パワコンとは電気を変換する設備! 主な役割や仕組み・価格を紹介
「パワコンの基本的な役割や機能を知りたい」
「パワコンの平均的な価格がどれくらいか知りたい」
はじめて太陽光発電の購入を検討する際、上記のようなお悩みもあるのではないでしょうか。
「パワコン(パワーコンディショナー)」とは、太陽光パネルが発電した直流の電気を交流に変換する機器です。電気の交換以外にも、パワコンは太陽光発電システムで重要な役割を持っています。
本記事では、パワコンの主な役割や電気を変換する仕組み、価格相場について解説。メンテナンスや交換の目安なども紹介していますので、太陽光発電の購入を検討する際の参考にしてください。
パワコン(パワーコンディショナー)の役割と仕組みとは?
「パワコン」とは、太陽光発電システムを構成する設備の1つで、電気の種類を変換する役割を担っています。
太陽光パネルから発電する電力は直流電流ですが、電化製品を動かしたり売電したりできるのは、交流電流です。このため、発電した直流電流をパワコンによって、交流電流に変換する必要があります。
電力の種類をパワコンが変換する仕組みは、以下の図のとおりです。
直流電流のままでは太陽光発電の電気を使用できないため、一度パワコンを経由して交流電流に変換する工程(③)が欠かせません。
電力の変換以外でパワコンに搭載される機能
パワコンには、電力の種類を変換する以外に、以下3つのような機能が搭載されています。
- 運転制御機能
- 系統連系保護機能
- 自立運転機能
それぞれがどのような機能か、順に見ていきましょう。
運転制御機能
パワコンには太陽光発電システムの状態を監視して、必要に応じて運転を制御する機能があります。太陽光発電は晴れた日に発電量が増えるものですが、ただ晴れていればいいわけではありません。
太陽光パネルがもっとも効率良く発電できるのは、表面温度が25℃のときです。外気温が高い真夏日など直射日光が照り付けて、太陽光パネルの表面温度が25℃よりも上昇すると、発電効率は下がります。
外部環境が変化しているなかでも最大限の発電量を得られるように、太陽光発電システムの運転を制御するのがパワコンの役割の1つです。
参照:住宅用太陽光発電の設計と施工「P7太陽電池容量/P9日射、温度と発電量」|太陽光発電協会
系統連系保護機能
回路の異常を検知したときに、電気が流れないようにする系統連系保護もパワコンに備わっている機能です。
電力会社の送電網で停電が起きた場合、復旧するまで電気は流れません。
不具合が起きているところに、太陽光発電の電気を売電しようと逆潮流してしまうと、復旧作業が大規模になる可能性があります。
異常が起きているときに、太陽光発電から系統連系に電気が流れていかないように保護するのもパワコンが担う役割です。
逆潮流の詳細は、以下の記事で解説しています。
関連記事 RPR(逆電力継続器)とは
自立運転機能
パワコンの自立運転は、電力会社で停電になった場合に蓄電池がなくても、発電している最中なら太陽光発電の電気を使用できる機能です。
2018年に台風によって千葉県で大規模な停電被害が発生した際も、停電した世帯の8割が自立運転機能により電気を使えていました。
屋内と屋外のどちらにパワコンを設置しているかによって、非常時に使用できるコンセントが以下の図のように異なります。
非常時にパワコンの自立運転機能を活用できない事態にならないよう、事前に使い方を確認しておきましょう。
参照:太陽光発電設備の自立運転機能の周知について「P2 1.太陽光発電設備の自立運転機能」|経済産業省
パワコン価格の相場
パワコン価格の相場は、住宅用と産業用で金額が異なります。以下では、太陽光発電システムの用途別に、パワコンの価格相場を紹介します。
住宅向けのパワコンの場合
経済産業省の調査によると、住宅用太陽光発電においてのパワコンの価格相場は1kWあたり約5万円です。1kWあたり約5万円の価格は、調査対象となった世帯での平均値となります。
