太陽光発電で全量自家消費するには何が必要? 自家消費率を上げる3つの使用例も紹介

「太陽光発電を余剰売電から全量自家消費に切り替える方法を知りたい」
「全量自家消費型太陽光発電に切替えれば本当に今より電気代を削減できるのか不安」
このように、太陽光発電の自家消費についてお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
卒FIT後の買取価格が低く、電気料金も値上がりしていることを背景に、余剰売電から全量自家消費への移行を検討する太陽光発電の所有者が増えている状況です。
本記事では余剰売電からの切替えを検討中の方向けに、太陽光発電の電気を自家消費型するには何の準備が必要かと、高い自家消費率を維持できる3つの使用方法を紹介します。
ご家庭に合った全量自家消費の方法が分かりますので、ぜひ参考にしてください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
自家消費型太陽光発電とは? 仕組みを解説
太陽光発電システムで発電した電気の活用方法は、大きく分けて「自家消費」と「売電」の2通りあります。
野立て太陽光発電の電気を電力会社やPPAモデルで全量売るのが売電型、住宅の屋根に設置した太陽光パネルの電気を自宅で使うのが自家消費型です。
自家消費型太陽光発電は、さらに以下2つの種類に分かれます。
- 全量自家消費型
- 余剰売電型
以下では太陽光発電を自家消費する種類別の仕組みと、向いている家庭を見ていきましょう。
全量自家消費型は電力消費量が多い家庭におすすめ
発電した全ての電気を売電せず、太陽光発電システムを導入している建物で使用するのが「全量自家消費型」です。
オール電化住宅や昼間も家族が在宅しているなど、時間帯に関係なく電力消費量が多い場合には全量自家消費が向いています。
電力の購入量が減れば電気代の削減になるため、自家消費によって購入する電気を大幅に減らせることが電力消費量の多い家庭に全量自家消費が向いている理由です。
消費する電力量が少ない場合でも、太陽光発電と蓄電池を併用するなどすれば全量自家消費が実現します。
余剰売電型はあまり電気を使わない家庭におすすめ
太陽光発電の電気を自家消費で全て使用するのではなく、何割か消費した残りを電力会社に買い取ってもらう仕組みが「余剰売電」です。
固定価格買取制度(FIT制度)を適用する場合、最低限30%の電気を自家消費することが余剰売電の条件になっています。
発電量に対して消費する電力量が少ない家庭の場合、自家消費率が低くてもFIT制度を利用した余剰売電で電気代を節約できます。
ただし、FIT価格は年々低下しているため、念入りなシミュレーションで余剰売電による収入が電気料金の支出よりも上回ると確信した上での導入が必要です。
関連記事 固定価格買取(FIT)制度とは
自家消費型太陽光発電が注目されている理由
以下2つの理由から、近年では太陽光発電で自家消費する運用に注目が集まっています。
- 電気料金が高く家計への負担が大きいため
- 電力会社による出力抑制の実施回数が増えているため
以下は、家庭向け電気料金単価の推移を表したグラフです。

青い折れ線が大手電力会社、オレンジは新電力会社の電気料金です。どちらも2021年4月頃から、電気料金単価の上昇率が高くなっていることが分かります。
また、2021年まで出力抑制は九州での実施のみでしたが、2022年から対象地域が広がっています。2023年には東京電力を除く全ての電力会社が、年間で合計300回近く出力抑制を実施しました。
東京電力でも、2024年4月以降の出力抑制(出力制御)実施に向けた準備を進めています。
電気料金の単価が下がらないことや、発電した電気を売電できない事態が頻発する想定から、自家消費型太陽光発電への関心が高まっている状況です。
関連記事 出力制御(出力抑制)とは
太陽光発電で自家消費するための接続方法
太陽光発電システムで自家消費する際、売電するかしないかで接続方法は以下の2つに分かれます。
- 独立型
- 系統連系型
2つの接続方法の違いを、詳しく説明します。
独立型の太陽光発電は完全自家消費向き
電気回路が完全に一本立ちしていて、電力会社の送電網とは接続しない状態の太陽光発電システムが「独立型」です。
建物の電気回路が電力会社の電線と繋がっていないので、太陽光パネルが発電しないときだけ電気を購入するといった運用ができません。
売電や電気の購入もせず使用する電力は全て自家消費でまかなうのが、独立型の太陽光発電です。
電力を購入しない状態にする家庭は基本的にほぼないため、独立型は山間部など電線が届かないエリアでの使用がメインになります。
系統連系型の太陽光発電は自家消費と余剰売電の両方に対応
余剰売電や自家消費に太陽光発電システムを利用しつつ、電力会社から電力の供給を受ける仕組みを「系統連系」と言います。
一般的に住宅用の太陽光発電は、系統連系型での接続です。
蓄電池を設置して全量自家消費する運用でも、太陽光発電で生活に必要な全ての電気をまかなうのは難しく、若干量の電力購入が必要になります。
夜間に使える電力がなくなって困らないように、太陽光発電を系統連系型で接続する必要があります。
