日本の発電方法の割合は? 世界との違いや最新の電源構成を解説
「日本はどんな発電方法が主流?」
「発電方法の割合が変化してるって本当?」
「日本と世界に発電方法の違いはある?」
日本の発電方法の割合を知って、現在の発電ニーズや今後の動向を把握したい人も多いのではないでしょうか?
この記事では、国内や世界の発電方法に関する以下について、わかりやすく解説します。
日本の発電方法の割合とは?ランキング形式で紹介【円グラフ付き】
日本で使われている電力は、燃料や仕組みが異なるさまざまな発電所から生み出されて日本中に供給されています。しかし効率性や地理的条件によって発電所の割合が異なることをご存じでしょうか。
まずは日本の発電方法の割合について、環境エネルギー政策研究所が公開している以下のデータをもとに、日本の発電割合をランキング形式で紹介します。
【第1位】火力発電
第1位は、全体割合の72.5%を占める火力発電です。
火力発電は、日本の電力供給の大多数を占める発電方法であり、以下に示す国々から石炭や石油、天然ガスを輸入して発電します。
- 石炭:オーストラリア・インドネシアなど
- 石油:サウジアラビア・アラブ首長国連邦など
- 天然ガス:マレーシア・オーストラリアなど
石炭や石油、天然ガスなどの燃料を燃やすことで熱を発生させ、水を水蒸気に変える力を使って発電用のタービンを回して電力を生み出します。
低コストで大量の電気を生み出せることから、原油といった国内資源の貯蔵量が少ない日本でも数多く導入されている発電方法です。
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【第2位】太陽光発電
第2位は、9.9%の割合を占める太陽光発電です。
太陽光発電は光エネルギーを活用した発電方法です。太陽光パネルに光エネルギーが当たると内部のシリコンセルがエネルギーを放出し、電力が生成されます。
一般家庭向けの住宅用太陽光発電設備として1993年にが普及し始めましたが、まだ新しい発電方法ということもあって2000年はじめまでは普及率が低い状況でした。
しかし、2020年10月のカーボンニュートラル宣言により、環境への影響が少ない再生可能エネルギーが注目され太陽光発電の普及が進みます。
現在では、大規模な発電所であるメガソーラーが国内に6,000件以上設置されており、急激に発電割合を伸ばしている発電方法です。
太陽光発電について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。将来性や課題について解説しています。
関連記事 太陽光発電は今後どうなる? 将来性と課題
【第3位】水力発電
第3位は、7.1%の割合を占める水力発電です。
水力発電は、ダムの水を放流する際に発生する位置エネルギーを活用した発電方法です。放流する大量の水の力で水車を回して発電します。とくに水資源が豊富なカナダ・ブラジルでは水力発電が主力発電です。
日本は年間平均の降水量が1,718mmと世界平均(880mm)より2倍以上高いほか、山間部が多いことから、ダムを活用した水力発電も普及しています。
しかし、膨大な建設費が必要になるほか、下流側の河川を利用する農業・漁業を営む一次産業に影響があり、河川を利用するための利権が複雑になりやすいのが課題です。よって近年では、水路などに設置でき河川への影響を減らせる小水力発電が注目されています。
【第4位】原子力発電
第4位は、4.8%の割合を占める原子力発電です。
燃料となるウランの核分裂の力を利用して水を水蒸気に変え、タービンを回すことで発電します。使う燃料や熱をつくるまでの過程以外は火力発電と似ているのが特徴です。
原子力発電は、日本を含む世界中に埋蔵されている潤沢な資源であるウランを使用するため、安定的に発電できると注目されています。また、発電時にCO2を排出しないのも特徴です。
しかし、原子力発電には放射線のリスクや廃棄物処理の問題があります。実際に2011年3月に発生した東日本大震災では、津波の影響で原子力発電が被災した事情により、長期的に人が近づけない環境へと変わりました。
現在の日本では原子力発電が停止されるなど、運転を自粛している発電所も見受けられます。
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【第5位】バイオマス発電
第5位は、4.6%の割合を占めるバイオマス発電です。
バイオマス発電とは、動植物から作り出される生物由来の資源(化石燃料を除く)を活用した発電方法であり、次のように種類豊富な燃料・技術を活用して発電されます。
- 木質燃料(間伐材・廃材など)
- バイオガス(生ゴミ・家畜の糞尿など)
要らなくなった木材のカスなどを燃やして発電するほか、生ゴミなどが発酵する際に出る熱を利用して水を水蒸気に変え、タービンを回すことで発電します。環境への影響を抑えられるため、材料を無駄にしない資源循環性に優れた発電方法です。
【第6位】風力発電
第6位は、0.9%の割合を占める風力発電です。
