京都議定書の内容をわかりやすく解説! パリ協定との違いや結果は?

「京都議定書」という名前を聞いたことがあっても、具体的な内容までは知らない方も多いです。
本記事では、京都議定書について以下の内容をわかりやすく解説します。
京都議定書のほかパリ協定にも触れているので、環境問題への国際的な取り組みや歴史をくわしく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
京都議定書の内容をわかりやすく解説
京都議定書とは1997年に京都市で行われた国際会議「COP3(京都会議)」で採択された地球温暖化防止を目的とした条約です。京都議定書の概要は、以下のとおりです。
- 約束第一期間である2008~2012年の間に先進国等が温室効果ガスの排出量を1990年(一部のガスは1995年)の排出量に比べて95%以下となるようにする
- 各国で温室効果ガスの削減目標を決める
- 各国で温室効果ガスを減らすよう努力し、国際社会全体で削減目標を達成するために制度や仕組みを定める
COP3を経て2008~2012年の日本の目標は、「温室効果ガスを1990年の排出量から6%削減」に決まりました。
京都議定書で定めた制度や仕組み
京都議定書で定めた「国際社会全体で削減目標を達成するための制度や仕組み」とは、主に以下の4つがあります。
- 森林などによる二酸化炭素の吸収を削減量としてカウントする
- クリーン開発メカニズム(CDM):先進国が途上国と協力して排出削減する制度
- 共同実施(JI):先進国同士で協力して排出削減する制度
- 排出量取引:削減目標を超えて削減した国から、削減枠を購入できる制度
クリーン開発メカニズム、共同実施、排出量取引の3つの制度は、まとめて「京都メカニズム」とも呼ばれます。
京都議定書が定められた経緯
京都議定書が定められたのは、1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミットがあったためです。
地球サミットでは地球温暖化対策の枠組みとして「気候変動枠組条約」が定められ、1994年4月から発効しました。
すべての締約国や先進国の義務を取り決めましたが、当時は地球温暖化について不明なことも多く、具体的な対策は決まっていませんでした。
その後、1997年に京都で行われたCOP3で、気候変動枠組条約の具体的なルールや方針を決定したものが京都議定書です。
2001年にアメリカは京都議定書から離脱
2001年にブッシュ大統領がアメリカ大統領に就任し、アメリカは京都議定書に参加しない意思を表明しました。京都議定書からアメリカが離脱した理由は2つあります。
- 発展途上国に対する削減義務がないため
- アメリカの経済に悪い影響があるため
アメリカは全世界のCO2排出量の25%を占めており、京都議定書ではアメリカの温室効果ガス削減目標は7%とされていました。
アメリカの参加は重要だとして日本からも説得・交渉にあたりましたが、結局アメリカは京都議定書に復帰しませんでした。
京都議定書(第一約束期間)の結果
京都議定書の結果を簡単にまとめると、以下のとおりです。
- 自国の純粋な排出量の削減だけでは目標達成できなかった国があった
- 制度や仕組みを利用しすべての参加国が目標を達成した
具体的に説明すると、単純に自国の温室効果ガス排出量を削減して目標を達成した国は、24カ国でした。

