農地転用とは何かをわかりやすく解説! 手続きの流れ・期間・費用など
「農地転用したいけど、どのようにすればよいのかわからない」
「農地転用できる・できない農地の違いは?」
「農地転用の手続きや費用は?」
農地転用に関して、上記のように困ってはいませんか? 農地転用は、できる農地とできない農地があったり、必要な手続きを踏まなければ許可がおりなかったりするため、正しい知識を身につけておかなければなりません。
この記事では、以下について解説します。
農地転用をする際の参考にしてください。
管理できていない・放置している田んぼを売りたいとお考えなら、「農地売却の方法(田んぼを売るには?)」をご覧ください。農地の売却方法や税金、費用について解説しています。
農地転用とは
まずは農地転用についての基礎知識を理解しておきましょう。以下の3点について解説します。
- 農地転用とは農地の地目を変更すること
- 農地転用は簡単にはできない
- 農地転用許可がいらないケース
農地転用とは農地の地目を変更すること
農地転用とは、農地の地目を、耕作以外の目的に使えるように農地以外のものに変更することです。具体的には、農地の形状を変更して住宅用地にしたり、工場用地にしたり、道路などを作ったりすることを指します。
たとえば、農地の形状を変えずにそのまま資材置場や駐車場として使用する場合も、耕作以外の目的に使うことになるため、農地転用に該当します。
また、地目が宅地などになっていた場合にも、現況が耕作などが行われていれば農地とみなされるため、他の目的として使うためには農地転用が必要です。
農地転用は簡単にはできない
農地転用をしたいと考えたとしても、簡単にできるものではありません。なぜなら、農地転用は農地法に基づいて規制されているためです。
日本の食料生産を支えるために、農地を保全することが重要であるとされており、簡単には転用できないとされています。
ただし、土地を有効活用するためには農地転用が必要なケースもあるため、一定の規制をかけつつ、転用許可制度が設けられているのです。
農地転用許可がいらないケース
農地転用する場合に、許可がいらないケースがいくつかあります。主な例として、以下の3つを紹介します。
- 国、都道府県、指定市町村が道路などを建設するために転用するケース
- 市街化区域内の農地をあらかじめ農業委員会に届け出て転用するケース
- 道路、鉄道、河川、公園などの公共事業のために土地収容した農地を転用するケース
農地転用は許可制度ですが、いくつかの例外があることを理解しておきましょう。
農地転用ができる農地
農地転用ができるのはどのような農地なのか、以下の4点について解説します。
- 農地転用ができるかどうかは農地区分によって異なる
- 第2種農地とは何か
- 第3種農地とは何か
- 市街化区域の農地転用は届出制
農地転用ができるかどうかは農地区分によって異なる
農地転用ができる農地について理解するためには、「農地区分制度」にかかわる知識が必要です。農地区分について、以下の表にまとめました。
農業振興地域制度による区分 | 農地転用 | ||
---|---|---|---|
農業振興地域 | 農用地区域(青地) | 不許可 | |
農振白地地域(白地) | 第1種農地(甲種農地を含む) | 原則不許可 | |
第2種農地 | 第3種農地に立地困難な場合に許可 | ||
第3種農地 | 原則許可 | ||
農業振興地域外 | 第1種農地(甲種農地を含む) | 原則不許可 | |
第2種農地 | 第3種農地に立地困難な場合に許可 | ||
第3種農地 | 原則許可 | ||
市街化区域 | 届出制 |
農地は、農業振興地域の整備に関する法律(農振法)に基づいた「農業振興地域制度」によって、2つに区分されています。農業の振興を促進することを目的とする「農業振興地域」と、「農業振興地域外」です。
農業振興地域は、さらに2つに区分されています。農業上の利用を図るべき「農用地区域(青地)」と、それ以外の「農振白地地域(白地)」です。
「農振白地地域」と「農業振興地域外」は、農地法に基づいた「農地転用許可制度」によって、3つに区分されています。第1種農地、第2種農地、第3種農地です。
また、第1種農地の中で、とくに良好な営農条件を備えている農地は、「甲種農地」に指定されています。
「第2種農地」とは
第2種農地とは、市街地化が見込まれる農地、または生産性の低い小集団の農地のことです。
農地区分の中で、農地転用が可能である区分の一つは第2種農地です。ただし、第2種農地の全てが農地転用可能なわけではありません。
第3種農地に立地できない場合に、農地転用が許可されます。
「第3種農地」とは
