太陽光発電のメリット・デメリットをわかりやすく解説! 発電の仕組みは?
「太陽光発電はどんな仕組みで電気をつくるの?」
「発電するメリットやデメリットは?」
「投資と自家消費にもメリット・デメリットがあるの?」
再生可能エネルギーとして国内への導入が進んでいる太陽光発電について、発電の仕組みや運用するメリット・デメリットが気になっている人も多いのではないでしょうか?また、ほかの発電方法との違いについて知りたい人もいるはずです。
この記事では、以下についてわかりやすく解説します。
太陽光発電が電気をつくる仕組み
太陽光発電は、太陽光に含まれる光エネルギーを電気に変換する発電方法です。
まず太陽光を取り込むソーラーパネルには、光エネルギーを電気に変換する太陽電池(半導体素子)が組み込まれています。太陽電池は半導体に電子(マイナス)・正孔(プラス)の電気を集め、2つの電子の流れをつくり出すことで電気をつくり出せるのが発電の仕組みです。
日光のあたる場所に設置するだけで、自然と光エネルギーが電気に変換されるため、環境に優しい再生可能エネルギーと呼ばれています。
また、太陽光発電でつくり出された電気は、そのまま電気として利用できるほか、蓄電できるバッテリーに溜めて必要なときに使用が可能です。科学の仕組みを使った現代的な発電方法であり、太陽光を活用した環境に優しい発電ができます。
太陽光発電のメリットをわかりやすく解説
太陽光発電は、日本で取り入れられている従来の発電方法(火力発電や原子力発電など)と比べて、環境やコスト、設置におけるメリットが複数あります。
発電時にCO2を排出しない
太陽光発電は、太陽光の光エネルギーを利用して電気を生み出すため、発電時にCO2を排出しません。火力発電といった膨大なCO2を排出する発電方法と比べて環境に優しいのが魅力です。
なお環境省でも、太陽光発電のCO2削減効果を見込み、太陽光発電の導入支援サイトを開設して運用されています。
また太陽光発電は、SDGsのなかで掲げられている7番目「クリーンエネルギーをみんなに届ける」、13番目「気候変動の具体的な対策を実施する」で効果を発揮するのが魅力です。環境に優しいのはもちろん、日本が世界に向けて掲げる目標を達成しやすくします。
関連記事 太陽光発電とSDGsの関係
地形に合わせて設置できる
太陽光発電は、平地部だけではなく山間部などにも自由に設置できるのがメリットです。
たとえば、NEDOが公開している「傾斜地設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2024年版」によると、傾斜30度以上の地形にも設置できます。
傾斜角30度以上で斜面の高さが 5m 以上の急傾斜地に設置する場合は、本ガイドラインでの要求のほか、表面侵食、斜面崩壊、土砂流出、基礎・架台の構造安全性及び施工方法について特別な配慮をした上で設置すること。
さらには建物の屋上や屋根、外壁に設置できる製品も多く、国土面積の小さい日本でも導入しやすいのが魅力です。
メンテナンスの負担が少ない
太陽光発電は、設置することにより自動で発電を続けてくれることから、定期点検といったメンテナンスの負担を抑えやすいのが安心のメリットです。
日本電機工業会・太陽光発電協会が公開している「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」では特にメンテナンスの期間が定められておらず、製品ごとの耐久性や発電性能を見て、安全性を維持できる頻度で実施すべきだと掲載されています。
サイト及びシステム所有者の責任範囲によって様々な要因が多数あるため、この技術資料では、点検の頻度を規定しない。しかしながら表1ではシステムと機器のレベルにおける点検作業を特定して、点検の頻度を決定するため、考慮すべき要因を示す。
