太陽光発電の消費税還付の条件や必要書類を税理士が解説【サラリーマンは受けられる?】

一般的に太陽光発電投資は、株式投資や仮想通貨投資等に比べ、事前に計画したとおりの収入が見込めることから「リスクの低い投資方法」と言えますが、投資額は早めに回収した方が望ましいです。
その方法のひとつとして「消費税の還付を受けること」が挙げられます。
本記事は、以下のような方へ向けて、太陽光投資の消費税還付についてを解説します。
- 新たに投資を何か始めたいと考えている人
- 老後の資金についてお悩みの人
- 副収入で年収をアップさせたいサラリーマン
適用を受ける際に注意しなければならない事項も解説しますので、今から太陽光発電投資を始めたい方はご一読ください。
当サイトでは、太陽光発電投資についても詳しく解説しています。失敗のリスクやデメリット、投資戦略について知りたい方は参考にしてください。
消費税還付とは?

「消費税還付」とは、事業者(太陽光事業者)が仕入れなどで支払った消費税額が、売電収入として得意先から受け取った収入金額に含まれている預かった消費税額よりも大きい場合に、払いすぎた分の消費税が還付される仕組みです。
太陽光発電設備を購入する際には、多額の消費税が発生します。
非課税の取引(土地の売買・賃貸等)は消費税還付の対象となりません。
太陽光発電投資の消費税還付の条件
消費税の還付を受けるためには下記の条件を満たす必要があります。
- 課税事業者である
- 支払った消費税の方が多い(支払った消費税 > 預かった消費税)
それぞれについて詳しく解説します。
課税事業者になる条件
課税事業者になる条件は以下のとおりです。
- 前々事業年度の課税売上が1,000万円を超える
- 資本金の額または出資の金額が1,000万円以上
- 課税事業者になる旨を税務署へ申請する
① 前々事業年度の課税売上が1,000万円を超える
消費税の課税事業者の判定は2年前の課税売上高(以下「基準期間における課税売上高」といいます。)が1,000万円を超えるか否かで行われるため、太陽光発電投資を始めた初年度及び2年目は原則消費税を納める必要がありません。
しかし、3年目以降において基準期間における課税売上高が1,000万円を超えていると、消費税の課税義務が生じます。
基準期間における課税売上高が1,000万円を超えない場合であっても、消費税の納税義務が生じる場合があります。
それは特定期間における課税売上高が1,000万円を超えたときです。
「特定期間」とは、個人事業主の場合は前年の1/1〜6/30までの期間をいい、法人の場合には前事業年度開始の日から6月の期間を指します。
半年で1,000万円を超えるほどの事業者は、翌年から消費税の納税義務が生じても問題ないとされていることが趣旨となっています。
なお、課税売上高に代えて、給与等支給額の合計額により判定することも可能です。
② 資本金の額または出資の金額が1,000万円以上(新設法人の納税義務の免除の特例)
新規設立法人のうち、以下の場合は初年度から消費税の納税義務は免除されません。
- 基準期間がない事業年度の開始日における資本金の額又は出資金額が1,000万円以上である場合
- 基準期間における課税売上高が5億円超である者から50%超の出資を受けて設立した法人(特定新規設立法人)である場合
なお、個人事業主はそもそも資本金の概念がないため、この制度の対象外です。
③ 課税事業者になる旨を税務署へ申請する
税務署へ課税事業者になる旨の届出書を提出することで、消費税の免税事業者が課税事業者になることも可能です。
支払った消費税の方が大きくなる条件
消費税の還付を受けるには、売電収入にかかる消費税額よりも、太陽光設備の購入費用にかかる消費税額の方が多い必要があります。
しかし、すべての収入および費用が対象となるわけではないため注意が必要です。
(A)対象となる収入
- 売電収入
(B)対象とならない収入
- 電柱使用料収入
(A)対象となる費用
- 太陽光発電設備の購入費用
- 発電監視システム通信費
- パワコン電気代
- 草刈代
- メンテナンス代
- 委託管理料
- パワコン交換費用(15年後くらいで必要となります)
- 設備撤去費用
- 税理士報酬
(B)対象とならない費用
※ そもそも消費税が課されない非課税取引が該当します。
- 土地の購入費用
- 固定資産税
- 償却資産税
- 動産保険料
- 借入金の利子(元本部分も負債の返済に該当するため対象外です)
- 減価償却費
- 収入印紙代
サラリーマンは消費税還付を受けられる?

