牛のゲップで地球温暖化が起こるのは嘘?本当?メタンガスの影響を解説

牛のゲップで地球温暖化が起こるのは嘘?
momohiki011

「牛のゲップで地球温暖化になるのは嘘?本当?」

地球温暖化への影響があると言われている牛のゲップについて、嘘なのか、本当なのか疑問に感じている人も多いのでしょうか?ま

この記事では、以下についてわかりやすく解説します。

牛のゲップで地球温暖化が起こるのは嘘?それとも本当?

牛のイメージ

結論として、牛のゲップで地球温暖化が起こるのは、嘘のようで本当の話です。なお農研機構でも、次のように牛のゲップが地球温暖化への影響を及ぼすと発表されています。

畜産業からも温室効果ガスが排出されています。国内の農林水産業からの温室効果ガス排出量は、農林水産業分野の化石燃料燃焼由来二酸化炭素を含めると国内の総排出量の約4%ですが、そのうち家畜の消化管内発酵由来メタンが15%を占めています。

引用:農研機構「畜産研究部門」

現在世界には約15億頭もの畜産牛がいると言われています。人間社会の生活を維持するためにも、畜産業は欠かせない役割を担っており、今後ともなくすことができません。

今後、いかに牛を飼育しながらゲップによる地球温暖化への影響を抑えるべきかが、2050年目標のカーボンニュートラルの実現に影響していきます。

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牛のゲップによる地球温暖化への影響

牛のゲップのなかには、メタンガスと呼ばれる温室効果ガスが含まれており、当成分が地球温暖化に悪影響を与えてしまうと言われています。

メタンガスを含む温室効果ガスは、太陽から発せられる赤外線を吸収することで、地球に熱を封じ込めるの働きがあります。

つまり、大気中にあるメタンガスの量が増加するほど、地表が温まり平均気温が上昇するのが、地球温暖化の課題です。

牛のゲップにメタンガスが含まれる理由

主に無機物系のものから発生するメタンガスですが、なぜ牛のゲップにも含まれているのでしょうか。結論として、牛が4つの胃袋を持ち、ゆっくりと主食である草を発酵させながら消化をしていくためです。

胃の種類役割メタンガスが出るタイミング
第一胃
(ルーメン)
4つの胃のなかでもっとも大きく、微生物の作用で飼料を発酵させるメタンガス発生
第二胃
(蜂巣胃)
第一胃の内容物をわけて消化するもの、反芻(口の中に戻し改めて噛んですりつぶす)するものを選別するメタンガス発生
第三胃
(葉状胃)
飼料の繊維を細かくすりつぶす
第四胃
(しわ胃)
胃酸で内容物を消化し、栄養を吸収する
参考1:独立行政法人農畜産業振興機構「【まめ知識】なぜ、牛の胃は4つもあるの?」
参考2:農研機構「牛のメタン」

とくに飼料を食べて間もない、第一胃、第二胃における内容物からメタンガスが発生します。体内にいる微生物との反応でメタンガスが生み出されており、牛の食生活と深く結びついている成分です。

牛のゲップによるメタンガスを減らす地球温暖化対策

牛のイメージ

牛から発生するメタンガスを減らすため取り組みとしては、以下の情報があります。

メタンガスを抑制する飼料を利用する

現在研究段階のものとして、牛の胃のなかでメタンガスが発生しにくいように抑制する飼料(エサ)が開発中です。

たとえば、牛の胃の中にいる微生物の働きを制御する抗菌性物質を飼料に加えるアイデアや、発生したメタンガスに含まれる菌(メタン菌)の働きを阻害する化学物質を飼料に加えるアイデアなどが検討されています。

品種改良でメタンガスを発生しにくい牛を生み出す

北海道ホルスタイン農業協同組合が提供している「ホルスタイン通信(2023.7)」より、現在カナダでゲップに含まれるメタンガスを遺伝的に削減する方法が研究中です。

カナダのゲルフ大学の研究チームは約300頭のホルスタイン牛を利用して、交配研究を実施しました。

研究の結果、メタンを遺伝的に削減できることが判明しました。時間はかかりますが、いずれはメタンガスを出しにくい牛に改良できるかもしれません。

メタンガス発生原因となる菌を取り除く

メタンガスの発生原因は、牛の胃のなかにいる微生物が関係していることから、その原因となる菌を取り除けばメタンガスの抑制につながるのではないか、という北海道大学での研究中があります。

なかでもカシューナッツの殻を砕いて得られるカシューナッツ殻液には、微生物の働きを抑制する効果があると言われています。

牛の「げっぷ税」を導入する

世界有数の畜産大国ニュージーランドでは、牛や羊のゲップ排出量に対して農家に税金を課す計画があるとのことです。

動物のゲップに税金を課すのは前例がなく、計画が実現すれば初の試みとなります。

げっぷ税導入計画のきっかけもやはり気候変動であり、2021年開催のCOP26を契機に「2030年までに温室効果ガスの排出量を30%削減する」という目標を掲げたことがありました。

ただし、げっぷ税の導入は肉の値段にも影響を及ぼす可能性があり、慎重な検討が進められています。

参考:ニュージーランド、牛の「げっぷ税」を導入へ | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

牛のゲップを発電に活用できる可能性?

