農地で太陽光発電を行うには? デメリットや補助金について解説
農地を活用したビジネスとして、近年、太陽光発電が普及してきています。
ただし、農地は勝手にほかの用途に転用することはできません。「農地転用は手続きが難しいのではないか?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。
この記事では、以下について解説します。
農地で太陽光発電を行いたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
農地は太陽光発電に適している
農作物を栽培する農地には日照が必要であるため、日当たりの良い土地である場合が多いといえます。太陽のエネルギーを電気に変換する太陽光発電には、農地のような日光がよく当たる場所が最適です。
また、農作物を植えていない農地は「耕作放棄地」と呼ばれ、近年増えていることが問題視されています。雑草や害虫により、近隣の他の農地に迷惑をかけてしまったり、地域の美観を損ねてしまったりするためです。
耕作放棄地の現状や問題、解決策について詳しくは以下の記事で解説しています。
関連記事 耕作放棄地とは? 問題と解決策
農地を活用して、太陽光発電というビジネスを始めれば、耕作放棄地問題の解決が見込めるだけではなく、収益も期待できます。
なお、使わなくなった田んぼや畑、相続した農地の活用方法については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事 使わなくなった田んぼや畑の活用方法
太陽光発電を行うための農地転用とは?
農地において太陽光発電を行うためには、「農地転用」をしなければなりません。農地転用とは何かを理解しておきましょう。
また、農地転用ではなく、農地の一時転用を行う「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」についても解説します。
農地転用とは何か
農地は、農業以外の目的で使用することが禁じられています。
そのため、太陽光発電システムを設置するためには、地目を農地以外のものに変更しなければなりません。
定められた手続きを経て、使われていない農地の地目を変更することを農地転用といいます。
農地転用について、できる土地・できない土地の違いや、手続き・費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事 農地転用とは
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)もできる
営農型太陽光発電とは、農業をしながら太陽光発電も行う方法です。
農地には作物を作付けした状態で、支柱を立てて、太陽光パネルを農地の上部に設置して発電をします。
営農型太陽光発電の場合には、農地で農業をするため、農地転用の手続きは必要ありません。ただし、農地の一時転用の手続きが必要です。
なお、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)については以下の記事をご覧ください。ソーラーシェアリングのメリット・デメリットや、補助金についても解説しています。
関連記事 ソーラーシェアリングとは?
太陽光発電を行うための農地転用はどこでも可能なのか?
農地で太陽光発電する場合、「どのような農地でも農地転用できるのか」について疑問をお持ちではありませんか?
以下では、農地区分と農地転用が可能かどうかについて解説します。
農業振興地域制度による区分 | 農地転用 | ||
---|---|---|---|
農業振興地域 | 農用地区域 | 不許可 | |
農振白地地域 | 第1種農地 | 原則不許可 | |
第2種農地 | 第3種農地に立地困難な場合に許可 | ||
第3種農地 | 原則許可 | ||
農業振興地域外 | 第1種農地 | 原則不許可 | |
第2種農地 | 第3種農地に立地困難な場合に許可 | ||
第3種農地 | 原則許可 | ||
市街化区域 | 届出制 |
農地区分とは
農地には区分があります。
まず、農業の振興を促進することを目的とする「農業振興地域」と、「農業振興地域外」に分類されます。
農業振興地域は2つに分かれており、農業上の利用を図るべき「農用地区域」と、それ以外の「農振白地地域」です。
「農振白地地域」と「農業振興地域外」は、それぞれ第1種農地・第2種農地・第3種農地に分かれています。
農地転用が可能なのは第2種農地と第3種農地
農用地区域は、生産性の高い優良農地であることから、農地転用は不許可とされています。
良好な営農条件を備えている「第1種農地」については、農地転用は原則不許可です。
第2種農地については、第3種農地に立地困難な場合に許可されます。
また、市街地にある農地などの「第3種農地」では、農地転用は原則許可です。
