蓄電池

【2024年版】蓄電池容量の決め方と目安、選び方の注意点を解説

蓄電池容量の決め方や目安
阿部希

「なるべく容量が大きい蓄電池を設置したいけど、価格が高くなるから迷っている」
「最適な蓄電池容量の決め方が分からない」

上記のように、容量について悩んで蓄電池を導入できずにいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

導入した蓄電池の容量が小さすぎると2台目を追加設置するケースや、反対に容量が大きすぎる場合は電気代削減効果が小さくなることがあります。

本記事では蓄電池の容量にお悩みの方向けに、決め方のポイントや目安を解説します。自分に合った蓄電池の選び方が分かる内容になっているので、ぜひ参考にしてください。

当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。

蓄電池の基本情報

自宅に導入したい蓄電池を検討する際、蓄電池の特性や容量の種類など基礎知識が必要です。以下では蓄電池の種類や容量など、蓄電池の基本情報を説明します。

蓄電池とは

乾電池やボタン電池は使い切りであるのに対し、充電して繰り返し使用可能なのが蓄電池です。家庭用の電源または太陽光発電の電気で、蓄電池を充電します。

電極に使用する金属により、蓄電池は以下表のような種類に分かれています。

蓄電池の種類特徴
リチウムイオン電池動作電圧が高い
体積あたりに蓄えられる容量が多い
急速充電できる
蓄電池を使用していないときに充電が減りにくい
繰り返し使用できる回数が多い
ニッケル水素電池1度に使用できる電力量が大きい
急速充電できる
充放電の回路を簡素にできる
繰り返し使用できる回数が多い
鉛蓄電池低価格でコストパフォーマンスが良い
比較的リサイクルしやすい
参照:蓄電システムまるわかりBOOK|一般社団法人電池工業会

小さい体積でも蓄電できる容量が大きくエネルギー密度が濃いリチウムイオン電池は、軽量かつ小型です。このため定置用蓄電システムには、リチウムイオン電池を採用しているメーカーがほとんどになります。

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蓄電池には定格容量と実効容量の2種類ある


蓄電池の容量を示す単位は、「kWh(キロワットアワー)」です。kWhはそれぞれ、以下の項目を表しています。

  • kW:電力の大きさ
  • h:時間

1時間あたりに溜められる容量の目安が、蓄電池の単位になっています。容量が4kWhの蓄電池なら、1時間で4kWの電気を蓄電する能力があるということです。

蓄電池の容量は、以下の2種類に分かれています。

蓄電池容量の種類
  • 定格容量
  • 実効容量

それぞれの容量が何を指すのか、詳しく説明します。

定格容量とは

決められた条件で測定した蓄電池容量を、定格容量と言います。日本産業規格(JIS)が定める条件は、以下のとおりです。

JIS C8711:2019の7.3.1に規定している条件下で充電・静置・放電した際、5時間にわたって供給できる電気容量

基本的に蓄電池メーカーが仕様書に記載しているのは、定格容量になります。

実効容量とは

実効容量は実際に、蓄電池から使用できる電力量のことです。定格容量が4kWhの蓄電池でも、実際に使える電力量は4kWよりも少なくなります。実効容量の計算式は日本産業規格のJIS C4413:2023の付属書Bで、以下のように定められています。

【実効容量の計算式】

蓄電池容量(kWh)× 放電深度(%)× システム放電効率(%)

蓄電池の容量を決める際は、この実効容量を目安にすると失敗を回避できるでしょう。ただし、放電深度やシステム放電効率が仕様書に記載されていないケースがあるため、メーカーへの問い合わせが必要です。

蓄電池の定格出力とは

蓄電池においての出力は、1度に引き出せる電気量を意味します。出力の数値が大きいほど、同時に使用できる電化製品の数が増えます。

定格出力とは実際にどれだけの電力を蓄電池から引き出せるかではなく、最大で使用できる電力量のことです。消費電力量が大きい家電を同時に使用したい場合は、出力値にも注目すると良いでしょう。

