RE100とは? 取り組みや加盟条件をわかりやすく解説

「RE100ってどんな取り組みなの?」
「ほかの企業はRE100でどんなことをやってるの?」
2050年のカーボンニュートラルを目標とした企業の取り組み「RE100」について、上記のような疑問があると思います。
本記事ではRE100について、以下をわかりやすく解説します。
日本企業が実施する脱炭素の取り組みを知るため、ぜひ最後までご覧ください。
RE100とは? わかりやすく解説
RE100とは、企業の事業活動で消費するエネルギーを再生可能エネルギーに置き換える取り組みです。
世界的な問題である「地球温暖化」「気候変動」の対策として実施されており、2050年目標のカーボンニュートラル実現のため、日本企業はもちろん世界中の企業が取り組んでいます。
地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出量ゼロを目指す目標・取り組みのことです。日本では2050年の目標達成を目指しています。
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まずは、RE100の概要を詳しく解説します。
RE100の読み方と正式名称
RE100は「あーるいーひゃく」という読み方をします。また正式名称を「Renewable Energy 100%(再生可能エネルギー100%)」といい、現行の消費エネルギーを100%再生可能エネルギーでまかなうのが目的です。
RE100が設立された理由
RE100は、2014年に環境問題に取り組むNGO「Climate Group」と「CDP」が手を組んで発足しました。
RE100発足の背景には、地球温暖化や気候変動の原因である温室効果ガスの排出が影響します。例えば、事業活動では次のポイントで温室効果ガスを排出している状況です。
- 自動車による移動
- 工場稼働によるCO2(二酸化炭素)排出
- 仕事場の電力消費
モノを動かすためにはエネルギーが必要です。自動車のガソリン(化石燃料)から排出されるCO2のほか、会社や工場で用いる電力もCO2を大量排出する火力発電等から生み出されます。つまり、地球環境を脅かす問題を早期解決するためにRE100が発足されたのです。
RE100目標達成の計画水準
日本で推進されているRE100は、カーボンニュートラルの目標と同じ2050年に再生可能エネルギーへの置き換え100%を目指しています。また、中間目標として次の計画水準も提示しているのが特徴です。
- 2020年:30%
- 2030年:60%
- 2040年:90%
また環境省は新たな目標として、2030年までにRE100を達成すると公表しています。
RE100の加盟条件
RE100に加盟するためには、以下の条件を満たさなければなりません。
企業規模 | 条件 |
---|---|
年間消費電力量が100GWh以上(日本の場合は50GWh以上)の企業 | 条件なし |
年間電⼒消費量が100GWh未満(⽇本の場合は50GWh未満)の企業 ※条件を1つ以上有している場合に加盟可能 | RE100事務局が重視する地域の主要な事業者である |
RE100事務局が重視する業種の主要な事業者である | |
RE100事務局が重視する地域の政策提⾔に参加する意思がある | |
グローバルまたは国内で認知度・信頼度が⾼い | |
主要な多国籍企業(フォーチュン1000⼜はそれに相当する企業) | |
その他、RE100の⽬的に利する国際的・地域的な影響⼒がある |
上表から分かるように、企業規模の大きな会社のみ加盟できる条件が示されています。
中小企業向けのRE100「再エネ100宣言 RE Action」とは?