なお、農業振興地域外に含まれる「市街化区域」については、農地転用は許可制ではなく、届出制とされています。
農地転用の手続きと費用
農地転用には、農地の所有者が自ら転用する場合と、農地の買主や借主が転用する場合があります。以下の表に基づいて、それぞれについて解説します。
農地法 | 許可が必要な場合 | 申請者 | 許可権者 |
---|---|---|---|
第3条 | 相続等により農地を取得した場合 | 譲渡人と譲受人 | ・農業委員会 |
第4条 | 農地を転用する場合 | 農地所有者 | ・都道府県知事 ・指定市町村の長 ・4ヘクタール超の農地転用は農林水産大臣に協議 |
第5条 | 転用するために農地 又は採草放牧地の権 利の設定移転をする場合 | 譲渡人と譲受人 |
関連記事 農地法をわかりやすく解説
本人申請の場合
農地の所有者本人が自ら転用する場合は、農地法第4条の許可が必要です。許可権者は、都道府県知事か、農林水産大臣が指定する市町村長です。
本人申請を自力で行う場合は、申請自体は無料で、書類を揃えるのに1万円〜数万円程度が必要になります。
また、本人申請を行政書士に依頼した場合には、一般的には15万円〜20万円程度必要です。
代理申請の場合
農地の買主や借主が転用する場合には、農地法第5条の許可が必要です。農地の売主と買主、あるいは貸主と借主が連名で申請します。本人申請の場合と同様に、都道府県知事か、農林水産大臣が指定する市町村長が許可権者です。
代理申請を行う場合の費用も、本人申請の場合と同様であると考えられます。自力で行うのであれば1万円〜数万円程度、行政書士に依頼した場合には、一般的には15万円〜20万円程度必要です。
相続等により農地を取得した場合の届出
農地法第3条により、相続等により農地を取得した場合には、農業委員会へ届け出なければならないとされています。農地を取得したら、必ず農業委員会に届けましょう。
無料で相談可能です
農地転用型太陽光発電と営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の違い
農地転用型太陽光発電は、農作物が作付けされていない耕作放棄地などの農地において、太陽光発電を行うことです。農地で太陽光発電を行うためには、農地転用が伴います。
一方、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)では、農地において農業をしながら太陽光発電を行います。農地転用は伴わず、農地の一時転用の手続きが必要です。
関連記事 ソーラーシェアリングとは?
つまり、農地転用型太陽光発電と営農型太陽光発電の違いは、農業をせずに太陽光発電をするか、農業を続けながら太陽光発電をするかという点です。
農地転用型太陽光発電のメリット・デメリット
農地転用型太陽光発電について、以下を説明します。
- 農地転用型太陽光発電には農地転用が必要
- 農地転用型太陽光発電のメリット
- 農地転用型太陽光発電の問題点・デメリット
農地転用型太陽光発電には農地転用が必要
地目が農地である土地には、太陽光発電システムは設置できません。
そのため、農地において農地転用型太陽光発電をするためには、農地転用の許可を受ける必要があります。
農地転用型太陽光発電のメリット
農地転用型太陽光発電には、主に2つのメリットがあります。
第1に、作物が作付けされていない荒廃農地を活用した太陽光発電ができることです。
荒廃農地とは、耕作されておらず、作物の栽培もできなくなっている農地のこと
つまり、荒廃農地は何もできなくなっている土地であるため、太陽光発電に活用できるのは大きなメリットと言えます。
第2に、農地はもともと日当たりの良い土地であることが多いため、太陽光発電を行った場合、発電量が豊富であることです。
農地転用型太陽光発電の問題点・デメリット
農地転用型太陽光発電の問題点やデメリットですが、しっかりとした開発業者に依頼すれば、特別の問題はありません。
ただし、耕作放棄地問題を解消したいと考えて太陽光発電所を建設しても、草刈りやメンテナンスをしない業者に農地を売却した場合には、結局荒地になってしまいます。
近隣の農家に迷惑をかけ、地域の環境問題を発生させてしまうケースがあるため、信頼できる開発業者に依頼する必要があります。
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)のメリット・デメリット
営農型太陽光発電について、以下のことを説明します。
- 営農型太陽光発電には農地の一時転用が必要
- 営農型太陽光発電のメリット
- 営農型太陽光発電の問題点・デメリット
なお、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事 ソーラーシェアリングとは?