蓄電池容量の産業用と家庭用の違い

蓄電池は容量によって、産業用と家庭用に分かれています。定格容量が4800Ahセル(17.76kWh)よりも大きければ、産業用に該当します。

家庭用蓄電池の定格容量は、最大でも17.76kWh以下ということです。

小規模な事務所や店舗などには、容量が小さい家庭用蓄電池が導入されるケースもあります。工場や集合住宅など大規模な施設では容量が大きい蓄電池が必要なため、外形寸法が大きくなる点も特徴です。

蓄電池容量の決め方と目安

自宅に蓄電池を導入する際、電力の使用量に対して蓄電容量が少ないと購入する電力量が増えてしまい、節約にならないケースがあります。反対に蓄電池の容量が大きすぎると、初期費用の回収に時間がかかる点がデメリットです。

蓄電池の購入で失敗しないためには、使用目的に合った最適な容量の選択が重要になります。

以下では、蓄電池容量の4つの選び方と目安を紹介しますので、容量検討の参考にしてください。

太陽光発電の容量に合わせる

すでに太陽光発電を使用している、または蓄電池と同時に設置する場合は、それぞれの容量を合わせる方法があります。

太陽光発電に合わせた蓄電池容量の決め方は、以下のとおりです。

蓄電池容量の決め方
  1. 太陽光発電の平均的な発電量をチェックする
  2. 太陽光発電の電気を自家消費する電力量を算出する

発電量から自家消費する電力量を差し引くと、必要な蓄電容量が分かります。実際に具体的な数字を当てはめてみましょう。

容量目安の計算例
  1. 出力容量が3kWの太陽光発電の1日あたりの発電量を11.3kWhと仮定
  2. 自家消費する1日あたりの電力量をおおよそで3.3kWhと仮定

3kWの太陽光発電で余剰電力を売電しない場合の蓄電池容量の目安は、11.3kWh-3.3kWh=8kWhと計算できます。

1日の電力消費量から決める

蓄電池を電源にしたい家電製品の、1日あたりの電力消費量を基準にするのも蓄電容量を決める方法のひとつです。どのように蓄電池を充電するかによって、電力消費量を参考にする時間帯が以下のように変わります。

  • 太陽光発電設備で蓄電池を充電する場合:太陽光パネルが発電しない夜間の消費電力
  • 洗濯機深夜電力で蓄電池を充電する場合:電気料金が高い昼間の消費電力

職場や学校から帰宅後の夜間に、太陽光発電から充電した蓄電池の電気で以下の家電製品を使用すると仮定します。

家電製品使用時間定格消費電力消費電力量
エアコン5時間750W3.75kWh
洗濯機1時間400W0.4kWh
電子レンジ10分程度1400W0.24kWh
液晶テレビ5時間50W0.25kWh

仮定した条件で家電製品を使用する場合、合計の電力消費量は4.6kWhです。このため、1日の電力消費量を基に蓄電池を決める際の容量目安は、5kWh前後と言えます。

停電時に使いたい家電製品を考える

災害対策として蓄電池を導入するケースでは、停電したときに最低限使用したい家電製品の消費電力から蓄電容量を決める方法があります。蓄電池容量の決め方としては、家電製品の消費電力を基に計算するため1日の電力消費量から決める方法と同じです。

以下は、よくある停電時に使いたい家電製品の希望例です。

停電時に使いたい家電の例
  • 小さいお子さんやお年寄りがいるため、停電時もエアコンを使いたい
  • 温かいものが食べられるように、電子レンジだけ使いたい
  • リビングとキッチンだけは、電気を使えるようにしたい

上記の例のように特定の家電製品を使いたいのか、部屋全体で電気を使いたいかの要望によって蓄電池を選ぶ基準が以下2つのように変わります。

蓄電池選びの基準
  • 家電製品の電圧から決める
  • 全部屋で電気を使いたいかから決める

それぞれ、どのように蓄電池を決めるのか見ていきましょう。

家電製品の電圧から決める

日常生活で使用する家電製品の電圧は、100Vと200Vに分かれます。

スマートフォンやパソコンの電圧は100Vです。消費電力が大きいIHクッキングヒーターやエアコンなどは、200Vの電圧が必要です。

停電時に消費電力が大きいエアコンなどを使用したい場合は、200V対応の蓄電池を導入します。しかし200Vの電圧が必要な家電は電力使用量が多く、蓄電池がすぐに空になってしまいます。

