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太陽光発電に関する大学研究一覧|最新研究の概要まとめ

太陽光発電研究まとめ
momohiki011

「太陽光発電はどのような研究が進んでいるの?」
「大学で実施されている最新の研究動向を知りたい」

上記のように、大学で実施されている太陽光発電の研究情報を知りたいと考えている人も多いのではないでしょうか。日本全体がカーボンニュートラルに向けて取り組んでいる昨今、全国の大学で研究が実施されています。

そこで本記事では、大学で実施されている太陽光発電の研究をまとめました。

目次
  1. 大学による太陽光発電の研究事例
  2. 大学による太陽光発電の研究についてまとめ

大学による太陽光発電の研究事例

日本全国の大学で実施されている太陽光発電の研究事例をまとめました。

東京理科大学|光・熱複合パネルの冷却特性(2000)

東京理科大学では、太陽光パネルで発電すると同時に、冷暖房機能をもつ熱複合パネルを設計できないか検討することを目的に「光・熱複合パネルの冷却特性」に関して考察されました。

東京理科大学「光・熱複合パネルの冷却特性」
出典:東京理科大学「光・熱複合パネルの冷却特性

実際にアルミヒートシンク、熱電素子、断熱材等によって構成された熱複合パネルを用いて実験した結果、夏場に13.3~20.9℃の冷面温度差を得ることができ、夏季の冷房機能を十分に確保できることが確認されました。

参考:東京理科大学「光・熱複合パネルの冷却特性

東京理科大学|地域連系太陽光発電システムの研究(2001)

東京理科大学の「地域連系太陽光発電システムの研究」は、太陽光発電システムの合理的な「系統連系方式」の提案を目的に実施された研究です。

特に都市近郊など、人が集まる地域においては地域連系の太陽光発電システムを導入することにより、発生した電力を生活に役立てられると結論付けられました。

地域の電力不足問題を解消するひとつの施策であることから、今後の太陽光発電設置は、現連系方式から地域連系方式へと移行していくのが望ましいと述べられています。

参考:東京理科大学「地域連系太陽光発電システムの研究

熊本大学・大分大学|住宅用太陽光発電システムの経済性と環境負荷評価(2003)

一般家庭における太陽光発電システム導入の経済問題に着目し「住宅用太陽光発電システムの経済性と環境負荷評価」という研究がされました。

まず算出されたのが、投資回収にかかる期間が32年間ということです。十分な屋根面積を確保できなければ、発電量が落ちてしまうことも含め、さまざまな課題があると解説してあります。

2003年時点では、太陽光発電システムから費用対効果を生み出しづらいことから、普及を促進するためには価格を10年以内で回収できる金額まで下げる必要があるとまとめられました。

参考:熊本大学「住宅用太陽光発電システムの経済性と環境負荷評価

筑波大学|モジュール不具合を考慮したPVシステム信頼性の検討(2010)

筑波大学では、太陽光発電モジュールの不具合発生の可能性に目を向け、故障率を算出するために「モジュール不具合を考慮したPVシステム信頼性の検討」という検討が実施しました。

目に見えづらいホットスポット、バイパスダイオードの通電といったトラブルを考慮し故障率を算出。

計算の結果、システム全体における故障率は10年経過時点で0.445となり、およそ半数のシステムが何らかの不具合をもつ恐れがあると結論付けられています。

参考:筑波大学「モジュール不具合を考慮したPVシステム信頼性の検討

東京大学|太陽光発電の建築物設置に関する研究(2010)

東京大学で実施された「太陽光発電の建築物設置に関する研究」は、建築物へ太陽光発電システムを設置するときに影響する条件や建物ごとの普及の傾向について、調査結果をまとめた研究です。

なお研究では以下の方法で、設置条件が検証されています。

調査・検証方法
  • 実際の設置事例に基づく現地調査およびヒアリング
  • 設置業者・関係者へのインタビュー

結果として、太陽光発電システムの設置傾向は、現場の安全性・意匠性・環境適合性に課題があると判明しました。

形状や強度などの影響で設置が難しい建物もあることから、架台や接続部の設計など、建物に合う細かな工夫をして普及促進に寄与すべきであると結論付けられています。

参考:東京大学「太陽光発電の建築物設置に関する研究」

三重大学・大阪大学|水集熱式太陽熱暖房システムの簡易設計法に関する研究 第2報 簡易設計法の検証(2012)

三重大学・大阪大学では、熱エネルギーの二次利用が可能な水集熱式太陽熱暖房システムの設計手法を確立するために実施された「第1報」の提案による簡易設計法の検証として「水集熱式太陽熱暖房システムの簡易設計法に関する研究 第2報 簡易設計法の検証」が実施されました。

