太陽光パネル

太陽光パネルは本当にリサイクルできない? 技術の現状と対策も解説

太陽光パネル リサイクルできない
阿部希

「太陽光パネルは、本当にリサイクルできない?」
「太陽光パネルがリサイクルできないと言われる理由は何?」

このように、太陽光パネルのリサイクル可否について、お悩みではないでしょうか。

太陽光パネルをリサイクルする技術は、確かに存在します。しかし、現状は法規制がなく含有物質の情報不足などの理由で廃棄を選択されやすく、リサイクルできないと言われる状況です。

この記事では、太陽光パネルがリサイクルできないと言われる理由や、再利用するための技術の現状と課題を解説します。

リサイクルを取り巻く状況が分かれば、太陽光パネルをどのように廃棄するべきか検討しやすくなるため、ぜひ参考にしてください。

太陽光パネルがリサイクルできないとされる理由

ソーラーパネル

ソーラーパネルには複数のリサイクル手法があるにもかかわらず、再利用できないと言われる理由は以下の2つです。

太陽光パネルが「リサイクルできない」といわれる理由
  • 太陽光パネルは猛毒と言われているため
  • リサイクル技術を持つ業者が少ないため

なぜリサイクルできないと考えられているのか、1つずつ説明します。

太陽光パネルは猛毒と言われているため

鉛やカドミウムなど健康を害する恐れのある有害物質を含む点が、太陽光パネルはリサイクルできないとされる理由です。

太陽光パネルを分解してリサイクルするためには、どの物質をどの程度含有しているか把握する必要があります。

しかし、有害物質に関して開示されている情報が少なく、太陽光パネルを処分できないと業者が判断するケースもある状況です。

適切な処分方法の判断が難しく、太陽光パネルの引き取りを拒否する処分業者がいることから再利用できないと言われています。

関連記事 太陽光パネルには有害物質が含まれる? 

リサイクル技術を持つ業者が少ないため

リサイクルのための設備を導入している業者が少ないことも、太陽光パネルは再利用できないと言われる理由になります。

太陽光発電協会が公表している太陽光パネルのリサイクル業者は、全国で39社(2023年7月時点)です。太陽光パネルの大量廃棄が懸念されている状況では、リサイクル業者が少ないと言えるでしょう。

大量廃棄問題への対策として2018年以降、太陽光パネルをリサイクルするための設備導入を環境省が支援しています。

2022年までに全国で11社が支援を受けており、太陽光パネルのリサイクル技術を持つ業者は増加していく見込みです。

参照:再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルに係る現状及び課題について|環境省

太陽光パネルは本当にリサイクルできない?現状の課題と対策

ソーラーパネルと地球

有害物質の含有や技術を持つ処分業者の不足など、太陽光パネルがリサイクルできないとされる理由はあります。しかし、太陽光パネルは本当にリサイクルできないわけではありません。

コストやリサイクルを回す仕組みの構築、より高度な技術開発など課題は残りますが、太陽光パネルはリサイクルできる製品です。

以下では、太陽光パネルをリサイクルする重要性や技術の現状と課題など、詳しく説明します。

太陽光パネルの廃棄問題によりリサイクルが重要

2030年代の後半以降、太陽光パネルの廃棄量が急増すると予測されており、最終処分場の許容範囲を超えることが懸念されています。

太陽光パネルは有害物質を含むため、破損したまま処分できない状況が長引くと環境汚染などの原因になりかねません。

しかし、現時点では廃棄する太陽光パネルが過剰にあるわけではなく、政府がリサイクル義務化を検討している段階にあります。

将来に懸念されている大量廃棄問題を解決するためには、義務化を含めて太陽光パネルをリサイクルできる仕組みの構築が重要です。

関連記事 太陽光パネルの廃棄費用・処分方法

太陽光パネルのリサイクル技術の現状

太陽光パネルのガラスをリサイクルする技術は、以下の表に示すとおり数種類あります。

リサイクル技術名/製品名リサイクル技術処理後のガラス形状
ホットナイフ分離法約300℃に熱したナイフでガラスと太陽電池を接着しているEVAを融かして分離板状
ブラスト工法粒体を吹き付けてガラスを剥離粒状
※吹き付けた粒体はふるいにかけて選別
ガラスわけーるⅢ型・大きなガラス片をローラーで剥離 
・細かいガラスの剥離にはブラシを使用
粒状
※風力や色で素材を選別し、金属検知など経て異物を除去
Resolaアルミフレームを外した状態でローラー型の破砕機に数回とおしてガラスを分離粒状
加熱・燃焼処理窒素ガスの炉内環境でガラスやと太陽電池などを接着しているEVAを熱分解板状
参照:再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルに係る現状及び課題について|環境省

