太陽光発電の屋根貸しとは? 他モデルとの比較やメリット・デメリットを解説

屋根貸し太陽光とは?
阿部希

「太陽光発電の屋根貸しを業者に勧められたけど、メリットはあるの?」
「屋根貸し太陽光は0円ソーラーとどう違うの?」

広い屋根がある建物を所有されている方の中には、上記のようなお悩みを持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

国土面積が小さい日本では太陽光発電を導入できる土地が残り少なく、既存の施設や農地への設置にシフトチェンジしている状況です。

しかし、初期費用などがネックで導入が進まないことから、第三者所有の太陽光発電を設置する屋根貸しなど様々な手法が登場しています。

そこで本記事では、屋根貸し太陽光の仕組みや0円ソーラーの他モデルとの比較、メリットとデメリットを解説します。

当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。

屋根貸し太陽光とは

「屋根貸し太陽光」とは発電事業者に太陽光発電システムを導入するためのスペースとして、建物の所有者が屋根を貸し出すビジネスモデルです。

以下の図は、屋根貸し太陽光の仕組みを表しています。

屋根貸し太陽光の仕組み

貸主と発電事業者が賃貸借契約を締結した上で、建物の屋根に太陽光パネルを設置し、それぞれ以下の収入を得ます。

収入
  • 貸主:屋根の賃料
  • 発電事業者:売電収入

太陽光発電設備の設置費用やメンテナンス費用は発電事業者が負担するため、建物の所有者での費用負担は不要です。

屋根を貸し出す賃料は、貸主と発電事業者との話し合いで決まります。

実際に、屋根貸し太陽光に向いている建物や賃料の相場がどのようになっているか、見ていきましょう。

屋根貸し太陽光がおすすめの建物

太陽光への屋根貸しに向いているのは集合住宅や工場など面積が広い建物で、具体的な屋根の形状は以下のとおりです。

屋根設置の適正屋根の形状
陸屋根、折板屋根、傾斜屋根、スレート屋根
曲面屋根、瓦屋根
大波スレート屋根、テント式屋根

屋根形状のイメージ

出典:PPA等の第三者所有による太陽光発電設備導入の手引き|環境省

太陽光発電の設置に適した屋根の材質は鉄筋コンクリートで、反対に以下4つの材質は向いていません。

  • ガラス
  • ポリカーボネート
  • 塩化ビニル
  • トタン

屋根の形状や材質以外にも、耐震性や耐荷重が基準をクリアしている、防水工事から月日が経過していないなどの条件を満たした建物が屋根貸しに適しています。

太陽光発電に屋根貸しする賃料の相場

屋根貸し太陽光の賃料は、地方自治体の条例で算定方法が定められているケースがほとんどです。

建物の所有者は条例に従い、以下どちらかの方法で賃料を決める必要があります。

賃料の価格設定方法
  • 面積あたりで賃料の単価を設定
  • 売電収入に応じた割合で設定

太陽光発電を設置する屋根の面積を基準にする場合、賃料は年間で100〜300円/㎡程度が一般的です。また、売電収入に対する割合で設定する場合は、5〜10%が賃料になる事例がほとんどです。

どちらの方法で賃料を決めるのがメリットが大きいかは、発電量や設置条件、個別の契約内容によって変わります。貸主と発電事業者の双方が納得できる条件が見つかるまで、話し合いが必要です。

