相続土地国庫帰属制度とは? 農地の適用要件・費用負担金について解説
「使わない農地や田んぼを国に渡せる相続土地国庫帰属制度って何?」
「どのような条件の農地が対象なの?」
「活用する際の注意点はあるの?」
相続したが、今後も使う予定がない農地に関して、上記のようなことに悩んでいませんか?中には、制度のことがわからず困っている人も多いでしょう。
この記事では、以下についてわかりやすく解説します。
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法務省が定める農地帰属の「相続土地国庫帰属制度」とは?
相続土地国庫帰属制度とは「相続したけど使う予定がない農地をどうにかしたい」「固定資産税がかかるだけで経済的に負担が大きい」と悩む方向けに、法務省が定めた農地を国庫に帰属できる制度です。
令和5年(2023年)4月27日から制度が施行し、相続したけれど使わない農地(土地)に対する負担金を国に納めることで所有権を国庫に帰属できます。
国の財産や権利をまとめて管理する場所のことです。国庫に貯まった財産は、地域復興や義務教育費などとして歳出されています。
また相続土地国庫帰属制度は、土地利用のニーズの低下を改善するため、所有者不明の土地をなくすために開始しました。農地所有者の負担を減らすことはもちろん、使われていない農地を国が管理しやすくするための制度です。
初めての方は相続土地国庫帰属制度のパンフレットがおすすめ
土地相続国庫帰属制度のことをわかりやすく知りたい、手続きの流れや質問事項がまとまった資料をチェックしたい方は、法務省が公開しているパンフレット「相続土地国庫帰属制度~相続した土地の管理にお困りの方へ~」を確認するのがおすすめです。
パンフレットにまとめられている項目を紹介します。
- 制度の概要
- 問い合わせ先
- 手続きの流れ
- 帰属できる土地の条件
- よくある質問
2ページにまとめてあり、5分程度で読み終わるため、本記事とあわせてパンフレットもチェックしてみてください。
実は、農地を国庫に帰属するのがもったいない場合があります。詳しくは以下の記事で解説しているため、参考にしてみてください。
関連記事 農地を手放すのはもったいない!
相続土地国庫帰属制度の対象となる土地の種類
相続土地国庫帰属制度の対象となる土地は、前提として相続した土地であることが条件です。参考として、法務省により定められている土地の種類をまとめました。
宅地
すでに建物が建築されている、もしくは建物の敷地のために使われている「宅地」は相続土地国庫帰属制度の対象です(条件あり)。参考として、宅地建物取引業法で定められている宅地の要件をまとめました。
用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする。
引用:e-GOV法令検索「宅地建物取引業法」
また、用途地域外であっても建物が建築されている、建物の敷地のために使われている場合の土地は宅地に該当します。
計画的な市街地形成のため、用途に応じて分けられたエリアのことです。住宅や工場施設、公共施設などを分け、人々が生活しやすい環境を整備するために設けられました。
農地・田畑
農地・田畑とは、耕作を目的として利用されている土地のことです。たとえば、土地に労費を加えて肥培を管理し、作物を栽培している土地が農地や田畑に該当します。
ちなみに農地法では、耕作・養畜事業のために利用されている「採草放牧地」を農地・田畑として認められていないため注意してください。
農地法とは何なのか気になっている方は、以下の記事をチェックしてみてください。各条の特徴や違いをまとめています。
関連記事 農地法をわかりやすく解説
また、相続土地国庫帰属制度を利用する前に、農業をしない人が農地相続できるのか気になっている方もいるはずです。相続の有無について以下の記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
関連記事 農業をしない人の農地相続は可能?