選択する手法で回収できるガラスの最終的な状態や品質、再生資源としての用途が異なる点が、太陽光パネルリサイクル技術の現状です。

太陽光パネルのリサイクルで解決するべき3つの課題

太陽光パネルのリサイクルには、大量廃棄が始まるまえに解決しなければいけない課題があります。解決が必要な課題は、以下の表に示す3つです。

課題詳細
リサイクル費用の低減・太陽光パネルの処分では、コストを優先してリサイクルされないケースもある
・埋立処分よりリサイクルが優先されるようコストの低減が必要
地域の実情に即した
リサイクル事業の確立
・現段階で太陽光パネルの廃棄量が少なく、リサイクルは事業性が低い
・各地域で自治体や発電事業者と連携した、円滑なリサイクルの体制が必要
・処分業者に安定的に太陽光パネルが渡る仕組みを構築できれば、リサイクルを促進できる
高度選別技術の開発・リサイクル処理で回収したガラスには有害物質や不純物が含まれている
・ガラスの再利用に影響のある物質を除去・高度選別する技術開発が必要
参照:再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会中間取りまとめ|再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会(環境省)

これらの課題が解決されれば、環境負荷を減らしながら太陽光パネルの大量廃棄問題にも対策できるでしょう。

太陽光パネルのリサイクルにおける海外の動き

海外で進められている太陽光パネルのリサイクルについて、以下の表にまとめています。

リサイクルの対策
韓国太陽光パネルを安定的にリサイクルできるようにするため
2023年に拡大生産者責任規制を施行
中国太陽光パネルのリサイクルに関する法規制がなく、検討段階
米国州ごとに太陽光パネルリサイクルの規制あり
EU各国・太陽光パネルに特化したEOL規制あり
・国ごとにWEEE指令に対応した法整備が進められている
※WEEE指令は、電子機器などの廃棄に関するEUでの法規制
豪州・国全体での太陽光パネル廃棄に関する法規制なし
・ビクトリア州のみ埋立処分禁止
参照:再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルに係る現状及び課題について|環境省

すでに国や州単位で、太陽光パネルのリサイクルが法規制されているケースがほとんどです。

主要国の中で国土面積あたりの太陽光発電導入量トップの日本において、太陽光パネルリサイクルの法規制は重要な課題と言えるでしょう。

まとめ|太陽光パネルはリサイクル方法が存在する

太陽光パネルは「リサイクルできない」と言われていますが、リサイクル技術は存在します。以下は、太陽光パネルをリサイクルする方法および設備の製品名です。

太陽光パネルのリサイクル技術
  • ホットナイフ分離法
  • ブラスト工法
  • ガラスわけーるⅢ型
  • Resola
  • 加熱・燃焼処理

リサイクル方法やどこまで分解するかは、事業者の持つ設備や判断によって異なります。現時点で太陽光発電の廃棄やリサイクルは、以下の現行の法令に従って自主的に実施されるのみです。

  • 電気事業法に基づく電気工作物としての取扱い
  • 再エネ特措法に基づく廃棄等費用積立制度の運用、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく適正処理

今後リサイクル義務化など、法規制が始まる予定もあります(※)。太陽光パネルを処分するタイミングで決まっているルールに従い、適切に廃棄することが発電事業者の義務といえるでしょう。

(※)2024年9月、政府により太陽光パネルのリサイクルを義務化する方針が定まりました。
参考:太陽光パネルのリサイクル義務化へ…大量廃棄と環境破壊を防止、日本発の薄型電池の普及も後押し : 読売新聞

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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