営農型太陽光発電には農地の一時転用が必要
営農型太陽光発電には、農地転用は必要ありません。つまり、農地転用ができない農地であっても、太陽光発電を行えます。
ただし、農地の一時転用の手続きが必要です。
営農型太陽光発電のメリット
営農型太陽光発電には、主に3つのメリットがあります。
第1に、農業との両立が可能であることです。農作物を栽培しながら同時に太陽光発電ができるため、双方からの収益が得られます。
第2に、固定資産税の節税効果です。地目は農地のままであるため、太陽光発電のみの運営よりも、固定資産税が軽減されます。
第3に、直射日光を遮断する効果があることです。太陽光パネルによって、程良く直射日光が遮られるため、農作業がしやすくなります。
営農型太陽光発電の問題点・デメリット
営農型太陽光発電には、問題点やデメリットもあります。
- 太陽光発電システムを設置する際のコストが農地転用型太陽光発電所と比較して高い
- 太陽光発電システムの柱・架台により使用できる農作業機械(トラクター等)の大きさに制限があり、農作業中のシステム破損に注意が必要
- 太陽光パネルの影響で日射量が減少するため、耕作できる作物が限られる
また、農地の一時転用の手続きは、一度行えば終わりというわけではありません。定期的に一時転用許可の手続きをしなければならないため、手続きが煩雑であることがデメリットです。
一時転用期間は通常3年以内とされていますが、次のいずれかに該当する場合には、10年以内となります。
農地で太陽光発電を行う際の補助金
農地で太陽光発電を行う際の、国や自治体による補助金があります。使える補助金があるかどうかを確認しておきましょう。
新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業
環境省による、「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業)」の中に、「新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業」があります。
「地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業」という項目に、「営農地を活用した太陽光発電」の導入支援が含まれています。
自治体による支援事業
2022年に農林水産省が発行した「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」には、全国の地方自治体に、営農型太陽光発電に係る支援の取組についてアンケートを行った結果が掲載されています。
宮城県、埼玉県所沢市、東京都羽村市、神奈川県、新潟県、兵庫県、愛媛県などの支援施策が紹介されています。まずは、ご自身の農地がある自治体の取り組みを確認してみましょう。
農地での太陽光発電に関するよくある質問
農地での太陽光発電に関して、よくある質問とその回答をまとめました。
- 農地で太陽光発電を行うときのトラブルは?
-
農地で太陽光発電を行うときによくあるトラブルには、以下のようなものがあります。
- 近隣住民からの反対
- 住宅などへの光の反射
- 太陽光発電設備による事故
- 隣接農地における日照不足
太陽光発電用地の農地トラブルについて詳しくは、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
関連記事 太陽光発電の農地トラブル
- 太陽光発電ができない土地は?
-
太陽光発電ができない土地は、以下のようなところです。
- 日照時間が短い
- 住宅街に隣接している
- 傾斜地
傾斜地に関しては、ある程度の傾斜であれば、地盤の造成工事を行えば、太陽光発電設備の設置は可能です。ただし、費用が高くなるケースがあります。
- 荒廃農地で太陽光発電は可能?
-
耕作されておらず、作物の栽培もできなくなっている「荒廃農地」でも、太陽光発電を行うことは可能です。
木が生えているなど、再生が困難な荒廃農地では、農地転用をして農地転用型太陽光発電を行います。
また、荒廃農地を一時転用して、営農型太陽光発電を行うこともできます。通常、農地の一時転用期間は3年間ですが、荒廃農地に関しては10年間とされました。
農地で太陽光発電を行う方法 まとめ
農地は太陽光発電に適していますが、太陽光発電システムを設置するためには、地目を雑種地に転用する農地転用手続きをする必要があります(ソーラーシェアリングの場合は一時転用)。
農地で太陽光発電を行うには、2つの方法があります。ひとつは、農地転用をして「農地転用型太陽光発電を行う方法です。もうひとつは、農地の一時転用手続きをして、農業を行いながら発電もする「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」を行う方法です。
農地転用型太陽光発電と営農型太陽光発電には、それぞれメリットと問題点・デメリットがありますので、確認した上で選択しましょう。農地で太陽光発電を行う際の補助金も活用できます。
農地で太陽光発電を行いたいとお考えなら
農地で太陽光発電を行いたいと考えている方、太陽光発電に使えそうな農地を所有されている方からのご相談を受け付けております。
まずは、以下よりお気軽にお問い合わせください。
無料で相談可能です