余剰売電型太陽光発電から切り替えて全量自家消費するには
FIT期間の終了により、自宅の太陽光発電を余剰売電型から全量自家消費型にするための手続きや準備は、2つあります。
- 電力会社に太陽光発電を自家消費に切り替える手続きが必要
- 逆潮流対策や制御装置の導入が必要
それぞれで実施する内容を紹介します。
電力会社に太陽光発電を自家消費に切り替える手続きが必要
余剰売電型から全量自家消費型太陽光発電に切り替える際、電力会社に契約内容変更の申請が必要です。
申請しないまま自家消費の割合を増やす方法もありますが、電気の買取価格のほうが電気料金単価より低いと経済的メリットが少なくなります。
電気代の削減が全量自家消費に切り替える目的の場合は特に、電力会社への契約変更依頼を忘れずに実施しましょう。
契約内容変更の申し込み方法は電力会社ごとに異なるため、各社のホームページを検索するか太陽光発電業者への問い合わせで確認できます。
逆潮流対策や制御装置の導入が必要
余剰売電している太陽光発電で売電をやめて量自家消費にする場合、逆潮流を防止する機器と発電量を最適に保つため制御装置の導入が必要です。
逆潮流とは、太陽光発電システムから電力会社に向かう電気の流れを指します。
売電しない場合は、逆潮流による電力会社側への電気の流れ込みを防止するための機器である「RPR(逆電力継続器)」を設置します。
太陽光発電で自家消費する運用で消費量が大幅に発電用よりも少ないと逆潮流が起きるため、制御装置で発電しすぎないよう調整しましょう。
関連記事 RPR(逆電力継続器)とは
自家消費型太陽光発電の自家消費率を上げる使用例
太陽光発電は自家消費率が高くなるように利用すれば、より電気代の削減効果を大きくできます。
以下の事例のように、ほかの機器と併せて使用することで、自家消費率が上がります。
- 蓄電池とセットで使用する
- EV車の充電に使用する
- エコキュートのお湯を昼間に太陽光発電で沸かす
なぜ自家消費率を上げられるのか、詳しく説明します。
蓄電池とセットで使用する
蓄電池を太陽光発電と併せて使用するのは、自家消費率を高めるための一般的な方法です。
雨などで悪天候の日や夜間は太陽光がなくソーラーパネルが発電しないため、太陽光発電だけでは自家消費できません。
太陽光発電の電気を蓄電池に溜めておけば、時間や天気に左右されることなく自家消費できます。
任意の時間に太陽光発電の電気を消費できるため、蓄電池とのセット利用で自家消費率が上がります。
関連記事 太陽光発電に蓄電池の併用は必要?
EV車の充電に使用する

電気自動車のバッテリーを太陽光発電で充電するのも、自家消費率が高くなる方法です。
昼間に太陽光発電で電気自動車を充電するだけでも、電力を購入しない分、電気代を削減できます。
V2Hと呼ばれるシステムを自宅に導入すれば、電気自動車の充電ができるだけでなく、車のバッテリーに蓄電した電気を宅内に送って利用できます。
蓄電池の役割を電気自動車が果たすことが、EV車の併用で太陽光発電の自家消費率が上がる理由です。
エコキュートのお湯を昼間に太陽光発電で沸かす
エコキュートと太陽光発電の組み合わせでも、自家消費率が高くなります。
従来は深夜の電気料金が安い時間帯にお湯を沸かすのが、エコキュートで電気代を節約する方法でした。
太陽光発電の自家消費でエコキュートを昼間に沸かす設定にすれば、電気代をかけずに給湯できます。
またエコキュートを昼間に沸かすことで、お湯を使用するまでの時間が短くなり、夜間に給湯するより沸かし直しが少ないメリットもあります。
太陽光発電を全量自家消費に切り替えるメリット
太陽光発電システムを余剰売電から全量自家消費型に変える利点は、以下の4つです。
- 電気料金が燃料費高騰の影響を受けない
- 蓄電池との併用で電気代削減
- 停電に備えられる
- CO2削減になる
全量自家消費に切り替えるとどのようなメリットがあるのか、詳しく説明します。
電気料金が燃料費高騰の影響を受けない
電気を自家消費していれば電力の購入量が少なく、燃料費調整単価が変動しても毎月の電気代に大きな影響が出ない点が全量自家消費のメリットです。
以下の図表は、電気料金の内訳を表しています。

このうち燃料費調整単価は、輸入燃料価格の増減に応じて金額を月ごとに見直す決まりです。
輸入燃料価格によって火力発電に使用する燃料代が高騰しているため、私たちの電気料金も値上がりしています。
全量自家消費型の太陽光発電に切り替えると、電力会社の電気を購入する量を大幅に減らせます。
関連記事 火力発電のメリット・デメリット
蓄電池との併用で電気代削減
太陽光発電システムだけでも、自家消費によって電気代の削減効果を得られます。
しかし、日中の太陽光パネルが発電している時間帯に電力の消費量が少なければ、エコな電気をロスしてしまいかねません。
自家消費しきれなかった電気を蓄電池に溜められるようにすれば、時間や天気に関係なく太陽光発電の電気を利用できます。
蓄電池を併用することで電力の購入量を減らし、より電気代を削減できる点が自家消費型太陽光発電に切り替えるメリットです。
関連記事 太陽光発電に蓄電池の併用は必要?
