。
太陽光発電の仕組み
太陽電池にはP型とN型2種類の半導体シリコンが内蔵されており、光が当たると以下図のようにプラスとマイナスの電気が生まれます。
2種類の半導体が電気を持った状態のときに電線でつなぐと、発生するのが直流電流です。太陽光パネルで発電した直流の電気は、接続箱を経由してパワコンに集約されます。
ここで家電製品に使用できる交流電流に変換された上で、分電盤からコンセントまで届けられるのが、太陽光で発電する仕組みです。
発電量を示す単位
発電量の大きさに使う単位は、kWh(キロワットアワー)で、1時間あたりにつくり出せる電力量を表しています。
kW(キロワット)はどれくらい電気をつくり出せるか、太陽光発電システムの発電能力を示す単位です。
kWに時間を乗じると、発電量を計算できます。例えば、容量が4kWの太陽光発電システムの発電量を求める場合の計算式は「4kW×1h」です。
4kWの発電能力がある場合、1時間あたり4kWhの電気を発電できると言えます。
太陽光発電量の計算式
発電シミュレーションするための計算式は、以下のとおりです。
なお、太陽光発電の年間発電量は、上記の計算式に365日を乗じて計算します。
設備容量は、太陽光発電システムの発電能力です。太陽光パネルの公称最大出力とパワコンの定格出力のうち、合計の数値が低いほうを採用します。
平均日射量は、発電設備を設置する土地のデータを用いてシミュレーションするのが一般的です。NEDOの日射量データベース閲覧システムから、平均日射量の情報を取得できます。
電気は発電したもの全て使用できるわけでなく、パワコンで電気の種類を変換する際などにロスが発生します。
このロス率を差し引いた、実際に利用できる電気の割合がシミュレーションの誤差を少なくするために重要です。
ロスの割合は条件によって異なりますが、太陽光発電協会(JPEA)の表示ガイドラインでは70〜80%となっています。
容量別|1日あたりの太陽光発電量をシミュレーション
同じ条件で設置していても、設備の発電能力が違えば1日につくり出せる電力量は異なります。
以下2つの条件で容量別に発電量がどれくらい変化するか、シミュレーションしてみましょう。
- 最適傾斜角での年間平均日射量:4.51kWh/㎡・day
- 発電ロスを差し引いた電力の割合:70%
容量別の年間発電量と対応家族の比較表は、以下のとおりです。
容量 | 年間発電量 | 対応家族 |
---|---|---|
3kW | 約3,457kWh | 2人家族 |
4kW | 約4,609kWh | 2~3人家族 |
5kW | 約5,762kWh | 3~4人家族 |
6kW | 約6,914kWh | 4人家族 |
10kW | 約11,523kWh | 6~7人家族 |
以下では、容量ごとに1日あたりの発電シミュレーション方法を紹介していますので、太陽光発電システム選びの参考にしてください。
太陽光発電3kWの1日の平均発電量
容量3kWの太陽光発電システムで、仮定した条件での1日の発電量は以下のように計算できます。
1世帯あたり年間の電力消費量は平均4,175kW、1日に換算するとおおよそ11.44kWhです。
また、厚生労働省が3年に1度実施する国民生活基礎調査で、日本の平均世帯人数は2.25人と分かっています。
1人あたりの1日の電力消費は平均で約5kWhと計算でき、容量3kWの太陽光発電は2人世帯に向いていると言えるでしょう。
参考:家庭でのエネルギー消費量について|環境省
参考:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
3kWの太陽光発電については以下の記事で詳しく紹介していますので、併せて参考にしてください。
関連記事 太陽光発電3kWの発電量や設置費用
太陽光発電4kWの1日の平均発電量
太陽光発電システムの容量が4kWの場合、1日あたりの発電量シミュレーションは以下のようになります。
1日の平均的な電力消費量はおおよそ5kWh/人のため、4kWの太陽光発電は2〜3人家族向けです。
3人世帯の場合、全ての電力を太陽光発電でまかなうのは難しくなりますが、8~9割近く電気代を削減できるでしょう。
4kWの太陽光発電については以下の記事で詳しく紹介していますので、併せて参考にしてください。
関連記事 太陽光発電4kWの発電量や設置費用
太陽光発電5kWの1日の平均発電量
5kWの容量での発電シミュレーションは、以下のとおりです。
この計算結果から、3~4人世帯に5kWの太陽光発電システム導入が向いていると言えます。
5kWの太陽光発電については以下の記事で詳しく紹介していますので、併せて参考にしてください。
関連記事 太陽光発電5kWの発電量や設置費用
太陽光発電6kWの1日の平均発電量
太陽光発電の容量が6kWの場合、発電量シミュレーションは以下のようになります。
4人世帯なら1日の消費電力量がおおよそ20kWhのため、容量6kWの太陽光発電で使用するほとんどの電気を自家消費できるでしょう。
太陽光発電10kWの1日の平均発電量
太陽光発電システムの容量が10kWの発電量は、以下のようにシミュレーションできます。
容量が10kWになると同じ条件でも発電量が多くなるため、6~7人など大家族な住宅への導入に向いています。
条件別|太陽光発電量をシミュレーション
