蓄電池増設のタイミングはいつ? 費用目安や必要な手続きを解説
「太陽光発電に蓄電池を増設したいけれど、ベストなタイミングが分からない」
「蓄電池増設の費用感や必要な手続きを知りたい」
上記のようにお悩みで、太陽光発電に蓄電池を増設できずにいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
固定価格買取制度の開始から10年以上経過し、FITが終了した太陽光発電が増えている中、余剰電力の売電よりも蓄電池を活用した自家消費に注目が集まっている状況です。
本記事では蓄電池増設に適したタイミングや費用の目安、導入前に必要な手続きについて解説します。所有している太陽光発電に合った蓄電池増設方法が分かる内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
蓄電池増設に適したタイミング
既設の太陽光発電に蓄電池を増設するのにベストなタイミングは、以下の3つです。
- 卒FITするとき
- パワーコンディショナーを交換するとき
- 補助金の公募に間に合うとき
卒FITするとき
固定価格買取制度の適用期間が満了し卒FITするタイミングは、蓄電池増設に適しています。
2014年に住宅用太陽光発電を購入している場合、FIT単価は37円(税込)です。しかし卒FIT後も大手電力会社への売電を継続する場合の買取価格は、7~9円/kWh(税込)になります。
発電量が同じでも売電収入が大幅に減少するため、卒FITと同時に蓄電池を増設して全量自家消費型の太陽光発電として電気代を節約する運用ができます。
関連記事 固定価格買取(FIT)制度とは
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パワーコンディショナーを交換するとき
太陽光発電システムのパワコンを交換するときも、蓄電池増設に適したタイミングになります。
理由としては、蓄電池も太陽光発電もシステム構成には必ずパワコンが含まれるためです。蓄電池が後付けの場合、太陽光発電とそれぞれのパワコンを2台設置する必要があります。
住宅用太陽光発電ではパワコンを屋内に設置するケースが多く、室内が狭くなってしまいます。太陽光発電と蓄電池で共用できるハイブリッドパワーコンディショナーと同時に導入すれば、スペースを占領せずに設備を設置できるでしょう。
補助金の公募に間に合うとき
蓄電池増設の初期費用を抑えたい場合は、補助金の公募期間中が導入に適したタイミングです。
太陽光発電と蓄電池導入が支援される補助金事業が、2023年度は個人・法人共に実施されていました。カーボンニュートラル実現のため、蓄電池は国が導入を推奨しています。補助金は2024年度も継続される見込みです。
補助金は公募期間が短く、予算の上限に達した時点で打ち切りになるため、利用を検討される場合は時期に注意しながら申請が必要になります。
蓄電池増設の費用目安
家庭用と産業用で蓄電システム導入費用の目安がいくらになるか、見ていきましょう。
家庭用蓄電システムの場合
家庭用蓄電池の工事費を含めた導入費用平均は、13.9万円/kWhです。容量別に見た一般的な費用は以下表のようになります。
蓄電容量 | 導入費用平均 |
---|---|
5kWh未満 | 16.5万円/kWh |
5kWh以上10kWh未満 | 14.9万円/kWh |
10kWh以上 | 12.5万円/kWh |
1kWhあたりの費用は、蓄電容量が大きいほど少ない傾向が見られました。
蓄電池システムを設置する場所の環境で費用感が変わるため、詳細な金額については業者に見積もり依頼が必要です。
産業用蓄電システムの場合
産業用蓄電池の導入費用平均は、機器のみで11.2万円/kWh、工事費を含めると14.9万円/kWhです。
