太陽光発電用地として土地貸しするメリットとは? 価格相場やトラブル例も紹介

「太陽光発電用地として土地貸しすると利益を出せる?」
「どんな農地が太陽光発電用に向いているの?」
使わなくなった遊休農地を別の目的で活用したいと考え、上記についてお悩みの方はいませんか?中には、太陽光発電用として土地貸しするメリット・デメリットを知りたい人も多いでしょう。
この記事では、以下についてわかりやすく解説します。
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太陽光発電用地向けに土地貸しするメリット

両親から農地を相続したけれど使い道がないとお困りの人もいれば、体力的な問題で遊休農地にしている人も多いはずです。もし農地を使い余しているのなら、「土地貸し」を検討してみてはいかがでしょうか。
田舎にある土地・農地でも利益になるかもしれません。まずは、太陽光発電用地を土地貸しするメリットについて紹介します。
安定収入を確保できる
農地を太陽光発電用地として土地貸しをすれば、貸与している間、継続的に安定収入を確保できます。
農地を使わずに放置すると、固定資産税を支払うだけの邪魔な土地になりかねません。
対して土地貸しを活用すれば、使わない土地を投資目的の個人・企業などに土地を貸す代わりとして、賃貸費用をもらえます。
土地貸しによって、毎年支払っている固定資産税をまかなえることはもちろん、プラスアルファの利益を生み出せるかもしれません。「土地を無駄にしたくない」「安定収入を得たい」と考えているのなら、太陽光発電用地としての土地貸しを検討してみてください。
農地をそのまま農地として貸出したとしても、借り手が見つからない場合があります。なぜなら、農業従事者の高齢化によって「農地」としてのニーズが減っているためです。
よって土地貸しを検討する際には、現代の需要に合う太陽光発電用地として貸し出すほうが借り手が現れやすいと言えます。
関連記事 農地の固定資産税はいくら?
税金対策・節税効果がある
農地を太陽光発電用地として土地貸しをすれば「相続税」の節税が可能です。
通常、相続等によって農地を譲り受けると相続税が発生します。しかし、借地借家法を活用して借地権付きで土地貸しをすれば、残存期間年数に応じて相続税を節税できるのが特徴です。参考に、残存期間年数と評価額が減少する割合を表にまとめました。
残存期間年数 | 評価額減少の割合 |
---|---|
5年以下 | 5% |
5年超10年以下 | 10% |
10年超~15年以下 | 15% |
15年超 | 20% |
例として、相続税評価額が2,000万円の農地を10年土地貸しした場合には、15%である300万円の評価額の減少が可能です。農地のあるエリアや割り当てによって相続税の計算方法は異なりますが、課税される評価額を減らすことで節税できます。
農地の維持管理コストを減らせる
農地を太陽光発電用地として土地貸しをすれば、今まで必要だった維持管理を借り主に任せられます。
たとえば、農地を自身で所有する際には、次の維持管理が必要です。
- 草刈り
- 土壌のメンテナンス
農地を放置して「耕作放棄地」にすると固定資産税が倍近くなるほか、「耕作放棄地に草刈りが必要な理由」でもあるように、害虫発生といった影響で近隣住民からクレームが入ることもあります。
対して土地貸しをすれば、土地の維持管理は借り主の責任へと変わるのです。土地貸ししている間ずっと維持管理の必要がなくなるため、普段から農地の維持管理に困っているのなら、太陽光発電用地としての土地貸しを検討してみても良いかもしれません。
耕作放棄地のリスクについて気になる方は、以下の記事をチェックしてみてください。
関連記事 耕作放棄地とは? 問題と解決策
太陽光発電用地向けに土地貸しするデメリット
太陽光発電用地の土地貸しにはデメリットもあります。土地貸し前に確認しておきたいポイントを整理しました。
収益性が低い
太陽光発電用地として土地貸しをすれば、個人・企業といった借り手が現れやすくなり、継続的な収益化が可能です。ただし、土地貸しによるリターンが小さいことに気を付けてください。
具体的な金額イメージは「太陽光発電用地向けの土地貸しは儲かる?【価格相場】」で解説しています。
もし太陽光発電用地として土地貸しを検討しているのなら、価格相場をチェックし、問題なく利益を出せると判断することが重要です。「使っていない農地があり、とにかく固定資産税の負担を解消したい」と考えている方は、土地貸しを検討してみてください。
