太陽光発電はSDGsの何番目にどう貢献する? メリットや課題、日本の取り組みを解説
「太陽光発電とどんな関係があるの?」
「SDGsのために、日本企業はどんな太陽光発電に取り組んでいるの?」
人・環境のより良い発展のために世界中が取り組む「SDGs」について、上記のような疑問があると思います。
本記事ではSDGsと太陽光発電の関係について、以下をわかりやすく解説します。
SDGsと太陽光発電の関係を知るため、ぜひ最後までご覧ください。
SDGsと太陽光発電の関係
人そして環境のことを考えた取り組み「SDGs」は、太陽光発電と深い関係にあります。
まずはSDGsの概要と、太陽光発電の立ち位置を詳しく解説します。
SDGsとは
SDGsとは、人間が自然環境に影響を与えることなく生活できる状況を目指す取り組みです。迫りくる環境問題や人類問題(貧困や差別)に立ち向かうために、2015年9月の国連サミット「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で目標が掲げられました。
ちなみに、SDGsには合計17つのゴールが設定されています。
- 貧困をなくす
- 飢餓をゼロにする
- すべての人に健康と福祉を提供する
- 質の高い教育を届ける
- ジェンダー平等を実現する
- 安全な水とトイレを世界中に整備する
- クリーンエネルギーをみんなに届ける
- 働きがいと経済成長を生み出す
- 産業・技術革新の基盤をつくる
- 人や国の不平等をなくす
- 住み続けられるまちづくりを行う
- つくる責任・使う責任を理解してもらう
- 気候変動の具体的な対策を実施する
- 海の豊かさを守る
- 陸の豊かさを守る
- 平和と公正を届ける
- 世界中のパートナーシップで目標を達成する
各ゴールは、2030年までに達成する目標が掲げられています。企業そして国民で協力してよりよい社会を目指すのが目的です。
SDGsにおける太陽光発電の立ち位置とは
太陽光発電は、SDGsで定められた17のゴールのうち7番目「クリーンエネルギーをみんなに届ける」、13番目「気候変動の具体的な対策を実施する」の項目に用いられる発電方法です。
各ゴールにおける太陽光発電の立ち位置を解説します。
SDGs7番目の取り組み
7番目「クリーンエネルギーをみんなに届ける」では、世界中で電気を使えない7.3億人の人々に電気を届けて暮らしを豊かにすることが目的です。
産業革命以降、アジアやアフリカの経済成長によって地球温暖化や気候変動が加速しているといわれています。人口増加に伴うエネルギー消費量も増えていることから、さらなる環境の悪化が予測されているのです。
発展途上国の経済成長の手助け、そして温室効果ガス排出量を抑えるためには、先進国が協力し電力供給を行いつつ化石燃料の使用を減らすことがカギとなります。
SDGs13番目の取り組み
13番目「気候変動の具体的な対策を実施する」では、地球温暖化・気候変動の原因である温室効果ガスを削減するのが目的です。例えば、次のような取り組みが実施されています。
【個人】
- 建物の節電
- 自動車利用から徒歩・自転車・公共交通機関への移行
- 食料消費の無駄を削減
- 3R(リデュース・リユース・リサイクル)
【企業】
- 再生可能エネルギーの活用
- 植林
- ガソリン・ディーゼルの使用をやめる
その中でも再生可能エネルギーの活用は、国や自治体、日本企業によって取り組まれている対策です。火力発電といった発電方法から温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーへの移行が計画されています。
- 太陽光発電:9.9%
- 水力発電:7.1%
- バイオマス発電:4.6%
- 風力発電:0.9%
- 地熱発電:0.2%
環境エネルギー政策研究所の調査より、2022年の値をもとにしています。
また太陽光発電は、建物の屋根や空地に設置できることから、個人でも取り組みやすい発電方法として活用されています。
太陽光発電はSDGsにどのように貢献できるのか
太陽光発電は、SDGs7番目・13番目のゴール達成のために、次のポイントで貢献できます。
- 再生可能エネルギーの割合を増やせる
- 資源を消費しない
- 温室効果ガスを排出しない
- 放置中の土地を活用できる
太陽光発電は、文字通り太陽光から電力を生み出すため、資源を消費しません。また、発電時に温室効果ガスが排出されないことから、クリーンな発電方法として活用可能です。
現在、少子高齢化の影響によって、日本には空き家や空き地が点在しています。放置されている土地を使って発電をスタートできるため、企業・個人ともに太陽光発電に取り組めるチャンスがあるのです。
SDGsに貢献できる太陽光発電のメリット
SDGsの取り組みに貢献できる太陽光発電には、設備を導入するメリットがあります。
