農地売却の方法・流れ・税金などを解説! 田んぼを売りたいと考えたらどうする?
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「使わなくなって放置している田んぼを売りたい」
「農地を売却する方法は?」
「管理できない農地を手放したい……」
使わない田んぼや畑を持っていて、上記のようにお悩みではありませんか? 田圃や農地の売却には、手続きの内容や価格相場に関して正しい知識が必要になります。
本記事では、農地売却に関する以下について解説します。
田んぼ・農地を売却したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
【売却できない?】農地の売却が難しい理由
農地の売却が難しい理由として、次の3点について解説します。
- 田んぼ・農地は農家しか購入できないため
- 農家が高齢化しているため
- 農業後継者が不足しているため
田んぼ・農地は農家しか購入できないため
田んぼ・農地の売却が難しいのは、田んぼ・農地は農家しか購入できないと法律で定められているためです。
農地法の規定により、農地の地目を転用せずに購入できるのは、農業委員会に許可を受けた農家だけであるとされています。国民の食糧生産のための農地を守るという考え方が根底にあるのです。
関連記事 農地法をわかりやすく解説
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農家が高齢化しているため
農家の高齢化によって、田んぼ・農地の売却が難しくなっています。若い農家であれば、農地をさらに購入して経営規模を拡大していく場合もありますが、高齢農家では拡大が難しいケースが多いためです。
農林水産省「令和3年度食料・農業・農村白書」に掲載された「年齢階層別基幹的農業従事者数」の図を見てみましょう。
65歳以上の農家が全体の70%を占めており、年々高齢化が進んでいることがわかります。
つまり、農業従事者数が減っているだけでなく高齢者割合も増加しており、ますます買い手がいなくなっているため、農地売却が難しい状況です。
農業後継者が不足しているため
農業後継者の不足からも、田んぼ・農地の売却は難しくなります。農業後継者の不足によって、耕作放棄地が増え、農地を購入したいというニーズが減っているためです。
参考として、農林水産省「令和3年度食料・農業・農村白書」に掲載された「基幹的農業従事者数」の図を見てみましょう。
農業に従事する人の数が減少傾向にあるのがわかります。農業後継者の不足がひとつの原因となり、耕作放棄地が増えています。
関連記事 耕作放棄地とは? 問題と解決策
参考として、全国の耕作放棄地の面積の推移が以下です。
年 | 耕作放棄地面積(万ha) |
---|---|
1975 | 13.1 |
1980 | 12.3 |
1985 | 13.5 |
1990 | 21.7 |
1995 | 24.4 |
2000 | 34.3 |
2005 | 38.6 |
2010 | 39.6 |
2015 | 42.3 |
近年、耕作放棄地が増加している様子が読み取れます。
つまり、農業後継者が不足しており、耕作放棄地が増えていることから、農地が余っているのが現状です。そのため、農地を購入したいというニーズが減っています。
農地の売却相場
田んぼや農地を売却するときに気になるのは、売却相場です。農地の売却相場に関する次の2点について解説します。
- 農地価格の調べ方
- 農地の売却相場は下落傾向
なお、農地の売却相場や価格の調べ方については以下の記事をご覧ください。
関連記事 田んぼ売却の相場と農地価格の調べ方
農地価格の調べ方
田んぼ・農地を売却するにあたっては、まず、農地価格を調べることから始めましょう。ある程度の相場をつかんでおけば、安く買い叩かれることを防げるためです。
具体的には、全国農業会議所の農地価格に関する調査結果が公表されているため、参照することをおすすめします。
以下に示すのは、「農地価格と対前年増減率(純農業地域)」のデータです。
相場を理解するには、たとえば関東地方の田んぼであれば、上記の表の「中田」の「平均価格」の関東ブロックの欄を見てみましょう。139万8,000円/10aであることがわかります。この相場を理解した上で、売却にのぞめば安心です。
農地の売却相場は下落傾向
田んぼ・農地の売却相場は下落傾向にあります。参考として、全国農業会議所の調査結果「農地価格の推移(純農業地域の農用地区域)」が以下です。
