太陽光パネルは台風で飛ばされる? 耐えられる風速や台風対策を解説
「台風でどれくらいの風圧がかかると太陽光パネルが飛ぶ可能性があるの?」
「太陽光パネルが台風などの災害で被害を受けた事例はある?」
「太陽光発電が台風で被害を受けた場合の対処法や、対策での注意点を知りたい」
上記のように自然災害でのトラブルによるリスクが心配で、太陽光発電投資を始められずにいる投資家様もいらっしゃるのではないでしょうか。
勢力が大きい台風が上陸した土地では、暴風の影響で太陽光パネルが飛んでしまったり、破損したりする被害の実例があるのが現状です。
そこで本記事では、太陽光パネルが耐えられる風速や台風被害の実例と、対処法について解説します。
事前の台風対策方法も分かる内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。
太陽光パネルの処分や売却を検討されている方は、「太陽光パネルの買取相場」をご覧ください。価格推移や買取業者の選び方も解説しています。
太陽光パネルが耐えられる風速
太陽光発電設備において太陽光パネルは、JIS(ジス)規格により毎秒62mの風速に耐えられるように設計されています。
気象庁での台風の強さを表す階級分けは、以下の表のとおりです。
階級 | 最大風速 |
---|---|
強い | 33m/s以上、44m/s未満 |
非常に強い | 44m/s以上、54m/s未満 |
猛烈な | 54m/s以上 |
一番勢力が強い猛烈な台風の最大風速は54m/sですので、62m/sの風速に耐えるように設計されている太陽光パネルは、理論上では台風に耐えられると言えます。
台風で太陽光パネルが飛ぶ理由
勢力が強い台風の影響で強風が吹いても耐えられるように設計されている太陽光パネルが飛んでしまう理由には、以下2つのことが考えられます。
- 強い勢力の台風による暴風
- ボルトの緩み
なぜ台風で太陽光パネルが飛ぶ被害が発生してしまうのか、詳しく説明します。
強い勢力の台風による暴風
ソーラーパネルを飛ばしてしまうほど勢力が大きい台風が発生していることが、パネルが飛ぶ主な原因です。
2019年9月に千葉県が停電などの大きな被害を受けた台風15号の最大瞬間風速は、57.5mを観測していました。
この最大瞬間風速57.5mは最も勢力が大きい「猛烈な台風」に該当し、当時はものすごい勢いの暴風が吹いていたと推測できます。
JIS規格で62mの風速に耐えられるように設計されているソーラーパネルが暴風で飛ぶのには、次に説明するボルトの緩みも関係しています。
それではなぜボルトが緩んでしまうのか、見ていきましょう。
ボルトの緩み
発電設備の組み立てに使用しているボルトの緩みも、台風でパネルが飛ぶ理由の1つです。
太陽光発電ではスクリュー杭と架台、架台とパネルなど無数のボルトを使用して組み立てられています。
施工中のボルトは仮止めですが、設置工事の最終段階で増し締めを実施し、更にボルトがしっかり締まっているかチェックします。
最後のチェックが完了した全てのボルトには、以下の画像のようなアイマークと呼ばれる目印を付けるのがルールです。
このため台風による暴風で、施工直後にパネルなどの設備が飛ぶ可能性は低いです。しかし施工から時間が経過していると、経年劣化や地震などで徐々にボルトが緩むことも考えられます。
ボルトが緩んだ所に暴風が吹き荒れると、パネルが飛んでしまう可能性が高いです。
太陽光パネルの台風による事故の事例
太陽光発電の事故報告を受けた経済産業省がまとめた資料では、2018年の台風による事故件数は26件と公表されています。
以下では、実際に太陽光発電でパネルが被害を受けた事故事例を2つ紹介します。
参照:今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について|経済産業省
事例①台風でパネルが飛散
2018年に台風21号が発生した際、大阪府⼤阪市住之江区にある太陽光発電所で、太陽光パネルが破損や飛散する事故が発生しています。原因は不明ですが、一部の破損したパネルでは発火も起きていました。
設置していた約28,000枚のパネルのうち、半数近い13,780枚が台風による被害を受けたとされています。
現地の被害状況から、台風21号で吹いた風が設計上耐えられる風速を超えたことが事故の原因と、経済産業省が推定しています。
復旧工事としては、台風対策を施した上で全面的な太陽光パネルの交換が必要でしたが、復旧工事は翌年以降に持ち越され、その間売電収入が一切得られない状況でした。
想定よりも強い勢力の風が吹いた影響で事故が起きて、発電停止といった事態にならないためには太陽光パネル飛散防止対策が必要です。
事例②強風による飛来物でパネルがひび割れ
