太陽光発電の草刈り方法は? 雑草対策や費用相場、トラブル事例を解説

太陽光発電で悩みのタネとなるのが、雑草対策です。
雑草対策を適切に行わなければ、発電効率の低下や近隣住民とのトラブルにつながります。
本記事では、太陽光発電の草刈り方法を7つ紹介し、それぞれの費用相場やメリット・デメリットを解説します。
利益を最大限に高め、トラブルを避けるためにも、ご自身に最適な雑草対策を見つけてください。
太陽光発電の雑草対策に必要な費用の相場
太陽光発電所の雑草対策と必要な費用の目安は、以下の通りです。
雑草対策 | 1,000平方メートル 初期費用 | 1,000平方メートル 1年当たりの維持費 (20年の使用を想定) |
---|---|---|
手作業や刈払機 | 自力で対応:2万円 (刈払機代) 外注:0円 | 自力で対応:0円 外注:15万円 ※年に3回行う場合 |
除草剤 | 自力で対応:1万円 (噴霧器代) 外注:0円 | 自力で対応:3,500円 (除草剤代) 外注:10万円 ※年に2回行う場合 |
防草シート | 自力で敷設:100~200万円 敷設を外注:50~100万円 | – |
砕石 | 200万円 | 1~3万円 |
カバープランツ | 50万円 | – |
コンクリート・アスファルト | 500万円 | – |
手法や業者によって異なりますが、太陽光発電所の雑草対策には、一般的に1年当たり10万円前後の費用がかかります。
しかしながら、自力で除草できる場合や、専門事業者に外注しない方法であれば、費用を大幅に抑えることも可能です。格安に雑草対策を行いたい場合は、負担が大きくなりますが自力での除草をおすすめします。
太陽光発電の雑草対策|メリット・デメリットを解説

ここでは、以下の雑草対策にかかる費用の詳細やメリット、デメリットを解説します。
- 手作業や刈払機による草刈り
- 除草剤による茎葉・土壌処理
- 防草シートによる日光遮断
- 砕石による生育妨害
- カバープランツによる植物管理
- コンクリート・アスファルトによる被覆
- ヤギ・ヒツジなどの動物による摂食
1. 手作業や刈払機による草刈り
手作業や刈払機による草刈りは、生長した雑草を年に数回刈り取る除草方法です。草刈りの外注を年に3回行う場合、1年当たり15万円ほどかかります。
自力で草刈りを行う場合は、刈払機を購入する(交換する)のにかかる初期費用が発生します。
1,000平方メートル当たりの費用 | |
---|---|
外注する場合の初期費用 | 0円 |
外注する場合の 1年当たりの維持費 | 15万円 ※年に3回行う場合 |
自力で行う場合の初期費用 | 2万円 (刈払機代) |
自力で行う場合の 1年当たりの維持費 | 0円 (刈払機を交換するタイミングで2万円) |
効果を高めるためには、1年に1~2回では足りず、3~4回ほど実施する必要がありますが、シンプルで取り組みやすい雑草対策です。
草刈りを外注する場合、前述の通り1年当たり15万円ほどかかります。
しかしながら、自力で草刈りをすれば、2,000円ほどで除草が可能です。年に3回程度、太陽光発電所に通うことができる方は、自力で草刈りをすることで費用を大幅に削減できます。
怪我の危険性は、ナイロン刃を使用することや安全靴を着用することで抑えられます。ケーブルや太陽光パネルなどの機器に損傷を与えないようにして、ムダな出費を生まないよう注意が必要です。
また、草刈りの際は、高刈りがおすすめです。高刈りをすれば、イネ科雑草の抑制や飛び石・ケーブル切断の防止、作業時間の短縮などのメリットがあります。地表付近で刈った場合と効果は変わらないため、地表から10cm程度の高さで刈ることをおすすめします。
2. 除草剤による茎葉・土壌処理
除草剤による茎葉・土壌処理は、化学資材を使用して雑草を処理する方法です。除草剤による雑草処理の外注を年に2回行う場合、1年当たり10万円ほどかかります。
自力で除草剤を散布する場合は、除草剤と噴霧器の購入が必要です。自力で除草剤を年に2回散布し、1万円の噴霧器を購入した場合、初期費用込みで1年当たり4,000円ほどかかる計算になります。
1,000平方メートル当たりの費用 | |
---|---|
外注する場合の初期費用 | 0円 |
外注する場合の 1年当たりの維持費 | 10万円 ※年に2回行う場合 |
