農業をしない人の農地相続は可能? 相続税はいくら? 農業しない場合の対処法も解説
「農業をする予定がないけど農地は相続しないとダメなの?」
「農地相続に相続税はかかるの?」
「農業しないときの対処法はあるの?」
農地相続に関して、上記のようなことに悩んでいませんか?農地を相続する話が出ているけれど、自分自身は農業を引き継ぐつもりがない、とくに使う予定がないと考えている方も多いはずです。
この記事では、農業をしない人の農地相続に関して以下をわかりやすく解説します。
【無料相談】使わない田んぼや畑の売却なら
管理できていない・放置している田んぼを売りたいとお考えなら、「農地買取センター」までお気軽にご相談ください! 処分や相続の悩みも無料で相談を受け付けております。
管理できていない・放置している田んぼを売りたいとお考えなら、「農地売却の方法(田んぼを売るには?)」をご覧ください。農地の売却方法や税金、費用について解説しています。
農業をしない人の農地相続は可能
「農地は農業従事者でなければ取引できない」と思われがちですが、実際には農業をしない人でも農地を相続できます。
ただし、相続のやり方によって動き方が変化するのも事実です。参考として、農地相続の基本知識を説明します。
引き継ぐ・引き継がない関係なく相続しなければならない
まず、農地の相続が発生した場合、基本的に農業を引き継ぐ・引き継がない関係なく、相続の名義変更といった手続きが発生します。
もちろん、相続放棄という選択肢を選ぶことも可能ですが、農地だけを限定して放棄できません。なぜなら相続は、財産をすべて受け取る・受け取らないという2択しか選べないためです。
もし、農地のほかに金銭や不動産といった相続したい相続財産がある場合には、農地もまとめて相続しなければなりません。また、相続を放棄しても、農地の管理義務だけ残ることに注意しましょう。
農地相続人がいない場合には国庫に帰属する
農業従事者が亡くなった(死亡した)ときに農地を相続できる人がいない場合には、特に手続きなどは発生せず、国が運営する国庫に帰属します。
国庫とは、国の財産を管理する場所の呼称です。
主に現金や有価証券、不動産といった財産が属しており、相続できなかった農地も国の所有物として国庫帰属します。ちなみに帰属した農地は、地方公共団体など新たな土地活用のために支給されるのが特徴です。
国庫に帰属すると、所有権・財産権が国に変更されます。ただし、後から相続人がいると判明した場合には、債権を申し立てすることによって回収することも可能です。
農地相続のメリット
農業をしない人が農地相続をするメリットを紹介します。
農業にチャレンジできる
農地を相続すれば所有権が自分のものになり、そのまま農業をスタートできます。また、農業用具や機器もまとめて相続できるのも魅力です。
また令和5年(2023年)4月の農地法改正で農地取得の下限値が撤廃されたことにより、個人・法人が農業を始めやすくなりました。例えば、サラリーマンの兼業農家、農業の事業化に活用できることから、新たなチャレンジの場として、農地の活用がおすすめです。
農地法改正について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。改正ポイントや3条・4条・5条の違いを解説しています。
関連記事 農地法をわかりやすく解説
農地を売って利益を得られる
相続した農地が次の条件にあてはまる場合には、農地を売却して利益を得られます。
- 第2種農地
- 第3種農地
農地法で定められた農地区分のことです。
第2種農地は鉄道の駅が500m以内にあるなど、将来、市街地化が見込まれる生産性の低い農地、第3種農地は鉄道の駅が300m以内にあるなど、今後、市街地化が見込まれる可能性が高い農地を指します。
需要の高い農地であれば、そのまま売却して利益を得られるのが魅力です。また、農地としてではなく地目を自宅(建物)を建てるための宅地などに転用して売却することで、土地を売りやすくする方法も選べます。
詳しくは後述する「サラリーマン・兄弟が農地相続した場合の選択肢」で解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
農地相続のデメリット
農地相続には、デメリットも含まれています。農業をしない人に影響するポイントをまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
農地を継続的に管理しなければならない
農地を相続すると、継続的な管理義務が発生します。例えば、次のように農業生産以外の部分で管理が必要です。