引用:日本電機工業会・太陽光発電協会「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」
メンテナンスを専門とする点検会社などもいることから、自身の負担を減らしつつ太陽光発電を運用できるのが魅力です。
関連記事 太陽光発電のメンテナンス費用(維持費)
カーボンニュートラルの実現に役立つ
太陽光発電は、2050年目標で日本が取り組むカーボンニュートラルの実現に役立つと注目されています。
現在の日本は、膨大なCO2を排出する火力発電に電力供給の約7割を依存(2023年データ)していますが、着実に太陽光発電の割合が増えてきている状況です。
今後、さらに太陽光発電の導入が促進され、CO2排出量の実質ゼロを目指す計画が進行しています。将来的には、火力発電を上回る発電割合を確保できるかもしれません。
関連記事 カーボンニュートラルとは
太陽光発電のデメリットと解決策をわかりやすく解説
豊富なメリットをもつ太陽光発電ですが、注意すべきデメリットもあります。解決策も含め整理しました。
- 天候や時間帯に発電量が左右される→設置場所の検討
- 大規模設置が環境破壊につながる→環境への配慮
- 廃棄方法があいまいな状態である→リサイクル
- 豪雨・台風・火災等による事故リスクがある→防災対策・保険で対応
天候や時間帯に発電量が左右される
太陽光発電は光エネルギーを利用して発電することから、次のような環境下では十分な発電効果を期待できません。
- 夜間
- 日光が出ている時間が短い
- 時間帯で影ができやすい
- くもりや雨の日が多い
陰ができやすい山手側、鬱蒼とした森の隣など、設置に適さない場所は複数あります。発電効果を得られる場所に太陽光発電を設置したいなら、天候や時間帯を意識して設置場所を検討してください。
大規模設置が環境破壊につながる
広大な土地に太陽光発電設備を設けるメガソーラーは、周辺地形を変えたり樹木を伐採したりと、環境破壊につながるのではないかと問題視されています。
確かに、樹木の伐採や地形を変えるのは環境破壊です。CO2から酸素をつくる樹木を伐採するため、カーボンニュートラルの考えからズレてしまいます。
実際に、環境破壊を気にせずメガソーラーを設置している企業もあることから、今後は企業努力として、環境に配慮した設置場所を検討すること、そして環境破壊の問題を他企業にも広めていくことが重要です。
廃棄方法があいまいな状態である
太陽光発電は現在、明確な廃棄方法が決まっていません。しかし、利用されている材料等に有害物質を含んでいることから、そのまま放置すると土壌汚染などを引き起こす恐れがあります。
対して現在は、太陽光発電パネルのリサイクルといったサービスが提供され始めました。廃棄方法が明確に定まるまでは、不要になった太陽光パネルなどをリサイクルして対応することで土壌汚染といった問題を回避できます。
関連記事 太陽光パネルの廃棄費用・処分方法
豪雨・台風・火災等による事故リスクがある
太陽光発電は屋外に設置することから、次のような災害による事故リスクがある点に注意しなければなりません。
- 豪雨や洪水により機器が破損・紛失する
- 台風により機器が飛ばされる
- 火災により設備が全焼する
- 地震により土砂崩れに巻き込まれる
膨大な被害損失が生まれることから、太陽光発電を設置する際にはあらかじめリスクヘッジに取り組むことが重要です。
災害に耐えられるように基礎を強化しておくことはもちろん、もしもの場合に備えて保険に加入しておけば、被害を受けた分の損失を補償してもらえます。
関連記事 太陽光パネルは台風で飛ばされる?
関連記事 太陽光パネルから火災が起きる原因
太陽光発電は普及している?