純農業地域の農用地区域における、田んぼの価格も畑の価格も年々下がり続けていることがわかります。以下の理由より、この傾向は今後も続くと考えられています。
- 耕作放棄地の増加
- 農業収益の低下
【農地の売却相場の下落理由①】耕作放棄地の増加
農地の売却相場が下落している第1の理由は、耕作放棄地の増加です。すでにデータを見たように、全国の耕作放棄地の面積は年々増えています。
耕作放棄地は、耕作されていて管理が行き届いている農地に比べると、価格は当然下がります。また、耕作放棄地が増えてくると周辺の農地にも影響を与えることになり、地域の農地価格が下がります。
【農地の売却相場の下落理由②】農業収益の低下
農地の売却相場が下落する第2の理由は、農業収益の低下です。農業収益が低下すると、農地を購入しても投資に見合った収益が得られないため、購入が抑制されます。
農地を購入する人が減ると、農地の需要よりも供給が大きくなり、農地の売却相場は下がります。
農地の売却方法
田んぼ・農地の売却方法には、以下の2つがあります。
- 農地として売却
- 農地転用して売却
それぞれについて、詳しく解説します。
農地として売却
田んぼ・農地の売却方法の1つ目は、地目が農地のままで売却する方法です。この場合には、売却する相手は農家でなければなりません。
高齢化、後継者不足などにより、買い手を見つけることは一般的には困難です。ただし、条件のよい農地であったり、経営状態が良好な農家の多い地域であったりする場合には、買い手が見つかるかもしれません。
農地のまま売却するケースについて、詳しい手続きの流れについては、「【農地として売却】田んぼ・農地の売却の流れ」をご覧ください。
「農地転用」して売却
田んぼ・農地の売却方法の2つ目は、農地転用して売却する方法です。ただし、農地を転用することは制限されているため、さまざまな条件をクリアしなければなりません。
関連記事 農地転用とは
まず、すべての農地が転用可能ではない点に注意が必要です。農地転用が可能なのは第2種農地と第3種農地、および市街化区域にある農地です。
所有者を変更せずに転用する場合には、農地法第4条に基づいて手続きをします。一方、転用するために売却する場合には、農地法第5条に基づいて、農地の売主と買主が連名で、農地転用を申請します。
農地転用する場合について詳しい手続きについては、「【農地転用して売却】田んぼ・農地の売却の流れ」をご覧ください。
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【農地のまま】農地売却する流れ
農地として売却する場合における、農地の売却の流れは次のとおりです。
- 購入者を探し売買契約を結ぶ
- 農業委員会に許可を申請する
- 所有権移転請求権の仮登記を行う
- 本登記後、売却費用を受け取る
購入者を探す
農地の売却のスタートは、購入者となる農家を探すことです。購入者探しの方法としては、以下のようなものがあります。
- 近隣の農家から探す
- 農地中間管理機構(農地バンク)に依頼する
- 不動産業者に依頼する
売買契約を結ぶ
農地を農地として売却するためには、農業委員会の許可が必要ですが、許可を得るためにはその前に売買契約を結ぶことが不可欠です。
売買契約の成立などが明確に示されないと、農業委員会の許可が下りない可能性が高まります。
農業委員会に許可を申請する
買主と売買契約が結べたら、農業委員会に農地売却の許可申請をします。必要な書類は、各地の農業委員会ごとに異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
所有権移転請求権の仮登記を行う
農業委員会への許可申請後は、許可が下りる前に「所有権移転請求権の仮登記」を行うのが一般的です。
不動産の権利の所有者を記録する「登記」を仮に行い、田んぼ・農地の所有権を確実に買主に移転することを表明します。
どうしても必要とされる手続きではありませんが、仮登記によって売主と買主の申請関係が構築されます。
本登記後、売却費用を受け取る
農業委員会の許可が下りた場合には、正式に所有権を買主に移転する「所有権移転登記(本登記)」をします。本登記後、買主からの売却代金を受け取り、手続きは完了です。
また、農業委員会から、農地売却の許可が下りなかったケースでは、買主と締結した売買契約は無効になります。
農地転用して農地を売却する流れ
農地転用して売却する場合における、農地の売却の流れは次のとおりです。
