蓄電池設置後に電気代が上がった? シミュレーションや安くならない事例を紹介
「光熱費を節約する目的で蓄電池を設置したのに、電気代が上がった」
「蓄電池を設置しても、電気代は安くならないからやめたほうがいい」
上記のような話を耳にして、自宅に蓄電池を設置するべきか判断できずにいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
電気代が値上がりしている中、蓄電池を活用した節約に関心が高まっていますが、期待したほどの経済効果が得られなかったなどの事例もあるのが現状です。
本記事では、蓄電池導入前後での電気料金のシミュレーションや、電気代が安くならない理由を紹介します。
蓄電池を活用しながら電気代を安くする方法も分かりますので、ぜひ参考にしてください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
蓄電池に注目が集まっている背景
電気を充電して繰り返し使用できる蓄電池が注目を集めている理由は、以下の3つです。
- 電気代が値上がりしているため
- 防災対策の重要性が高まっているため
- 政府が脱炭素を推進しているため
なぜ蓄電池に注目する理由になるのか、1つずつ解説します。
電気代が値上がりしているため
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したのをきっかけに燃料費が高騰した影響で、電気代が値上がりしています。
本記事執筆時点の2024年1月現在、同年4月使用分までの電気料金が政府による緩和措置で値引きされることが決まっています。しかし緩和措置があっても毎月の電気代が以前よりも高く、電気料金の負担軽減のために蓄電池導入を検討する家庭が増えている状況です。
燃料費の高騰が落ち着かず電気代が上がったままになっていることが、蓄電池が注目される理由になっています。
参照:電気・ガス価格激変緩和対策事業|経済産業省 資源エネルギー庁
防災対策の重要性が高まっているため
地形や地質、気象条件などから日本は自然災害が発生しやすい環境で、災害大国と言われています。
2011年3月に発生した東日本大震災で防災意識が高まり、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる発電設備が急速に普及しました。その後も日本各地で最大震度6強や7などの大規模な地震が発生し、停電など被害の発生に関するニュースを度々目にする機会があります。
自然災害による被害が多く、防災対策が必要と考える家庭が増えたことも、蓄電池が注目される理由の1つです。
政府が脱炭素を推進しているため
政府が脱炭素の実現に取り組んでいることも、蓄電池が注目を集める理由です。
- 2030年までに二酸化炭素排出量45%削減(2013年度比)
- 2050年にカーボンニュートラル・脱炭素実現
これらの目標達成に向けて、政府は家庭向けの蓄電システムについても補助金の給付で導入を推進しています。
蓄電池を設置して電気を自家消費できる家庭が増えれば、火力発電による電力消費が減るため二酸化炭素の排出量を削減できます。各家庭での脱炭素への貢献度合いは企業の対応と比較すると低いと言えますが、1人1人が地球環境を守るためにできることを実施する取り組みが重要です。
参照:2030年・2050年の脱炭素化に向けたモデル試算|第50回基本政策分科会(経済産業省 資源エネルギー庁)
蓄電池で電気代がどれくらい安くなるかシミュレーション
蓄電池を設置するとどれくらいの電気代を削減できるのか、実際にシミュレーションしてみましょう。最初に太陽光発電も蓄電池も導入していない場合の、電気料金を算出します。
東京電力が提供している電気・ガス料金プラン試算に、上記の条件を入力すると年間の電気代は約170,000円と計算されます。
太陽光発電や蓄電池を設置すると、この電気代がどれくらい節約できるのか見ていきましょう。
太陽光発電のみの場合
太陽光発電を設置すると、電気代がどのくらい安くなるかシミュレーションします。
これらの条件を太陽光発電の発電量を求める計算式に当てはめると、年間の発電量は4,104.6kWhと計算できます。
仮に太陽光発電の電気を3割自家消費する場合の電力量は1,231.4kWh/年になり、削減できる年間の電気料金は約35,000円です。発電した全ての電気を自家消費すると、電気代は年間で約127,000円の削減になります。
太陽光発電と蓄電池がセットの場合
出力容量3kWの太陽光発電と容量4kWhの蓄電池を、以下の条件で併用する場合に電気代がどれくらい安くなるかシミュレーションします。
年間発電量が4,104.6kWhで蓄電池の充電に3割電気を使用する場合、1日あたり3.4kWhの電気を充電できます。この充電した電気を全て自家消費すると節約できる年間の電力量は1,231kWh、削減できる電気料金は約35,000円です。また4,104.6kWhの4割を売電すると、年間で約26,000円(税込)の収入になります。
太陽光発電と蓄電池をセット利用する場合、電気代の削減額と売電収入は以下のようになり合計で96,000円/年が削減できるという結果になりました。
- 自家消費による電気代削減額:35,000円
- 蓄電池による電気代削減額:35,000円
- 余剰電力による売電収入:26,000円
電気代の削減額は太陽光発電や蓄電池の容量、電気料金プランなどで変わるため、ご自宅の条件に合わせたシミュレーションによるチェックが必要です。
