相続した農地の売却とかかる税金についてわかりやすく解説

相続した農地の売却とかかる税金
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相続によって農地を引き継いだものの、「遠方に住んでいて管理ができない」「農業を継ぐ予定がない」といった理由で、売却を検討される方は少なくありません。

しかし農地の売却は一般的な宅地とは異なり、農地法による厳しい規制や特有の税金・特別控除の仕組みが存在します

そこで本記事では、相続した農地の売却にかかる税金について以下の内容を解説します。

農地の税金を大幅に減らせる特別控除も分かる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。

農地を相続した際にかかる「相続税」の仕組み

農地の画像

農地を売却する前段階として、まず直面するのが相続税です。農地は現金収入を生んでいなくても、その評価額に応じて課税対象となります。

農地の評価区分と評価方法

相続税の基となる評価額は、農地の立地や利用状況によって以下の4つの区分に分けられ、評価方法が異なります。

農地の評価区分と評価方法
  • 純農地・中間農地:固定資産税評価額に一定の倍率を乗じる「倍率方式」で評価
  • 市街地周辺農地:その農地が市街地農地であるとした場合の価額の80パーセントに相当する金額。評価額が非常に高くなる傾向
  • 市街地農地:宅地比準方式 または 倍率方式

また耕作が放棄された遊休農地については、農地ではなく雑種地や宅地並みとして評価されることがあり、税負担が重くなる可能性があります。

相続税の納税猶予制度

農地の相続税の納税猶予制度とは、農業を営んでいた被相続人から農地を相続した人が、その後も引き続き農業を営む場合に、本来の相続税額のうち「農業投資価格」を超える部分の納税を猶予する制度です。

農業投資価格とは農地などが将来にわたって農業用地として利用されることを前提に、自由な市場取引が行われた場合に通常成立すると考えられる価額を指し、国税局長がその水準を決定したものです。おおむね10aあたり20万円~90万円程度の範囲で設定されています。

猶予された税金は、以下のいずれかに該当したときに免除されます。

相続税が免除される場合
  • 特例を受けた農業相続人が死亡した場合
  • 後継者に農地を生前一括贈与した場合
  • 市街化区域内の一定の農地について、20年間農業を継続した場合(特定の要件を満たす場合に限る)

特例を受けるための主な要件は以下の通りです。

特例を受けるための主な要件
  • 被相続人(亡くなった人): 死亡の日まで農業を営んでいた、あるいは生前一括贈与を行っていたなどの条件があります。
  • 農業相続人(引き継ぐ人): 相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業を行うと認められる相続人である必要があります。
  • 対象となる農地: 被相続人が農業に使用していた農地で、申告期限までに遺産分割されたものなどが対象です。

手続きとしては相続税の申告期限(10か月)内に申告書を提出し、猶予される税額に見合う担保を提供する必要があります。また納税猶予期間中は、原則として3年ごとに「継続届出書」を提出しなければなりません。

納税猶予を受けている農地を売却したり、農地以外に転用したりすると、原則として猶予されていた相続税に利子税を加えて納付しなければなりません。

売却を検討する際は、まずこの猶予の有無を確認することが不可欠です。

相続した農地売却時に発生する主な税金

「農地を売却した時の税金はいくらですか?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。農地を売却する際には、主に以下の税金が課せられます。

印紙税

売買契約書を作成する際に必要な税金です。契約金額(売却額)に応じて税額が決まり、収入印紙を貼付して納税します。

令和9(2027)年3月31日までに作成される契約書には軽減税率が適用されます。

例)1,000万円超~5,000万円以下の場合:1万円(本則2万円)

登録免許税

所有権移転登記を行う際に課せられる税金です。

登録免許税額の算式

登録免許税額 = 課税標準(不動産の価額)× 税率

課税標準となる「不動産の価額」は、原則として 固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)です。税率は原則として固定資産税評価額の2%ですが、令和8(2026)年3月31日までに登記する場合は軽減税率の1.5%が適用されます。

慣習として買主が負担することが多いですが、契約内容によっては売主が負担する場合もあります。

所得税・住民税

農地を売却して得た「利益」に対して課せられる税金で、もっとも金額が大きくなる可能性があります。所得税(復興特別所得税を含む)と住民税を合わせて納税します。

関連記事 農地売却にかかる税金と確定申告の方法

相続した農地売却に関する所得税の計算方法と所有期間の重要性

譲渡所得は以下の計算式で算出します。

譲渡所得の算式

課税譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

  • 譲渡価額:農地の売却価格
  • 取得費:被相続人が農地を購入した代金や取得時の登記費用、測量費など
  • 譲渡費用:仲介手数料など、売却のために直接要した費用
  • 特別控除額:特定の条件を満たす場合に差し引ける控除(後述)

所有期間による税率の違い

譲渡所得税の税率は、農地を所有していた期間によって「短期」と「長期」に分かれます。

区分所有期間税率(所得税・住民税・復興特別所得税の合算)
短期譲渡所得5年以下39.63%
長期譲渡所得5年超20.315%

所有期間は取得した日の翌年1月1日を起算日として判定します。

相続した農地の特例

相続の場合、所有期間は被相続人(亡くなった方)が取得した時期を引き継ぐことができます。先祖代々の農地であれば、相続後すぐに売却しても「長期譲渡所得」の低い税率が適用されるのが一般的です。

取得費が不明な場合

古い農地で取得価格がわからない場合、売却価格の5%を取得費(概算取得費)として計算することが認められています。ただし、この方法を使うと実際の取得費よりも低くなることが多く、その分、税金が高くなってしまう傾向があります。

相続した農地売却の税負担を抑える「特別控除」の活用

農地の売却には農政上の目的から手厚い税金の特別控除制度が設けられており農林水産省のHPなどに詳細が記されています。これらを適用できるかどうかが節税の鍵となります。

800万円の特別控除

農地売買の800万円控除は農地中間管理事業の推進に関する法律に基づいて作成された農用地利用集積等促進計画に従い農用地を譲渡した場合や農業委員会のあっせん等を通じて農用地区域内の農用地を譲渡した場合などに適用されます。

1,500万円の特別控除

農業経営基盤強化促進法に基づいた買入協議によって農地中間管理機構に買い入れられた場合に適用されます。

2,000万円の特別控除

農業経営基盤強化促進法の地域計画の特例に基づいて農地中間管理機構に買い入れされた場合に適用されます。

5,000万円の特別控除

道路建設などの公共事業のために農地が収用された場合に適用されます。非常に大きな控除額ですが、収用証明書などの書類が必要です。

農地を売った時の確定申告の手続き

相続した農地や畑の売却の確定申告をして利益が出た場合、あるいは特別控除を利用して税金をゼロにする場合でも、原則として確定申告が必要です。

売却した翌年の2月16日から3月15日(原則)までの間に、管轄の税務署へ書類を提出します。 国税庁のe-Taxでも手続きできます。確定申告書の書き方には注意が必要です。

必要書類

  • 確定申告書、譲渡所得内訳書
  • 売買契約書の写し、譲渡費用の領収書
  • 農地法の許可指令書の写し
  • 特別控除を受けるための各種証明書(収用証明書、あっせん証明書) など

まとめ|次の耕作者へつなぐためルール(法律・税制)に沿って進める

相続した農地の売却は、「農地法」と「税法」という2つの高い壁を越える必要があります。

しかし、適切な手順を踏み、800万円〜5,000万円といった強力な特別控除を活用すれば税負担を最小限に抑え、負債になりかねない土地を有効な資産へと変えることが可能です。

状況によっては専門家のアドバイスも受けながら、自分にとって最適な進め方を検討していきましょう。

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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