休耕田(休耕地)の雑草対策を解説! やるべき理由と田んぼに草を生やさない方法
「休耕田の雑草対策は何をしたらいいの?」
「草刈りや除草剤を使う時期はいつ?」
「田んぼに草を生やさない方法は?」
休耕田(休耕地)に関して、上記のようなことに困っていませんか? 田んぼの健康を守るためには、深刻な被害をもたらす雑草への対策を理解しておくことが重要です。
この記事では、以下について解説します。
正しい雑草対策の知識を学ぶ参考にしてみてください。
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休耕田の雑草対策やるべき理由
休耕田を放置していると、いつの間にか敷地全体に雑草が生えてしまいます。
しかし、雑草対策をしなければさまざまなリスクが生まれます。
田んぼ(水田)としての機能を一時的に止めている土地のことです。
また、一時的に機能を止めている畑のことを「休耕畑」、田んぼ・畑のことをまとめて「休耕地」、まったく使わない土地を「耕作放棄地」と呼ぶ場合もあります。
まずは、休耕田の雑草対策をやるべき理由について紹介します。
- 土壌の栄養を失ってしまうため
- 雑草が広範囲に広がり手入れが難しくなるため
- 害獣・害虫がすみつくため
関連記事 雑草を放置するとどうなる?
土壌の栄養を失ってしまうため
休耕田に生えている雑草を放置すると、土壌の栄養を雑草に吸い取られてしまいます。
雑草は繁殖力の高い植物であるため、短期間で放置した田んぼを埋め尽くすのが特徴です。また、成長スピードも高いことから、土壌中の水分や栄養がすぐに奪われてしまいます。
さらに休耕田は、酸性物質を含む雨の影響で、酸性土壌へ変化することに注意しなければなりません。雑草は酸性の土壌を好む傾向にあるため、休耕田を放置すること自体が雑草の育ちやすい環境を作る原因になるのです。
作物が育ちにくい土壌へと変わってしまうため、早急に雑草対策を実施してください。
雑草が広範囲に広がり手入れが難しくなるため
休耕田の雑草は、土壌の栄養を奪い取り、急速に成長・繁殖を繰り返します。結果として、雑草は休耕田全体に広がって、手入れが困難な土地へと変わってしまうのです。
参考として、NPO 法人緑地雑草科学研究所が調査した雑草「スギナ」の地下基幹(根)のイラストを掲載しました。
イラストから、雑草は深さ60cm程度になるなど、地下深くに根を伸ばすことが分かります。また、垂直方向だけでなく、水平方向に複雑に根を伸ばすのが問題です。
休耕田を放置すると、表面的な草刈りだけでは対処できない土壌に発展します。田んぼを再開する際、大規模な雑草対策が必要になるため注意してください。
害獣・害虫がすみつくため
休耕田の放置は、雑草対策の手間だけでなく、害獣・害虫の”すみか”になることに注意しなければなりません。
たとえば、田んぼといった水分の多い土壌には、次の害獣・害虫がすみついてしまいます。
【害獣】
- イノシシ
- シカ
- イタチ
- 鳥類
【害虫】
- ウンカ・ヨコバイ類
- 斑点米カメムシ類
害獣・害虫は休耕田だけでなく、近隣の農作地、そして家屋・住民にも被害を及ぼします。休耕田の放置が、生活安全性を損なう原因になるため、早期対策が必要です。
もし田んぼの維持が難しいとお悩みなら、農地売却を検討するのもひとつの手段です。詳しくは以下の記事で解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
関連記事 田んぼを売るには? 農地売却の方法
休耕田に生える雑草の種類|困った雑草3選
休耕田には種類豊富な雑草が繁殖しますが、その中でも雑草対策の負担を増やして農家を困らせる雑草を3種類紹介します。
- スギナ
- ドクダミ
- カヤツリグサ
スギナ
スギナは、春によく見かける代表的な野草「つくし」のことです。雑草の中でも特に繁殖力が強く、短期間で群生して土壌を埋め尽くします。
またスギナは、深く根を張る植物です。群生したスギナ同士で根を絡ませあうため、手作業ですべてを抜き取るのはほぼ不可能だといえます。部分的に刈り取ったとしても、すぐに成長して元通りになることから、どうしても雑草対策に時間がかかります。
