環境問題

森林伐採が地球や人・生活に及ぼす影響とは? 現状や原因などを解説

森林伐採が地球・人や生活に及ぼす影響
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世界では、1分間に東京ドーム2つ分の広さの森林が失われていることをご存じでしょうか。

地球規模でみると、今も多くの森林伐採が起きており、地球温暖化や生態系の破壊といったさまざまな影響が生活にも及んでいます。

確かに、日本では大規模な森林破壊こそ見られないものの、管理不足や担い手不足といった課題が顕在化している状況です。適切な手入れができなければ、森林の機能は失われてしまいます。

本記事では、世界と日本における森林伐採の現状を整理し、悪影響や原因、私たちにできる対策をわかりやすく解説します。

森林伐採の現状

森林伐採

森林伐採の現状を、世界・日本に分けて見ていきます。

世界における森林伐採の現状

森林伐採による森林面積の減少は続いています。しかし、国連食糧農業機関(FAO)によると、森林減少のスピードは改善傾向にあります。

1990~2000年は年間約780万ヘクタールの森林減少が起きていましたが、2010~2020年は年間約470万ヘクタールに留まっており、森林減少のスピードは鈍化傾向にあるのです。

出典:FAO「Global Forest Resources Assessment 2020

ただし、2050年までの予測では、木材の需要が最大で約49%増加するとされ、特に産業用丸太の需要が大幅に伸びる可能性があります。需要の増加に伴って森林伐採が増加する可能性も否定できません。

一方で、インドネシアやブラジルでは森林減少が大幅に抑制されています。インドネシアは2021年から2022年にかけて8.4%、ブラジルの法定アマゾン地域では2023年に50%の減少抑制が報告されています。

これらの結果は、各国の保護努力や政策の強化が一定の効果を示した証拠です。熱帯地域を中心に依然として大規模な森林減少が続いていますが、状況は改善されつつあります。

出典:林野庁「世界の森林資源評価

日本における森林伐採の状況

日本の森林面積は約2,500万ヘクタールで、国土の約66%を占めています。日本の森林面積は、50年以上ほぼ変化していません。森林蓄積量は増加傾向にあり、植林された人工林が多く利用可能な資源として存在します。

ただし、人工林の保育や間伐などの管理が十分に行き届いていない地域もあります。森林の適切な間伐や手入れは森林資源の健全な循環に欠かせないため、改善しなければならない大きな問題です。

また、日本国内では目立った森林破壊は見られませんが、人口減少に伴い森林管理の担い手不足が顕著となっています。手入れが行き届かない森林の増加は、森林の質や安全性に悪影響を及ぼす可能性があります。

都市近郊の開発による一部森林減少はあるものの、国内全体としては適正な森林管理が進められている状況です。

出典:林野庁「令和4年度森林・林業白書
林野庁「林業の現状と課題

森林伐採が「地球」に及ぼす悪影響

森林伐採による以下のような悪影響は、地球の自然環境に深刻な負荷をもたらします。

  1. 地球温暖化の促進
  2. 生態系の破壊
  3. 大気汚染

1. 地球温暖化の促進

森林は大量の二酸化炭素(CO₂)を吸収し、地球温暖化を抑制する重要な役割を果たしています。伐採により森林が減少すると、将来的なCO₂吸収源が失われます。地球温暖化を防ぐには、過剰な森林伐採を防ぐ必要があるのです。

また、大規模な森林伐採が起きると、森林が持つ水循環や気温調整機能も失われ、地球規模の気候バランスが崩れます。このように、過剰な森林伐採は地球温暖化を促進し、気温上昇や異常気象の頻発を引き起こします。

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2. 生態系の破壊

森林は多様な動植物の生息地として機能しています。伐採により樹木が失われることで、多くの動物が住処を奪われ、生態系のバランスが崩れます。特に、熱帯雨林など生物多様性が高い地域での森林伐採は、種の絶滅や個体数の激減の大きな原因です。