法人は業種によって工場や物流倉庫など消費電力量が多い施設と、事務所などであまり電力を消費しないケースがあります。電力消費量が多い施設では必要な蓄電容量が増える分初期費用が大きくなりますが、蓄電池を設置する場所の条件なども金額に影響します。
産業用蓄電システムにおいても、費用詳細については業者に問い合わせが必要です。
参照:定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査|三菱総合研究所
蓄電池増設前に対応が必要な手続き
蓄電池増設の際は、太陽光発電の状況に応じて導入前に以下2つの手続きが必要です。
- FIT認定に関する届出
- 蓄電池設備増設時の消防法に関連する届出
所有している太陽光発電に蓄電池を増設するときに必要な手続きが何か、見ていきましょう。
FIT認定に関する届出
固定価格買取制度を利用して売電している太陽光発電は、太陽光パネルの枚数やパワコンの台数などを記載した事業計画を提出してFIT認定を受けています。発電設備の最大出力が変更になる場合、蓄電池増設や太陽光パネルの枚数増加について事前に届出が必要です。
後付けした設備で発電した電気も高い単価で売電できてしまうと、全国民が負担している再エネ賦課金(ふかきん)が高くなります。再エネ賦課金が高くならないように調整することが、届出の必要な理由です。
FIT期間中と卒FIT後に、必要な届出を見ていきましょう。
FIT期間中に蓄電池増設する場合
蓄電池を増設する太陽光発電の出力容量が10kW以上で、FIT適用期間内の場合は、変更認定申請が必要です。変更認定申請は、再生可能エネルギー電子申請から手続きをします。
手続きの際に添付が必要な資料は、以下の3つです。
①配線図(50kW未満太陽光は標準配線図と異なる場合のみ必要)
②構造図(50kW未満太陽光で標準構造図と異なる場合のみ必要)
③自家発電設備等の仕様書(50kW未満太陽光は不要)
太陽光発電の容量で変更認定申請や資料添付の要否が変わるため、所有している設備に応じた対応が必要になります。
参照:平成29年8月31日公布・施行のFIT法施行規則・告示改正のポイント|経済産業省 資源エネルギー庁
卒FIT後に蓄電池増設する場合
卒FIT後の太陽光発電で、再生可能エネルギー電子申請での設備廃止予定日登録が完了し、変更認定申請が受理されている場合は、蓄電池増設の申請は不要です。
変更認定申請が受理される前に蓄電池を増設する場合は、再生可能エネルギー電子申請での事前変更届出が必要になります。
蓄電池設備増設時の消防法に関連する届出
消防法を基に各市町村が制定した火災予防条例で蓄電池の設置基準が決まっており、蓄電容量4800Ah・セル(17.76kWh)の設備を増設する場合、届出が必要です。
東京都の場合は以下の資料を、蓄電池設置工事着工の7日以上前に管轄の消防署に提出します。
- 電気設備設置(変更)届出書
- 蓄電池設備概要表
- 蓄電池の各種図面(配置図、立面図、接続図、仕様書)
- 蓄電池設置場所の各種図面(平面図、展開図、構造図、室内仕上表など)
火災予防条例は、各市町村が必要と判断する事項を条項として定めています。地域によって違いはありますが、蓄電池増設完了後に管轄消防署の検査が必要なケースもあるため、届出に必要な内容を見落とさないように注意しましょう。
参照:電気設備設置(変更)届出書|東京消防庁
蓄電システムの種類
蓄電システム「単機能型」と「ハイブリッド型」の、2種類あります。太陽光発電に後付けするか、同時に設置するかで導入できる蓄電システムの種類が変わります。以下では蓄電システムの種類を説明しますので、自宅にはどちらが適切か確認しましょう。
太陽光発電に後付けする場合は単機能型蓄電システム
既に太陽光発電を自宅に導入済みの場合は、単機能型蓄電システムをおすすめします。単機能型蓄電システムでは、太陽光発電と蓄電池それぞれに独立したパワコンを設置し、以下図のようなイメージになります。
単機能型蓄電システムのイメージ