風力発電は風の力でブレード(プロペラ)を回すことで発電します。風力発電設備1基あたり年間で300万kWhを発電でき、800〜1,000世帯近くの電力をまかなえるのが特徴です。
主に、風の強い山間部や海岸沿いに設置され、CO2を排出しない再生可能エネルギーとして注目されています。しかし、設置できるエリアに風速の条件があるため、普及率は低めです。
また、風は年間を通じて風向や風量が変化するため、安定した発電量を確保しにくいと言われています。とはいえ、設置・メンテナンスだけで電力を生み出せることから、近年では安定的な風量が期待される海上・洋上に風力発電設備を設ける事例も増加中です。
【第7位】地熱発電
第7位は、0.2%の割合を占める地熱発電です。
マグマの熱をエネルギー源として蒸気が溜まった地層である「地熱貯留層」まで発電用の井戸を掘り、蒸気や熱水を取り出すことでタービンを回して発電します。井戸の深さは1,000〜3,000mを超えることも多いそうです。
地熱発電は火山や地熱地域のあるエリアに設置されており、自然に生み出される熱の力だけで電力を生み出せます。日本の温泉地や火山地帯の近くに発電所を設けますが、設置エリアが限定されるため、ほかの発電方法と比較して普及の割合が小さいです。
日本の発電割合の推移
日本の発電方法の中には、割合の規模が拡大しているもの、縮小しているものがあります。参考として、以下に示す資源エネルギー庁・電気事業連合会の資料をもとに、発電割合の推移を整理しました。
日本の再生可能エネルギーの割合が増加中
日本では、地球温暖化の問題が浸透し始めた2000年代初頭から、徐々に次のような再生可能エネルギーの割合が増加しています。
- 太陽光発電
- バイオマス発電
たとえば、2000年の時点で1%しか普及していなかった再生可能エネルギーを含む新エネルギーは、2021年の調査時点で13%まで伸びました。
2020年10月のカーボンニュートラル宣言により、再生可能エネルギーへの転換を目指し始めたことも含め、今後さらに増加していく見通しです。
日本の原子力発電の割合・推移が増加中
日本では、2011年3月に起きた東日本大震災による原発事故以降、全体の3割近くあった原子力発電の運転が自粛され、2014年の段階で割合が0%になりました。しかし、2015年から原子力発電の重要性が見直され、徐々に発電の割合が回復中です。
回復する理由としては、火力発電への依存度が高い日本でCO2排出量が多いといった問題を抱えていることが関係します。原子力発電は再生可能エネルギーと同じようにCO2排出量を必要最小限に抑えられるため、再稼働が進んでいるのです。
現状として、原子力規制委員会が公開している2024年4月時点の稼働状況によると、東日本ではほとんどの原子力発電所が停止・廃止しています。一方で西日本にある関西電力、四国電力、九州電力では、一部の発電施設が運転を再開しています。
日本の火力発電の割合が減少中
日本を含む世界で、脱炭素を目標としたカーボンニュートラル宣言が実施されたことにより、CO2排出量が多い火力発電から再生可能エネルギーにシフトチェンジしています。結果として日本でも、徐々に火力発電の割合が減少中です。
たとえば、上記グラフの2014~2021年までの傾向をみると、次のような割合の減少が起きています。
発電燃料 | 2014年 | 2021年 |
---|---|---|
石炭 | 33% | 31%(△2%) |
天然ガス(LNG) | 43% | 34%(△9%) |
石油等 | 11% | 7%(△4%) |
全体をみると、8年間で15%もの割合が減少している状況です。2050年を目標としたカーボンニュートラルの達成に向けて、今後もさらに火力発電の割合が減少する見通しです。
日本と世界の発電割合の違いとは?
日本は脱炭素に向けてCO2を排出する発電方法から、CO2排出を抑えやすい再生可能エネルギーに移行中です。そして海外の主要国でも同様に、発電割合が変化しています。
電気事業連合会が公開している以下のグラフをもとに、日本と世界の発電割合の違いを整理しました。
- 日本は世界の平均構成に近い発電割合である
- 主要国の中でも2番目に火力発電の割合が多い(1位はインド)
- 日本の太陽光発電の割合は主要国の中でも普及率が低い
世界全体の傾向をみると、日本も主要国と同様の割合を示していますが、まだまだ火力発電に依存しているのが実情です。全国地球温暖化防止活動推進センターの調査データより、日本のCO2排出量は世界で5番目に多いため、早急に火力発電から移行しなければなりません。
世界でも原子力発電の割合が増加中
パリ協定をきっかけに世界各国がカーボンニュートラル宣言を実施したことにより、日本を含む世界では、再生可能エネルギーや原子力発電の割合が増加傾向にあるようです。
世界的に2050年を目標としてカーボンニュートラルの実現を目指していますが、着実に環境に対する意識革新が起きていることがうかがえます。
関連記事 カーボンニュートラルとは
関連記事 カーボンニュートラルの矛盾点
これからの日本の発電割合はどうなる?