- 用地を占有しない
- 非常用電源として活用できる
- 太陽光発電投資として活用できる
用地を占有しない
太陽光発電の設備は、用地を占有せずに設置できるのが特徴です。例えば、次の場所に太陽光発電設備を設置できます。
- 建物の屋根
- 休耕地・放棄地
つまり、新たに森林を伐採しなくても、既存の建物・土地に設備を設置できるのです。
太陽光発電設備を設置するコストを抑えられることはもちろん、使われていないスペースを活用して、持続可能なエネルギーを生み出せるSDGs向けの発電手段だといえます。
非常用電源として活用できる
太陽光発電によって生み出された電力は、発電所に送電・売電できるだけでなく設備の蓄電池に保管できるのが魅力です。地震や水害といった災害の影響によって発電所からの電力供給が止まった場合に、非常用電源として活用できます。
もしものトラブルが起きた場合でも短期的に社会活動・生命活動を維持できることから、SDGsへの貢献だけでなく、企業・個人ともに所有するメリットのある設備です。
太陽光発電投資として活用できる
太陽光発電には、SDGsや電力を生み出すだけの目的以外にも「投資」という利用価値があります。例えば、次の方法で太陽光発電が利益に変わります。
- 太陽光発電投資で利回りを獲得する
- 電力を売電して利益を獲得する
- 国の制度を利用してクレジットを受け取る
環境のこと、災害のことだけでなく、企業・個人の利益を生み出すのが太陽光発電のメリットです。また、太陽光発電投資が企業の節税につながります。太陽光発電投資について興味をお持ちなら、ぜひ以下の記事もチェックしてみてください。
関連記事 太陽光発電投資とは
SDGsで太陽光発電に取り組む大きな課題
SDGsで重要な立ち位置にある太陽光発電ですが、以下のような課題が立ちふさがっています。
- メンテナンス費用がかかる
- 環境破壊につながる対策が目立つ
メンテナンス費用がかかる
太陽光発電設備の寿命は、およそ25〜30年だといわれています。壊れた際の補修費用、不具合が起きた際の修理費用がかかることはもちろん、定期的なメンテナンス費用や負担を避けられないのがデメリットです。
また、山地部や河川付近といった災害の影響を受けやすいエリアに設置すると、さらに大きなダメージを受けてしまいます。損害保険に加入するほか、利益率とメンテナンスコストの按分を考えつつ、SDGsのために導入すべきか否かを検討することが重要です。
関連記事 太陽光発電のメンテナンス費用(維持費)
環境破壊につながる対策が目立つ
メガソーラー発電計画や土地の新規開拓の影響を受け、近年では森林伐採を行って太陽光発電設備を設置する企業も増えています。企業による利益確保や投資目的、節税が優先され、山地部一帯を丸裸にして太陽光発電設備が設置されているのです。
しかし、森林伐採を行うことは「環境を守る」という条件から逸脱しており、SDGsの取り組みとの矛盾を生んでいます。太陽光発電の導入が新たな環境破壊につながっていることから、脱炭素の取り組みを阻んでしまうのではないかという意見も挙がっています。
森林伐採を行って太陽光発電設備を設置することには、主に次の生態系を損失するリスクがあります。
- 二次林・人工林
- 人口草原
- 畑
- 水田
SDGsに取り組む際には、環境を破壊せずに太陽光発電設備を導入することが求められます。
SDGsの持続可能な社会実現に向けた再生可能エネルギーの取り組み
SDGsの持続可能な社会実現へ向け、次の再生可能エネルギー導入が推進されています。
- 太陽光発電
- 水力発電
- バイオマス発電
- 風力発電
- 地熱発電
特に注目されているのが「太陽光発電」「バイオマス発電」です。用地を使わずに導入できる太陽光発電の汎用性の高さ、そして使わなくなった資材を活用して電力を生み出すバイオマス発電は、エコを意識した発電方法にマッチしています。
一方「水力発電」「風力発電」「地熱発電」は導入できる場所が限られるほか、土地の条件に左右されやすいのがネックです。
SDGsで太陽光発電を用いた日本の取り組み
すでに日本では、SDGsの取り組みとして太陽光発電の導入が推進されています。環境省を含む政府が実施している支援を2つ紹介します。
- 太陽光発電の導入支援
- 環境省主催のオンラインセミナーの開催
太陽光発電の導入支援
環境省では、太陽光発電の導入を支援するために、次の補助金事業・導入支援事業を提供しています。
支援事業の名称 | 概要 |
---|---|
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業 | 民間企業等の再エネ主力化・レジリエンス強化促進のために補助金を交付 |
新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業 | 営農地事業・ため池事業・廃棄物処分場事業への支援のほか、地産地消による太陽光発電の導入支援を実施 |