さらにスギナの根が残っていると、再生して元通りになるのも気を付けるべきポイントです。雑草対策を行う場合には、根の処理を徹底しなければなりません。
ドクダミ
ドクダミは、湿気のある日陰や水辺近くを好む植物です。黄緑と緑が組み合わさった葉が特徴であり、6月〜7月ごろに白い花を咲かせます。中には、建物の日陰で見かけたことがある人も多いでしょう。
日常でよく見かけるドクダミですが、繁殖力が高く休耕田をすぐに埋め尽くしてしまいます。地下深くに茎を伸ばして繁殖するため根の処理が難しいのはもちろん、根を残したままにしているとすぐに再生するのが注意するポイントです。
表面的な雑草対策だけでは処理できない困った植物です。根気よく処理を続ける必要があります。
カヤツリグサ
カヤツリグサは、棘のある穂が特徴の植物です。繁殖力が高く、アスファルトといった硬いものを突き抜けて生えてくる強い生命力があります。
またカヤツリグサは、地中深くに茎・根を伸ばしてしまうため、草むしりといった簡単な雑草対策だけでは根絶できない植物です。人や動物に穂をくっつけて繁殖地を広げてしまうことから、休耕田を放置すると、いつの間にか近隣の農作地にも影響を及ぼします。
ちなみにカヤツリグサの穂は、草刈り中に付着しやすいのが特徴です。草刈りの際には、穂を体に付けたまま周辺を移動しないように気を付けてください。
休耕田の雑草対策として田んぼに草を生やさない方法
休耕田の雑草対策を実施したいのなら、以下から最適な方法を選択してみてください。
- 耕種的防除
- 物理的防除
- 生物的防除
- 化学的防除
- 専門業者へ依頼
- 田んぼを手放す(売却)
雑草の種類に合わせて対策する「耕種的防除」
耕種的防除は、繁茂している雑草の種類に合わせて休耕田の雑草対策を変えていく方法です。たとえば、次の方法を用います。
雑草対策 | 概要 | 対策できる雑草の例 |
---|---|---|
深水管理 | 水深のある場所が苦手な雑草を根絶させる | タイヌビエ、クログワイなど |
2回代かき (しろかき) | 田んぼに水を入れて耕す期間を空けて2回実施することにより雑草を根絶させる | 出芽したばかりの雑草一式 |
耕起(こうき) | 稲刈り後に土壌を掘り起こして雑草を繁殖しづらくする寒い時期に耕起することにより雑草を低温・乾燥させる | 同上 |
冬季湛水 (とうきたんすい) | 冬の間も水をためて雑草を弱らせる | コウノトリ、ナベヅル、ラムサールなど |
田畑輸換栽培 (でんぱたりんかんさいばい) | 1つの土壌で稲や麦、大豆といった耕作物を変えながら水田に生える雑草を減らす | ミズガヤツリ、ウリカワなど |
防除できる雑草の種類は、雑草対策によって変化します。地域・生活エリアによって繁殖する種類が異なる雑草を調べたうえで方法を選んでください。
トラクターで雑草対策する「物理的防除」
物理的防除は、人力およびトラクターを用いて休耕田の雑草対策を行う方法です。物理的防除の種類を以下に整理しました。
雑草対策 | 概要 |
---|---|
機械除草 | 手押し用除草機で雑草を取り除くトラクターの場合には除草アタッチメントを取り付けて使用する |
再生紙マルチ (再生紙マルチ直播栽培、布マルチ直播栽培) | 再生紙を地面に張り付けて雑草の繁殖を防ぐ |
活性炭マルチ | 活性炭で水面を濁らせて雑草の繁殖を防ぐ |
物理的防除は、多くの雑草に有効な対策です。ただし、機器やアイテムの準備に費用がかかります。また、利用する種類で製品のサイズや価格が異なることも注意してください。
捕食関係を利用して雑草対策する「生物的防除」
生物的防除は、耕作地に天敵となる動物を放して休耕田の雑草対策を行う方法です。
たとえば、雑草を食べてくれるアイガモ、害虫による食害を減らしてくれるハチといった生物を放すことによって、生物の力を借りながら環境にやさしい雑草対策を実施できます。
ただし次の点に注意してください。
- 耕作物を倒す場合がある