第3種農地とは、市街地の区域、または市街地化の傾向が著しい区域にある農地のことです。第3種農地については、農地転用は原則許可されます。
農地転用の許可を得ようとする場合には、自分の農地がどのような農地区分にあるのかを、あらかじめ把握しておかなければなりません。
市街化区域の農地転用は届出制
都市計画法に基づいた土地の区域区分には、「市街化区域」というものがあります。市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域、および、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域のことです。
市街化区域は、農業振興地域制度における「農業振興地域外」に含まれており、農地転用は許可制ではなく届出制とされています。
農地転用ができない農地
農地転用できないのは、以下のような農地です。
- 農用地区域
- 甲種農地
- 第1種農地
農地転用できない土地については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事 農地転用できない土地とは
農用地区域
「農用地区域(青地)」は、生産性の高い優良農地であることから、農業上の利用を図るべき土地とされ、農地転用は不許可とされています。
農用地区域の農地は、農地転用が厳しく制限されていることを覚えておきましょう。
甲種農地
第1種農地の中で、とくに良好な営農条件を備えている農地である「甲種農地」は、農地転用は原則不許可です。
ただし、以下のようなケースでは例外として許可される場合もあります。
- 農業用施設、農産物加工・販売施設
- 集落接続の住宅(甲種農地・第1種農地以外の土地に立地困難な場合)
第1種農地
第1種農地は、以下のような良好な営農条件を備えている農地です。
- 集団的に存在する。
- 農業公共投資の対象である。
- 高い生産力が認められる。
第1種農地については、農地転用は原則不許可とされていますが、甲種農地と同様に、例外として許可される場合もあります。
農地転用の手続きと費用
農地転用は農地法に基づいて、農地の所有者が自ら転用する場合と、農地の買主や借主が転用する場合があり、それぞれ費用が発生します。また、農地転用完了後の費用も必要です。
農地転用の手続きと費用について、以下の4点を解説します。
- 農地転用に関わる法令は農地法第4条と第5条
- 農地所有者の本人申請の場合
- 代理申請の場合
- 農地転用完了後の費用
農地転用に関わる法令は農地法第4条と第5条
農地転用と農地法の関係について、以下の表にまとめました。
農地法 | 許可が必要な場合 | 申請者 | 許可権者 |
---|---|---|---|
第3条 | 相続等により農地を取得した場合 | 譲渡人と譲受人 | ・農業委員会 |
第4条 | 農地を転用する場合 | 農地所有者 | ・都道府県知事 ・指定市町村の長 ・4ヘクタール超の農地転用は農林水産大臣に協議 |
第5条 | 転用するために農地又は採草放牧地の権利の設定移転をする場合 | 譲渡人と譲受人 |
農地転用に関係するのは、第4条と第5条です。
農地所有者が自ら農地転用する場合には第4条の許可が、農地の買主や借主が転用する場合には、農地法第5条の許可が必要です。
また、第3条は農地転用とは関係ありませんが、相続等により農地を取得した場合に、農業委員会へ届け出なければならないことを定めています。
関連記事 農地法をわかりやすく解説
農地所有者の本人申請の場合
農地の所有者本人が、自ら農地転用する場合には、農地法第4条の許可が必要です。許可権者は、都道府県知事か、農林水産大臣が指定する市町村長です。
自力申請する場合、申請自体は無料ですが、書類を揃えるのに1万円〜数万円程度がかかります。また、本人申請を行政書士に依頼した場合には、15万円〜20万円程度かかることが一般的です。
代理申請の場合
農地の買主や借主が農地転用する場合には、農地法第5条の許可が必要です。申請は、農地の売主と買主、あるいは貸主と借主が連名で行います。許可権者は、都道府県知事か、農林水産大臣が指定する市町村長です。
代理申請する場合、申請自体は無料ですが、書類を揃えるのに1万円〜数万円程度がかかります。また、代理申請を行政書士に依頼した場合には、15万円〜20万円程度かかることが一般的です。
農地転用完了後の費用
農地転用完了後にかかる費用は、主に次の2点です。
登記(地目変更)
農地を転用した場合は、地目を変更する登記申請をしなければなりません。申請自体は数百円しかかかりませんが、土地家屋調査士などに依頼すると、4万円以上かかります。
固定資産税
農地の固定資産税は、宅地などに比べて優遇されているため、転用することによって固定資産税が高くなることが一般的です。