クリーン開発メカニズム(CDM)や森林などによる吸収分を反映すると、達成国は以下のとおり31カ国です。

オーストリア、ベルギー、イタリア、ルクセンブルクの4カ国は単独では目標を達成していませんが、EUの共同実施に参加していました。EU全体で目標達成したため、目標未達成の4カ国も目標達成したと見なされています。
日本の達成状況
結論から言うと、日本は京都議定書の削減目標を達成しました。
京都議定書で定めた日本の目標達成状況は、純粋な温室効果ガスの排出量のみを見ると+1.4%です。
しかしクリーン開発メカニズム(CDM)や森林などによる吸収分を反映すると、削減量は-8.4%。目標だった-6%を2.4%上回った排出量削減を実現しました。
日本が目標達成に向けて行った取り組み
日本が京都議定書の目標を達成するために行った取り組みは、大きく分けて以下の8つです。
- 環境に配慮したまちづくり・公共交通
- 自動車単体対策
- 交通流対策
- 物流の効率化
- 住宅・建築物の省エネ性能の向上
- 下水道施設の対策
- 温室効果ガス吸収源対策
- 新エネルギー・新技術の活用等による先導的取組
公共交通機関の利用促進やエネルギー消費の効率を上げる対策、自動車の燃費改善など企業も巻き込んで取り組みました。
温室効果ガスの排出量削減を推進した結果、日本は京都議定書の目標達成に至っています。
京都議定書第一約束期間の課題や問題点
京都議定書の課題や問題点は以下の2点にあります。
- 温室効果ガスの削減義務が先進国のみだった
- 削減義務を負った国だけでは影響力が少なかった
日本は上記を踏まえてすべての国が公平に温室効果ガスを減らすルールを作るべきだとし、京都議定書の第二約束期間には不参加を表明しました。
京都議定書の課題や問題点をそれぞれくわしく解説します。
温室効果ガスの削減義務が先進国のみだった
温室効果ガスの削減義務が先進国のみだった点が、京都議定書の1つめの問題点です。
京都議定書では、インドや中国を含む発展途上国に削減義務はありませんでした。発展途上国は経済成長するにつれ、エネルギー消費量や温室効果ガスの排出量も増えます。
各国の状況を考えずに発展途上国と先進国で分けた結果、削減義務を負った先進国にのみ負担がいく不公平な条約となってしまいました。
削減義務を負った国だけでは影響力が少なかった
京都議定書の2つめの問題点は、排出量削減の義務を負った国だけでは影響力が少なかったことです。
削減義務を負った国の温室効果ガス排出量は、地球全体の排出量の25%ほど。すべての国が目標を達成したところで、地球温暖化に対する効果が低い状況でした。
とくに、温室効果ガス排出量の多いアメリカや中国、インドに削減義務がなかった点が京都議定書の問題点です。
京都議定書は失敗だった?
京都議定書には成功と失敗どちらの側面もあります。
一般市民に地球温暖化対策の重要性を広めた点や、省エネ技術や商品開発の面では成功でした。一方で純粋な温室効果ガス排出量の削減としては貢献度が低く、失敗だったとも言われています。
京都議定書は現在パリ協定に
京都議定書は、現在パリ協定へと引き継がれています。
2015年12月にパリで行われたCOP21で、京都議定書の後継としてパリ協定が採択されました。京都議定書は2020年までの地球温暖化対策の目標を決めていたもので、パリ協定は2020年以降の目標を決めています。
パリ協定で定められた条約は以下のとおりです。
- 気温上昇を2℃未満(できれば1.5℃以内)に抑えることを目標にする
- すべての国が5年ごとに温室効果ガス削減の目標を見直し、更新する
- 各国の取り組み状況を共通のルールで報告し、チェックを受ける
- 各国が気候変動への適応策を進め、適応計画を定期的に報告する
- 新技術(イノベーション)を活用し、温暖化対策を促進する
- 5年ごとに世界全体の進捗を評価する仕組み(グローバル・ストックテイク)を導入する
- 先進国は資金を提供し、途上国も自主的に資金提供する
- 二国間クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズム(排出量取引など)を活用し、温室効果ガス削減を促進する
京都議定書とパリ協定の違い
京都議定書とパリ協定には以下2つのポイントで違いがあります。
義務の内容 | 義務を負う国 | |
---|---|---|
京都議定書 | 削減目標の達成 | 参加した先進国 |
パリ協定 | 削減目標の提出 | すべての参加国 |
京都議定書は先進国にのみ義務が課せられたのに対し、パリ協定では途上国を含むすべての参加国が対象となりました。
ただし、パリ協定で定められた義務の内容は、削減目標の達成ではなく提出であり、義務とされているのは「5年ごとに温暖化に対する目標を提出すること」のみです。提出した目標の達成は義務ではなく、目標を達成できなくてもペナルティはありません。
一方、京都議定書では目標の達成が義務とされており、達成できなかった場合にはペナルティがありました。
パリ協定での日本の目標
パリ協定での日本の目標を時系列順に紹介します。
パリで行われるCOP21の開催に先立って、温室効果ガスの削減目標を掲げました。
パリ協定に基づいて目標を更新し、5年前の目標に加えてさらなる削減努力を行うことを追加しました。
米国主催気候サミットでは、46%の削減を目指し50%削減に向けても挑戦すると野心的な目標を掲げました。
パリ協定でのアメリカの立場
大統領の就任に伴い、アメリカがパリ協定でとる立場は何度も変わっています。
トランプ大統領は離脱の理由を、パリ協定の影響で2025年までに270万人分の雇用が奪われる想定だからだと説明しています。
国際的なルールにより、宣言より約3年半後にアメリカがパリ協定から離脱しました。
離脱から約2カ月後の2021年1月20日にジョー・バイデンがアメリカ大統領に就任し、パリ協定への復帰を国連に通知しました。
規定により、復帰通知より30日後にアメリカはパリ協定に復帰しています。
2025年1月20日にドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任し、再度パリ協定からの離脱を宣言しました。
規定により約1年後の2026年の1月27日に、アメリカはパリ協定から離脱する予定です。
京都議定書の時と同じく、温室効果ガス排出量の多いアメリカの協力なくしては地球全体での排出量削減は難しいとの声もあります。
まとめ|京都議定書はパリ協定に形を変え継続されている
京都議定書の内容や結果、問題点をわかりやすく解説しました。
京都議定書の第一約束期間(2008~2012年)では、参加したすべての国が目標を達成しました。
しかし先進国のみが削減義務を負ったため、不公平さや効果が限定的だったことが問題点だとされています。日本もその点を課題として挙げ、京都議定書の第二約束期間には参加しませんでした。
2015年に京都議定書はすべての国が参加する形でパリ協定へと引き継がれ、環境問題への取り組みは続いています。