太陽光発電の容量3kWは少ない? 導入後の経済効果を検証
「自宅の屋根に太陽光発電は3kWしか載せられないと業者に言われたけど、発電量が少ないのでは?」
「3kWの太陽光発電で、実際どれだけ電気代を削減できるの?」
上記のように、住宅用太陽光発電の容量でお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
住宅用の太陽光発電は導入できる設備規模が容量10kW未満と決まっており、3〜5kWで設置されるのが一般的です。
しかし、電気料金が値上がりしている状況では、太陽光発電の容量が小さいと電気代削減効果が少ないのではと懸念されている状況です。
そこで本記事では太陽光発電の容量3kWで、どれくらいの発電量が得られるかや経済効果について解説します。自家消費率を高くする方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
太陽光発電(容量3kW)1日の発電量はどれくらいか
容量3kWの太陽光発電でどれくらい電気を得られるのか、具体例を基にシミュレーションしてみましょう。
以下では発電シミュレーションの計算式を用いて、太陽光発電の発電量を算出する方法を説明します。
発電量の計算式
太陽光発電の発電量をシミュレーションする際、以下の計算式を利用します。
設備容量は太陽光発電システムで最大発電できる能力、平均日射量は自宅がある地点で得られる光エネルギー量です。NEDOの日射量データベース閲覧システムに住所を入力し、太陽光発電を設置する土地の平均日射量を取得します。
利用できる電気の割合は設備によって変動しますが、表示ガイドラインで70〜80%と定められているため、この範囲で計算しましょう。
1日あたりの発電量
設備容量3kWの太陽光発電を茨城県水戸市に設置すると仮定して、発電量をシミュレーションします。茨城県水戸市の年間平均日射量は、3.86kWh/㎡・dayです。
発電シミュレーションの計算式に数値を当てはめると、発電量は以下表のように計算できます。
利用できる電気の割合 | 1日あたりの発電量 |
---|---|
70% | 8.106kWh |
75% | 8.685kWh |
80% | 9.264kWh |
発電設備による電気のロス率が低いと、同じ設備容量3kWでも得られる電力量に違いがあると分かります。
次に太陽光発電の容量が3kWの場合、年間発電量がどれくらいになるか見ていきましょう。
年間の発電量
1日あたりの発電量に365日を乗じれば、太陽光発電システムが年間で生み出す電力量を算出できます。容量3kWの太陽光発電の年間発電量は、以下表のとおりです。
利用できる電気の割合 | 年間発電量 |
---|---|
70% | 2,959kWh |
75% | 3,170kWh |
80% | 3,381kWh |
年間発電量を実際に利用できる電気の割合で比較すると、数字が5%違うだけで発電量が200kWh以上違っています。
太陽光発電で電気代削減の効果を大きくするためには、いかに発電ロスを低く抑えられるかが重要と言えるでしょう。
太陽光発電3kW導入後の収支を検証
2人以上世帯の電気代平均額は、13,000円/月程度という国勢調査の結果があります。
以下では、標準的な家庭において、太陽光発電の容量3kWで全量を自家消費と余剰売電する場合に、電気代がどのように変わるのか検証します。
全量自家消費する場合
太陽光発電の容量3kWで発電した電気のうち7割が実際に利用できる場合の発電量は、8.1kWh/日あります。1ヶ月あたり、243kWhの電力を自家消費できる計算です。
東京電力のスタンダードプランを10Aで契約している場合、2024年4月以降の電気料金は以下のようになります。
基本料金:311.75円(税込)
電力量料金:
・120kWhまで29.80円/kWh(税込)
・121~300kWhまで36.40円/kWh(税込)
・301kWh以上40.49円/kWh(税込)
自家消費で削減できる電気代は、1ヶ月あたり8,300円(税込)前後です。平均的な家庭の電気代は1ヶ月あたり13,000円のため、太陽光発電の導入で4,700円まで支出が下がることになります。