蓄電池の設置後に電気代が上がったのはなぜ? 安くならない4つの理由
蓄電池は電気代削減に有効な設備ですが、使い方によっては電気代が上がる可能性があります。どのような事例だと蓄電池を設置しても電気代が安くならないのか、見ていきましょう。
太陽光発電とセット利用していない
太陽光発電システムがなく蓄電池を単体で設置するのは、電気代が安くならないケースに該当します。蓄電池に充電するための電力消費量が追加になることが、電気代が上がる理由です。
深夜の電気料金が安いプランを利用して夜間に蓄電池に電気を溜める方法では、電気代の増加金額を抑えられますが削減はできません。電気代削減に蓄電池を利用する場合、太陽光発電とセット利用したほうが経済効果を高められるでしょう。
蓄電池の使い方が生活スタイルに合っていない
家族の生活スタイルに合わせた使い方ができていないと、蓄電池を導入しても電気代が安くならない可能性が高いです。
- 平日の昼間は家族がほぼ不在なのに、太陽光発電の電気を蓄電池に充電していない
- 2拠点生活で自宅を長期間留守にする際、蓄電池を適切なモードに設定していない
蓄電池の最適な使い方は、生活スタイルのほかに契約中の電気料金プランや太陽光発電の有無で変わります。
ライフステージごとの電力消費量や電気を使う時間帯の変化に合わせて、電気料金を安くするための蓄電池の使い方は定期的に見直しが必要です。
電力使用量が少ない
蓄電池を導入する前から電力消費量が少ない場合は、期待したほど電気代が安くなりません。既に節電に成功しているため、蓄電池を設置しても電力消費量を大きく削減するのは難しいことが理由です。
太陽光発電の電気を溜めるまたは電気料金が安い時間に充電して、電気代を抑えるというのが一般的な蓄電池の使い方になります。導入の目的が防災対策などの場合は、消費電力量が少ない住宅でも蓄電池を有効に利用できるでしょう。
太陽光発電の変換効率が低下している
蓄電池を太陽光発電システムに後付けする場合、経年劣化などが原因で発電設備の変換効率が低下している可能性があります。
変換効率が落ちていると実際に使用できる電気量が減るため、蓄電池に蓄えられる量も少なくなります。機器の寿命が近く太陽光発電の変換効率が低いと、自家消費できる電力量が少なく買電量を抑えられません。
設置から時間が経過している太陽光発電と蓄電池を併用すると、電気代が安くならない懸念事項があるため事前に設備状況の把握が必要です。
蓄電池を設置して電気代を安くする3つの方法
家庭用蓄電池の設置後に電気代が上がらないようにする使用方法は、以下の3つです。
- 太陽光発電と蓄電池を併用する
- 深夜電力が安いプランに切り替える
- 生活スタイルに合わせた使い方を考える
自宅に蓄電池を導入する場合にどのような使い方が合っているか、意識しながら詳細を見ていきましょう。
太陽光発電と蓄電池を併用する
蓄電池は単体でも使用できますが、太陽光発電と併用することで電気代を安くする効果が増します。
消費しきれなかった太陽光発電の電気を蓄電池に蓄えておけば、太陽光パネルが発電しない夜間や曇りの日も自家消費できることが、電気代が安くなる理由です。自家消費できる電力量が増えた分、電力会社から購入する電気が減ります。
電気代削減を主な目的として蓄電池を導入する場合は、より高い経済効果が期待できる太陽光発電とのセット利用がおすすめです。
深夜電力が安いプランに切り替える
昼間の消費電力量が多い家庭の場合、深夜の電気料金が安いプランへの切替えで電気代削減が期待できます。
日中に電気を使う量が多いと、太陽光発電システムから蓄電池への充電が不十分になる可能性があるため、夜間に買電が必要です。購入する際の電気料金が安ければ、その分電気代を抑えられます。
電力消費量に合わせた電気料金プランの検討も、蓄電池を利用した電気代削減のために重要です。
生活スタイルに合わせた使い方を考える
蓄電池には使用目的に合わせて設備が動作するように、モードを設定できる機能が備わっています。メーカーや機種により、選択できるモードの種類や名称は異なりますが、主に以下3つから選べます。
モードの種類 | 用途 |
---|---|
太陽光発電から蓄電池への充電を優先するモード | 自家消費した残りの電気で、蓄電池の充電を優先的に実施する |
電力会社への売電を優先するモード | 自家消費した残りの太陽光発電の電気を、充電ではなく売電に回す |
常に一定量の電力が蓄電されるモード | 防災対策として、いつでも蓄電池の電気を使えるように充電が残った状態を保つ |
この選択するモードをご家庭の生活スタイルに合わせられれば、節電効果が高まり電気代を安く抑えられるでしょう。
まとめ|蓄電池で電気代が安くなるかは使い方次第
蓄電池は電気を充電して繰り返し使用できる設備のため、電気代削減のために導入する家庭が増加しています。太陽光発電と蓄電池をセットで利用すれば、年間で96,000円前後の電気代を削減できるケースがあります。
しかし使い方や状況によっては、蓄電池を設置した後に電気代が上がる可能性があることが懸念事項です。
- 太陽光発電とセット利用していないため
- 蓄電池の使い方が生活スタイルに合っていないため
- 電力使用量が少ないため
- 太陽光発電の変換効率が低下しているため
蓄電池を設置して、電気代を安くするためには太陽光発電との併用や生活スタイルに合わせた電気料金プランの見直しなどが重要になります。