- 除草作業
- 農道の整備
- 用水路の管理
農地を管理せずに耕作放棄地にしてしまうと、害虫・害獣問題による近隣農地への影響や景観の悪化といったリスクを引き起こします。また、自治体から耕作放棄地だと認定されると、固定資産税率を通常の1.8倍まで上げられることに注意しなければなりません。
通常の農地の固定資産税の評価額は、売買価格×0.55(限界収益率)となっているところ、遊休農地(耕作放棄地)については、0.55を乗じないこととする(結果的に1.8倍になる)。
引用:農林水産省「遊休農地」
一度農地が荒れ果ててしまうと、改善に必要以上の手間や費用がかかります。継続的な維持管理が重要であるため、生活の重荷になることに注意してください。
耕作放棄地について詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです。耕作放棄地が引き起こす問題や対策を解説しています。
関連記事 耕作放棄地とは? 問題と解決策
農地相続を農業委員会に届出なければならない
農地を相続する際には、農業委員会および都道府県知事に相続する旨を届け出なければなりません。届出の期限は相続開始から10ヶ月以内と決まっており、期限を超えてしまうと10万円以下の過料を求められるケースがあります。
また、届出書を提出する際には、農林水産省が定めた「農地法第3条」に規定されている届出書を作成しなければなりません。また、農地売買を実施する際にも、農業委員会から許可を得る必要があります。
手続きの手間および期限超過のリスクがあることに気を付けてください。
農地相続について法務局で名義変更しなければならない
農地を相続した際には、農地所有権の登記を変更するために、法務局で名義変更の手続きが必要です。参考として、名義変更時の必要書類を以下に整理しました。
- 被相続人および相続人の戸籍謄本類
- 相続人の住民票
- 遺産分割協議書
- 遺言書
また遺言書に農地のことが記載されていない場合には、遺産分割協議書を作成する身内との協議、弁護士の仲介といった手間もかかります。
他にも、名義変更書類の作成方法がわからない、自分で名義変更できない場合には、サポートや代行してくれる「税理士法人」「司法書士法人」といった実績をもつ専門家を利用する際、依頼費用がかかることに注意しなければなりません。
農地相続により相続税を支払わなければならない
農地を相続した場合、相続税の支払い義務が発生します。参考として農地の種類によって変化する相続税の評価方法を整理しました。
甲種農地・第1種農地・第2種農地などの場合
甲種農地・第1種農地・第2種農地といった純農地・中間農地に該当する場合、固定資産税評価額に国税局長が定めた倍率を乗じて計算する「倍率方式」を用います。倍率方式の計算式は次の通りです。
相続した農地の評価額=固定資産税評価額×評価倍率
路線価図・評価倍率表については、国税庁のホームページからチェックできます。
転用許可を受けた農地、市街化区域内にある農地の場合
転用許可を受けている、市街化区域内にあるといった市街地農地に該当する場合、対象の土地が宅地の建物という想定で計算する「宅地比準方式」を用います。宅地比準方式の計算式は次の通りです。
相続した農地の評価額=(農地が宅地だとした場合の1m²当たりの価額-1m²当たりの造成費の金額)×地積
造成費の金額については、国税庁のホームページからチェックできます。
市街地周辺農地(第3種農地など)の場合
前述した「市街地農地」だった場合の80%に相当する金額として計算します。計算式は次の通りです。
相続した農地の評価額=市街地農地として評価した額×0.8
サラリーマン・兄弟が農地相続した場合の選択肢
親族が農業従事者だったサラリーマンや兄弟が、農地を相続した場合の選択肢を整理しました。
農業を始める
農業に興味がある方は、そのまま農業従事者となって農業を始めてみてください。参考として、農業を始める流れを以下に整理しました。
- 農地のある地域の自治体に就農相談する
- 農業研修を受ける
- 資格を取得する
- 資金計画を立てる
- 農業機器・機材を準備する
すでに農地を相続しているため、農地取得の手間を省略できるのが魅力です。知識・技術・機材の準備が終われば、すぐに農業を始められます。
相続放棄する
農業をしないと決めており、お金や不動産といった相続品もまとめて放棄する意思があるのなら、相続放棄するのもひとつの方法です。
農地を相続放棄する場合には、相続物すべてを放棄すること前提で動かなければなりません。故人の方が借金を抱えていたり、将来価値が付きそうにない土地を所有していたりするのなら、農地を相続せず、相続放棄による国庫帰属を検討してみてください。
