太陽光発電のリパワリングとは? メリット・デメリットを解説
「太陽光発電を購入して10年近く経つので、寿命で発電が停止してしまうのではないか」
「太陽光発電の発電量を復活させて、以前のような収益まで向上させる方法が知りたい」
などと、お悩みの方も多いのではないでしょうか。
太陽光発電システムは、機器の経年劣化や故障によって発電効率が低下するため、売電収入額が徐々に減っていきます。
そこで、発電量を回復させるための対策としておすすめしたいのが「リパワリング」です。
本記事では、リパワリングについて以下の内容を解説します。
リパワリングに関する基礎知識はもちろん、発電効率が下がった太陽光発電所に必要な発電量回復のための対策がわかりますので、ぜひ参考にしてください。
東京電力の一次下請け工事会社で配電工事に従事。東北震災後、太陽光発電所の開発・工事会社に転職し、全国の太陽光発電所開発に携わる。開発実績は1000件以上。10年以上、低圧太陽光発電所、高圧太陽光発電所、屋根上太陽光、住宅太陽光の開発工事経験がある太陽光発電所開発、工事、メンテナンスのプロフェッショナル。
保有免許
- 第1種電気工事士
- 太陽光評価技術者
- 太陽光メンテナンス技師
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
リパワリングとは
太陽光発電でのリパワリングは、パワーコンディショナ(略してPCS)や太陽光パネルを新しい機器に交換するなどして発電量を回復させる方法です。
一般的にPCSの寿命は10~15年程度、太陽光パネルの寿命は20~30年程度と言われています。
しかし、5年、10年と太陽光発電システムが毎日発電し続けると、設備の経年劣化によって発電効率が低下し、発電量も減少します。
実際に、稼働中の太陽光発電所で単結晶Siと多結晶Siの太陽光パネルの劣化率を測定した試験があり、年間で0.47~0.75%の経年劣化が発生していました。
この減った発電量を復活させるための有効な方法のひとつが、機器交換によるリパワリングです。
新しい機器に交換すれば、太陽光発電システムの発電効率が改善します。
このため、リパワリング前よりも発電量が増加して、運転開始から時間が経った発電所でも安定した売電収入が期待できます。
リパワリングが太陽光発電に必要な理由
太陽光発電所でリパワリングが必要になる理由は、以下の2つです。
- 経年劣化によって発電量が減るため
- 最新技術を導入して発電効率を上げるため
時間が経てば機器の劣化が進み、自然と太陽光発電システムの発電効率が低下するため、一定の発電量を維持できるように対策が必要になります。
以下では、リパワリングが必要な太陽光発電所がどのような状態なのか、詳しく解説します。
経年劣化によって発電量が減るため
太陽光パネルやPCSは時間が経過すると劣化して、太陽光発電システムの発電効率が低下し発電量も減少する点が、リパワリングが必要な理由です。
太陽光発電所の定期点検やこまめなメンテナンスをしていても、機器の経年劣化は避けられません。
関連記事 太陽光発電のメンテナンス費用(維持費)
経年劣化した状態のまま発電を継続していく選択肢もありますが、以下のようなデメリットも考えられます。
- 機器故障の頻度が高くなる
- 発電量が減少し続けていく
太陽光発電システムが高い発電効率を維持した状態で発電を継続し、売電収入が下がることなく得られるようにするためにリパワリングが必要です。
最新技術を導入して発電効率を上げるため
メーカーが開発した最新技術を導入して、発電量が減少した太陽光発電所の発電効率を復活させるためにリパワリングが必要です。
FIT制度が開始になった2012年頃と比較して、太陽光パネルでは発電効率が向上し、PCSでは変換効率の向上や軽量化、送風機内蔵などの進化が見られます。
性能が上がった機器をリパワリングによって導入すれば、発電効率が低下している太陽光発電システムの発電量を回復させることが可能です。
低下した発電効率を回復させるために、リパワリングは太陽光発電に最適な方法と言えます。
太陽光発電所をリパワリングする方法
太陽光発電において、発電効率を改善させるためにリパワリングする方法は複数あります。
ここで紹介するのは、以下2つのリパワリング方法です。
- パワーコンディショナを交換
- オプティマイザを導入
パワコン交換とオプティマイザ導入のそれぞれ、どのようなリパワリング方法なのか具体的に説明します。
パワーコンディショナを交換
太陽光発電のリパワリング方法として最初に挙げられるのが、パワコン(PCS)の交換です。
PCSは、太陽光パネルが発電した直流電流を電力として利用できる、交流電流に変換する役割をしています。