参考:太陽光発電「屋根貸し」契約書モデル:ガイドライン|クール・ネット東京

太陽光の屋根貸しと他のモデル(0円ソーラー)を比較

屋根貸し太陽光以外にも、初期費用0円で太陽光発電を導入できるモデル(0円ソーラー)があります。以下では2つのモデルと、屋根貸し太陽光の違いを比較します。

  • PPAモデルとの違い
  • リースモデルとの違い

具体的にどのような違いがあるか、見ていきましょう。

PPAモデルとの違い

オンサイトPPAは発電事業者の費用負担で法人の施設に太陽光発電を設置し、直接建物に供給される電力を購入するビジネスモデルです。

建物の所有者にとって無償で設備が設置される点は、屋根貸し太陽光とオンサイトPPAで共通しています。

それぞれの違いを比較表にまとめました。

比較項目屋根貸し太陽光オンサイトPPA
設備の所有者発電事業者PPA事業者
初期投資不要
(発電事業者が負担)
不要
(PPA事業者が負担)
ランニングコスト不要
(発電事業者が負担)
電気料金
(発電事業者に支払い)
契約期間10~20年10~20年
設備の撤去・交換・移転等不可不可
環境価値の獲得可否×
(自家消費分のみ)
参考:PPA等の第三者所有による太陽光発電設備導入の手引き|環境省

ランニングコストの有無と、電力の自家消費により環境価値を獲得できるかどうかが屋根貸し太陽光とオンサイトPPAの大きな違いです。

リースモデルとの違い

リースモデルも初期費用の負担なしで太陽光発電を導入できるビジネスモデルで、リース会社に発電設備の利用料を支払って自家消費します。

屋根貸し太陽光とリースモデルの違いは、以下の比較表のとおりです。

比較項目屋根貸し太陽光リースモデル
設備の所有者発電事業者リース会社
初期投資不要
(発電事業者が負担)
不要
(リース会社が負担)
ランニングコスト不要
(発電事業者が負担)
リース料金
(リース会社に支払い)
契約期間10~20年10~20年
設備の撤去・交換・移転等不可不可
環境価値の獲得可否×
余剰売電の可否×
参考:PPA等の第三者所有による太陽光発電設備導入の手引き|環境省

リースモデルは発電した電気を自家消費したり、余剰電力を売電したりできる点が、屋根貸し太陽光との違いです。

太陽光に屋根貸しする3つのメリット

屋根の上のソーラーパネル

所有している建物の屋根を太陽光に貸す利点は、以下の3つです。

屋根貸しのメリット
  • 導入と維持管理の費用がかからない
  • 屋根の賃料が収入として得られる
  • 非常用電源になる

なぜメリットと言えるのか、順に説明します。

導入と維持管理の費用がかからない

発電事業者に屋根を貸すだけなら、太陽光発電の導入や維持管理のコストがかからない点がメリットです。

自己所有の太陽光発電を屋根に設置する場合、導入や維持管理のコストが発生します。

以下は、法人向けの太陽光発電を屋根に設置する場合にかかる費用の平均です。

費用項目平均コスト
初期費用22.3万円/kW
維持管理費用0.52万円/kW
参考:太陽光発電について|経済産業省 資源エネルギー庁

設備投資が難しくても太陽光発電を導入してCO2削減に貢献したい場合に、屋根貸し太陽光が向いています。

屋根の賃料が収入として得られる

太陽光への屋根貸しにおいて、建物の所有者は賃料が収益になります。

屋根に太陽光発電を設置しても自家消費や売電はできませんが、賃料として不労収入を得られる点がメリットです。

賃貸借契約の中で保証金を預かる運用になっていれば、一時的にまとまった資金を手にすることもできます。

契約終了時は発電事業者に保証金を返還しなければいけないため、資金が入り用な場合でも契約期間には注意が必要です。

非常用電源になる

通常、屋根貸し太陽光の貸主は太陽光発電の電気を自家消費できません。

ただし、賃貸借契約の内容によっては、停電時のみ非常用電源として貸主が太陽光発電の電気を利用できる可能性があります。

集合住宅で太陽光に屋根貸しする場合、停電時の非常用電源があることを売りにすれば入居率が上がることも考えられます。

導入コストをかけずに非常用電源を確保できるのは、屋根貸し太陽光のメリットです。

屋根貸し太陽光のデメリット・懸念点

太陽光の屋根貸しには、以下のようなリスクがあります。

屋根貸しのリスク
  • 建物の状態によっては屋根貸しが難しい
  • 太陽光に屋根貸しで補助金は利用できない
  • 売電収入は得られない
  • 太陽光への屋根貸しでは自家消費できない
  • 契約期間が長く途中解約は違約金が発生する
  • 発電事業者が倒産する可能性もある