検証では、暖房期全体の長期シミュレーションを実施し、第1報で提案した簡易設計法が正しく機能しているのかが確認されました。

検証の結果、設計目標である太陽熱依存率0.6程度であれば現段階の簡易設計法で十分に対応できることが確認。本設計法を活用することで、任意で設定した太陽熱依存率のシステムを設計できると結論付けられました。

参考:三重大学・大阪大学「水集熱式太陽熱暖房システムの簡易設計法に関する研究 第2報 簡易設計法の検証

兵庫県立大学|太陽光発電投資に関する考察(2013)

兵庫県立大学では、国が定めている「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)」という太陽光発電の投資利潤に関する制度について、実際に便益を生み出せるのか考察されました。

なお太陽光発電投資は、高額な初期投資を数年で回収でき、以降は固定買取制度(FIT制度)を活用しながら収益の安定化を期待できるのが魅力です。

とはいえ導入量が増えるたび、設備投資の負担が増えていくことを注意しなければなりません。

結論として、安定的に投資利益を生み出したいのなら、太陽光発電の維持管理を考慮したうえで、太陽光発電だけでなく再エネ全般へ目を向けていくことが重要だとまとめられています。

参考:兵庫県立大学「太陽光発電投資に関する考察」

東京農工大学|分散型エネルギーシステムを有する集合住宅の非常時におけるエネルギー供給持続性評価(2014)

東京農工大学では、大規模災害の多い日本において、非常時でも電力等の供給を維持するために「分散型エネルギーシステムを有する集合住宅の非常時におけるエネルギー供給持続性評価」というレビューが実施されました。

なお当レビューは、太陽光発電設備等が導入された100世帯集合住宅を対象に、外部エネルギーが遮断された状況を想定して、供給維持の確率を指標として評価するのが目的です。

結論として、太陽光発電設備のみの場合、5日間を超える供給維持が困難であることがわかりました。7日以上の供給が必要になる場合には、ガスといったエネルギーの利活用についても研究が必要だとまとめられています。

参考:東京農工大学「分散型エネルギーシステムを有する集合住宅の非常時におけるエネルギー供給持続性評価

東京理科大学|積雪を考慮したSV法モデルによる地域メガソーラ発電電力量の予測(2020)

東京理科大学の「積雪を考慮したSV法モデルによる地域メガソーラ発電電力量の予測」は、近年の太陽光発電設備の大量投入を背景に、積雪に伴う発電損失を算出できる予測モデルを見つけ出す検証が実施されました。

主に北海道の積雪の多い地域を対象に実験がスタートし、おおよその発電損失を算出できることが判明。

なお、当検証では気象官署の観測値を用いて計算式を組んでいることから、実際の気象データと比べて誤差を含んでいる状況です。今後の展望として、パラメータの精査の必要性について述べられています。

参考:東京理科大学「積雪を考慮したSV法モデルによる地域メガソーラ発電電力量の予測

名城大学|EL画像を用いたPIDモジュールの出力推定に関する研究(2020)

名城大学で実施された「EL画像を用いたPIDモジュールの出力推定に関する研究」は、太陽電池モジュールに発生するPID(電圧誘起出力低下)をEL(電気ルミネセンス)画像を活用して定量的に評価し、PIDによる出力低下を効率的に推定する方法を提案するための研究です。

なお本研究の目的は、PIDによるモジュール出力の低下をEL画像の輝度情報を基に簡便に推定する手法を確立するというものであり、次のような研究手法が用いられました。

研究手法
  • PID現象が発生したモジュールのRsh(シャント抵抗)をセル単位で評価してRshとEL画像の輝度との相関関係を解析する
  • Rshの低下によるI-V特性の変化をシミュレーションで再現して出力を推定する
  • EL画像の輝度データを2値化して簡易的な推定手法を提案

研究結果として、RshとEL画像の輝度に強い相関があり、輝度が50%以下のセルではRshを高精度で推定できることがわかりました。また、2値化による簡易手法でも、出力推定の絶対誤差率が3%以内に収まることを確認しています。

上記の手法を用いることで、EL画像を基にモジュール単位の出力低下を定量的に推定できるようになりました。

参考:名城大学「EL画像を用いたPIDモジュールの出力推定に関する研究

京都大学|太陽光発電を取り巻く状況と、将来に向けての研究課題(2020)

京都大学による「太陽光発電を取り巻く状況と、将来に向けての研究課題」では、太陽光発電の登場から現在に至るまでの状況の変化や、将来に向けた展望についてレビューが実施されています。

まず登場から50年ほど経過した太陽光発電の価格が下がり続けています。結果として太陽光発電は「畳より安い」と評され、化石燃料を輸入するよりもコストが低い場合が多く、世界最安のエネルギー源となる見込みだとレビューされました。

また再生可能エネルギーのシェアがさらに高まる場合やEV(電気自動車)の普及に伴い、蓄電池が果たす役割が大きくなっていくと注目されています。

特に中国などでEV化が急速に進んでいることから、日本では今後、EVと蓄電池の連携が再エネ普及に欠かせないとレビューが実施されました。

さらには、再生可能エネルギーを普及させるためには、移り変わる技術の変化を乗り越え、科学的根拠に基づく議論を実施しながら、持続可能な未来を目指すべきだと主張されています。