森林・山林
広範囲にわたって樹木が繁茂している「森林」、耕作の方法によらず自然に竹木が生育している「山林」も相続土地国庫帰属制度の対象です。
森林・山林は維持管理に手間がかかるほか、林業従事者等でない限り活用が難しい土地だと言えます。国土交通省の調査によると、約半数もの土地が管理されていない状況です。
相続土地国庫帰属制度の適用要件から外れる土地の条件
相続土地国庫帰属制度は相続した「宅地」「農地・田畑」「森林・山林」を対象としていますが、こちらで紹介する条件にあてはまると適用から除外されてしまいます。
申請できない土地・農地の要件
制度の申請ができない土地の条件を以下にまとめました。
- 建物がある土地(宅地)
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 他人の利用が予定されている土地
- 土壌汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
たとえば、相続した宅地という条件であっても、建物が建築されている場合には国庫帰属の申請ができません。また、土地から担保等のお金が発生している場合、他に利用者がいる場合なども、事前に改称しておかなければ申請が不可能です。
さらに、土地自体が汚染されていたり、土地所有に関する争いごとに巻き込まれていたりする場合にも申請できません。
承認を受けられない土地の要件
前述した申請条件を満たしていても、次の条件にあてはまる場合には申請を却下されます。
- 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
- 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
- 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
- その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
上記の項目は、相続土地国庫帰属制度を申請した後、法務局の調査職員がチェックすることで判定されます。土地管理や処分に手間や費用を要する場合には、国も管理しづらいという理由から、不承認とされてしまう場合があるのです。
相続土地国庫帰属制度における農地の相続放棄手続きの手順
相続土地国庫帰属制度を活用して、相続した農地を手放したい方向けに、手続きの手順をわかりやすく解説します。
法務局に承認申請をおこなう
まずは、制度を申請する土地所有者が、法務局の窓口もしくは法務局宛に郵送で承認申請を実施します。参考として、申請時の必要書類を整理しました。
- 相続土地国庫帰属制度の申請書類
- 農地の図面・位置図・測量図
- 農地の境界情報
- 農地および周辺の形状がわかる写真
- 申請者の印鑑証明書
- 遺贈の証明書(遺贈により農地を取得した場合)
- 所有権登記名義人から相続・承継を示す書類(相続人の名義が異なる場合)
現在の登記名義人と申請者が同一の場合には、下2つの書類は不要です。また、相続土地国庫帰属制度の申請書類は法務局の公式サイトから様式をダウンロードできます。
申請にかかる費用
相続土地国庫帰属制度の申請手数料は、土地一筆当たり14,000円です。
土地の個数を表す単位です。独立したひとつの土地を一筆とあらわすため、面積・地積の違いは関係しません。
申請書類に審査手数料額に相当する収入印紙を貼り付けて納付します。ちなみに審査の結果、申請が却下となった場合でも、手数料は返還されないため注意してください。
法務局の書類審査を受ける
法務局へ申請書類を提出すると、書面審査が実施されます。
書面審査では、提出した図面や写真をもとに内容が確認されるのが特徴です。要件を満たしていないと判断された場合には、書面上で却下の通知が届きます。
現地調査を実施する
書類審査を通過すると、法務局の調査職員から連絡が入り、現地調査の予定日を決めます。参考として、現地調査の確認項目をまとめました。
- 農地の状況が申請内容と同じなのか
- 申請許可の条件を満たしているか
基本的に現地調査の立ち合いは不要です。ただし、土地の条件や確認が複雑になる場合には同行をお願いされるケースもあります。
審査結果が通知される
現地調査が終わると、後日、審査結果が通知されます。
ちなみに正式な審査結果が通知されるまでにかかる期間は、申請日からおよそ8ヶ月です。審査には時間を要するケースがあるため、あらかじめ審査通知期間を予想しておくことをおすすめします。
負担金を納付する
審査が承認されたら、送付されてきた通知書の内容に従って負担金を納付します。参考として、土地ごとの負担額をまとめました。
土地の種類 | 一般的な土地の場合 | 例外 |
---|---|---|
宅地 | 面積に関わらず20万円 | 市街化区域・用途地域が指定される区域内の宅地は面積ごとに金額が決まる |
農地・田畑 | 面積に関わらず20万円 | 「市街化区域・用途地域が指定される区域内」「農用地区域内」「土地改良事業等の施工区域内」にある農地は面積ごとに金額が決まる |
森林・山林 | 面積に応じて計算 |
負担金の納付期間は、通知を受けた日(通知書に記載されている日付)から30日以内と決められているため注意が必要です。期限を超過してしまうと、承認された効力がなくなり再申請が必要になります。
国庫帰属の手続きをおこなう
負担金の納付が完了し法務局の確認が済むと、申請した農地が国庫に帰属されます。
帰属された後は国の所有物になるため、固定資産税の支払いや維持管理の義務が消滅するのが主な流れです。
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相続土地国庫帰属制度の注意点
相続土地国庫帰属制度は、相続して使う予定がない農地を国庫に帰属できる便利な制度ですが、活用時の注意点もあります。認識不足や虚偽申請が問題化するケースもあるため、法務局の規定に気をつけて制度を活用しなければなりません。
虚偽申請がある場合に承認を取り消される