ただし、蓄電システムがないと太陽光発電の電気を漏れなく使い切るのは難しいため、自家消費率を上げる工夫が重要です。
余剰売電する場合
家庭用の太陽光発電で電力会社に余剰売電する場合、FIT制度を利用するのが一般的です。FIT制度では、自家消費率30%以上が電力買取の条件になっています。
容量3kWの太陽光発電で1ヶ月あたりの発電量が243kWhの場合、30%を自家消費する電力は約73kWhです。
東京電力のスタンダードプランを契約している場合、自家消費で削減できる電気料金は2,487円(税込)と計算できます。
余剰電力70%にあたる170kWhをFIT価格16円(税込)で売電すると、1ヶ月あたり2,723円(税込)の売電収入が得られます。
3割の自家消費と7割の余剰売電で5,210円/月(税込)の電気代を削減できますが、全量自家消費による削減額のほうが高いです。
関連記事 固定価格買取(FIT)制度とは
太陽光発電3kWの設置に必要な面積
太陽光パネルはサイズが大きく重量もあるため、住宅の屋根に設置する際は耐久性と広い面積が必要になります。
たとえば、太陽光パネルの公称最大出力198Wの場合、容量3kWをまかなうために必要なパネル枚数は16枚です。
外形寸法が長さ1,165×幅990×厚さ46mmの太陽光パネルを縦横に4枚ずつ並べると、パネルだけで18.5㎡の面積があります。
パネルの並べ方によって変動しますが、太陽光発電3kWの設置には最低でも20㎡以上の設置面積が必要です。
なお、太陽光パネル分以上の面積がある広い屋根でも、耐荷重や耐震性がないと設置できないケースがあります。
面積だけでなく、太陽光パネルの重量と併せた設置可否を業者に判断してもらいましょう。
太陽光発電3kwの価格相場
太陽光発電を購入する際、以下3つの費用がかかります。
- 設備費
- 設置費用
- メンテナンスなど維持管理費
それぞれの費用詳細と、価格の相場を見ていきましょう。
設備費
設備費は初期費用の1つで、太陽光発電システムを構成する製品の購入費用を指します。太陽光発電の主な構成機器は、以下の5つです。
これらの太陽光発電設備の購入費用は、1kWあたり22.7万円が相場です。
実際の価格はメーカーや業者によって異なりますが、3kWの太陽光発電では68.1万円程度かかると計算できます。
参照:太陽光発電について|経済産業省 資源エネルギー庁
設置費用
家庭用太陽光発電の設置費用は、1kWあたり7.6万円が平均です。太陽光発電の容量が3kWの場合、設置費用は22.8万円が相場と計算できます。
太陽光発電の設置費用の内訳は、以下のとおりです。
既存住宅の場合は、築年数が古いと耐震性能が現在の基準を満たしていないことも考えられます。
屋根の補強工事が必要なケースも出てくるため、既存住宅への太陽光発電設置では、平均よりも大幅に費用が高くなる可能性があるでしょう。
メンテナンスなど維持管理費
長く太陽光発電システムを使い続けるため、導入後はメンテナンスなどの維持管理が欠かせません。
また、寿命が25〜30年の太陽光パネルに対して、パワコンは10年や15年で交換が必要になる機器です。
このため、太陽光発電の導入後は維持管理費とパワコンの交換費用を確保します。
一般的に家庭用太陽光発電は、3〜5年に1回の点検が推奨されており、1年あたりのメンテナンス費用は5,800円/kWが平均です。
近年では以下の3点が影響し、維持管理費用の平均が増加傾向にあることが経済産業省の調査で明らかになっています。
- 燃料費増
- 人件費増
- 半導体不足
容量が3kWの太陽光発電では、年間で17,400円前後の維持管理が発生します。
メンテナンス費用の詳細は、以下で解説していますので併せて参照してください。
関連記事 太陽光発電のメンテナンス費用(維持費)
太陽光発電の自家消費率を高める方法3選
自家消費率を上げて電気代削減効果を高めるためには、余すことなく太陽光発電の電気を利用できる仕組みが必要です。
太陽光発電の容量3kWは1日あたりの発電量が8.1kWhと少なめですが、生活スタイルによっては漏れなく使い切るのが難しい可能性があります。