固定資産税の節税には利用できない
太陽光発電用地としての土地貸しには相続税の節税効果がある一方、毎年発生する固定資産税の節税には役立ちません。
固定資産税は土地貸ししている間も、土地の所有者である自分で支払い続ける必要があります。土地貸ししたからといって、借り主が固定資産税を支払ってくれるわけではないため注意してください。
また、固定資産税を下げる特例を利用するためには、太陽光発電用地としてではなく「宅地」として住宅といった用途を物件(マンション・アパート含む)を建てることが条件となります。
固定資産税の節税を目的としているなら、宅地転用と土地貸しのどちらが良いかを調べるために賃貸運用プランなどの比較シミュレーションを実施することが重要です。
土地貸し期間が長くなるほど売却が難しくなる
太陽光発電用地として土地貸しする際には、土地貸し期間の満了後(賃借を辞めた後の土地)に注意しなければなりません。
たとえば、太陽光発電用地として土地貸しして返却された土地には、まだ施設の土台などが残った状態です。新たに土地貸しする際に同じく太陽光発電用地としてのニーズが高いとも限りません。また、別の目的で転用する手間もかかります。
時間が経てば経つほど土地(農地)の価値がなくなり、売れにくい土地へと変化するかもしれません。長期的な土地貸しを検討しているのなら、合わせて早めに売却する方法とどちらが楽なのか、利益を出せるのか比較することが重要です。
農地売却について検討したい方は、以下の記事をチェックしてみてください。売却の手順や費用感について紹介しています。
関連記事 田んぼを売るには? 農地売却の方法
太陽光発電用地向けの土地貸しは儲かる?【価格相場】
使っていない農地を、太陽光発電用地として土地貸しする予定なら、まずはどれくらいの収益を得られるのか確認しておくことが重要です。参考として、総務省から平成27年に公表された太陽光発電用地の賃借料・単価を表にまとめました。
土地賃借料(円/m²/年) | |||||
---|---|---|---|---|---|
10-50kW未満 | 50-500kW未満 | 500-1,000kW未満 | 1,000kW以上 | 全体平均 | |
平均値 | 218 | 195 | 190 | 242 | 219 |
中央値 | 155 | 150 | 145 | 153 | 152 |
件数 | 588 | 66 | 98 | 206 | 958 |
また太陽光発電用地の年間発電量は、日照時間や導入・用意した設備の条件にもよりますが、おおよそ0.3kW/坪だと言われています。当条件をもとに、坪数ごとの毎年の発電量、中央値から見る土地賃借料の相場をまとめました。
- 30坪の目安収入
-
年間発電量
30坪×0.3kW=9kW
※10-50kW未満の項目で計算
土地賃借料30坪×3.3057=99.17m²
99.17m²×155円/m²/年=1万5,371円/年
土地貸し期間 5年間 10年間 20年間 30年間 トータル賃料 7万6,855円 15万3,710円 30万7,420円 46万1,130円
- 50坪の目安収入
-
年間発電量
50坪×0.3kW=15kW
※10-50kW未満の項目に該当
土地賃借料50坪×3.3057=165.28m²
165.28m²×155円/m²/年=2万5,618円/年
土地貸し期間 5年間 10年間 20年間 30年間 トータル賃料 12万8,090円 25万6,180円 51万2,360円 76万8,540円
- 100坪の目安収入
-
年間発電量
100坪×0.3kW=30kW
※50-500kW未満の項目に該当
土地賃借料100坪×3.3057=330.57m²
330.57m²×155円/m²/年=5万1,238円/年
土地貸し期間 5年間 10年間 20年間 30年間 トータル賃料 25万6,190円 51万2,380円 102万4,760円 153万7,140円
- 300坪の目安収入
-
年間発電量
300坪×0.3kW=90kW
※10-50kW未満の項目に該当
土地賃借料300坪×3.3057=991.73m²
991.73m²×150円/m²/年=14万8,760円/年
土地貸し期間 5年間 10年間 20年間 30年間 トータル賃料 74万3,800円 148万7,600円 297万5,200円 446万2,800円