【市街化区域外の農地(4ha以下)】農地転用の手続きの流れ
4ha以下の市街化区域外の農地における、農地転用の手続きの流れは次のとおりです。
- 農業委員会に農地転用許可を申請する
- 都道府県農業会議に意見聴取する
- 農業委員会が意見書を添付して都道府県知事または指定市町村の長に送付する
- 都道府県知事または指定市町村の長が許可等を通知する
農業委員会に農地転用許可を申請する
市街化区域外の農地の場合には、まず農業委員会に農地転用許可を申請します。
都道府県農業会議に意見聴取する
農業委員会は、30アールを超える場合には、都道府県農業会議(都道府県農業委員会ネットワーク機構)に意見聴取し、意見提出をしてもらいます。
農業委員会が意見書を添付して都道府県知事または指定市町村の長に送付する
農業委員会が、申請書に意見書を添付して、都道府県知事または指定市町村の長に送付して、許可を認めてもらえるかどうかの判断を仰ぎます。
都道府県知事または指定市町村の長が許可等を通知する
都道府県知事または指定市町村の長が、許可するかどうかの結果を通知します。
【市街化区域外の農地(4ha超え)】農地転用の手続きの流れ
4haを超える市街化区域外の農地における、農地転用の手続きの流れは次のとおりです。
- 農業委員会に農地転用許可を申請する
- 都道府県農業会議に意見聴取する
- 農業委員会が意見書を添付して都道府県知事または指定市町村の長に送付する
- 都道府県知事または指定市町村の長が農林水産大臣と協議して回答を得る
- 都道府県知事または指定市町村の長が許可等を通知する
農業委員会に農地転用許可を申請する
市街化区域外の農地の場合には、まず農業委員会に農地転用許可を申請します。
都道府県農業会議に意見聴取する
農業委員会は、30アールを超える場合には、都道府県農業会議(都道府県農業委員会ネットワーク機構)に意見聴取し、意見提出をしてもらいます。
農業委員会が意見書を添付して都道府県知事または指定市町村の長に送付する
農業委員会が、申請書に意見書を添付して、都道府県知事または指定市町村の長に送付します。4haを超える市街化区域外の農地の場合は、この段階で許可についての判断は下されません。
都道府県知事または指定市町村の長が農林水産大臣と協議して回答を得る
4haを超える市街化区域外の農地の場合は、都道府県知事または指定市町村の長が、農地転用の申請について、農林水産大臣と協議して回答を得ます。
都道府県知事または指定市町村の長が許可等を通知する
農林水産大臣からの回答をもとに、都道府県知事または指定市町村の長が、許可するかどうかの結果を通知します。
【市街化区域内の農地】農地転用の手続きの流れ
市街化区域内の農地における、農地転用の手続きの流れは次のとおりです。
- 農業委員会に届出を提出する
- 農業委員会が受理通知を送る
農業委員会に届出を提出する
市街化区域内の農地については、農地転用をするのに届出をするだけでよく、許可は必要ありません。
農業委員会が受理通知を送る
農業委員会から受理通知が届けば、手続きは完了です。
農地転用にかかる期間
市街化区域内の農地の場合、農地転用の届出を提出してから、受理通知が届くまでの期間は、1〜2週間程度です。
一方、市街化区域外の農地の場合、農地転用の許可を申請してから、許可が下りるまでの期間は、6週間〜2か月程度が一般的です。スケジュールに余裕を持たせて、早めに手続きすることをおすすめします。
農地転用許可がおりないケースとは
農地転用の申請をしても、許可がおりない主なケースは次の2つです。
- 申請に不備があるケース
- 申請内容が許可基準を満たさないケース
申請に不備があるケース
農地転用の申請をしても農地転用許可がおりないケースの1つ目は、申請に不備があるケースです。申請書類に不備がある場合には、農業委員会から是正指導が入ります。
速やかに対応した場合、書類を再提出すれば受け付けてもらえるでしょう。書類を整えたり是正したりすることが難しい場合には、申請を取り下げて、再申請することもあります。
申請内容が許可基準を満たさないケース
農地転用の申請をしても農地転用許可がおりないケースの2つ目は、申請内容が許可基準を満たさないケースです。
農地区分により農地転用が可能かどうかを判断する「立地基準」と、事業計画通りに実行できるかなどを審査する「一般基準」を満たしていなければ、農地転用許可は下りません。
また、無許可で農地以外に使用している場合などに、農地転用を申請するためには、現状復帰が必要です。
農地転用に関するよくある質問
農地転用に関して、よくある質問と回答をまとめました。
- 農地転用の基準は?