- 買取業者に売却を依頼する
- 農業委員会に転用許可を申請する
- 所有権移転請求権の仮登記を行う
- 本登記後、売却費用を受け取る
買取業者に売却を依頼する
農地転用して売却する場合には、転用許可申請など、農地として売却する場合に比べて多くの手続きが必要です。そのため、信頼できる買取業者に売却を依頼することをおすすめします。
たとえば、「農地買取センター」なら農地転用手続きを手数料無料で対応します。太陽光用地のプロが現地調査。スピード買取・無料査定です。
売買契約を結ぶ
買主が見つかった場合には、売買契約を結びます。
農地転用して売却するためには、農業委員会の許可が必要ですが、許可を得るためにはその前に売買契約を結ぶことが不可欠です。
売買契約の成立などが明確に示されないと、農業委員会の許可が下りない可能性が高まります。
農業委員会に転用許可を申請する
売買契約を結んだら、農業委員会に農地転用の許可を申請します。必要な書類は自治体によって異なるため、事前に確認が必要です。
所有権移転請求権の仮登記を行う
農地として売却する際と同様に、どうしても必要とされる手続きではありませんが、農業委員会への許可申請後は、許可が下りる前に「所有権移転請求権の仮登記」を行います。
本登記後、売却費用を受け取る
都道府県知事からの許可が下りた場合には、転用許可証が交付されます。本登記をして、買主からの売却代金を受け取り、手続きは完了です。
なお、農地転用できる土地・できない土地や、詳しい手続き・費用などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事 農地転用とは
もし使っていない田んぼ・農地を太陽光用地として売却したいのなら、「農地買取センター」がおすすめです。農地転用手続きなど手数料無料でサポートします。
農地の売却時の税金・費用
農地を売る際には、どのような出費があるのか、以下の2点について解説します。
農地の売却時の税金
農地の売却時には税金を支払わなければなりません。農地の譲渡取得金額に対して、所得税と住民税と復興特別所得税が課せられます。譲渡所得は以下の式で算出されます。
譲渡所得 = 売却額 - 購入額 - 売却に要した経費
譲渡所得に税率を掛ければ税額がわかります。
また、農地取得から5年経っているかどうかで税率が異なるため、注意が必要です。なお、相続した農地の譲渡所得に係る所有期間は、相続人の所有期間を引き継ぐこととされています。
税の種類別税率は以下のとおりです。
税の種類 | 取得から5年以内の農地 | 取得から5年を超える農地 |
---|---|---|
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
復興特別所得税 | 0.63% | 0.315% |
農地売却の際にかかる税金や、確定申告の方法や必要書類・特別控除については以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
関連記事 農地売却にかかる税金と確定申告の方法
農地の売却時の費用
農地の売却時には、売買を依頼した不動産会社に対する仲介手数料が発生します。
農地売買にかかる手数料は、法律によって定められていないため、事前に不動産会社に確認しておきましょう。
ただし、仲介手数料は宅地建物取引業の規定に基づくことが一般的です。以下に、宅地建物取引業の仲介手数料を示しておきます。
売却額 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 売却額の5%以内 |
200万円を超えて400万円以下 | 売却額の4%以内 |
400万円超え | 売却額の3%以内 (農地売却では売却額×3%+6万円を用いることが多い) |
また、その他に、許可申請の代行を行政書士に依頼した場合には、別途費用が必要です。
関連記事 農地転用にかかる費用
農地の売買に必要な書類
農地の売買を検討している方向けに、ケースごとに必要となる書類を整理しました。
ケース | 自治体への提出が必要な書類 |
---|---|
農業委員会への売買許可申請 | 登記事項証明書 相続関係図等 公図の写し 位置図 見取図 営農計画書 耕作証明書 売買契約書の写し 農地等権利移動許可申請書 |
所有権移転登記 | 登記原因証明情報 名義変更する土地の登記識別情報もしくは登記済証(権利証) 印鑑証明書買主の住民票 農地の売買許可証 固定資産税の評価証明書 実印 |