サラリーマンでも消費税還付が受けられるのか?についてはよく質問を頂きます。
答えは「受けられます」。
サラリーマンであっても、太陽光発電事業が事業規模であれば、課税事業者になることにより消費税還付を受けることが可能です(一般的な住宅屋根上の太陽光は事業規模になりません)。
ただし、消費税課税事業者になるためには届出が必要です。次に詳しく解説します。
「消費税課税事業者届出書」の提出が必要
課税事業者になるには、所轄税務署に「消費税課税事業者届出書」を提出する必要があります。
事由 | 届出書 | 提出時期 |
---|---|---|
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えることとなったとき (又は1,000万円以下となったとき) | 消費税課税事業者届出書(基準期間用) (消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書) | 速やかに |
特定期間の課税売上高が1,000万円を超えることとなったとき | 消費税課税事業者届出書 (特定期間用) | 速やかに |
資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上の法人を 設立したとき | 消費税の新設法人に該当する旨の届出書 | 速やかに |
免税事業者が課税事業者を選択するとき (又は選択 を取りやめるとき) | 消費税課税事業者選択(不適用)届出書 | 選択しようとする(選択をやめようとする)課税期間の初日の前日まで |
簡易課税制度を選択するとき (又は選択を取りやめるとき) | 消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書 | その適用を受けようとする(適用をやめようとする)課税期間の初日の前日まで |
課税期間の特例を選択又は変更するとき(又は選択 を取りやめるとき) | 消費税課税期間特例選択・変更(不適用)届出書 | 同上 |
「法人税の確定申告書の申告期限の延長の特例」の適用を受ける法人が、消費税の確定申告の申告期限を延長しようとするとき(又は適用を受けることをやめようとするとき) | 消費税申告期限延長(不適用)届出書 | その適用を受けようとする(適用をやめようとする)事業年度終了の日の属する課税期間の末日まで |
住宅用太陽光の収益は「雑所得」?
サラリーマンが太陽光発電設備を自宅の屋根等に取り付けて、家庭において消費された電気を上回る余剰電力を売却している場合には、「事業所得」ではなく「雑所得」に該当します。青色申告特別控除を利用できないため注意が必要です。
また太陽光発電投資が赤字であった場合にも、雑所得に該当してしまうと、ほかの所得の金額と損益通算できないという問題が生じます。
- 給与所得:800万円
- 事業所得(太陽光発電):△100万
⇒ 所得金額:700万円(800万円 - 100万円)
太陽光発電投資の消費税還付のやり方(手続き)
太陽光発電投資の消費税還付は、以下の流れで手続きします。
- 個人事業の開業・廃業等届出書の提出
- 所得税の青色申告承認申請書の提出
- 消費税課税事業者選択届出書の提出
- 所得税確定申告書の提出
- 消費税申告書の提出
それぞれ詳しいステップは以下のとおり。
個人事業の開業・廃業等届出書の提出
新たに事業を開始した旨を税務署へ伝えるため、個人事業の開業・廃業等届出書を事業開始日から1月以内に提出します。
開業・廃業等届出書を提出することで、税務署から案内が届くようになります。
所得税の青色申告承認申請書の提出
所得税の青色申告承認申請書を、事業を開始した年の3月15日まで(その年の1月16日以後に事業を開始した場合には、その事業を開始した日から2月以内)に提出します。
所得税の青色申告承認申請書を期限までに提出しないと、65万円の青色申告特別控除を適用できないため注意してください。
消費税課税事業者選択届出書の提出
消費税の免税事業者が課税事業者になるために、消費税課税事業者選択届出書を課税期間の初日の前日まで(前年度末まで)に提出します。
※ 事業を開始した年である場合には、その年中で構いません。
① 今まで免税事業者だった方が、令和5年から2回目の太陽光投資として、太陽光発電設備をもう1台購入して課税事業者になろうとする場合
⇒ 令和4年12月31日までに消費税課税事業者選択届出書を提出する必要があります。