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農地転用の許可基準には、次の2種類があります。
立地基準
農地区分ごとに農地転用が可能かどうかを判断する一般基準
農地区分にかかわらず、事業計画通りに実行できるかや、周辺農地に対する影響などを考慮して判断する
- 農地転用できない土地はありますか?
-
農地転用できない土地は以下のとおりです。
- 農用地区域
- 甲種農地
- 第1種農地
ただし、甲種農地と第1種農地については、例外として許可される場合もあります。
- 農地から宅地に転用するための条件は?
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農地から宅地に転用するためには、農地区分に基づいて判断される「立地基準」と、農地転用の申請書などに照らし合わせて判断される「一般基準」をクリアしていなければなりません。
- 農地を勝手に転用するとどうなる?
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農地転用の手続きをしないとどうなるのかというと、無断転用は農地法違反となるため、工事の停止勧告、原状回復命令などが出されることがあります。また、3年以下の懲役又は300万円以下(法人の場合は1億円以下)の罰金が適用されるケースもあるため、注意が必要です。
- 農地転用しないとどうなる?
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使っていない農地・価値の低い農地を転用しないまま売却するのは困難です。農地が売れないとお悩みなら、宅地といった別の用途に地目を変更したうえで売却することをおすすめします。
- 農地転用にはどのくらいの期間かかる? 時間がかかるのはなぜ?
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農地転用の査定は、およそ6週間以内で完了すると言われています。参考として、申請手続きの流れと目安期間を整理しました。
農地転用手続きの手順 目安期間 農地転用の申請書類を作成 1日~1週間 農地転用の申請書類の提出 1日(月末締め切り) 農業委員会による手続き確認 4~5週間 また、農地転用の書類を不動産会社といった専門家に依頼する場合には、さらに時間がかかるかもしれません。ただし、届出なら審査開始から1週間~10日程度で返答をもらえる場合があります。
- 農地転用許可がおりない理由は何ですか?
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農地転用許可がおりない主な理由は、以下の2つです。
- 申請に不備があるため
- 申請内容が許可基準を満たしていないため
- 農地転用に裏ワザ(抜け道)はある?
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農用地区域(青地)は農地転用ができない農地の筆頭に挙げられます。それでも、正当な手続きを経て農地転用をする裏ワザがあります。
農用地区域から農地を除外する「農振除外」という手続きです。農用地区域(青地)が、以下の5つの要件を満たす場合には、農振除外の可能性があります。
農振除外の要件- 農用地以外の土地とすることが必要かつ適当で、農用地区域以外に代替すべき土地がないこと
- 農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと
- 効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農用地の利用集積に支障を及ぼすおそれがないこと
- 土地改良施設の機能に支障を及ぼすおそれがないこと
- 農業生産基盤整備事業完了後8年を経過していること
- 100~200坪の農地転用にかかる費用はどれくらい?
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農地転用後に発生する次の手続きを含めると、約500~1,000万円の費用がかかると言われています。
- 宅地造成工事費用
- 固定資産税
- 登記費用
ただし、造成工事費用は土地条件や専門業者の相場によって変化します。
農地転用 まとめ
農地転用は農地法に基づいて規制されているため、簡単にはできません。農地転用ができる農地は、第2種農地、第3種農地、市街化区域の農地です。第2種農地と第3種農地の転用は許可制で、市街化区域の農地は届出制とされています。
農地転用ができない農地は、農用地区域、甲種農地、第1種農地です。申請には、1万円〜数万円程度がかかります。行政書士に依頼した場合には、15万円〜20万円程度かかるのが一般的です。
農地転用にかかる期間は、届出の場合は1〜2週間程度、許可申請の場合は6週間〜2か月程度であるため、スケジュールに余裕を持たせて行いましょう。