たとえば、IHクッキングヒーターの消費電力が5800Wの場合、1日3回の調理で合計2時間使用すると11.6kWの電力が必要です。災害時に消費電力が大きい家電の使用が本当に必要かじっくり検討しましょう。

全部屋で電気を使いたいかから決める

蓄電システムは設置工事の段階で、停電発生時にどの場所で電気を使用するか決めて回路を作らなければいけません。停電時に電気を使用したい場所に応じた蓄電池の種類は、以下の2つです。

  • 住宅全体で電気を使用したい:全負荷型蓄電池
  • ひとつの部屋だけで電気を使用したい:特定負荷型蓄電池

平均的な家庭の1日あたりの電力消費量は、14kWh前後です。この場合、全負荷型蓄電池に必要な容量の目安は、15kWh程度になります。

特定負荷型の蓄電池では、停電時に電気を使いたい部屋にある家電の種類で蓄電池容量の目安が変わります。このため、平常時と停電時の生活を考えて、どの部屋で蓄電池の電気を使用するかと家電の検討が必要です。

参照:ひと月の電気代が10万円超え!?オール電化住宅の電気代を考える|経済産業省 資源エネルギー庁

コストパフォーマンス(価格)も考慮する

防災対策や電気代削減が目的の場合は特に、容量が大きい蓄電池を購入したほうが安心と考える傾向があります。しかし、容量が大きくなれば蓄電システムの外寸が大きくなる分、費用が高額です。

ローンを利用する場合は初期費用が高いと月々の返済金額が高くなるか、返済期間が長くなります。大きい容量の蓄電池を導入して安心感を得ても、電気代節約効果がなければ意味がありません。

自宅に見合った容量で適正なコストバランスになる蓄電池を選ぶのも、蓄電容量の決め方のひとつです。

蓄電池選びの注意点

蓄電池を選ぶ際、容量以外では以下3つの点に注意が必要です。

蓄電池の選び方
  • 実効容量を参考にする
  • 設置スペースに収まるサイズを選ぶ
  • サイクル数も重視する

それぞれどのようなことか、詳しく見ていきましょう。

実効容量を参考にする

蓄電池を決める際、もっとも重視するのは容量です。一般的にメーカーのカタログや仕様書に記載されているのは、特定の条件で測定した定格容量で、実際に使用できる蓄電池の容量ではありません。

実際に蓄電池から使用できる実効容量は、定格容量よりもやや少なくなります。このため実効容量を計算してから、蓄電池の容量を決めるのがおすすめです。

設置スペースに収まるサイズを選ぶ

蓄電池は屋内設置型と屋外設置型の、2タイプあります。屋内設置型は設置場所のスペースが限られるため、できる限りコンパクトな寸法が望ましいです。

屋外に設置する場合は、直射日光が当たらないスペースが必要です。一般住宅では隣家との境界が狭く、蓄電池を設置するのに十分なスペースがないことも考えられます。

屋外設置用の蓄電池でも、場合によってはコンパクトタイプが良いケースもあるでしょう。

サイクル数も重視する

サイクルとは、蓄電池が充電と放電を繰り返す流れを指します。蓄電池が充電無しの状態から満タンになった後、電力を使用して空になるまでが「1サイクル」です。

サイクル数は蓄電池が寿命を迎えるまでの間に、充放電できる回数の目安です。蓄電池の寿命=サイクル数ではなく、メーカーが公表している回数を超えても充放電できます。

充放電を実施できる回数の多さは蓄電池の寿命の目安になるため、サイクル数は容量と合わせて重視したいポイントです。

まとめ|蓄電池の容量は太陽光発電や電力消費量で決まる

容量が決まらず蓄電池の検討が進まない場合、以下4つの項目を参考にできます。

蓄電池容量の決め方
  • 太陽光発電の容量に合わせる
  • 1日の電力消費量から決める
  • 停電時に使いたい家電製品を考える
  • コストパフォーマンス(価格)も考慮する

太陽光発電の電気をもっと有効に使いたい、停電に備えたいなど蓄電池を導入する目的で、容量を決める際の基準になる項目が変わります

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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