- 放す動物・虫が小さすぎると防除効果が弱まる
- 野生動物からの被害を受けやすい
- 飼育費用がかかる
また生物的防除では「生物」を活用することから、飼育費用や脱走対策、野生動物対策が欠かせません。飼育費用や柵の設置といった対策が必要です。
農薬を使って雑草対策する「化学的防除」
化学的防除は、農薬・除草剤を用いて休耕田の雑草対策を実施する方法です。雑草を根から根絶させる薬剤を散布するため、手間をかけずに効率よく雑草対策を実施できます。ただし、次のポイントに注意しなければなりません。
- 近隣地の所有者へ事前報告を行う
- 近隣の田んぼから一定距離を保ちつつ散布する
- 農文協に登録された農薬を利用する
化学的防除は、土壌に浸透して周辺の耕作地にも影響を及ぼす恐れがあります。場合によっては他所有者の田んぼを枯らしてしまう危険性があるため、注意点を理解したうえで散布してください。
事前確認の際に農薬散布がNGだと言われた場合には、トラブル回避のために、前述したほかの雑草対策を検討するのがおすすめです。
専門業者に依頼するのもアリ
「休耕田の雑草対策が手間だ」「どんな雑草対策をすべきか分からない」とお悩みなら、専門業者に依頼するのがおすすめです。
簡単な草刈りであれば、シルバー人材センターに料金を支払って依頼できます。また、防草シート・グランドカバーの施工や前述した防除方法に対応してくれる業者も複数見つかるため、自身で対応できない場合にはプロに相談しましょう。
所有する休耕田に最適な雑草対策を提案してもらえます。
田んぼを手放す(売却)
「毎年の草刈りが大変」「遠方の土地で管理できない」といった理由で、田んぼを手放したいというケースでは、売却するのも手です。
実際に、「農地買取センター」では、高齢化や荒廃農地化などにより、農地売却されるお客さまがいらっしゃいます。
詳しくは以下より、農地売却センターのお手続き内容や買取実績をご覧いただけます。
【無料相談】草刈りが大変・遠方の田んぼが管理できない……とお悩みなら
関連記事 田んぼを売るには? 農地売却の方法
休耕田に植えることで雑草対策になるもの
休耕田の雑草対策は、雑草に外力を加えるほかにも「植栽」「耕作」によって対策できるケースがあります。作付けすることによって雑草対策に効果的な植物・野菜を紹介します。
- コスモス
- レンゲ
- 野菜
休耕田の雑草対策①コスモス
コスモスは、秋に咲く一年草です。色とりどりの花を咲かせ、種子散布した一面を草花で敷き詰めます。
そしてコスモスは、雑草に比べて根を張る範囲が浅く丈夫な植物であるため、休耕田の維持に効果的です。雑草が生えるスペースを減らせるのはもちろん、害虫の発生を抑制し、ハチといった益虫の生息にも効果があります。
見栄えがよく、休耕田の土壌を維持しやすいため、雑草対策としてコスモスを植える農業従事者もいます。
休耕田の雑草対策②レンゲ
レンゲは、日本に生育する風物詩的な花です。春に紫色の花を咲かせるのが特徴であり、土壌を健康にする「緑肥」になる有益な植物だといわれています。
新鮮な有機物を用いた肥料のことです。草刈りを行うことによって土壌中の微生物が増殖・分解が進みます。土壌の硬度・透水性が改善して、健康な土壌を維持できるのが特徴です。
レンゲの生えた休耕田に水を入れると、レンゲの分解スピードが高まり、有機酸を含んだ層が形成されます。雑草の生えにくい土壌をつくり出してくれるため、休耕田の雑草対策としてよく用いられているのです。
休耕田の雑草対策③野菜を植えるのもアリ
田んぼを休耕田にするのなら、野菜等の栽培を検討してみてください。たとえば次の耕作物が、日本各地の休耕田を活用して栽培されています。
- そば
- なたね
- 大豆
- 山菜類
- 茶
- 果樹類
- さつまいも
- なす
所有する土地を有効活用するために、新たな栽培に取り組む人もいます。雑草だらけにするのではなく、ぜひ新たな栽培の地として休耕田を活用してみてください。
耕作放棄地の雑草を放置しているなら
一時的に利用していない休耕田なら雑草対策が有効です。しかし、今後使用する予定がない「耕作放棄地」の雑草対策を行うのは負担にしかなりません。