安定した発電量を確保するためには、太陽光パネルが作り出した電気を100%に近い状態で、PCSが交流電流に変換できる状態を保つことが重要です。
メーカーの技術開発が進んでいる影響で、機器の性能が年々向上しています。このため、PCSを交換することで、太陽光発電の変換効率が改善し発電量も増加します。
PCSを交換するリパワリングは、太陽光発電システムの発電量を回復させるために有効な方法のひとつです。
オプティマイザを導入
太陽光パネルにオプティマイザを設置するのも、リパワリングになります。
太陽光パネルにおいても、オプティマイザに備わっているモニタリング機能で電流の流れを観察し、電流の増減に応じて電圧を最適化します。
電圧が自動で最適化されると、太陽光パネルの発電効率が常に最大の状態に保たれます。
オプティマイザの導入によるリパワリングは、太陽光発電で最大の発電効率を維持するために必要な方法です。
リパワリングするメリット3つ
リパワリングで太陽光発電が得られるメリットとして、以下の3つが考えられます。
- 経年劣化で低下した発電量が回復する
- メンテナンスコストがかからなくなる
- 高額で売却の可能性がある
以下では、それぞれがメリットになる理由を説明します。
経年劣化で低下した発電量が回復する
経年劣化した太陽光パネルやPCSを新しい機器に交換すると、発電効率が上がり同時に発電量も上昇する点がリパワリングのメリットです。
太陽光パネルやPCSなどの機器は、経年劣化によって発電量が減少します。
リパワリングすれば、下がっていた売電収入額の増加や、FIT期間終了後もオフサイトPPAなどでの売電で収益が見込めます。
オフサイトPPAについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事 オフサイトPPAとは
運転開始から年数が経過して発電効率が低下した太陽光発電システムにおいて、発電量を増加させるリパワリングはメリットになります。
メンテナンスコストがかからなくなる
機器を新しくしてメンテナンスコストがかからなくできる点も、リパワリングのメリットです。
太陽光パネルやPCSなどの電気製品は稼働時間が長くなるにつれて、故障の頻度が増えたり、そのリスクが高くなったりします。
不具合が起きるたび、業者に現地確認や修繕を依頼しないと、発電量が減ったままの状態です。
業者に対応を依頼すると、毎回メンテナンスコストが発生します。
故障する頻度にもよりますが、思い切って太陽光パネルやPCSをリパワリングすることでメンテナンスコストを抑えられる可能性があります。
高額で売却の可能性がある
発電効率が良く発電量が多い太陽光発電所は、売却する場合に高額な査定額が付きやすいです。
例えば、出力容量10kW以上の太陽光発電所を10年のタイミングで売電する場合、残りのFIT期間は10年です。
運転開始から10年も経過していると経年劣化で発電量がかなり下がっていると想定できます。
リパワリング後の太陽光発電所は発電量が多い状態のため、査定での評価が高いです。
太陽光発電所が高額で売却できれば、リパワリングにかかった費用を相殺しながら収益発生の可能性もあります。
高額で太陽光発電所を売却できる可能性がある点も、リパワリングのメリットです。
なお太陽光発電所の売却については、以下の記事を参考にしてください。高額査定のポイントについても紹介しています。
リパワリングによるデメリット3つ
太陽光発電のリパワリングには、以下のようなデメリットもあります。
- リパワリング工事の費用がかかる
- リパワリング工事中は発電が停止する
- FIT期間中は太陽光パネルの出力変更ができない
それぞれがなぜデメリットと言われるのか、詳細を見ていきましょう。
リパワリング工事の費用がかかる
リパワリングでは経年劣化した太陽光パネルやPCSを交換するため、工事費用がかかる点がデメリットになります。
機器を交換する際に費用が発生するのは、以下の3つです。
- 交換用の新しい機器代
- 交換工事費用
- 古い機器の処分費用
古い機器が故障していない状態でリパワリングする場合、買取業者に販売すれば負担する費用の総額が減らせます。
リパワリングにかかる費用とリパワリング後の発電量や売電収入のシミュレーションで、綿密な収支計画を立てることが重要です。
リパワリング工事中は発電が停止する
リパワリングで太陽光パネルやPCSを交換する際、ブレーカーの電源を切ります。リパワリング工事中に作業員が感電しないようにするためです。
このため、リパワリング工事が終わるまで発電が停止する点がデメリットになります。
交換する機器の量や作業員の人数にもよるため一概には言えませんが、PCS10台を交換するリパワリング工事の場合、1~2日程度が工事日数の目安です。