同じく2018年に発生した台風21号では、大阪府大阪市此花区の太陽光発電所で太陽光パネルの表面ガラスにひびが入る被害も発生しています。
この発電所では、ひび割れた箇所から雨水がパネル内部に進入したことによる漏電の被害もありました。
経済産業省が公表したパネル破損の原因は、以下の2つです。
- 強風で太陽光パネルの耐荷重よりも大きい力が生じて、表面のガラスが割れた
- 発電所の近隣に敷き詰められていた砂利が飛来し、パネルに当たった
被害を受けた発電所では、耐荷重の性能が高いパネルへの交換と、砂利が飛ばないように地面の舗装を実施して台風対策をしています。
太陽光パネルが割れた状態で放置すると、この発電所の事例のように漏電が起き、感電などで被害が拡大する危険があります。
太陽光発電所で事故が起きた場合は、すぐに業者に連絡して対応の相談が必要です。
台風で太陽光パネルが飛んだ・破損したときに必要な対応
太陽光パネルが台風で飛んだり破損したりした場合に、実施するべき対応は以下の3つです。
- 電源を切って発電しないようにする
- 発生した被害を全て把握する
- 太陽光パネルの回収と処分を業者に相談する
それぞれでどのような対応が必要か、詳しく説明します。
電源を切って発電しないようにする
まずは太陽光発電設備全体の電源を切り、電気を発電しない状態にしましょう。
パワーコンディショナーやケーブルなど太陽光パネル以外の設備が損傷していると、漏電の可能性があります。漏電は感電や発火などの原因になり、設備が稼働したままの状態は危険です。
台風などの自然災害で太陽光発電所が損壊した場合、ほかにどのような問題があるか分からないため、被害状況の確認と合わせて業者に対応を依頼することをおすすめします。
発生した被害を全て把握する
適切な修理内容を検討するために、発生している被害を全て把握することも事故発生後の対策では重要です。
被害状況の確認でチェックしたいポイントは、3つあります。
- 太陽光パネルの飛散・破損状況
- 故障している機器の確認
- 発電設備が稼働しているか
被災直後は太陽光パネルが破損していたり、ケーブルの断線があったりすると漏電している可能性が高く危険なため、被害状況の確認は業者に依頼しましょう。
太陽光パネルの回収と処分を業者に相談する
現地の被害状況を把握できたら、飛散した太陽光パネルの回収や故障した機器の交換と処分を業者に相談します。
被害状況によっては修繕が完了するまで発電を再開できず、修理が遅れると売電収入減少による損失が大きくなりかねません。
修理の際はただ原状復帰してもらうのではなく、なぜ台風で太陽光パネルの損傷や飛散といった被害が発生したか原因を先に突き止めましょう。
次に台風が発生したときに同じ被害に遭わないよう、再発防止策を施した上での修繕工事を実施してもらえば安全に太陽光発電を継続できます。
太陽光パネルの台風対策でやること
勢力が大きい台風が上陸してもパネルが被害を受けないようにするための対策は、以下の2つです。
- 設備の状態を確認
- 台風被害をカバーできる保険に加入
ソーラーパネルの風対策では、どのようなことが必要なのか説明します。
設備の状態を確認
台風シーズンを迎える前に、太陽光発電システムの状態を点検して必要に応じてメンテナンスするのが、太陽光パネルの台風対策のひとつです。
出力容量10kW以上の産業用太陽光発電では、年2回の定期点検が義務付けられています。
台風は8~9月が発生数の増える時期です。太陽光発電の定期点検を実施する時期を7月頃に合わせれば、台風による被害を受けにくくできます。
こまめな発電設備のメンテナンスが、太陽光発電での台風対策に繋がります。
参考:~台風の季節~|気象庁
関連記事 太陽光発電のメンテナンス費用(維持費)
台風被害をカバーできる保険に加入
台風や地震など自然災害による機器の故障は、基本的にメーカー保証は対象外のため適用されません。
このため自然災害の被害をカバーできる保険加入が、台風対策になります。太陽光パネルの台風対策に必要な保険は、以下の4つです。
太陽光発電では台風以外にも地震や集中豪雨による浸水など、備えておいたほうが良い自然災害が多くあります。
これらすべてに万全に備えようとすると、保険の費用が高くなりすぎてしまいかねません。
台風が上陸する頻度が高い土地では台風への補償を厚くするなど、保険会社に相談しながらの保険選びが必要です。
関連記事 太陽光パネルから火災が起きる原因
太陽光パネル台風についてのまとめ
太陽光パネルは台風で暴風が吹いても事故が起きないように、62m/sの風速にも耐えるように設計しなくてはいけないとJIS規格で定められています。
しかし風速62m/sよりも弱い勢力の台風で、太陽光パネルが飛散するなどの事故が発生しました。
架台と太陽光パネルを固定しているボルトの緩みも、台風でパネルが飛ぶ原因と考えられるため、定期的なメンテナンスの実施が欠かせません。