【2024年版】太陽光発電と蓄電池の併用はやめたほうがいい? 費用相場やメリット・デメリットを紹介
「蓄電池の初期費用相場は?太陽光発電と併用しても元が取れない?」
「卒FIT後に蓄電池を後付けしてもメリットないと聞いたけど、実際どうなの?」
「蓄電池の購入はやめたほうがいい?」
このように太陽光発電と蓄電池を併用するべきか、お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事執筆時点(2023〜2024年)、ロシアによるウクライナ侵攻を初めとする世界情勢の悪化は収束の気配がなく、世界的なエネルギー価格の高騰は終わる見通しがたちません。
日本においても政府の電気・ガス価格激変緩和対策事業による緩和が縮小されると、電気代が再び値上がりする状況のため、太陽光発電と蓄電池を併用する自家消費に注目が集まっています。
そこで本記事では、太陽光発電と蓄電池を併用する必要性や導入費用の相場、メリット・デメリットについて解説します。
太陽光発電と蓄電池をお得に導入する方法も分かる内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
太陽光発電と蓄電池の併用は必要か
太陽光発電と蓄電池を併用する必要性は、設備を利用する目的によって変わります。
消費電力量が少ない住宅に太陽光発電と蓄電池を導入しても電気を使いきれず、余剰売電が目的の場合、電気を溜めると売電収入が減るため併用は向いていません。
以下4つのような目的・事例の場合は、太陽光発電と蓄電池の併用が必要です。
- 電気代を削減したい
- オール電化住宅に住んでいる
- 卒FITする
- 災害に備えたい
太陽光で発電した電気を溜める仕組みがあれば、時間帯や天候の影響を受けずに電気を自家消費できます。このため、電気代削減が目的の場合やオール電化住宅、卒FIT後の太陽光発電には蓄電池の併用が向いています。
自然災害などの被害による停電に備えておきたい場合も、太陽光発電と蓄電池を併用していると安心です。
太陽光発電と蓄電池の価格相場
太陽光発電と蓄電池をセットで導入する際の価格相場を紹介します。
住宅用と産業用それぞれの太陽光発電と蓄電池の値段がいくらになるか、見ていきましょう。
住宅用太陽光発電と蓄電池の場合
住宅用太陽光発電と蓄電池の初期費用相場を、それぞれ表にまとめました。
▼ 住宅用太陽光発電の価格相場
費用項目 | 価格相場 |
---|---|
設備費 ・太陽光パネル ・パワーコンディショナー ・架台 | 19.5万円/kW |
工事費 | 7.2万円/kW |
合計 | 26.7万円/kW |
▼ 家庭用蓄電池の価格相場
費用項目 | 価格相場 |
---|---|
設備費 ・バッテリー部分 ・パワーコンディショナ ・筐体(きょうたい) | 7.5万円/kWh |
工事費 | 2.2万円/kWh |
その他 ・流通コスト ・製造、検査費用 ・認証費用 | 4.2万円/kWh |
合計 | 13.9万円/kWh |
筐体(きょうたい)とは電池部分を収めた外側の箱を指し、以下図の下側にあるボックスのようなイメージです。
以上の情報から、住宅用太陽光発電の容量5kW、蓄電池の容量7kWhのシステムを導入する際の価格は、210.8万円が相場と言えます。この価格は平均的なデータを基に算出しているため、自宅屋根の形状や設置場所など様々な要因で金額が変わります。
詳細な金額をチェックしたい場合は、業者への見積り依頼がおすすめです。
産業用太陽光発電と蓄電池の場合
産業用太陽光発電を蓄電池と併用する場合、工場や事業所など施設の屋根に太陽光パネルを設置して自家消費するケースが多くあります。
屋根設置型太陽光発電と蓄電池の初期費用相場を、以下の表にまとめました。
▼ 屋根設置型の産業用太陽光発電の価格相場
費用項目 | 価格相場 |
---|---|
設備費 ・太陽光パネル ・パワーコンディショナー ・架台 | 20.2万円/kW |
工事費 | 8.5万円/kW |
合計 | 28.7万円/kW |
▼ 産業用蓄電池の価格相場
費用項目 | 価格相場 |
---|---|
設備費 ・バッテリー部分 ・パワーコンディショナ ・筐体(きょうたい) | 7.4万円/kWh |
工事費 | 3.7万円/kWh |
その他 ・流通コスト ・製造、検査費用 ・認証費用 | 3.8万円/kWh |
合計 | 14.9万円/kWh |
以上の情報から、屋根設置型太陽光発電の容量15kW、蓄電池の容量12kWhのシステムを導入する際の価格は、609.2万円が相場です。屋根設置型の産業用太陽光発電についても、設備の設置環境によって必要な工事内容が変わるため相場の価格よりも実際の価格が増減します。