経済産業省が公開している「再生可能エネルギーの導入状況」によると、太陽光発電の導入量は、ピーク時である2015年以降、導入数が減ったものの、安定的にその数を増やし続けている状況です。
また、環境省が公開している「再生可能エネルギーの導入状況の可視化」の資料によると、日本でも関東以西での導入件数が多く、そのなかでも関東エリアの普及率が多いことがわかります。
さらに、太陽光発電は今後も増え続け、普及が進んでいくと予想されています。なぜなら、2025年4月よりすべての新築住宅に省エネ基準の適合が義務付けられるためです。
上記の義務はZEH化(ビルの場合はZEB化といい2023年より義務化)とも呼ばれており、住宅で使用する電力の消費を実質ゼロにするという考えにより、太陽光発電の導入が推進されています。
すでに太陽光発電導入の補助金も提供されていることから、個人・企業問わず、普及が進む見込みです。
太陽光発電以外の再生可能エネルギーのメリット・デメリット
日本では、太陽光発電以外にも環境に優しい再生可能エネルギーが複数運用されています。なかでも認知度が高い発電方法について、それぞれのメリット・デメリットを整理しました。
風力発電のメリット・デメリット
風力発電は、風の力を利用して電気をつくる発電方法です。巨大なタービンを風の力で回すことにより電力を生み出します。
メリット | デメリット |
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・風の力だけで電気をつくる ・燃料費がかからずCO2を排出しない ・設置面積が小さいため環境への影響を最小限に抑えられる | ・風の強さで発電量が変化する ・設置場所が風の強い場所に制限される ・騒音や景観に関する問題が起こりやすい |
水力発電のメリット・デメリット
水力発電は、水の位置エネルギーないし落下エネルギーを利用して電力をつくる発電方法です。山間エリアそして降雨量の多い日本で多く設置されているほか、水路や小河川などに設置できる小水力発電なども普及し始めています。
メリット | デメリット |
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・水の力だけで電気をつくり出せる ・発電時にCO2を排出しない ・80%近いエネルギー変換効率(発電効率)をもつ | ・発電施設の建設範囲が広い ・設置できる地域が限られる ・上下流側の生態系を変化させる恐れがある |
より詳しく水力発電のメリット・デメリットを知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
関連記事 水力発電のメリット・デメリット
地熱発電のメリット・デメリット
地熱発電は、地下深くから取り出した蒸気を利用して電気をつくる発電方法です。主に温泉の湧くエリアなど、火山活動が行われているエリアで利用されており、地殻の熱により発生した蒸気でタービンを回すなど、自然の力を利用して発電できます。
メリット | デメリット |
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・自然の力を利用して発電できる ・天候や時間の影響を受けずに発電できる ・地熱資源量が多い日本に適用しやすい | ・開発に膨大なコストがかかる ・蒸気量が安定しない ・熱源となるエリアが限られる |
バイオマス発電のメリット・デメリット
バイオマス発電は、発酵の力で発生したガスを使って電気をつくる発電方法です。主に木材や農産物の廃棄物、家畜の排泄物、一般家庭から出る可燃ごみといった生物資源を利用し、通常だと捨てられるゴミを再利用できます。
メリット | デメリット |
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・廃棄物を再利用できる ・発電時の熱を再利用できる ・CO2排出量を削減できる | ・発電コストが高い ・廃棄物があるからこそ利用できる ・生態系への悪影響が懸念されている |
太陽光発電投資のメリット・デメリット
太陽光発電投資に取り組むメリット・デメリットを整理しました。
関連記事 太陽光発電投資とは
メリット
発電した電気を電力会社に売却して利益を得る太陽光発電投資には、次のようなメリットがあります。
- 安定したリターンを得られる
- 融資を受けられる
- カーボンニュートラルに貢献できる
- 副業や新規事業として投資できる
たとえば、太陽光発電投資の表面利回りは7~10%だと言われており、早ければ10年程度で投資額を回収でき、その後、長期的な利益獲得が可能です。
また、金融機関から投資額を融資してもらいやすいほか、カーボンニュートラルが実現しやすくなるメリットもあります。
企業が太陽光発電投資に取り組むことで、新たな収益の確保、さらには投資額を節税に充てられるのが魅力です。
関連記事 太陽光発電投資の利回り
デメリット
投資リターンの大きい太陽光発電投資ですが、次のデメリットに注意しなければなりません。
- 災害により設備が破損するおそれがある
- 日照シミュレーションを実施していないと投資効果を得にくい
- 施工業者によって設備の品質に差がある
- 定期的なメンテナンスが必要になる
- 設備の盗難などが事件化している
- FIT制度の買取価格が減少している