農地(農業)として貸出た場合の賃料
太陽光発電用地として土地貸しする際に比較したいのが、農地として貸し出す際の賃料です。農林水産省が公開している「H20年小作料(賃借料)について」によると、農地の賃料は15,739円/10a(=15円/m²)となります。
参考として、前述した太陽光発電用地と同じ30~300坪における賃借料の違いを表にまとめました。
太陽光発電用地として土地貸しする場合 | 農地として土地貸しする場合 | |
---|---|---|
30坪 (99.17m²) | 1万5,371円/年 | 1,488円/年 |
50坪 (165.28m²) | 2万5,618円/年 | 2,479円/年 |
100坪 (330.57m²) | 5万1,238円/年 | 4,959円/年 |
300坪 (991.73m²) | 14万8,760円/年 | 1万4,876円/年 |
上表からわかるように、太陽光発電用地・農地の土地貸しには10倍近い賃借料の差があります。少しでも賃借料を高くしたいのなら、太陽光発電用地として土地貸しするのがおすすめです。
太陽光発電用地に向いている土地一覧

農地のある土地によっては、太陽光発電用地に向いていない場合もあります。参考として、太陽光発電用地向けの農地を以下にまとめました。
太陽光発電用地に向いている農地 | 理由 |
---|---|
日照時間が長い | 日あたりの太陽光発電量を増やせる |
天候の変化が少ない | 毎日安定して発電できる |
電柱がすでに農地付近にある | 電柱がない場合、設置は発電所といった電力会社の負担ではなく事業者が負担しなければならない |
農地の面積が広い | 土地が広いほど設備設置量を増やして賃料を上げやすい |
自然災害が少ない | 設備の故障を防止できる |
ちなみに地域ごとの日照時間や天候の変化、自然災害の頻度は、気象庁ホームページから調査できます。電柱、面積についても所有者ならすぐにわかるのが特徴です。
太陽光発電用地としての土地貸しを検討しているのなら、上記の条件を満たしている農地であるほど、募集すると借主希望者が現れやすいほか、高い収益性が期待できます。
太陽光発電用地のための土地賃貸借契約書の作り方

農地を太陽光発電用地として土地貸しする際には、借主となる個人・企業間で「土地賃貸借契約書」を交わさなければなりません。
また土地賃貸借契約書は、農地所有者である貸主側が作成します。作り方は主に次の通りです。
- 農地所有者がWord等を使って個人で作成する
- 不動産会社に依頼して仲介してもらう
- 「農地買取センター」に相談する
ちなみに、国税庁ホームページに土地賃貸借契約書の見本が掲載されています。自身で作成する際には参考にしてください。
また、農地買取・転用の相談は「農地買取センター」に相談するのがおすすめです。農地転用の費用が無料であり、買取や賃貸ができるかもしれません。
無料で相談可能です

太陽光発電用地向けの土地貸しで起きやすいトラブル・注意点
太陽光発電用地として土地貸しする際には、土地貸し中・後に発生するトラブルを押さえておくべきです。土地貸しで失敗しない方法として、具体的な注意点を紹介します。
関連記事 太陽光発電の農地トラブル
近隣からクレームを受ける
以下に示す条件にあてはまる農地の土地貸しをすると、近隣住民からクレームが入る場合があります。
- 他の農業従事者が所有する農地が隣接している
- 土地貸しする農地の近くに家屋が多い
- 工事・施工の影響で近隣の田畑に影響が出る
たとえば、太陽光発電施設のせいで近隣の景観が悪くなり、周辺の農業従事者からクレームを受けるかもしれません。また、太陽光が発電設備に反射してまぶしいと訴える住民が出てくる可能性もあります。
知り合いや知人からクレームを受けるケースもあるため、土地貸しをする際には近隣住民に事前説明して納得してもらうことが重要です。
農地転用作業に時間がかかり借主との問題が起きる
農地を太陽光発電用地にする際には、農業委員会・都道府県知事宛てに農地転用の手続きを実施しなければならないこと、そして申請を必ず許可してもらえるわけではないことに気を付けてください。
まず、農地転用の手続きには、1ヶ月半~2ヶ月以上かかる場合が多いです。また転用を許可してもらえないケースもあります。