参考:京都大学「太陽光発電を取り巻く状況と、将来に向けての研究課題

筑波大学|Imp, Vmp常時監視によるPV性能評価・動作診断技術(2022)

筑波大学の「Imp, Vmp常時監視によるPV性能評価・動作診断技術」の研究では、太陽光発電システムの動作・性能の不具合などに着目し、動作電流Imp、最大出力動作電圧の実験が実施されました。

合計4つのストリングに電流・電圧を調べる独自のセンサーを設置した結果、±1%程度の誤差で、動作状況を確認できることが判明しました。

システムと連携させて常時監視を続けることにより、不具合が生じてもすぐに対応でき、定期検査よりも低コストでモニタリングできると期待されています。

参考:筑波大学Imp, Vmp常時監視によるPV性能評価・動作診断技術

慶応義塾大学|環境調和型PV/Tソーラーパネルの導入によるゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の提案(2022)

慶応義塾大学では、住宅の電力消費を実質ゼロにするZEHに着目し「環境調和型PV/Tソーラーパネルの導入によるゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の提案」というレビューが実施されました。

なかでも提案されている「環境調和型PV/Tソーラーパネル」は、従来の太陽光パネルよりも小型化でき、電熱損失などを抑制できる試験用の発電製品です。

最終的なレビューとして、発熱を抑制する冷却塔が設置された環境調和型PV/Tソーラーパネル住宅に設置することにより、夏場でも安定的に発電効率を維持できると結果がまとめられました。

参考:慶応義塾大学「環境調和型PV/Tソーラーパネルの導入によるゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の提案

北九州市立大学|情報プラットフォームの活用を想定した廃棄太陽光パネルの最適回収システムの探索と効果推計(2022)

北九州市立大学で実施された「情報プラットフォームの活用を想定した廃棄太陽光パネルの最適回収システムの探索と効果推計」では、共同回収・個別回収という2種類の回収システムにおける経済的効果が比較されました。

当検証ではまず福岡県を対象地域とし、2039年までに廃棄される太陽光パネルの予想量を43,354tと想定。費用のトータルコストを比較したところ、個別改修・共同回収ともに南方ルートが輸送費・保管費を抑えやすいと判明しました。

以上より、GISといった地理情報やPythonなどの人工知能を活用した検証が、太陽光発電パネル廃棄のコスト削減といった経済効果につながると期待されています。

参考:北九州市立大学「情報プラットフォームの活用を想定した廃棄太陽光パネルの最適回収システムの探索と効果推計

広島工業大学・福山大学|30年以上使用の体育館における太陽熱利用システムの運用と性能およびエクセルギー評価(2023)

広島工業大学・福山大学による「30年以上使用の体育館における太陽熱利用システムの運用と性能およびエクセルギー評価」では、老朽化しつつある太陽熱利用システムの性能評価・エネルギー効率が分析されています。

結論として、30年以上経過した太陽熱利用システムに性能低下は確認されませんでした。年間集熱効率が約47%と良好であるほか、従来のボイラーを使った電力供給に比べ、費用負担を6割も削減できていることがわかっています。

参考:広島大学「30年以上使用の体育館における太陽熱利用システムの運用と性能およびエクセルギー評価

宮崎大学|廃太陽光パネルを骨材としたコンクリートの環境安全性評価(2023)

宮崎大学における「廃太陽光パネルを骨材としたコンクリートの環境安全性評価」の研究では、処分に問題を抱える廃太陽光パネルをコンクリート骨材として利用できないか検証が実施されています。

なかでも、コンクリートに影響をおよぼす有害重金属や溶出濃度に注目し、エッチング処理を施した太陽光パネル廃材を用い、土壌環境基準に基づく溶出試験および含有量試験が実施されました。

エッチング処理とは

金属に酸・アルカリ等の腐食液を吹き付けることで腐食や融解を施す加工方法です。

結果として、コンクリート骨材にエッチング処理を加えた廃太陽光パネルを用いたところ、一部の有害物質(F/フッ素、Se/セレニウム)の溶出量の減少を確認できた一方で、Pb(鉛)の流出が基準値を超えたままであることがわかりました。

コンクリート骨材としての可能性は見えたものの、混合後も流出してしまうPbなどの有害物質を抑えるため、使用割合の調整が必要になると結論付けられています。

参考:宮崎大学「廃太陽光パネルを骨材としたコンクリートの環境安全性評価」

大学による太陽光発電の研究についてまとめ

大学で実施されている太陽光発電の研究のなかには、企業と連携して取り組んでいるものも数多く見受けられます。実用化に貢献している研究なども多いことから、今後の大学研究からも目が離せません。

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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