自力で行う場合の初期費用 | 1万円 (噴霧器代) |
自力で行う場合の 1年当たりの維持費 | 3,500円 (除草剤代) ※年に2回行う場合 |
発生している雑草に応じて除草剤を選ぶことで、高い効果を見込めます。
除草剤はホームセンターなどで購入でき、自力で撒くことが可能です。また、散布に必要な噴霧器などの道具もホームセンターで簡単に取り揃えられるため、すぐに作業を始められます。
除草剤を使用する際には、周囲の環境に配慮が必要です。例えば、除草剤が風や雨によって拡散し、近くの農場で栽培している農作物に影響を与えれば、損害賠償を請求される可能性があります。使用する前に、隣接する土地の所有者に使用の可否を確認すると安全です。
また、農林水産省から「農薬」として登録されている除草剤の使用をおすすめします。農薬として登録されていない除草剤は、農作物や樹木・芝・花きなどの栽培や管理の目的で使用できないため、注意が必要です。
参考:農林水産省「除草剤の販売・使用について」
以下が農薬として登録されているおすすめの除草剤です。
3. 防草シートによる日光遮断
防草シートによる雑草対策は、日光を遮断することで雑草の生育を阻害する方法です。防草シートで日光を遮断する場合、防草シートの購入と敷設が必要です。
敷設を外注した場合と、自力で敷設した場合でかかる初期費用の目安は次のようになります。
1,000平方メートル当たりの費用 | |
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敷設を外注した場合の 初期費用 | 100~200万円 |
自力で敷設した場合の 初期費用 | 50~100万円 |
1年当たりの維持費 | 0円 ※破損した場合は修繕費または購入費 |
20年間防草シートが破損しない場合、修繕費などの維持費はかかりません。
防草シートは1平方メートル当たり500~1,000円ほどで販売されています。破損しなければ追加のコストや特別な管理は必要ないため、長期的に見ると安価な雑草対策です。
防草シートによる雑草対策は、効果・管理の手間・コストパフォーマンスの3つに優れています。以下の参考資料による研究結果では、防草シート・砕石・土壌改良剤など、いくつかの雑草抑制資材の中で、もっとも雑草抑制効果が高かったのは防草シートでした。
参考:日本緑化工学会誌「メガソーラー発電用の雑草抑制資材の性能比較とライフサイクルコストの検討」
防草シートは、本記事で紹介する施策の中でも、最も優れた雑草対策といえます。
防草シートは長期的に見るとコストパフォーマンスに優れますが、大きな初期費用がかかるというデメリットがあります。
前述の通り、防草シート本体だけで1平方メートル当たり500~1,000円かかるため、1,000平方メートル当たり50万円から100万円ほどかかります。敷設の外注費と合わせると、150~200万円ほどの準備が必要です。
4. 砕石による生育妨害
砕石による雑草対策は、砕石や砂利を地面に敷き詰めて雑草の生育を妨害する方法です。砕石による雑草対策でかかる費用目安は次のようになります。
1,000平方メートル当たりの費用 | |
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初期費用 | 200万円 |
1年当たりの維持費 | 1~3万円 |
年に1度、5~15平方メートル分の砕石を補充する場合、維持費は1~3万円ほどです。
砕石による雑草対策は、地形や状況に応じて柔軟に実施できるメリットがあります。他の施策に比べて効果は低いですが、防草シートが敷設できない場所や被害が大きな場所などにピンポイントで実施可能です。
砕石による生育妨害は、隙間を完全に遮断することが難しいので、防草シートやコンクリートなどによる被覆よりも効果は低い傾向にあります。また、初めは大量の砕石を運ばなければならないため、大きな労力が必要です。
5. カバープランツによる植物管理
カバープランツ(グランドカバー)による植物管理は、太陽光発電をするうえで害とならない植物を意図的に繁茂させ、雑草の発生を抑制する方法です。20年間植物を交換せず育てると仮定した場合、初期費用は50万円ほどかかります(選択する植物によって予算は大きく異なる)。
1,000平方メートル当たりの費用 | |