相続土地国庫帰属制度の申請で、虚偽申請があった場合には、一度承認された農地であっても承認が取り消されてしまいます。
承認申請者が偽りその他不正の手段により第五条第一項の承認を受けたことが判明したときは、同項の承認を取り消すことができる。
引用:e-GOV法律検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」
申請承認に時間と費用がかかるため、虚偽申請による承認却下は申請者の負担となります。手放せたであろう農地を再度管理しなければならなくなるため、申請時には虚偽申請の項目がないか確認することが重要です。
要件を満たさないことを隠して申請すると賠償責任を負う
相続土地国庫帰属制度の申請において、農地が相続土地国庫帰属制度の要件を満たさないことを知りながら要件を隠して申請した場合には、賠償責任を負う恐れがあります。
第五条第一項の承認に係る土地について当該承認の時において第二条第三項各号又は第五条第一項各号のいずれかに該当する事由があったことによって国に損害が生じた場合において、当該承認を受けた者が当該事由を知りながら告げずに同項の承認を受けた者であるときは、その者は、国に対してその損害を賠償する責任を負うものとする。
引用:e-GOV法律検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」
賠償責任の金額は、国に生じた損害額によって決定されます。高額な賠償責任が発生する場合もあるため、虚偽申請は必ず避けてください。
農地における相続土地国庫帰属制度の相談先
「自身の所有する農地が相続土地国庫帰属制度の要件に適用されるのか知りたい」「動き方がわからない」とお悩みの方向けに、制度について相談できるサービスを紹介します。
法務省相談サポート
相続土地国庫帰属制度について、概要の説明や制度の仕組みを聞きたいのなら法務省が提供しているサポートサービスを活用するのがおすすめです。
土地の所在地を管轄する法務局 ・ 地方法務局(本局)では、無料の電話・窓口相談サービスを利用できます。法務局が提供している相続土地国庫帰属制度のパンフレットに相談先のリンクが掲載されているため、ぜひ参考にしてみてください。
法律事務所
法律の相談なら、法律事務所や弁護士といったプロに相談するのもおすすめです。
相談費用はかかりますが、丁寧に相続土地国庫帰属制度について教えてもらえるほか、申請サポートを受けられます。オンライン相談サポートも提供されているため、手軽に相談したい人はぜひチェックしてみてください。
農地買取センター
農地の相続および相続土地国庫帰属制度のことを無料で詳しく相談したいのなら「農地買取センター」を利用するのがおすすめです。
相談費用はもちろん、相談サポート手続きを無料で受けられます。また、使っていない農地の新たな活用方法など、国庫帰属以外の活用方法を相談できるのが魅力です。
さらに、農地買取センターと提携している弁護士・司法書士・行政書士からアドバイスをもらえます。手続きをフルサポートしてもらえるため、相続に関するお悩みを相談してみてください。
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農地における相続土地国庫帰属制度のよくある質問
農地における相続土地国庫帰属制度のよくある質問をまとめました。
- 相続土地国庫帰属制度は相続以外でも利用できるの?
-
相続土地国庫帰属制度は、相続・遺贈に伴う農地が対象の制度です。相続という前提条件がなければ利用できません。
- 相続土地国庫帰属制度の目的は何?
-
相続土地国庫帰属制度は、以下の目的で運用されている制度です。
- 使われていない土地を国が有効活用する
- 所有者不明の土地の増加を防ぐ
- 所有者不明の土地を明確化する
農地や田畑を所有するニーズが減っているほか、維持管理や固定資産税といった経済的な負担を減らすために活用できます。
- 相続土地国庫帰属制度にはどんなメリットがあるの?
-
相続土地国庫帰属制度を活用するメリットをまとめました。
- 買い手を探す必要がない
- 国が引き取り手なので安心して手続きできる
- 少額で要らない相続農地を手放せる
自身で農地を手放す場合、引き取り手を探す必要があるほか、売買する手続きや申請が必要です。また、必ず引き取り手が見つかるとも限りません。
一方、相続土地国庫帰属制度は国とのやり取りであるため、安心して申請手続きが可能です。また、申請手続きの手数料や負担金を支払うだけで、今後の維持管理費用や固定資産税の支払いが不要となります。
- 相続土地国庫帰属制度にデメリットはあるの?
-
相続土地国庫帰属制度には、デメリットも存在します。
- 収益化の機会を失う
- 手続きに時間と手間がかかる
- 必ず国庫に帰属できるわけではない
相続土地国庫帰属制度を活用すれば、手数料や負担を支払って使わない農地を国庫帰属にできます。逆に、農地売却・転用による利益獲得の機会を失うのがデメリットです。
また、相続土地国庫帰属制度は承認までにおよそ8ヶ月かかります。場合によっては申請が却下されて、国庫に帰属できない可能性もあるため、手数料分だけ損をするかもしれません。
もし国庫帰属以外の選択肢を探しているなら、農地売却を検討するのがおすすめです。以下の記事で具体的に解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事 田んぼを売るには? 農地売却の方法
農地における相続土地国庫帰属制度まとめ
相続農地を使う予定がない、むしろ維持管理や固定資産税のせいで経済的な負担を感じているのなら、相続土地国庫帰属制度を活用して農地を国庫に帰属するのがおすすめです。
適用の対象となる土地の条件があるため、まずは自身の所有する農地が、制度の条件にあてはまるのか確認してみてください。
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参考:いらない土地を国に返すのは無理!?「相続土地国庫帰属制度」を徹底解説!