徐々に発電割合が再生可能エネルギー等に移行している日本ですが、今後さらなる割合の変化が起きると予想されています。参考として、ニュースにも取り上げられている最新のカーボンニュートラルに向けた取り組みや概要を整理しました。
政府が次期エネルギー基本計画の議論をスタート
経済産業省は2030年、2040年という段階的な目標を達成するために、エネルギー基本計画の次期計画の議論をスタートしました。
第6次となるエネルギー基本計画では、第5次で計画した再生可能エネルギーの比率を22〜24%から36〜38%へと変更しました。同様に、原子力発電は20〜22%、水素・アンモニアを使った発電を1%にすると発表しています。
発電構成のうち、おおよそ6割を再生可能エネルギーに割り当てる計画であり、2035年までにCO2排出量を2019年比で60%削減する予定です。
そして第7次エネルギー基本計画では、2050年目標のカーボンニュートラルに向けた中間目標として、2040年の削減目標と脱炭素電源の構成比率について議論が開始しました。
すでに2035年の削減目標が60%と高いことから、もし70%削減を目標とした場合には、再生可能エネルギーや原子力発電といった構成の再積算が必要になると議論中です。
自治体ではゼロエミッション工業団地の計画がスタート
日本では、地球温暖化対策および経済成長を視野に入れたGX(グリーン・トランスフォーメーション)も推進しており、自治体では日本社会の環境対策として脱炭素エリアへの産業立地が計画中です。
たとえば、以下の自治体では、エリア全体で廃棄物ゼロを目指す「ゼロエミッション工業団地」といった開発がスタートしています。
- 神奈川県川崎市
- 北海道石狩市
- 秋田県秋田市
CO2排出の多い工業地域が環境対策に取り組むことにより、国内のCO2排出量を削減しやすくなると期待されています。
ほかにも未来の発電方法が検討中
日本を含めて世界では、既存の発電方法にとらわれず、新しい発電方法を生み出して環境対策をする取り組みがスタートしています。参考として、未来的でユニークな発電方法を以下にまとめました。
- 処分するうどんを使って発電する「うどん発電」
- 牛のげっぷを活用した「げっぷ発電」
- Wi-Fiの電波を活用した「Wi-Fi発電」
ほかにもおもしろい発電方法が多数登場しています。今後、環境に優しい画期的な発電方法が登場するかもしれません。詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事 おもしろい発電方法
日本の発電割合についてよくある質問
- 日本の発電割合は今後どう変化していくの?
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日本の発電割合は、2050年の目標達成を予定しているカーボンニュートラルの実現のために、CO2排出量が多い火力発電から、CO2排出量を削減できる再生可能エネルギーや原子力発電に変化していくと予想されます。
- 日本の発電量は世界全体でどのくらいの割合なの?
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日本のひとりあたりの電力消費量は、世界平均が3,212kWh/人・年であることに対し、7,728kWh/人・年と2倍以上の電力を使用しています。
電力消費量に相対して国内での発電量も多くなるため、日本は世界でも4番目に電力を発電しているのが特徴です。
グラフでは4%と小さい値を示していますが、今後、中国やアメリカが省エネに力を入れ出した場合に、日本の割合が増加しやすくなることに注意しなければなりません。
- 環境に優しい発電方法はどれ?
-
CO2の排出量を抑えるという点で環境に優しいのは、以下に示す再生可能エネルギーです。
- 太陽光発電
- 水力発電
- 風力発電
- バイオマス発電
- 地熱発電
また原子力発電もCO2を排出しませんが、核廃棄物の処理問題のほか原発事故が起きた際のリスクを踏まえると、再生可能エネルギーのほうが環境に優しい発電方法だと言えます。
- 日本の原子力発電の発電量は世界で何位なの?
-
日本原子力産業協会が公開している「世界の最近の原子力発電所の運転・建設・廃止動向」の資料によると、日本の原子力発電量は613億kWhであり、世界で9番目に発電量が多いとわかっています。
ちなみに、原子力発電量の上位は、1位がアメリカ(7,716億kWh)、2位が中国(3,832億kWh)、3位がフランス(3,634億kWh)です。
- 日本は2030年・2050年にどのような発電方法が主流になるの?
-
日本では、環境対策の一環として、次のような目標が掲げられています。
- 2030年:温室効果ガスを46%削減する(2013年比)
- 2050年:温室効果ガスの排出を実質ゼロにする
つまり、CO2を含めて温室効果ガスを排出しない発電方法が主流になると予想されます。例えば、太陽光発電といった再生可能エネルギーのほか、原子力発電などの発電割合が上昇していくでしょう。
日本の発電割合についてまとめ
日本の発電割合は、火力発電が7割を超えている状況です。しかし、地球温暖化や気候変動など、環境問題を解決するためにCO2の排出量を削減できる発電方法へシフトチェンジしています。
今後の予想として、日本はCO2排出量を削減できる再生可能エネルギーや原子力発電へと移行する予定です。とくに、太陽光発電は電力会社・企業(事業者)・個人投資家による売電時の収益を安定化できるFIP制度(旧FIT制度)などが充実しています。
国だけでなく企業・個人も含めて取り組みやすい環境対策であるため、ソーラー発電所などが増加して、いずれ火力発電の発電量を上回るかもしれません。