容量とは視点を変えた以下2つの条件で、発電量をシミュレーションしてみます。
- 太陽光パネル1枚あたりの発電量
- 太陽光発電システム1㎡あたりの発電量
条件の発電量を、順に見ていきましょう。
太陽光パネル1枚あたりの発電量
1枚の太陽光パネルでつくり出せる電気量は、メーカーやサイズにより異なります。
たとえば、京セラ社のエコノルーツシリーズで展開されている太陽光パネルのサイズと発電能力は、以下のとおりです。
型式 | サイズ(mm) | 公称最大出力 |
---|---|---|
KT410W-108HL4B | 幅1,722×奥行1,134×厚さ35 | 410W |
KT230W-60HL4B | 幅1,134×奥行977×厚さ35 | 230W |
発電量の計算式は「発電能力(kW)×時間(h)」ですので、上記2種類の太陽光パネルを当てはめると以下のようになります。
- 0.41kW(410W)×1h=0.41kWh
- 0.23kW(230W)×1h=0.23kWh
太陽光パネルの変換効率や天候などでロスするため、実際の発電量は計算結果より少なくなるのが一般的です。
太陽光発電システム1㎡あたりの発電量
次に、以下の条件の太陽光パネルで1㎡あたりの発電量がどれくらいになるか、シミュレーションしてみましょう。
- サイズ:幅1,722×奥行1,134×厚さ35mm
- 公称最大出力:410W
- 太陽光パネル1枚の発電量:0.41kWh
太陽光パネルの面積は「1.722m×1.134m=約1.95㎡」と計算でき、大きさはおおよそ2㎡です。
このことから、太陽光発電システム1㎡あたりの発電量は、約0.205kWhと言えます。
太陽光発電量の月別の推移
同一地点でも季節によって日射量が変動するため、月間の発電量は変わります。
以下は、設備容量5kWの太陽光発電システムで発電ロスを差し引いた電力の割合を70%と仮定した場合の、年間発電量を比較したグラフです。
梅雨や冬の時期に日射量が減少すると、比例して発電量も少なくなることがグラフから分かります。
太陽光発電量の確認方法
実際に太陽光発電システムでどれくらい発電できているか、チェックする方法は以下の2つです。
- 表示モニターで確認する
- スマートフォンやタブレットで確認する
住宅用の太陽光発電ではリアルタイムの発電量を、リビングなどに設置する表示モニターでチェックできます。
メーカーが専用のアプリケーションを開発していれば、スマートフォンやタブレットでも発電量の確認が可能です。以下に、パナソニック社のモニター画面の例を示します。
太陽光発電の1日の発電量は数値だけでなく、グラフで表示され、発電状況が視覚的に分かりやすくなっています。
発電量を定期的にチェックする習慣があるとグラフの異変に気が付きやすくなるため、機器のトラブル防止対策として有効です。
太陽光発電量が少ない原因3選
太陽光発電で発電量が減少する要因として考えられるのは、以下3つのような事項です。
- 発電設備の経年劣化
- 太陽光パネル表面に付着した汚れ
- 機器の故障
なぜ発電量が減少するのか、1つずつ説明します。
発電設備の経年劣化
太陽光発電システムの機器は、時間の経過とともに寿命に近づくため、徐々に発電能力が低下していきます。
経年劣化の原因のひとつが、長期間発電し続けることによる内部の部品やケーブルの消耗です。経年劣化によって、設備の発電効率は低下します。
定期的なメンテナンスや必要なタイミングでの機器交換などの対策で、経年劣化が原因の発電量の減少を最低限に留められるでしょう。
太陽光パネル表面に付着した汚れ
太陽光パネルのガラス面に汚れが付いたままになっていることも、発電量が減少する原因です。
実際に電気をつくり出す太陽電池はガラスの下にあり、表面が汚れていると内部に届く光エネルギー量が少なくなります。
埃や花粉は雨で流れますが、鳥の糞などこびりつくと落としにくい汚れは長期間放置すると、パネルが故障しかねません。
発電量の低下と故障を防止するためには、目立つ汚れを見つけたら直ちに清掃することが重要です。
機器の故障
徐々にではなく急に発電量が下がった場合、いずれかの機器の故障が考えられます。経年劣化では緩やかに発電量が減少していきますが、機器が故障したらその時点で動作しなくなるためです。
機器の故障はメンテナンスを実施することで早期に発見でき、大きく発電量を減少させる前に対策できます。発電量が減って経済的なメリットが薄れないよう、定期的にメンテナンスを依頼しましょう。
メンテナンスについては以下の記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
関連記事 太陽光発電のメンテナンス費用(維持費)
まとめ|太陽光発電量は条件で変わる
太陽光発電量をシミュレーションする計算式は、以下のとおりです。
設備容量(kW)×平均日射量(kWh/㎡・day)×発電ロスを差し引いた電力の割合(%)
同じメーカーの発電設備でも設置する場所など条件が違うと、発電量も変動します。日射量以外にもパワコンの変換効率やパネルを設置する方角や角度なども、発電量が変わる要因です。
世帯の人数や電気の使い方などに応じて、最適な太陽光発電の容量が変わります。おおよその発電量をシミュレーションできれば、自宅に合った太陽光発電システムを選びやすくなるでしょう。