詳しい金額をチェックしたい場合は、業者への問い合わせが必要です。
太陽光発電と蓄電池を併用する5つのメリット
太陽光発電と蓄電池を併用することで得られるメリットは、以下の5つです。
- 購入する電力量が減って電気代を削減できる
- 夜間や曇りの日も太陽光発電の電気で自家消費できる
- 停電が発生しても電気を使える
- 地球環境保護に貢献できる
- 卒FIT後も太陽光発電の電気を有効に利用できる
どのような点がメリットになるのか、詳しく説明します。
購入する電力量が減って電気代を削減できる
太陽光発電と蓄電池をセットで利用する最大のメリットは、電気代削減効果があることです。
太陽光発電システムを導入するだけでも、昼間の電気を自家消費できるため経済的メリットがあります。ここに蓄電池を組み合わせると、太陽光発電だけでは自家消費しきれなかった電気を溜められるため、発電した電気を無駄なく利用できます。
電力会社から購入する電力が大幅に減り、月々の電気代を削減できる点が太陽光発電と蓄電池をセットで活用する魅力です。
夜間や曇りの日も太陽光発電の電気で自家消費できる
蓄電池があるとソーラーパネルで発電できる日中以外の時間帯や発電量が少ない天候の日も、電気を自家消費できます。
太陽光発電は太陽の光エネルギーを電気に変えて発電する仕組みのため、夜間や雨天など日差しがないときは発電できません。このため電気代削減効果を大きくするためには、電気を充電して繰り返し利用できる蓄電池が必要です。
時間帯や天候の影響を受けずに太陽光発電の電気を自家消費できる点が、蓄電池を併用するメリットになります。
停電が発生しても電気を使える
停電中でも電気を使える点が、太陽光発電と蓄電池を併用するメリットのひとつです。
太陽光発電システムだけでも、独立運転機能を搭載したパワコンを自立運転モードに切り替えれば停電時に電気を使えます。しかし蓄電池がないと、夜は電気が使えません。このため太陽光発電に蓄電池がセットで導入されていれば、停電中も時間の制限なく必要な家電を使用できます。
日本は地形や地質などの気象条件から台風や地震、豪雨など多くの自然災害が発生しやすいです。災害時の非常用電源になる太陽光発電と蓄電池の併用は、防災対策としても有効な設備になります。
地球環境保護、SDGsに貢献できる
太陽光発電と蓄電池を併用して自家消費率を高めるのは、電力会社から供給を受ける電力量を減らすことになります。
日本の電気は約7割を火力発電でまかなっているため、今この瞬間も大気中に二酸化炭素を排出し続けている状況です。このため太陽光発電で自家消費する電力量が増えれば、二酸化炭素の排出量を減らせます。
電気代削減効果を得ながら温室効果ガスの排出を抑えて、地球環境の保護に貢献できる点が太陽光発電と蓄電池をセットで利用するメリットです。
参照:今後のエネルギー政策について|経済産業省 資源エネルギー庁
昨今意識が高まるSDGs(持続可能な開発目標)の実現の観点からも、太陽光発電を推進することは意義のあることであるといえます。太陽光発電とSDGsの関係については以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事 太陽光発電とSDGsの関係
卒FIT後も太陽光発電の電気を有効に利用できる
住宅用太陽光発電で固定価格買取制度(FIT制度)を適用している場合、10年で買取価格の固定期間が終了します。
期間を満了して卒FITした後で自家消費型太陽光発電に切り替える場合、蓄電池を後付けすれば発電した電気を無駄なく利用できます。
FIT制度が開始された当初に余剰売電を始めた場合、売電単価が最大で42円だったため自家消費よりも売電のほうが経済的メリットの大きい状況でした。
しかし卒FIT後は、売電価格が10円前後まで下がります。このため蓄電池を導入して全量自家消費に切り替える運用が、電気料金が値上がりしている現在では太陽光発電の有効な利用方法になります。
関連記事 固定価格買取(FIT)制度とは
関連記事 卒FITとは
太陽光発電と蓄電池を併用する2つのデメリット
多くのメリットが得られる太陽光発電と蓄電池のセット利用ですが、以下の2つのようなデメリットとなる側面もあります。
- 初期費用のコスト負担が大きい
- 蓄電池設置スペースの確保が必要
なぜデメリットとなってしまうのか、理由をそれぞれ見ていきましょう。
初期費用のコスト負担が大きい
蓄電池は導入時の費用負担が大きい点が、デメリットです。
