太陽光パネルの種類を3つ解説! 素材で性能が変わる?
「太陽光パネルのメーカーや種類が多く、比較検討が難しい」
「専門用語が多く、なかなか違いを理解できない」
このように、太陽光パネルの種類ごとの違いが分からず、購入を迷われているケースもあるのではないでしょうか。
コスト低減や発電効率の向上などを目的に、新たな製造技術が研究・開発されており、太陽光パネルの種類が増えている状況です。
本記事では太陽光パネルの種類による違いや、メーカー別の特徴を分かりやすく紹介します。種類や特徴が分かれば、太陽光パネルを選びやすくなりますので、ぜひ最後までお読みください。
【前提】太陽光パネルの基本構造とは?
現在の主流になっている太陽光パネルは、以下の図に示すような構造と重量の割合になっています。
太陽電池セルを補強するため、表面はガラス、裏面をバックシートで挟み強度を持たせるのが、基本的な太陽光パネルの構造です。
太陽電池セルには、電気を発生させるための半導体が内蔵されています。この半導体の原料によって、太陽光パネルの種類が決まる仕組みです。
太陽光パネルの3つの種類と主なメーカー
太陽光パネルは、大きく以下の3種類に分かれています。
- 太陽光パネルの種類①:シリコン系
- 太陽光パネルの種類②:化合物系
- 太陽光パネルの種類③:有機系
それぞれの特徴や製造しているメーカーなど、順に見ていきましょう。
太陽光パネルの種類①:シリコン系
半導体の材料にシリコンを採用している太陽電池で、実用化されている中で主流の太陽光パネルです。
同じシリコン系の太陽光パネルでも、以下の表に示すとおり、3つに分類されます。
種類 | 特徴 | 日本の主な メーカー |
---|---|---|
単結晶 (結晶系) | ・太陽光パネルの中で製造の歴史が1番長い ・160~200マイクロメートルの単結晶シリコンを太陽電池の半導体に使用 ※単結晶は、どの角度から見ても原子の配列が同じ形になっている結晶のこと ・製品化されている太陽光パネルの中で、変換効率が高い | ・シャープ ・パナソニック ・三菱電機 |
多結晶 (結晶系) | ・200マイクロメートル程度の多結晶シリコンを太陽電池の半導体に使用 ※多結晶は、小さな結晶が並んで1つになっている状態のこと ・単結晶と比較すると発電効率が低い ・製造しやすく低単価 | ・京セラ ・シャープ ・三菱電機 |
薄膜系 | ・シリコンの使用量を結晶系の1/100程度に削減 ・薄膜状のため柔軟な形状で設置可能 ・施工場所が限定されない | ・カネカ ・シャープ ・富士電機 |
薄膜系シリコン太陽電池は、低価格化を目的に開発された太陽光パネルです。
シリコン原子の配列が不規則なため、結晶系と比較して変換効率の低い点が課題といわれています。
太陽光パネルの種類②:化合物系
太陽光発電では太陽電池の半導体の素材がシリコン以外の、化合物系太陽光パネルも実用化されています。
化合物系太陽光パネルの種類は、以下の表に示す3つです。
種類 | 特徴 | 日本の主な メーカー |
---|---|---|
CIS (CIGS) | ・半導体部分に以下の元素を組み合わせた化合物を使用 <銅・インジウム・ガリウム・セレン等> ・光の吸収率が高い ・結晶系シリコンと比較すると製造工程が少なく低コスト | ソーラーフロンティア |
CdTe | ・太陽電池の半導体に有害物質のカドミウムを含有 ・低コストで発電効率が高い ・欧米では大規模ソーラーとして普及 | ・日本のメーカーで製造されていない ・米国のFirst Solarが製造 |
Ⅲ-V族 | ・実用化に向けた研究開発の段階 | シャープ |
化合物系の太陽光パネルは半導体の素材に有害物質を含むため、環境汚染にならないよう適切な廃棄処分が必要です。
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太陽光パネルの種類③:有機系
シリコン系や化合物系は半導体の原料が無機物であるのに対し、有機物を使用するのが有機系太陽光パネルです。
有機系太陽光パネルは、以下表のとおり2種類あります。
種類 | 特徴 | 日本の主な メーカー |