② 令和5年から新たに太陽光発電設備を購入して事業を開始した場合
⇒ 令和5年12月31日までに消費税課税事業者選択届出書を提出する必要があります。
所得税確定申告書の提出
翌年2月16日から3月15日までに所得税確定申告書を所轄税務署へ提出します。
なお、還付申告書を提出する場合には2月15日以前でも提出可能です。
太陽光発電事業である事業所得だけではなく、給与所得・配当所得等、ほかの所得も一緒に申告する必要があります。
青色申告承認申請書を提出した事業者は添付書類として、総収入金額及び必要経費の内訳を記載した青色申告決算書を提出する必要があります。
消費税申告書の提出
翌年3月31日までに消費税申告書を所轄税務署へ提出します。
所得税の納期限と異なっているため注意が必要です。
また、仕入税額控除の適用を受けるために帳簿や請求書等を保存しなければなりません。
高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例
消費税の課税事業者を選択することで、太陽光発電投資をはじめた初年度に多額の消費税の還付を受けられますが、デメリットもあります。
そのデメリットとは、2年目以降において売電収入にかかる消費税額を納付する必要があることです。
これを防ぐための方法として、税務署へ今度は「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出すれば良いですが、縛りがあってすぐには提出できません。
事業者が「高額特定資産(課税仕入れにかかる支払対価の額が1,000万円以上のものをいいます。)」を課税期間中に取得した場合、当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度が適用されません。
太陽光発電投資の消費税還付の必要書類

消費税の還付を受けるためには、通常の消費税申告書以外にも下記の書類を提出する必要があります。
(1)課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表
課税売上額・免税売上額・非課税売上高を記載して課税売上割合等を計算する書類となります。
(2)消費税の還付申告に関する明細書
下記の事項を記載した明細書を税務署へ提出する必要があります。
- 還付申告となった主な理由
※ 太陽光発電投資の初年度は太陽光発電設備の投資金額が多額になるため、設備投資に〇を記載します。 - 主な課税資産の譲渡等
(取引金額が100万円以上の取引先を上位5番目まで記載します。)
※ 売電収入の得意先等を記載します。 - 主な輸出取引等の明細
(取引金額総額の上位5番目までを記載します。) - 仕入金額等の明細
(所得別に仕入金額・必要経費・固定資産等の取得価額を記載します。) - 主な棚卸資産・原材料等の取得
(取得金額が10万円以上の取引先を上位5番目まで記載します。) - 主な固定資産等の取得
(1件当たりの取引金額が100万円以上の取引を上位5番目まで記載します。)
※ 初年度は太陽光設備の取得が該当するため、ここに購入先を記載します。 - 特殊事情
(顕著な増減事項等及びその理由を記載します。)
太陽光発電投資の消費税還付における税理士費用
太陽光発電投資の消費税還付における、税理士費用の事例を紹介します。
年間売上 | 確定申告報酬 |
---|---|
500万円以下 | 100,000円 |
1,000万円以下 | 150,000円 |
3,000万円以下 | 200,000円 |
5,000万円以下 | 250,000円 |
- 所得税及び消費税の確定申告書の提出だけではなく、届出書の提出等も含んだ価格となっています。
- 年間売上高が5,000万円を超える場合には別途見積もりし報告いたします。
太陽光発電投資の消費税還付まとめ
太陽光発電投資における消費税還付の仕組みと、必要な手続きについて解説しました。
消費税の制度は、知っているか否かで得したり損したりするかが明確に分かれてしまう税目となっています。
また、消費税課税事業者選択届出書の提出時期を間違えると還付を受けられなくなるため注意が必要です。
消費税の還付が生じる以上、間違った申告をしてしまうと税務調査に入られるリスクが高くなってしまいます。
消費税の申告は煩雑で難しいですが、制度を上手く利用することで投資額を早期に回収でき、新たな投資に回すことが可能となります。