以下の図表から分かるように、工事費を除いた費用合計が2015年度は22.1万円/kWhだったのに対し、2022年度は11.7万円/kWhまで下がっています。
とはいえ、この集計結果は平均的な金額であり、蓄電池を導入する建物の環境により設置費用は金額の増減が大きいのが現状です。
脱炭素の推進で蓄電池の導入が推奨されていることもあり、様々な補助金事業が推進されています。補助金の給付を受けられれば、初期費用を抑えて蓄電池を導入できるでしょう。
蓄電池設置スペースの確保が必要
蓄電システムを設置するスペースを確保しなければいけない点も、太陽光発電と蓄電池併用のデメリットになります。
たとえば、シャープ製の定格容量6.3kWhの家庭用蓄電池はスリムモデルですが、寸法は幅56cm×奥行32cm×高さ57.5cmです。屋外と屋内のどちらに設置する場合でも、広いスペースが必要になります。
製品の仕様はメーカーごとに異なるため、検討の段階で自宅に導入できる寸法かの事前チェックがおすすめです。
さらに太陽光発電と蓄電池はそれぞれに対して、パワコンが必要です。同時に導入する場合はハイブリッドタイプのパワコンで兼用できます。しかし、蓄電池を後付けするときは、太陽光発電とは別で専用のパワコンを設置します。
家庭用ではパワコンを屋内に設置するケースが多いため、宅内が狭くなってしまう可能性が高いです。
参照:クラウド蓄電システム JH-WB1921|SHARP
関連記事 パワコン(パワーコンディショナー)とは?
太陽光発電と蓄電池の導入に利用できる補助金
脱炭素の推進により、国や地方自治体による太陽光発電と蓄電池の導入を支援するための補助金事業が多数あります。
以下では、住宅向けの太陽光発電と蓄電池導入に給付される補助金を3つ紹介します。
国の補助金事業
太陽光発電と蓄電池の導入を支援するための補助金を国の事業として、経済産業省や環境省が推進しています。
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業は、ZEH(ゼッチ)の条件を満たした住宅を新築する個人に給付される補助金です。
ZEHの交付要件
決められたZEHの基準を満たす場合に、定額で1戸あたり55万円の給付を受けられます。
自治体の補助金事業
国の補助金のほか、地方自治体が独自に推進する補助金事業もあります。
以下では、新築建造物への太陽光発電設置義務化を予定している東京都と神奈川県の事例を紹介します。
東京都の補助金事業
東京都では、住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進の増強事業により太陽光発電と蓄電池の導入を支援するための補助金を交付しています。太陽光発電と蓄電池への助成金額は、以下の表のとおりです。
助成対象の機器 | 新築 | 既存 |
---|---|---|
容量3kW以下の太陽光発電 | 15万円/kW | 18万円/kW |
容量3kW超の太陽光発電 | 一律36万円(3.6kW以下まで) | 一律45万円(3.75kW以下まで) |
10万円/kW(3.6kW超) | 12万円/kW(3.75kW超) | |
容量5kWh未満の蓄電池 | 19万円/kWh | |
容量5kWh以上6.34kWh未満の蓄電池 | 一律95万円 | |
容量6.34kWh以上の蓄電池 | 15万円/kWh |
低容量の太陽光発電導入を推進するため、容量3kW以下の助成金額が高めに設定されています。
神奈川県の補助金事業
神奈川県川崎市では2023年度に、市内で太陽光発電システムや連携する蓄電池を新規導入する個人向けに補助金が交付されていました。
本記事執筆時点(2023年12月)で、補助金の公募は終了しています。神奈川県川崎市では新築建造物への太陽光発電設置義務化の制度が施行されるため、今後も補助金事業が継続される可能性が高いです。
参照:令和5年度 「スマートハウス補助金」(個人住宅)|神奈川県川崎市
自家消費型太陽光発電なら蓄電池との併用がおすすめ
自家消費が目的の場合、太陽光発電と蓄電池のセット利用がおすすめです。
蓄電池との併用で得られるメリットは、5つあります。
- 購入する電力量が減って電気代を削減できる
- 夜間や曇りの日も太陽光発電の電気で自家消費できる
- 停電が発生しても電気を使える
- 地球環境保護に貢献できる
- 卒FIT後も太陽光発電の電気を有効に利用できる
蓄電池の初期費用相場が下がってきている状況ですが、現在でもコスト負担が大きい状況です。
脱炭素推進のために国や自治体が推進している補助金を活用し、費用を抑えた蓄電池導入の検討が必要になります。