どのような点がデメリットや懸念事項になるのか、順に見ていきましょう。

建物の状態によっては屋根貸しが難しい

所有している建物が太陽光発電の導入に向かない場合、屋根貸しできない可能性が高くなります。

以下は、屋根設置タイプの太陽光発電でのチェック項目です。

チェック項目
  • 屋根の形状や材質
  • 建物の耐荷重と耐震性
  • 日照条件
  • 建物などの周辺環境

建物の耐荷重と耐震性は人の安全性に関わる事項のため、とくに厳しくチェックされます。

新耐震基準が開始された1981年よりも前に建てられた建物は耐震基準を満たさないため、補強工事が必要です。

必要な耐荷重は、設置する太陽光発電の規模で変わるため、業者に構造計算書の作成を依頼して可否を判断してもらいます。

屋根への太陽光発電導入に適した条件が揃っていないと、発電事業者の利益が少ないため契約にいたりません。

太陽光への屋根貸しで補助金は利用できない

現在、太陽光発電の導入には様々な補助金制度が用意されていますが、屋根貸し太陽光の貸主が利用できる補助金はありません

屋根貸し太陽光の設置費用は、発電事業者が負担します。

しかし、建物の耐震性を補強する工事や屋根の防水工事が必要な場合、費用を負担するのは貸主です。

このため、補助金を利用できない点が貸主側のデメリットになります。

売電収入は得られない

屋根貸し太陽光で電気を売電できるのは発電事業者のため、建物の所有者は売電できません

太陽光発電で売電収入を得たい場合、屋根貸し太陽光を利用するのはデメリットです。

導入コストを抑えて売電収入を得られるようにしたい場合は、リースモデルが向いています。リースモデルを利用する場合、賃料は得られなくなります。

太陽光への屋根貸しでは自家消費できない

売電収入が得られないのと同様に、屋根貸し太陽光で貸主は基本的に電気の自家消費はできない契約になります。

屋根貸しの太陽光発電を設置している建物で電気を自家消費すると、発電事業者の収益がなくなることが理由です。

電気を自家消費するための太陽光発電を少ないコスト負担で屋根に導入したい場合は、屋根貸しよりもオンサイトPPAの利用がおすすめです。

オンサイトPPAを利用すると賃料の収入はなく、自家消費した電気量に応じた電気代をPPA事業者に支払うフローになります。

契約期間が長く途中解約は違約金が発生する

屋根貸し太陽光は、10〜20年と長期の契約になるケースが一般的です。

契約満了前に貸主が屋根貸しをやめたいと解約を申し出た場合、発電事業者はローンの返済が残ったまま設備を撤去することになるため損失が発生します。

このため屋根貸し太陽光の中途解約では、違約金が発生する契約内容がほとんどです。

屋根貸しする際は、途中で太陽光発電の撤去が必要にならないか慎重な検討が必須になります。

発電事業者が倒産する可能性もある

屋根貸し太陽光において発電事業者が途中で倒産する可能性は、ゼロではありません

太陽光発電は、カーボンニュートラルに向けて「CO2排出を削減する手段」として導入が推奨されており、補助金も利用できるため事業参入のハードルが下がっています。

しかし、決して景気が良い世の中ではないため、2023年は上半期だけで4,006件の倒産があり、前年よりも31.6%増加しています。

どの企業にも倒産のリスクは付き物のため、万が一の事態が起きたときにどうするか契約内容に盛り込んでおくことが損をしないために重要です。

参考:全国企業倒産集計2023年上半期報|東京商工リサーチ

まとめ|屋根貸し太陽光では賃料が貸主の収入になる

屋根貸し太陽光は、所有している建物の屋根を太陽光発電設置のために貸し出して賃料を得る仕組みです。

PPAやリースモデルとは違い、電力の自家消費や売電はできません。

しかし、脱炭素社会を目指すためには、1ヶ所でも多く再生可能エネルギーの発電設備が必要な状況になっています。

このため、空きスペースを活用して気軽に副収入を得たい場合に、屋根貸し太陽光がおすすめです。

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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