よって、許可を得る前から土地貸しの話だけを進めていると、借主との問題に発展するかもしれません。「貸せると言っていたのに、急に貸せなくなったとは何事だ」と大問題に発展する場合もあるため、土地貸しの話は転用が完了してからスタートするのがおすすめです。
安く買いたたこうとする業者がいる
事前知識もなく農地を太陽光発電用地として貸し出そうとした場合、知識のある業者から安く買いたたかれる恐れがあります。
中には相場価格よりも安く借りようと説得してくる業者もおり、知識のない農業従事者では太刀打ちできないかもしれません。最悪の場合、まったく利益を出せない金額で契約してしまうこともあるため十分に注意してください。
また安全に手続きを進めたいのなら、プロに仲介してもらうのがおすすめです。安全な取引をしたいなら、不動産会社や農地買取センターなどに相談してみてください。
太陽光発電用地の土地貸しについてよくある質問
太陽光発電用地の土地貸しについて、よくある質問をまとめました。
- 土地が狭くても太陽光発電用地として土地貸しできる?
-
土地が狭くとも、太陽光発電用地としての貸出は可能です。ただし、再生可能エネルギーである太陽光発電設備は広い土地を使って効率よく発電するのに向いています。
坪数が少ない農地であるほど、借主が現れにくくなることに気を付けてください。
- 太陽光発電用地としての土地貸しに消費税はかかる?
-
国税庁で公開されている「地代、家賃や権利金、敷金」の条件によると、太陽光発電用地としての土地貸しには消費税が課税されないと示されています。
土地の譲渡や貸付けは、消費税の課税の対象とならないこととされています(非課税取引)。なお、土地の貸付けのうち、貸付けに係る期間が1か月に満たない場合および駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合は、非課税にはなりません。
土地には、土地の上に存する権利も含まれます。土地の上に存する権利とは、地上権、土地の賃借権、地役権、永小作権などの土地の使用収益に関する権利をいいます。
引用:国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」近年ではインボイス制度など、年間収入が1,000万円の人でも消費税の納税が必要になるケースも増えています。ただし、土地貸しの場合は影響がないため安心してください。
- 太陽光発電用地として土地貸しすると税金はいくらかかる?
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土地貸しをする際には、不動産所得(所得税・住民税)・固定資産税の計3つの税金がかかります。
ただし、土地貸しする農地の広さ、評価額によって税金が変わるため、一概にいくらだと明言できません。もし税金額が気になっているのなら、税理士といった税金のプロに相談するのがおすすめです。所有する農地の条件に合う土地貸しの税額を計算してくれます。
- 太陽光発電用地として使えない農地の特徴は?
-
次の農地は、太陽光発電用地として土地貸しをおすすめしません。
- 面積が狭い小規模な農地(太陽光パネルを設置できる面積がない農地)
- 日照時間が短い農地
- 整地が難しい急傾斜の農地
- 天候の変化が激しい農地
- 災害が多く安全の保証がない農地
- 近くに山林・建物があり日陰ができやすい農地
- 電柱が周辺にない農地
太陽光発電システムを設置しやすい土地、発電量が多い土地という条件から外れる農地は、太陽光発電用地としてのポテンシャルがありません。別の目的で農地を活用するのが良いです。
もし新たな農地活用方法を探しているのなら、以下の記事をチェックしてみてください。使わなくなった田んぼ・畑の活用方法を紹介しています。
関連記事 使わなくなった田んぼや畑の活用方法
太陽光発電用地の土地貸しについてまとめ
太陽光発電用地としての「土地貸し」は、相続によって得た使っていない農地を有効活用する便利な手段です。賃借料として継続的に利益を得られることはもちろん、農地の手入れが不要となります。
ただし収益性が低いこと、近隣住民からクレームを受けやすいことに注意しなければなりません。
本記事で紹介した収益性の目安費用をもとに、土地貸しを利用すべきか検討してみてはいかがでしょうか。
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