---|---|---|
色素増感 | ・酸化チタンと色素を半導体の負極に使用 ・色素が太陽光の吸収量を増加 ・色素の配合により発電効率を向上 | ・アイシン精機 ・シャープ ・フジクラ |
有機薄膜 | ・p型とn型の有機半導体を混ぜて液状にし、基板に塗布する方法で製造 ・製造工程が少なく低価格で製品化される可能性 | ・三菱化学 ・住友化学 ・JXエネルギー |
原材料に有機物を使用することから、耐久性や発電効率の低さが有機系太陽光パネルを実用化するための課題といわれています。
この課題をクリアするために研究・開発されているのが、有機薄膜太陽電池の種類に分類されるペロブスカイト太陽電池です。ペロブスカイト太陽電池について詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事 ペロブスカイト太陽電池とは
太陽光発電のパネル種類別の発電効率
太陽光パネルの種類別の発電効率を、一覧にまとめました。
太陽電池セルの種類 | 一般的な発電効率 | |
---|---|---|
シリコン系 | 単結晶 | 15~20% |
多結晶 | 15~20% | |
薄膜系 | 8%前後 | |
化合物系 | CIS | 14%前後 |
CIGS | 9~19.2% | |
CdTe | 8.5~19.9% | |
Ⅲ-V族 | 8~38.9% ※接合の種類で発電効率が大きく異なる | |
有機系 | 色素増感 | 11.9~14% |
有機薄膜 | 12%前後 | |
ペロブスカイト | 11~20.6% |
有機系太陽光パネルはまだ実用化されていないため、研究段階で実現した数値を紹介しています。
参照:チャンピオン太陽光発電モジュール効率チャート|NREL
参照:再生可能エネルギー技術白書|NEDO
太陽光パネルメーカーの一覧
太陽光パネルの主なメーカーを紹介します。
メーカー | 特徴 | 種類 | 発電効率 |
---|---|---|---|
エクソル | ・シリコン系単結晶モジュールの中で、変換効率が高い ・耐久性も高く設置から25年経過後も84%以上の出力が保証される | シリコン系単結晶・多結晶 | 17~25% |
カナディアン・ソーラー | ・肉眼では識別しにくいパネル表面への小さな亀裂が入りにくい ・変換効率と耐久性が高い | シリコン系単結晶・多結晶 | 15.4~25.5% |
京セラ | ・長期間太陽光パネルを稼働させても出力の低下率が低い ・各種耐久試験を実施し徹底して品質を管理している | シリコン系単結晶・多結晶 | 14.9~23% |
シャープ | ・台形型の太陽光パネルも製品化されており、屋根の形状に合わせて可能な限りパネルを設置できる ・独自の耐久試験や加速試験基準を設けて高い品質を保っている | シリコン系単結晶・多結晶 | 16.1~24.6% |
ソーラーフロンティア | 考えられる屋外の自然環境に合わせた独自の試験を実施しているため、品質が安定している | シリコン系単結晶 | 23~23.2% |
長州産業 | ・さまざまな気象条件を想定した試験を実施し耐久性を高めている ・屋根設置型には雨漏りの保証が付いている | シリコン系単結晶 | 15.9~24.3% |
ネクストエナジー・アンド・リソース | ・ハーフカットセルの採用により発電ロスを低減している ・高温時でも高い発電効率を維持できる ※ハーフカットセルは太陽電池セルを2分割したもの | シリコン系単結晶・多結晶 | 17~24.5% |
参照:JP-AC太陽光パネル型式登録リスト(2024年4月~ 含有物質情報あり)|JPEA代行申請センター
まとめ|太陽光パネルは種類で特徴が異なる
太陽光パネルは大きく分けて、以下の3種類に分類されます。
- シリコン系
- 化合物系
- 有機系
これらは太陽光パネルが発電するために必要な、太陽電池セルの半導体の原料で種類が分かれています。
半導体の素材により太陽光パネルの変換効率や耐久性などが変わるため、状況に応じた適切な選定が必要です。
メーカーや種類など選択肢が多すぎてどの太陽光パネルが最適か分からない場合は、業者に相談しながらの選定をおすすめします。