再エネ主力化に向けた需要側の運転制御設備等導入促進事業 | 屋外照明のスマート化、離島における再エネ主力化をサポート |
SDGs関連の支援事業は豊富に提供されています。公募は毎年一定期間で実施されるため、導入支援事業の要綱をチェックしてみてください。
環境省主催のオンラインセミナーの開催
環境省では、SDGsや太陽光発電導入の知識・ノウハウを提供するために、オンラインセミナーを開催しています。一例として、これまでに次のオンラインセミナーが開催されました。
オンラインセミナーの名称 | 概要 |
---|---|
再エネ到達のためのオンラインセミナー (2023年9月28日開催) | 再エネ調達のための太陽光発電設備事業の知識・ノウハウ・事例の紹介 |
自家消費型太陽光発電設備の導入に関するオンラインセミナー (2022年9月29日開催) | 環境支援事業や自家消費型太陽光発電の導入事例の紹介 |
また、オンラインセミナーの最新情報は環境省公式サイトに新着情報が掲載されています。2023年現在も充実したオンラインセミナーに参加可能です。
SDGsにおける太陽光発電・太陽光パネルの企業導入事例
企業の導入事例を詳しく知りたい方向けに、SDGsにおける太陽光発電・太陽光パネルの導入事例を2つ紹介します。
- カーポート型太陽光発電設備導入|ワクラ村田製作所
- 遊休農地を活用したソーラーシェアリング|小田原かなごてファーム
カーポート型太陽光発電設備導入|ワクラ村田製作所
精密機器製品の開発・製造を提供する「ワクラ村田製作所」では、SDGsに貢献する取り組みである「RE100」「SBT」をベースとした環境対策として、カーポート型の太陽光発電設備を自社工場の駐車場200台分の範囲に設置しました。
企業向けの環境対策の取り組みです。温室効果ガスの排出削減に取り組むことによって企業PRや新規事業開拓等に役立ちます。
関連記事 RE100とは
駐車場のカーポート屋根部にソーラーパネルを設置し、自動車の駐車と太陽光発電を両立させたシステムです。施設全体のCO2(二酸化炭素)の削減率11%をまかなうことができ、SDGs13番目の目標達成に貢献しています。
遊休農地を活用したソーラーシェアリング|小田原かなごてファーム
神奈川県小田原市でサツマイモ畑を営農する「小田原かなごてファーム」は小田原市と協力して、土壌を休ませている遊休農地を活用して太陽光発電設備を設置しました。
使っていない土地を有効活用しながら太陽光発電を実施できるため、電力を売電して収益を生み出しています。また、太陽光パネル設置による光合成量の限度を考慮してあることから、設置範囲の土壌への影響もありません。
再生可能エネルギーの活用と環境の維持を組み合わせた、SDGs向けの取り組みだといえます。
関連記事 遊休農地とは
SDGsと太陽光発電についてよくある質問
SDGsと太陽光発電の関係を深く理解していただくために、よくある質問を整理しました。
- SDGsにおける太陽光発電は何番目の取り組みなの?
-
太陽光発電の取り組みは、SDGsの17つのゴールのうち、7番目「クリーンエネルギーをみんなに届ける」、13番目「気候変動の具体的な対策を実施する」の目標達成のために活用できます。
7番目の目標では、全人類に再生可能エネルギーによる電力を届けて貧富の差をなくすこと、発展途上国の温室効果ガス排出を抑制することを目的として、太陽光発電で貢献できるのが特徴です。
13番目の目標では、地球温暖化や気候変動の原因である温室効果ガスの排出を抑制するために、再生可能エネルギーの「太陽光発電」でSDGsに貢献できます。
- 太陽光発電はなぜ環境にやさしいの?
-
太陽光発電は、発電時に温室効果ガスを排出しないため地球環境にやさしいといわれています。
従来の発電方法である「火力発電」は莫大なCO2を排出するのが問題です。また原子力発電についても、環境に悪影響を及ぼすほか、使用燃料の処理に限界があります。
対して、太陽光発電を含む再生可能エネルギーは、自然の力を使って発電可能です。環境への影響を抑えつつ十分な電力を発電できるSDGs向けのクリーンな電力として導入が進んでいます。
SDGsと太陽光発電のまとめ
SDGsにおいて太陽光発電は、17つあるうちの7番目のゴール「クリーンエネルギーをみんなに届ける」、13番目のゴール「気候変動の具体的な対策を実施する」を達成するために必要な環境対策の手段です。
2030年目標であるSDGsの目標達成に貢献できることはもちろん、自社電力をまかなえる、災害時の補助電源にできる、投資で利用できるといった魅力があります。
また、環境省といった国からの支援・補助を受けて太陽光発電を導入する企業もあります。この機会にSDGsについて深く理解し、太陽光発電導入など私たちにできることを考えてみてください。