農地を貸与する
相続した農地から長期的な利益を生み出したいのなら、農地を第三者に貸し出しする方法があります。
農地を貸している間、借主から定期的に賃料・収入を得られるのがポイントです。ただし、農地を貸与する際には、次の条件に注意してください。
- 事前に農業委員会への申請しなければならない
- 借主を探さなければならない
- 確定申告しなければならない
借主を自力で探せないとお悩みなら、貸借(賃貸)を仲介してくれる「農地バンク」「全国農地ナビ」といったサービスを利用するのがおすすめです。
農林水産省が提供する、農地を借りたい人と貸したい人を仲介する制度です。正式名称を「農地中間管理機構」と言い、2014年からサービスがスタートしました。
「一般社団法人全国農業会議所」「全国新規就農相談センター」が全国の農地を取りまとめて貸借(賃貸)を管理サポートするサービスです。農業委員会に申請することでサービス登録が完了します。
農地を売却する
相続後も農業をしない人、農地を持っていても使い道がない人は、農地売却を検討するのがおすすめです。農業委員会から売却許可を取得すれば、第三者に農地を売却して利益を獲得できます。
もし農地売却の方法や手続き、動き方がわからない、判断できないとお悩みなら、以下の記事をチェックしてみてください。農地売却の方法や流れ、価格相場を詳しく解説しています。
関連記事 田んぼを売るには? 農地売却の方法
放置している田んぼを売りたいとお考えなら、「農地買取センター」までお気軽にご相談ください!
農地を転用する
相続した農地を農地のまま使いたくないと考えているなら、農地転用がおすすめです。例えば、農地を次のような地目に変更できます。
- 宅地
- 駐車場
- 資材置場
- 太陽光発電施設
- 営農関連施設
転用した土地には新しく家を建てたり、駐車場にしたりするなど、新たな使い道が可能です。農地転用には農業委員会の許可が必要ですので、事前に申請してください。
もし農地転用の方法や手続き、動き方がわからない、判断できないとお悩みなら、以下の記事がおすすめです。転用できる土地・できない土地の情報や、手続きの流れ、費用についてまとめています。
関連記事 農地転用とは
また、農地転用はできる土地とできない土地があります。農地転用できるかどうかの基準・転用許可がおりない場合の対処法は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事 農地転用できない土地とは
農地相続の手順
親族が農業従事者の方向けに、農地相続の手順を整理しました。
- 証明書や申請書といった相続書類を準備する
- 法務局で相続登記(所有権移転登記)を実施する
- 農業委員会に相続を届出・申請する
ちなみに、法務局の相続登記には、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)がかかります。また、農業委員会への届け出には10ヶ月間の猶予期間で手続きしなければなりません。
もし農地相続の手順や動き方がわからないとお悩みなら、農地のお悩みをフルサポートする「農地買取センター」に相談してください。手続き作業をワンストップでお手伝いします。
農地相続でよくあるトラブル一覧
農地相続時は「親族」「手続き」といったポイントでさまざまなトラブルが発生します。参考として、農地相続でよくあるトラブルを下表にまとめました。
トラブルのポイント | 内容(例) |
---|---|
遺産分割の方法が決まらない | 親族間で遺産を分割する際に、関係性が複雑で農地を誰が相続するか決まらない場合があります。また、農地が広大な場合には、面積の分割で面倒ごとが起こるかもしれません。 |
農地相続人が見つからない | 亡くなった農業従事者と血縁者がいない場合には、相続の話ができず空中分解する恐れがあります。そのまま国庫に帰属するケースもあるため注意が必要です。 |
農地相続の手続きがわからない | 農地の相続人が決まったけれど、相続の知識がなく放置してしまう人もいます。猶予期間内に農業委員会へ届け出なければ、過料を取られる場合もあるので注意が必要です。 |
もし同じようなことで悩んでいるのなら、農地売買をフルサポートする「農地買取センター」に相談してください。法律関係の手続きもお手伝いします。
農業をしない人の農地相続についてのよくある質問
農業をしない人の農地相続について、よくある質問をまとめました。
- 農地の相続税はいくら?