RE100は、世界的に影響力のある大企業向けの取り組みであるため、基本的に中小企業は参加できません。
その状況を解決すべく、2019年10月より国内で中小企業向けのRE100の取り組み「再エネ100宣言 RE Action」の運営がスタートしました。
再エネ100宣言 RE Actionは、RE100の加盟条件に届かない企業・団体が実施する中小企業向けのRE100です。たとえば、次のような活動を実施しています。
- 参加団体による再エネ100%宣言
- 再エネ100%実践支援
- 情報発信
参加団体対象の補助金制度も用意されているため、加盟によって再エネ導入を始めやすくなるのが魅力です。
RE100で実施する再エネ電力調達手法
RE100では、以下に示す再エネ電力の調達手段が認められています。
- 専用線で接続された再エネ電源からの直接調達する
- 電力系統(送配電網)を介して再エネ電力メニューを購入する
- 再エネ電力証書を購入する
各調達手段の概要を紹介します。
専用線で接続された再エネ電源からの直接調達する
敷地内外に設置された再生可能エネルギーの発電機と電力消費スポットを直接専用線で接続して、電力を調達する方法です。
事業で用いる電力を再生可能エネルギーから生み出された電力にすれば、自社だけでなく第三者機関から調達しても問題ありません。ちなみにPPA(太陽光発電投資)事業者としてこの調達手法に参加すれば、次のようなビジネスの仕組みを生み出せます。
発電した電力を企業に提供して利益を得る、そして余った電力は電力会社に売却して利益を得る方法でビジネスを実施できるのが魅力です。
電力系統(送配電網)を介して再エネ電力メニューを購入する
小売電気事業者が提供している「再エネ電力メニュー」を購入し、電力系統を介して再エネ電力を調達する方法です。
小売電気事業者が自ら再生可能エネルギーで調達した電力のことです。事業者によって販売プランが設けられており、電力系統を介して事業用の電力に使用できます。
現在のところ、電力の販売価格に相関関係はなく、小売電気事業者によって価格にばらつきがあるようです。より安く再エネ電力メニューを購入できる場所を見つけることが、コスト削減につながります。
再エネ電力証書を購入する
再エネ電力の調達手段は、電力を購入する方法だけではありません。再エネ電力の環境価値である「再エネ電力証書」を購入することで、調達したことと同等の効果を得られます。
再エネ電力の環境価値を示す証書という意味です。たとえば「Jクレジット」「グリーン電力証書」「非化石証書」が該当します。
この調達手段は、RE100の目標達成にのみ効果を発揮します。電力の購入は別途、電力小売事業者から購入する必要があるので注意してください。
Jクレジットについて興味をお持ちなら、以下の記事がおすすめです。Jクレジット制度の仕組みをわかりやすくまとめています。
関連記事 Jクレジット制度とは
RE100に該当する再エネ電力とは?
RE100の取り組みを行ううえで重要なのが、再エネ電力の種類を知ることです。再エネ電力とは、次の発電方法で生み出された電力を指します。
- 太陽光発電
- 風力発電
- 水力発電
- バイオマス発電
- 地熱発電
RE100を実施する企業は、上記のどれかから再エネ電力を調達しなければなりません。各発電方法の特徴を詳しく解説します。
環境エネルギー政策研究所の調査より、2022年の値をもとにしています。
太陽光発電及び太陽熱発電

太陽光発電(太陽熱発電)は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する発電システムです。シリコン半導体に光が当たると電気が発生する仕組みを活用して電力を生み出します。
日本の全発電電力量の9.9%(2022年の調査より)が太陽光発電によってまかなっている状況です。大手企業はもちろん、小売事業者、個人投資家まで幅広く太陽光発電を実施しています。
太陽光発電投資については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事 太陽光発電投資とは
風力発電

風力発電は、風エネルギーを電気エネルギーに変換する発電システムのことです。風エネルギーによって回された風車の回転エネルギーが発電機に伝わり電気が生み出されます。
主に、風の強い土地に設けられる発電システムであり、日本の全発電電力量の0.9%(2022年の調査より)が風力発電でまかなっています。
水力発電 (大型水力を含む)

水力発電は、水の力を利用して電気を生み出す発電方法です。国内では、主にダム施設を利用して発電するケースが多く、ダムから水を放流する際の位置エネルギーを水車に伝えて発電機にエネルギーを蓄えます。
日本では、全発電電力量の7.1%(2022年の調査より)を水力発電でまかなっているのが特徴です。また、水力発電はダム管理者と連携する水力発電事業者および、河川に設置した発電機器を用いる小水力発電事業者が電力を提供しています。
ただし、水力発電は大規模な建築費が必要になるため普及・拡大が難しいです。農業といった利権問題もあることから、普及しにくいといわれています。
バイオマス発電 (バイオガス発電を含む)

バイオマス発電とは、動植物から生まれた以下の材料を燃やしたりガス化させたりすることで電力を生み出す発電方法です。
乾燥系 | 湿潤系 | その他 |
---|---|---|
廃材・林地残材 | 食品加工廃材 | 黒液・セルロース |
農業・畜産の残物 | 家畜排せつ物 | 糖・でんぷん・菜種 |
建築廃材 | 下水汚泥・し尿 | 産業食用油 |
日本では、全発電電力量の4.6%(2022年の調査より)をまかなう発電方法です。「残り物」を活用することから、エコ・省エネな発電方法だといわれています。
地熱発電