動物たちは森林の枝葉や土壌と密接に結びついた生活をしているため、森林伐採は直接的に生息環境を喪失させます。エサや水の供給も悪化して野生動物の生存が困難になり、自然のライフサイクルが失われます。

出典:林野庁「森林伐採が生物多様性に与える影響

また、2025年6月に富山城址公園のマツを6本伐採したところ、1カ月で107羽のサギが死んだ事例があります。原因は、木が伐採したことで避暑地がなくなったり、縄張り争いが激しくなったりしたためです。

6本伐採しただけで100羽以上の動物が死ぬことを考えると、大規模な森林伐採は多くの命を奪うことが容易に想像できるでしょう。

参考:NHK「富山城址公園サギ大量死 市による城周辺のマツの木伐採が原因

3. 大気汚染

違法伐採や土地開墾のために森林を焼く行為は、微小粒子状物質(PM2.5)や一酸化炭素などの有害物質を大気中に放出する原因です。特に熱帯地域では、焼畑農業や違法開墾による大気質悪化を招いています。

PM2.5は呼吸器疾患の増加や心疾患への影響が指摘されており、人間の健康リスクを高めます。また広域的に拡散する性質があるため、一国の問題に留まりません。このような大気汚染は、人をはじめとする動物の健康リスクを悪化させるリスクとなります。

出典:一般社団法人環境金融研究機構「異例の少雨と干害が続くブラジルのアマゾン流域。シルヴァ政権の森林伐採制限にもかかわらず、森林火災が多発。火災による大量の煙でPM2.5はWHO基準を11倍上回る高水準に(RIEF)

森林伐採が「人」や「生活」に及ぼす悪影響・デメリット

森林伐採

森林破壊は自然環境だけでなく、人間の生活や健康にも重大な悪影響を及ぼします。主に、以下のような悪影響が挙げられます。

  1. 生活環境の破壊
  2. 食糧生産の効率低下
  3. 疫病の流行

1. 生活環境の破壊

森林伐採により地球温暖化が進行すると、気候変動や異常気象が増加します。農村部の人々の生活環境が悪化するほか、都市部でも猛暑や大気汚染などの被害が広がります。

地球温暖化によって発生する大きな問題は、洪水や干ばつ、台風などの自然災害です。また、森林が果たす水源涵養や土壌保全の機能が損なわれるため、水害や土砂災害のリスクも増大します。

これらの影響は生活の安全と経済活動に影響を与え、持続可能な社会の構築を困難にします。

2. 食糧生産の効率低下

森林は木の実やきのこ、山菜などの多様な食資源を提供すると同時に、土壌の保水や水源涵養の役割も担っています。伐採により森林面積が減少すると、これらの自然資源が減り、食糧資源の採取が困難になります。

また、人為的な食糧生産も例外ではありません。森林減少に伴って地域の水環境も悪化し、農業用水の供給が不安定になるため、食糧全体の生産効率が低下します。結果として、食糧の確保がより一層難しくなります。

3. 疫病の流行

森林伐採は、人間と野生生物の生息域の境界を曖昧にし、異なる動物種が接近する機会を増加させます。これにより、動物間における病原体の伝染が起こりやすくなり、疫病の流行リスクが高まります。

例えば過去のペスト流行では、森林伐採による農地の拡大がタカやワシなどの捕食者の減少を招き、結果的に増加したネズミがペスト菌を媒介し、人間の感染が拡大しました。

このように森林破壊は感染症の流行という公衆衛生上の大問題を引き起こす要因となるため、持続可能な森林管理は健康リスク低減にも不可欠です。

出典:東松山市「世界的に流行した病気の歴史

森林伐採が起きる原因

森林伐採の主な原因は、人間の土地利用の変化によるものです。大きな原因としては、以下のようなものがあります。

  1. 違法伐採
  2. 宅地や農地への転用

1. 違法伐採

無許可で木材を伐採したり、保護区域の土地で無断に伐採したりすることで、森林伐採が起きています。このような伐採は持続可能な森林管理を妨げ、森林資源の枯渇を早めます。