リパワリング工事中に発電量がゼロになる時間帯がないように、交換する機器の回路だけブレーカーをOFFにして順番に交換する方法もありますが、工事日数が長くなります。
どの工事方法がベストか、業者に相談して決めることをおすすめします。
FIT期間中は太陽光パネルの出力変更ができない
FIT期間中に太陽光パネルの出力容量が変わるリパワリングはできない点が、デメリットのひとつです。
FITの認定を申請する際に太陽光パネルの出力容量も報告しており、FIT期間が終了するまで認定を受けた出力容量が変更になるようなリパワリングはできません。
もし手違いで認定されている内容よりも太陽光パネルの出力が大きい場合、太陽光パネルを数枚取り外す必要があります。最悪の場合は、認定取り消しも考えられます。
太陽光パネルの容量を大きくする方法でのリパワリングは、FIT期間終了後またはFITを適用していない太陽光発電のみが対象です。
FIT制度については、以下の記事で詳しく解説しています。仕組みや目的、「いつ終了するのか」を知りたい方は、参考にしてください。
関連記事 固定価格買取(FIT)制度とは
リパワリングの流れ
太陽光発電のリパワリングは、おおむね以下の流れで進めます。
- 太陽光発電設備の状態を確認
- リパワリングする機器を選定
- リパワリング工事を実施
- リパワリング後のメンテナンス計画をたてる
各工程でどのようなことをするのか、具体的に紹介します。
太陽光発電設備の状態を確認
太陽光発電をリパワリングする際、最初に設備の状態の確認を業者に依頼します。
太陽光発電設備の状態の確認で調査する項目は、以下のとおりです。
- 発電所の土地環境
- 太陽光発電設備の発電効率の状態
- 太陽光発電関連の法令順守状況
- ストリングなど資料の保管状況
調査結果で、太陽光発電設備の発電効率が著しく低い状態だった場合に、リパワリングするか検討します。
リパワリングする機器を選定
太陽光発電設備の調査結果をもとにリパワリングが必要と判断した場合は、新しく導入する機器を選定します。
既存の機器との互換性を考慮して、同じメーカーの後継機種を選ぶのがおすすめです。
太陽光パネルでは同じメーカーで同規格でも、製造時期によってパネルの厚さが5mm程度違うケースがあります。
パネルの厚さに合った架台への留め金具を手配していないと、工事が進まないため注意が必要です。
リパワリング工事を実施
交換する機器が決まったら、リパワリング工事を業者に依頼します。
太陽光発電での機器交換工事は、電気系統に関わる作業です。
電気系統に関連する作業は、雨や雪が降ると感電の恐れがあるため、以下の点に注意するとリパワリングがスムーズに進みます。
- 雨や雪が多い時期の工事を避ける
- 梅雨時期は工事日数を長めに取る
機器の交換後に通電し、問題なく発電することを確認できたらリパワリング工事は完工です。
リパワリング後のメンテナンス計画をたてる
リパワリング工事で新しい機器に交換した後は、あらためて太陽光発電のメンテナンス計画をたてましょう。
新しい機器を導入して太陽光発電の発電効率を上げて、さらに計画的にメンテナンスすれば発電量が多い状態を長く維持できます。
また、リパワリングしなかった機器は残りの寿命が短いため、より丁寧なメンテナンスが必要です。
リパワリングに関するよくある質問
太陽光発電のリパワリングについて、よくある質問の回答をまとめました。
- リパワリングとはどういう意味?
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リパワリングは、英語で「再発電」という意味です。
経年劣化などで発電量が減少した太陽光発電の機器を入れ替えて、発電量を増加させる方法を指します。
- リパワリングによるパワコンの交換費用はいくら?
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2022年度にパワコンの交換にかかった費用の平均値は、29.2万円程度と経済産業省が公表しています。
交換するパワコンの台数や設置されている環境によって異なるため、詳細な金額を確認したい場合は業者への見積もり依頼をおすすめします。
リパワリングについて まとめ
太陽光発電のリパワリングは、経年劣化や故障などで発電効率が下がった機器を新しい機種に交換して、太陽光発電所全体の発電能力を底上げするための方法です。
主に、パワコンや太陽光パネルを交換してリパワリングします。
低下していた発電量がリパワリングで回復するほかに、メンテナンスコストがかからなくなる、高額で売却の可能性があるなどのメリットがあります。
太陽光発電所の発電量低下でお悩みの方は、リパワリングを視野に入れて売却を検討されてみてはいかがでしょうか。
保有の太陽光発電所の売却をご検討なら