太陽光発電と蓄電池で自由にメーカーを選択できることが、単機能型蓄電システムを採用するメリットです。組み合わせるメーカーによって停電時にパワコンの自立運転機能を使用できないケースがあるため、購入前に問い合わせると安心です。
太陽光発電と同時設置の場合はハイブリッド型蓄電システム
ハイブリッド型蓄電システムは、太陽光発電と蓄電池で同じパワコンを使用する仕組みで、以下図のようなイメージです。
ハイブリッド型蓄電システムのイメージ
パワコンが1台のみのためハイブリッド型蓄電システムの導入がおすすめなタイミングは、以下の2つです。
- 太陽光発電と蓄電池を同時に設置する
- 太陽光発電のパワコンを交換する
単機能型のうに太陽光発電と蓄電池でそれぞれ専用のパワコンで、発電した電気を制御するよりも、ハイブリッドパワコン1台のほうが効率良く制御できます。電気のロスが少ない点が、ハイブリッド型蓄電システムのメリットです。
増設可能な蓄電池メーカー3選
増設にも柔軟に対応できる蓄電池を製造しているメーカー3社の、蓄電システムを紹介します。メーカーごとの特徴を確認し、導入する蓄電池を選ぶ際にお役立てください。
パナソニック
創蓄連携システムS+はパナソニックの蓄電システムで、構成する部材を分割・小型化したことで増設しやすくなっています。
パナソニック製蓄電システム基本情報
蓄電池設置場所 | 屋内または屋側(おくそく) |
システム構成機器 | パワーステーションS+(本体、蓄電池用コンバータ) リチウムイオン蓄電池ユニット(5.6kW・屋側) ネットリモコン(パワーステーションS+) |
蓄電容量 | 3.5kWh/5.6kWh/7.0kWh/9.1kWh/11.2kWh |
屋側(おくそく)とは、建物の側面を指します。
創蓄連携システムS+の価格は販売店によって異なるため、機器購入を予定している業者への問い合わせが必要です。
参照:太陽光発電・蓄電システム:[住宅用]創蓄連携システムS+|パナソニック
オムロン
マルチ蓄電プラットフォーム KPBP-Aシリーズは、オムロン製の蓄電システムで蓄電池増設にも対応しています。
オムロン蓄電システム基本情報
蓄電池設置場所 | 屋内または屋外 |
システム構成機器 | マルチ蓄電パワーコンディショナ PVユニット トランスユニット 蓄電池ユニット マルチ蓄電システム用ゲートウェイ 特定負荷用分電盤 全負荷用分電盤 電力計測ユニット ※必要な場合のみ設置 |
蓄電容量 | 6.3kWh/6.5kWh/9.8kWh/12.7kWh/16.4kWh |
オムロンの太陽光発電への後付けを想定した蓄電池は外形寸法が比較的コンパクトなため、広いスペースがなくても設置できる点が特徴です。
参照:マルチ蓄電プラットフォーム|オムロン
シャープ
クラウド蓄電池システム(JH-WB1921)は、シャープ製の増設に対応した蓄電システムです。
シャープ蓄電システム基本情報
蓄電池設置場所 | 屋内または屋外 |
システム構成機器 | 蓄電池連携型パワーコンディショナ 蓄電池本体 蓄電池用コンバータ マルチエネルギーモニタ クラウド連携エネルギーコントローラ |
蓄電容量 | 6.5kWh |
蓄電システムがクラウドと連携し、AIが生活パターンを学習するため暮らしに合わせて効率よくエネルギーを制御できる点が特徴です。
参照:クラウド蓄電池システム JH-WB1921|シャープ
蓄電池増設についてのまとめ
蓄電池増設に適したタイミングは、太陽光発電の状況や利用したい補助金の公募期間などで変わります。具体的には、以下3つの時期が蓄電池導入に向いています。
- 卒FITするとき
- パワーコンディショナーを交換するとき
- 補助金の公募に間に合うとき
蓄電システムは「単機能型」と「ハイブリッド型」の2種類です。既存の太陽光発電がある場合は単機能型、パワコンを交換または太陽光と同時設置の場合はハイブリッド型の蓄電システムをおすすめします。