設置場所や施工業者選びを気を付けなければ、十分にリターンを得られない、すぐに壊れてしまうといった問題が起きるかもしれません。
また太陽光発電投資はメンテナンスフリーではなく、定期メンテナンスが必要です。維持管理の手間がかかるほか、設備が盗難されるといった事件も起きている点に注意してください。
より詳しく太陽光発電投資のメリット・デメリットを知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
関連記事 太陽光発電投資とは
自家消費型太陽光発電のメリット・デメリット
自家発電・自家消費に専念する自家消費型の太陽光発電を利用したい方向けに、太陽光発電を導入・運用するメリット・デメリットを整理しました。
メリット
自家消費型の太陽光発電には、次のようなメリットがあります。
- 電気料金を削減できる
- 停電時に蓄電した電力を利用できる
- 企業イメージを向上できる
自宅や施設、事務所に太陽光発電を導入して自家消費すれば、毎月支払っている電気料金を節約できるのがメリットです。再エネ賦課金などの影響で電気代が高騰していることから、コスト削減に力を入れたい人におすすめします。
また蓄電池を設置しておくことで、もし災害時で停電が起きても、そのまま電気を使用できるのが魅力です。
非常用電源としての効果もあるため、住宅用太陽光発電を導入することで生活の不安をなくせることはもちろん、事業用太陽光発電を導入することで停電時も仕事を止めずに済みます。
さらに企業においては、環境対策への取り組みが求職者や他企業からのイメージアップにつながるのがメリットです。環境対策への関心が集まっていることから、ブランディングとしての効果を期待できます。
デメリット
コスト削減や停電対策としての効果のある自家消費型太陽光発電ですが、次のデメリットに注意しなければなりません。
- 高額な初期導入費用(設置費用)がかかる
- パネルの反射による近隣トラブルが起きるかもしれない
- シミュレーション通りの発電量を得られないケースがある
太陽光発電を設置する初期費用は高額であり、一般家庭でも100万円以上の費用負担がかかる場合があります。
また設置するスペースによっては、パネルが太陽光を反射することが原因で「まぶしいから取り外してほしい」など、近隣トラブルに発展することも少なくありません。
さらには近年の気候変動の影響で、期待する発電量を得られないこともある点に注意してください。
納得のいく状態でトラブルなく太陽光発電を運用するためにも、上記のポイントを入念にシミュレーションしたうえで導入を検討するのがおすすめです。
関連記事 太陽光発電の近隣トラブル事例
太陽光発電をやめたほうがいいと言われる理由
太陽光発電は、次のような理由からやめたほうがいいと言われています。
- シミュレーションより発電量が少ない可能性があるため
- ランニングコストが発生するため
- 近隣住民から反対される可能性があるため
- 出力制御で売電収入減少の可能性があるため
しかし、上記の条件を事前に把握したうえで太陽光発電を導入すれば、うまく運用が可能です。
たとえば、あらかじめシミュレーションよりも発電量が少ないこと、ランニングコストがかかることを理解し、そのなかで利益を出せるのか検討することにより損失を回避できます。
また、近隣住民から反対されない場所に設置する、パネルが反射しないようにリスクを回避する対策をとることで失敗の回避が可能です。
なかには、無計画に太陽光発電を導入して「やめたほうがいい」と発言している人もいます。まずは以下の記事をチェックしたうえで、太陽光発電の導入を検討してみてください。
関連記事 太陽光発電はやめたほうがいい?
太陽光発電のメリット・デメリットについてよくある質問
- 太陽光発電は7割が損をするというのは本当ですか?
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よく「太陽光発電は7割の人が損をする」という話を聞きますが、この話には根拠がありません。
例えば、環境省が公開している「平成29年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務報告書」に掲載されている「初期導入費用が高いと回答した人が7割いた」という文言を見て、損をしたと勘違いしているのかもしれません。
結論として、7割損をするというのは誤りです。まずは自身で本当に損をするのか調べるほか、太陽光発電の施工業者などにシミュレーションを依頼することをおすすめします。
- 太陽光発電は環境に優しいですか?
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太陽光発電は、太陽光の光エネルギーを利用して発電するため、CO2を排出しないクリーンな発電方法です。
ただし、太陽光発電を設置するために土地を必要とすること、廃棄方法が明確に定まっておらず、有害物質の問題があるという課題が残っています。
関連記事 太陽光パネルには有害物質が含まれる?
太陽光発電のメリット・デメリットについてまとめ
光エネルギーを利用して電気をつくる太陽光発電は、CO2を排出せずに発電できることから、クリーンエネルギーとして注目されています。
ただし、メリットだけではなく設置する際の環境破壊といった課題がある点に注意が必要です。発電方式について興味がある方は、この機会に太陽光発電を含め、複数の発電方式をチェックしてみてください。