停電に備えられる
停電で電気が使えなくなったときの備えが大きくなる点も、自家消費型太陽光発電に切替えるメリットです。
余剰売電型の太陽光発電でも自立運転機能があるパワコンを設置していれば、停電中も日中は電気を使えます。しかし、太陽光がない夜間は電気を使えません。
全量自家消費型太陽光発電は電気を有効利用するために蓄電池を併用するケースが多く、停電中の夜間も電気を使えて災害への備えになります。
関連記事 パワコン(パワーコンディショナー)とは?
CO2削減になる
太陽光のエネルギーを電気に変換する際、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を排出しません。
日本の電力の7割以上を占める火力発電は、化石燃料を燃やした火のエネルギーで発電するためCO2発生のデメリットがあります。
全量自家消費に切り替えれば火力発電による電気の消費が減り、家庭でのCO2発生量の削減への貢献度が高くなります。
環境に配慮した生活をしたい家庭には、全量自家消費型太陽光発電への切替えは大きなメリットと言えるでしょう。
参照:発電方法の組み合わせって?|経済産業省 資源エネルギー庁
全量自家消費型太陽光発電に切り替えるデメリット・注意点
太陽光発電を余剰売電型から全量自家消費に切り替える際、以下の2点に注意が必要です。
- メンテナンスを怠ると自家消費率が低下する
- 蓄電池を併用しないとメリットが少ない
なぜデメリットになるのか、詳細を見ていきましょう。
メンテナンスを怠ると自家消費率が低下する
太陽光発電設備は定期的にメンテナンスしないと発電効率の低下によって発電量が減少し、自家消費率が下がりかねません。
メンテナンスをこまめに実施すれば、経年劣化などでの小さな不具合を早い段階で対処できて機器の故障を防げるため、発電効率が高い状態を長く維持できます。
全量自家消費型太陽光発電に切り替える目的が電気代削減の場合、発電効率が下がると自家消費率も低下して経済的なメリットが薄れます。
太陽光発電のメンテナンスは業者に依頼するコストがデメリットにならないよう、事前のシミュレーションが大切です。
関連記事 太陽光発電のメンテナンス費用(維持費)
蓄電池を併用しないとメリットが少ない
太陽光発電を余剰売電から全量自家消費にする場合、蓄電池がないと発電した電気をロスする可能性がありメリットが少なくなります。
自家消費できない分の電力はロスとなってしまうため、蓄電システムがあればいつでも溜めた電気を利用できるので電気代を節約できます。
蓄電池と併用せずに太陽光発電で全量自家消費しようとすると、ロスになる電気がある点に注意して運用方法を決めるようにしましょう。
関連記事 太陽光発電に蓄電池の併用は必要?
まとめ|太陽光発電で自家消費するには申請や機器の設置が必要
自宅の太陽光発電を余剰売電型から切り替えて全量自家消費するには、電力会社に申請が必要です。
また、逆潮流を防止するためのRPR、最適な発電量を維持できるように制御装置の導入も必要になります。
全量自家消費型太陽光発電で自家消費率が上がる使用例は、以下の3つです。
- 蓄電池とセットで使用する
- EV車の充電に使用する
- エコキュートのお湯を昼間に太陽光発電で沸かす
太陽光発電システムだけで効率よく電気を自家消費するのは難しいため、ほかの機器と組み合わせた運用の検討も損をしないために大切なポイントです。