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初期費用 | 50万円 (1平方メートル当たり500円程度) |
1年当たりの維持費 | 0円 ※植え替える場合は植物の購入費が必要 |
維持費は生育状況によって異なりますが、1度全て植え替える場合は初期費用と同等のコストがかかります。
カバープランツによる植物管理をすると、蒸散作用により地表の温度が下がり、発電効率の低下を抑えられる効果も期待できます。
カバープランツをするには、大きな初期費用と労力がかかります。また、枯れた場合や植え替える場合は植物を新たに購入する必要があるため、追加でコストが掛かるリスクがあります。
6. コンクリート・アスファルトによる被覆
コンクリート・アスファルトによる雑草対策は、発電装置を設置する際に地表をコンクリートやアスファルトで被覆する方法です。
1,000平方メートル当たりの費用 | |
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初期費用 | 500万円 |
1年当たりの維持費 | 0円 |
効果が高く特別な維持管理は不要ですが、コストが大きく、パネル設置後の施工が難しい対策です。
7. ヤギ・ヒツジなどの動物による摂食
動物による雑草対策は、草食動物に雑草を摂食させることで除草する方法です。
実際に、ヤギやヒツジといった動物を飼育することで、太陽光発電所の緑地管理に活用されている事例もあります。
ただし、この方法では動物を飼育しなければなりません。雑草だけで食事が不十分であれば別にエサを用意する必要があり、病気に罹れば治療も必要です。
太陽光発電の草刈りをしないとどうなる? 実際にあったトラブル
草刈りをおろそかにして、近隣の住民や土地の所有者に迷惑をかけ、トラブルに発展することがあります。ここでは、実際に合ったトラブルを3つ紹介します。
1. 雑草が道路まで伸びている
雑草が繁茂し、地域住民の通行に支障が生じた事例
太陽光発電設備(低圧案件)について、地域住民から市に対し、敷地内の雑草が繁茂し、隣接する市道の路側帯まで伸びているため、地域住民の通行に支障が生じ、危険であるとの相談があった。
雑草が住民の生活に影響を与えていないかを定期的に確認することが重要です。
2. 火災延焼のリスクを上げている
市の依頼では改善しなかったが、経済産業省に通報したことで除草が行われた事例
太陽光発電設備(高圧案件)について、地域住民から市に対し、敷地内の除草が不十分で枯れ草が残っており、火災になった場合に近隣の住宅に延焼するおそれがあるとの相談があった。
災害が起こった場合でも、近隣の住民に迷惑がかからないよう事前に対策を講じる必要があります。事故防止のため、敷地の内部であっても、枯れ葉が大量に溜まった場合は処分しましょう。
3. 柵・フェンスが設置されておらず雑草が私有地に伸びている
太陽光発電施設周辺の草刈りがされておらず、自分の土地まで雑草が侵入している。
また、柵やフェンスが設置されていないところもある。
引用:三重県「太陽光発電施設の導入に係る相談件数等について」
敷地の性質上、他人の土地に迷惑をかけるリスクが高い場合は、柵やフェンスを設置するなどの対策が必要です。
太陽光発電の草刈りにおすすめな時期・頻度は?
手作業や刈払機で草刈りをする場合は、年に3回、6~7月・8~9月・10~12月に除草するのがおすすめです。
6~7月・8~9月は、雑草の生長が旺盛な5~8月の被害を抑えるために除草します。10~12月は、秋に生長した分に対処します。時期によって生長の速度が異なるため、タイミングが重要です。
当然、除草が必要な回数は行っている雑草対策に応じて異なります。コンクリート・アスファルトや防草シートを施している場合は、破損や隙間などの異常がなければ除草は不要です。
ただし、予期せぬ異常が発生する場合があるため、現場の点検やメンテナンスは年に数回実施しましょう。
まとめ|太陽光発電は雑草対策をして発電効率アップ
太陽光発電をする際は、雑草対策を講じることでトラブルや問題を防止しながら発電効率を向上できます。適切に手入れをすることで発電効率が上がるため、利益の向上にもつながります。
地域や地形、予算によって最適な対策は異なるため、ご自身の状況を考慮して取り入れる手法を選択しましょう。