牛のゲップから発生するメタンガスをただ抑制するのではなく、今後は発電に利用できる可能性が出てきています。

たとえば、2005年にアルゼンチン国立農牧技術院では、牛の背中にビニールタンクを設置することにより、メタンガスを計測・収集する方法が開発されました。

なお、現在報告されている情報では計測までに留まっています。

ただ、メタンを含むバイオガスを活用した「発電」と組み合わせれば、牛のゲップから電気をつくり出せるかもしれません。

バイオガス発電の流れ
出典:環境省「廃棄物・リサイクル対策」

「有効活用」という視点で牛のゲップを利用できる可能性があることから、実現できれば、温室効果ガスの削減につなげられると予想されます。

牛のゲップを発電に利用するメリット

もし牛のゲップを利用して電気をつくることができれば、次のようなメリットがあります。

  • エコな発電方法として活用できる
  • メタンガスによる地球温暖化を防止しやすくなる

牛が飼料を食べる限り発生する牛のゲップを利用することから、実現できれば化石燃料を利用する発電方法と比べてエコです。

また、ゲップから発生するメタンガスを利用するため、地球温暖化防止の効果を生み出せるかもしれません。いわゆる自然を利用した再生可能エネルギーとして、畜産における地球温暖化問題の一部を解決できる可能性があります。

牛のゲップを発電に利用するデメリット

牛の生態を利用するゲップ発電を実現しようとすると、次のデメリットが考えられます。

  • 実用化のハードルが高い
  • 畜産業者の理解と対応が求められる
  • 現状、牛のゲップ発電に関する情報は少ない

まず牛のゲップを発電に利用するためには、世界にある畜産施設にメタンを回収するための機器を設置しなければなりません。畜産業界全体で費用や手間といったコストが発生することから、実用化のハードルが高いです。

また、発電の仕組みを取り入れるためには畜産業者への周知徹底が欠かせません。場合によっては理解を得られないケースもあるため、ほかの発電方法と比べて地道な努力が必要です。

なお牛のゲップ発電について、現在メタンガスの回収・分離までの研究開発の情報はあるものの、それ以降の発電に関する情報が出ていません。実現に近づいているのか否か、現時点での動きがわからない点にも注意が必要です。

牛のゲップと地球温暖化についてよくある質問

Q
地球温暖化が嘘だと言われる理由は何?

地球温暖化は、次の理由から嘘だと言われることがあります。

地球温暖化を「嘘」という人の理由
  • 気温の上昇とCO2の因果関係が明確にわかっていない、という人がいるため
  • 温暖化でありながら大寒波が起きているため

実際に地球の平均気温は上昇していますが、それが地球規模でみる一過性のものなのか、それとも人間社会から生み出される温室効果ガスの影響なのかが明確になっていないのも「嘘」だと思われている理由です。

Q
牛のおならにはメタンガスが含まれているの?

牛のゲップと同様に、牛のおならにもメタンガスが含まれています。

微生物の働きによって胃のなかで発生したメタンガスは、内容物にも付着しているため、腸のなかで発酵が進み、おならとしてメタンガスが排出される仕組みです。

Q
地球温暖化が起きる1番の原因は何?

地球温暖化が起きる原因として、もっとも影響しているのが石炭・石油・天然ガスといった化石燃料を燃焼させる火力発電だと言われています。

なお、国際連合広報センターでも次のように明記されており、化石燃料から生み出される温室効果ガスは、世界中で早急に解決すべき課題として挙がっている状況です。

石炭、石油、ガスなどの化石燃料の燃焼は、世界で起きている気候変動の最大の原因であり、世界の温室効果ガス排出量の75%超、すべての二酸化炭素排出量のおよそ90%を占めています。

引用:国際連合広報センター「気候変動の原因」

また、自動車から排出される排気ガスや森林伐採なども、地球温暖化に悪影響を及ぼしています。

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牛のゲップと地球温暖化の嘘・本当についてまとめ

「牛がゲップする=地球温暖化が進む」という噂は、嘘のようで本当の話です。

ただ近年では、牛のゲップに含まれるメタンガスを減らす研究や、げっぷ税の導入、遺伝子組み換えでメタンガスを排出しにくい品種をつくり出そうとする動きなどの検討がスタートしています。

牛のゲップと地球温暖化に関する研究が今後どう進むのか、動向から目が離せません。

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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