農地転用許可申請 | 登記簿証明書 相続関係図等 位置図 公図の写し 周辺土地利用状況図 現況写真 事業計画書 土地利用計画図等建物等の平面図 排水計画図等資金計画書預貯金残高証明書 融資見込証明書 土地改良区の意見書地区除外申請書 |
地目変更登記 | 地目変更登記申請書 土地の案内図農業委員会の許可書 |
所有権移転登記 | 登記事項証明書 不動産登記申請書 登記原因証明情報登記済権利証または登記識別情報印鑑証明書 固定資産評価証明書 本人確認書類 実印 |
必要書類の準備方法、目的に合った解決方法が分からない場合には、仲介業者である不動産会社や行政書士、司法書士といったプロに相談・依頼するのがおすすめです。
また、国土交通省が提供する「宅地建物取引業者 検索システム」を利用して実績のある業者を探せば、悪徳業者に騙されることなく手続きを進行できます。
農地を高く売却するためのポイント
農地を少しでも高く売却するためには、押さえたほうがよいポイントが3つあります。
- 複数業者に査定を依頼する
- 農地取得後5年経ってから売却する
- 農地を適切に管理しておく
それぞれについて詳しく解説します。
複数業者に査定を依頼する
田んぼ・農地の査定を不動産会社に依頼する場合には、複数の業者に依頼して比較することをおすすめします。業者によって査定額が異なるためです。
複数を比較することによって、相場と比較して査定額が低すぎないか、適切な価格なのかなどが判断できます。
農地取得後5年経ってから売却する
田んぼ・農地を高く売却するためには、農地取得後5年経ってから売却することもポイントです。5年経っているかどうかで、譲渡所得にかかる税率が異なるためです。
前述したように、取得後5年を過ぎると、所得税、住民税、復興特別所得税の税率が下がります。とくに、取得後5年に近い場合には、少し売却を遅らせることで、大幅な節税になるため注意が必要です。
農地を適切に管理しておく
田んぼ・農地を高く売却するためには、農地を適切に管理しておくことが重要です。適切な管理は、農地の価値を維持し、高めることにつながります。
具体的には、次のような管理が必要です。
- 草刈り
- ゴミ拾い
- 排水路の管理
反対に、雑草が茂った状態の農地には、ゴミの不法投棄のリスクが発生してしまいます。たとえば、以下が雑草の茂った状態です。
見栄えのよくない農地は買い手もつきにくいですし、買い手が見つかったとしてもメンテナンス費用がかかるため、その分売却価格が下がってしまいます。
田んぼや休耕田における草刈り方法については、以下の記事をご覧ください。
関連記事 田んぼの草刈り
関連記事 休耕田の雑草対策
農地の売却に関するよくある質問
農地の売却に関して、よくある質問と回答をまとめました。
- 農地売却はどうして難しいのですか?
-
農地売却が難しい理由は、以下のとおりです。
- 田んぼ・農地は農家しか購入できないため
- 農家が高齢化しており、農地拡大が難しいため
- 農業後継者が不足しており、農地需要が減っているため
- 農地を宅地にして売るには?
-
農地を宅地にして売るには、農地の地目を変更して、宅地に転用しなければなりません。農地法第5条に基づいて、農地の売主と買主が連名で、農業委員会に農地転用を申請します。都道府県知事からの許可が下りたら売却が可能です。
- 田んぼを売却したら税金はいくらかかりますか?
-
田んぼを売却した場合にかかる税金には、所得税と住民税と復興特別所得税があり、以下の式で算出されます。
譲渡所得=売却額-購入額-売却に要した経費
税額=譲渡所得×税率
税率は以下の表のとおりです。
税の種類 取得から5年以内の農地 取得から5年を超える農地 所得税 30% 15% 住民税 9% 5% 復興特別所得税 0.63% 0.315%
田んぼを売りたい・手放したいとお考えなら
農地の売却は簡単ではありませんが、売ることは可能です。まずは農地価格の相場を調べましょう。
売却方法には、「農地として売却する方法」と「農地転用して売却する方法」があります。売却の際には、税金や費用も発生しますので、注意して手続きを進めてください。
田んぼ・農地を高く売却するためのポイントは、複数業者に査定を依頼する、農地取得後5年経ってから売却する、農地を適切に管理しておくなどです。信頼できる業者に依頼することが重要です。
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