さらに売電単価が低く買電料金が高い現在では、余剰売電よりも全量自家消費のほうが削減できる電気代が大きい状況です。
以下では、太陽光発電の自家消費率を上げる3つの方法を紹介します。
蓄電池も利用する
電気を溜めるシステムの蓄電池を太陽光発電と併用すれば、自家消費率が高くなります。
容量3kWhの太陽光発電で消費できる電力量が発電量に対して6割程度なら、145kWhの電力を自家消費できることになります。
発電した電気を全て自家消費できれば、毎月の電気代削減額は8,300円前後です。
電力消費量6割で余剰売電すると、電気代削減額は月間6,300円前後に下がります。
自家消費できなかった電力を蓄電池に溜めていれば、夜間や雨の日にも太陽光発電の電気を利用できます。
余剰売電よりも自家消費率を上げて太陽光発電の電気を利用すれば、電気代削減による経済効果を大きくできるでしょう。
電気自動車の充電に利用する
昼間に消費する電力が少ない場合、電気自動車(EV)の充電に太陽光発電を利用すれば自家消費率を高くできます。
軽自動車でバッテリー容量が20kWhの場合、容量3kWの太陽光発電ではフル充電できません。
しかし、バッテリーの半分近くを太陽光発電で充電できるので、購入する電力量が少なくなります。
家族が昼間は不在の家庭で電気自動車を平日に充電すれば、蓄電池がなくても太陽光発電による自家消費率を高められます。
昼間の電力消費量を増やす
蓄電池を太陽光発電と併用しない家庭でも日中に集中して電気を使えるよう工夫すれば、自家消費率が高くなります。
エコキュートと太陽光発電の組み合わせで、自家消費する電力量を増やせます。
オール電化住宅に設置されるケースが多いエコキュートは、料金が安い深夜に給湯して電気代を節約するのが主流でした。
日中にエコキュートが給湯するように設定し、太陽光発電の電気を利用すれば昼間は家族が不在になる家庭でも自家消費率を高くできます。
消費電力が1.5kWで沸き上げに3時間かかるエコキュートの場合、消費電力量は4.5kWhのため容量3kWの太陽光発電でも自家消費だけで給湯できます。
太陽光発電3kWとは?ほかの容量との違いを比較
家庭用太陽光発電では、容量3〜5kWのシステムが導入されるケースが多い傾向です。
容量3kWの太陽光発電と4kW、5kWでは発電量や費用がどれだけ違うか、以下の比較表にまとめました。
比較項目 | 3kW | 4kW | 5kW |
---|---|---|---|
1日の発電量(kWh) | 8.106 | 10.808 | 13.510 |
年間発電量(kWh) | 2,959 | 3,945 | 4,931 |
全量自家消費の電気代削減額(円/月) | 8,372 | 11,421 | 14,703 |
設備費(万円/kW) | 68.1 | 90.8 | 113.5 |
設置費用(万円/kW) | 22.8 | 30.4 | 38 |
維持管理費(万円/kW) | 1.8 | 2.4 | 2.9 |
太陽光発電の容量が大きくなると設備や設置の費用が高くなりますが、発電量が増えるため自家消費で得られる経済効果が高くなります。
このため、電気の消費量や使い方に合った容量選びが重要です。
容量4kW・5kWの太陽光発電については、以下で詳細を解説していますのであわせて参考にしてください。
関連記事 太陽光発電4kWの発電量や設置費用
関連記事 太陽光発電5kWの発電量や設置費用
まとめ|太陽光発電3kWは自家消費率を高めれば経済効果が大きくなる
太陽光発電の容量が3kWの場合、1日の発電量はおおよそ8.1kWh、年間では2,959kWhです。
住宅用太陽光発電が容量10kW未満と定められていることを考えると、3kWでは大きな経済効果が得られないのではと心配になるかもしれません。
しかし、容量3kWの太陽光発電で電気を全量自家消費すれば、月間で約8,300円の電気代を削減できます。
余剰売電する場合には削減額が小さくなるため、自家消費率を高める仕組みがあれば容量3kWの太陽光発電でも経済効果を大きくできるでしょう。