違法伐採の問題点は、自然破壊だけではありません。違法伐採木材は市場で安価に取引されるため、健全かつ合法的な林業経営者の経済状態を悪化させます。また、無秩序な木の伐採は土壌の流出や生態系の破壊を引き起こし、土地の洪水や土砂崩れのリスクを高めます。

違法伐採を防ぐには、世界各国で法整備や違法流通の監視のほか、消費者側も合法的な製品を選ぶ意識が重要です。

2. 宅地や農地への転用

宅地や農地への転用も、森林伐採が起こる大きな原因のひとつです。特に熱帯地域では、食料需要の拡大により農地開発が盛んに行われています。たとえば、東南アジアや南米ではアブラヤシや大豆の生産のために森林伐採が進んでいます。

特に農地への転用は商業的かつ大規模なものが多く、森林減少の大きな要因です。農地への転用による森林伐採は、世界の森林減少の約90%を占めると推計されています。

宅地開発や道路建設も森林伐採に拍車をかけており、都市化が進む地域では住宅地や工業団地のために森林が消失します。森林伐採を食い止めるには、持続可能な土地利用計画の策定が急務であり、農業と森林の共存を目指す取り組みが重要です。

出典:World Resources Institute「Deforestation Linked to Agriculture

出典:FAO「COP26: Agricultural expansion drives almost 90 percent of global deforestation

森林伐採を防ぐため私たちにできること

森林伐採を抑えるためには、個人レベルでできる行動があります。ここでは、日常生活から仕事中にできるものまで広く解説します。

  1. ペーパーレスを推進する
  2. 環境に優しい製品を使用する
  3. 環境保護団体へ寄付する

1. ペーパーレスを推進する

紙の需要は森林伐採の大きな要因のひとつです。製紙用のパルプ材として使用される木材の量は膨大で、紙の消費を見直すことが森林保全に直結します。ペーパーレス化を進めるには、電子書類の活用やデジタル化の推進、両面印刷の実施などがあります。

ペーパーレスの推進は、個人の生活でも実践できる施策です。経費やゴミが少なくなるメリットもあります。ペーパーレス化による木材需要の削減は、森林を守るための身近で効果的な一歩です。

2. 環境に優しい製品を使用する

環境に優しい製品を使用することで、森林資源の需要過多になることを防ぎます。

木材由来の製品を選ぶ際は、適切に管理された森林の材料を使用しているかを確認するとよいでしょう。森林認証制度のFSC®(森林管理協議会)やPEFC認証は、持続可能な森林管理が行われている証です。これらの認証マークが付いた製品を選ぶことで、違法伐採を防ぐ取り組みを支持できます。

リサイクル材料を利用した製品の利用も、森林への負荷軽減に有効です。たとえば、業務に再生紙を使用することで自然への悪影響を軽減できます。消費者が意識的に選択することで、持続可能な林業への需要が拡大し、森林破壊の抑制につながります。

3. 環境保護団体へ寄付する

環境保護団体に寄付することで、森林保全活動の支援が可能です。WWFジャパンなどの信頼できる団体に寄付すれば、違法伐採の監視や森林の再生、防災活動などに、間接的に寄与できます。

寄付は、調査・教育・政策提言など幅広い活動に活用されるため、森林破壊の根本原因に対処する効果的な手段です。自分の資金を通じて環境保護に参加することは、個人の規模であっても森林保護に寄与し、地球環境の未来を支える力になります。

過剰な森林伐採は私たちの生活にも影響を及ぼす

森林伐採が進むと、生態系のバランスが崩れて生物多様性が失われます。これにより、土壌の浸食や洪水のリスクが高まり、食料や水資源の確保にも悪影響が及ぶでしょう。また、森林は二酸化炭素の吸収源であるため、伐採が進むと地球温暖化が加速する恐れがあります。

私たちの健康や安全を守るためにも、森林資源の持続的な管理は欠かせません。過剰な森林伐採の抑制は、地球環境の保全と人類の生活基盤を守る重要な課題です。

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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