-
農地の相続額がわかっている人は、国税庁で公開されている次の表に当てはめて納税額を計算してください。
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額 1,000万円以下 10% - 3,000万円以下 15% 50万円 5,000万円以下 20% 200万円 1億円以下 30% 700万円 2億円以下 40% 1,700万円 3億円以下 45% 2,700万円 6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円 出典:国税庁「相続税の税率」 相続税は累進課税が適用されており、3,000万円相当の価値がある農地の場合には、次のように計算します。
(1,000万円×10%)+(2,000万円×15%-50万円)=350万円
- 農地の相続税をかからないようにする方法はある?
-
農地の相続税をかからないようにしたいなら、次の方法を選択しましょう。
- 相続放棄する
- 相続税猶予制度を活用する
相続税猶予制度とは、農地を引き継ぐ相続人の負担を減らす税制上の優遇措置(特例)のことです。次の条件にあてはまる場合には、相続税が事実上免除されます。
免除される条件- 農地の相続人が死亡した
- 三大都市圏特定市以外の市街化区域内の農地(生産緑地を除く)であり、農地の相続人が20年間農業を継続した
- 農地の相続人が後継者に生前一括贈与したとき
- 農地相続における相続税の基礎控除額はいくら?
-
相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。
3,000万円が必ず控除されること、そして相続人1人当たりの控除額が600万円が追加されるのが特徴です。親族全員を相続人にする、相続人を多めに計上するほど税金がかかりにくくなります。
- 農地を相続する期限はどれくらい?
-
農地を相続する手続きは、相続を開始してから10ヶ月間と決められています。期限を超えた場合には10万円以下の過料を求められる場合もあるので、十分注意してください。
- 農地の相続を放棄したらどうなるの?
-
農地の相続を放棄する場合には、その他すべての相続も一緒に放棄しなければなりません。
例えば、農地を相続放棄するためには故人が残した遺産(お金・土地・不動産)なども放棄する必要があります。農地だけ相続しない、使い道のない一部の農地だけ相続しないという動き方はできません。
- 農地を相続したくない場合にはどうしたらいい?
-
農地を相続したくない場合、相続放棄するという選択肢があります。しかし、相続放棄すると、その他の相続も失ってしまうのがネックです。よって、相続放棄が困難な場合には次の方法で農地を活用するのがおすすめです。
相続放棄以外の選択肢- 農地を第三者に貸与する
- 農地を売却して利益を得る
- 農地を転用して宅地や駐車場として使う
耕作放棄地を生み出してしまいそうだとお悩みなら、ぜひ上記の活用法を試してみてください。
- 農地相続の悩みは誰に相談したらいい?
-
農地相続の悩みは、以下に示すプロに相談するのがおすすめです。
- 司法書士
- 弁護士(法律事務所)
- 不動産会社
- 農地買取センター
もし手続きを無料で相談したいなら農地買取センターがおすすめです。農地に関するわからないことをまるごと解決できます。
農業をしない人の農地相続のまとめ
農業をしない人が農地を相続した場合、相続放棄をしない限り、必ず農地を相続しなければなりません。
また、農地を相続した際には法務局や農業委員会への手続きが必要です。費用が発生することはもちろん、猶予期間が設けられていることに注意してください。
また、相続した農地は、農業をスタートできるほか、第三者への貸与、売却、転用といった活用方法があります。ただし、これらの活用にもさまざまな手続きが発生することに注意が必要です。
もし農地相続や相続後の活用にお困りなら、まずは農地相続・売買をサポートしてくれるプロに相談することをおすすめします。
農地買取センターでは、農地の相続や売買に悩む方をワンストップでサポートします。分からないことがあるとお悩みなら、ぜひ無料相談を気軽に利用してみてください。
無料で相談可能です