関連記事 耕作放棄地の草刈り
耕作放棄地の現状や問題について、詳しくは以下の記事で紹介しています。所有する土地を無駄にしたくない方は、ぜひ参考してみてください。
関連記事 耕作放棄地とは? 問題と解決策
もし、耕作放棄地を所有しているのなら、以下の方法が検討できます。
- 農地バンクを利用して人に貸す
- 補助金を利用して新たな取り組みに活用する
- 農福連携により社会福祉に取り組む
- 農地転用ビジネス始める
- 売却する →「農地買取センター」が手数料無料でおすすめ
耕作放棄地を使わないまま放置すると、固定資産税がかかるほか近隣の耕作地とのトラブルにつながります。所有する耕作放棄地を有効活用するため、損をしない活用方法を見つけるために、新たな使い道を探してみてください。
田んぼや畑を使わなくなったということであれば、別の用途に土地活用もできます。農地転用が必要ですが、太陽光発電や住宅用途など、活用可能です。
関連記事 使わなくなった田んぼや畑の活用方法
休耕田の雑草対策でよくある質問
休耕田の雑草対策に関して、よくある質問と回答を整理しました。
- 休耕田で草刈りする時期はいつがいいの?
-
休耕田の雑草対策として草刈りするなら、次の時期に実施してください。
休耕田の草刈り時期- 6月~7月:雑草がもっとも成長しやすい
- 9月~10月:雑草の成長が弱まりやすい
- 11月~12月:翌春に咲く草花の成長につながる
雑草が生えやすい時期、生えにくくなる時期、生えなくなる時期の年3回実施するだけで、休耕田の土壌を健康に維持できます。
- 休耕田で除草剤を使う時期はいつがいいの?
-
除草剤を用いて休耕田の雑草対策を行う場合は、以下の時期をおすすめします。
除草剤の使用時期- 土壌処理型の場合:春先または秋
- 茎葉処理型の場合:4月~10月
予防のために利用できる「土壌処理型」、生えている雑草処理のために利用する「茎葉処理型」によって、それぞれ散布する時期が異なります。また、除草剤が土壌から流れ出る無駄を避けるために、天気のよい日に散布するのがおすすめです。
※除草剤を用いる場合は事前に、近隣の土地所有者に確認してください。除草剤が他の土地に影響を及ぼす場合があります。
- 草刈りしてはいけない日とは?
-
以下に示す時期・タイミングは草刈りを控えてください。草刈り機が故障しやすいほか、熱中症のリスクがあります。
草刈りしてはいけない日- 雨の日の翌日
- 真夏の気温が高い日
- 風が強い日
- 休耕田を畑にする方法とは?
-
今まで利用してきた田んぼを休耕田にしており「次は畑として利用したい(田畑輪換・転作したい)」と考えているのなら、以下の対策を実施してください。
田畑輪換・転作の対策- 雑草対策を行う
- 水はけをよくする
ちなみに田畑輪換・転作に向いている耕作物として「大豆」「小麦」「トウモロコシ」が挙げられます。用・排水路といった畑用の土壌設備を整えつつ、田畑輪換を実施してみてください。
- 雑草を光合成させずに弱らせる方法はある?
-
休耕田に繁茂する雑草を光合成させずに弱らせたいのなら、防草シート・グランドカバー・人工芝・砂利を用いるのが効果的です。直接日光に当たらないように土壌をカバーにすることで、雑草を枯らせます。
ちなみに防草シート・グランドカバーには、遮光性の高いポリプロピレンやポリエステルが用いられています。
休耕田の雑草対策まとめ
休耕田の雑草対策は、雑草によって土壌が劣化するのを防ぐ重要な対策です。将来、新たな耕作地として用いるために欠かせない準備・維持管理だといえます。
また、雑草対策としては豊富な防除方法が用いられています。その中でも環境にやさしい方法として「生物的防除」「草花の植栽」があるため、予算を考えつつ土壌の維持を始めてみてください。
使う予定が見つからない休耕田は、農地売却や国・自治体からの補助金制度を利用できます。
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参考:最強の雑草対策11個!低コスト・自分でやる方法と費用相場