地熱発電は、火山地帯でよく起こる間欠泉といった「水蒸気」を用いて電気を生み出す発電方法です。上記の力でタービンを回して電力を生み出します。
日本では主に、九州地方・東北地方・北海道に地熱発電所が設けられています。場所が限られること、火山地帯というリスクがあることから、日本の全発電電力量の0.2%(2022年の調査より)をまかなっている状況です。

RE100の日本加盟企業の事例を紹介
RE100は、すでに日本加盟企業によってさまざまな取り組みが進められています。中でも大きな事業を推進する以下の企業事例を詳しく解説します。
- 株式会社リコー|大手企業
- 積水ハウス株式会社|大手企業
- イオン株式会社|大手企業
なお、企業の脱炭素経営について、意味や事例については以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。
関連記事 脱炭素経営とは
株式会社リコー|大手企業
事務機器や光学機器の製造メーカー「株式会社リコー」は、2019年11月にRE100の取り組みとして、再生可能エネルギーであるメガソーラー(太陽光発電設備)の設置範囲を拡大しました。
拡大場所として選ばれたのは、事業所ビルの屋上です。所有施設を有効活用し、屋根全体を埋めるように太陽光発電システムを設置しています。2拠点の設置により、毎年の電力発電量を13.8GWhをまかなえる見込みです。
積水ハウス株式会社|大手企業

大手住宅メーカーの「積水ハウス株式会社」は、RE100の取り組みとして、事業活動における使用電力の再生可能エネルギー化を2040年までに100%を目指すと発表しました。
中でも注目が集まっているのが2019年11月に発表された「積水ハウスオーナーでんき」による余剰電力の買取です。積水ハウス株式会社のオーナーが余らせた電力を買い取る取り組みであり、1kWhあたり11円の電気代・電気料金を買取します。
イオン株式会社|大手企業

全国にショッピングモールを展開する小売業界のトップ「イオン株式会社」は、地域の余剰再エネ電力をイオン店舗に活用する「V2H(充放電設備)」を2022年からスタートしました。
当事業は、EVと太陽光発電システムを持つ家庭の方を対象として提供する取り組みです。自宅の余剰電力をEVに蓄え、イオンモール内のV2Hに提供することでポイントを贈呈するサービスです。
供給された電力はイオンモール内で使用されることから、効率に優れる再エネ調達手段だといえます。
RE100のよくある質問
RE100に関するよくある質問とその回答をまとめました。
- RE100に加盟している日本企業数はどのくらい?
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環境省の調査によると、2023年3月時点で世界399社の加盟企業のうち、日本企業は78社と上位2位の加盟数です。世界的には金融機関の加盟数が多い傾向になっていますが、日本では建設業、電気機器、小売業の加盟数が多い傾向です。
出典:環境省「RE100に参加している国別企業数」
- RE100にかかる年会費はいくらですか?
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RE100の年会費は、申し込みするランクによって異なります。
たとえば、ロゴ利用といった基本利用のみに対応した「Standardクラス」では年会費5,000ドルですが、イベント登壇といった特典のある「Goldクラス」では年会費1万5,000ドルです。
出典:環境省「RE100について」
- RE100に加入するメリットは何?
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RE100に加入するメリットは次のとおりです。
RE100に加入するメリット- 環境対策に貢献できる
- 企業の社会的評価が向上する
- ESG投資家の目に触れやすくなる
- 再生可能エネルギーの導入がコスト削減につながる
環境対策に取り組むことによって、人材確保・投資機会・コスト削減といった利益を生み出します。また、競合他社との差別化にも効果を発揮します。
- RE100対応電力には何がある?
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RE100の取り組みに対応する電力・対応しない電力を整理しました。
対応する電力 対応しない電力 太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電 火力発電、原子力発電 地球温暖化や気候変動の原因である「温室効果ガス」を生み出す発電電力は、RE100の対象外です。RE100では必ず再生可能エネルギー由来の電力を活用しなければなりません。
RE100のまとめ
RE100は、2050年目標のカーボンニュートラル実現に向けた重要な企業活動のひとつです。従来の利用エネルギーを再生可能エネルギーに変えていくことによって環境対策を実施しつつ、企業評価を高められます。
また、RE100を活用して太陽光発電投資といった取り組みをスタートする企業もあります。この機会にぜひ、自社に最適な環境対策・ビジネス展開を検討してみてください。