実際には以下のような要素により、パワーコンディショナーの価格は変動します。
- 容量
- メーカー
- 型式
- 購入する業者
価格が変動する要素を加味すると、4kWの太陽光発電システムに対して20〜35万円前後が、パワコン価格の相場といえるでしょう。
参照:太陽光発電について「P37(2)国内のコスト動向:システム費用(設置年別の推移)」|経済産業省
産業用のパワコンの場合
経済産業省による調査では、産業用の太陽光発電におけるパワーコンディショナーの価格相場は1kWあたり約3万円と公表されています。
太陽光発電システムを屋根設置型と地上設置型(野立て)にわけた場合の、パワーコンディショナーの価格相場は、以下の表のとおりです。
太陽光発電の種類 | パワーコンディショナーの価格相場 |
---|---|
屋根設置型 | 約3.2万円/kW |
地上設置型(野立て) | 約2.9万円/kW |
参照:太陽光発電について「P12~14(1)国内のコスト動向:資本費及びその構成」|経済産業省
産業用でもパワコンメーカーや購入する業者により、実際にかかる費用は前後します。
一般的に10kWで29〜32万円程度が、産業用のパワーコンディショナーの価格相場です。
ただし、この経産省による「1kWあたり3万円」は10kW以上30kW未満での傾向と思われます。
実際のパワコン販売価格を見ると、40kWで約40万円、50kWで45〜50万円、62.5kWで約55万円となっています(2024年調査時点)。つまり、40kW以上になると1kWあたり1万円程度の計算です。
パワコンの平均的な寿命
一般的にパワコンは、10〜15年程度で寿命を迎えるといわれています。太陽光発電システムは20〜25年ほど稼働させるケースが多いため、このうち1回はパワコンの交換が必要です。
パワコンを含めて太陽光発電は、定期的なメンテナンスが義務付けられています。住宅用は4年ごと、産業用は6ヶ月ごとがメンテナンス実施の目安です。
なお、パワーコンディショナーが寿命を迎える主な原因は、経年劣化といわれています。
定期点検を確実に実施することで、小さな不具合を早期に発見して都度対処していれば、パワコンに寿命がくるのを先延ばしできるでしょう。
参照:機器の寿命はどれくらいですか?|太陽光発電協会
太陽光発電システムのメンテナンスの詳細は、以下の記事で解説しています。
関連記事 太陽光発電のメンテナンス費用(維持費)
パワコン交換費用の平均
経済産業省の調査によると、パワコンを交換する際にかかる平均的な費用は、1台あたり約35万円です。1台あたり約35万円は、パワコン本体と交換工事費用を合わせた金額になります。
交換費用については、交換用のパワコンのメーカーや、依頼する業者により金額が変動します。実際の交換費用には幅があり、20〜40万円前後かかるでしょう。
参照:太陽光発電について「P39(2)国内のコスト動向:運転維持費(案)」|経済産業省
パワコン交換に活用できる補助金
本記事執筆時点の2024年11月現在、パワコンの交換を対象とした補助金は事例が少ない状況です。
2024年にパワコンの交換が補助される事業は、東京都による「家庭における太陽光発電導入促進事業」があります。
助成対象は、自家消費している住宅用太陽光発電を継続して使用するためのパワコン交換費用です。パワコン1台あたりの上限が10万円で、費用の1/2が助成されます。
2012年に始まった「固定価格買取制度(FIT)」により、太陽光発電が大きく普及したため、今後、パワコンの交換需要が高まる見込みです。
このため、パワコンの交換が支援される補助金が、増えていく可能性が高いと考えられます。
参照:令和6年度 家庭における太陽光発電導入促進事業 (太陽光発電システムに係るパワーコンディショナ更新費用助成事業)|クール・ネット東京
FIT制度の詳細は、以下の記事で解説しています。
関連記事 固定価格買取(FIT)制度とは
まとめ|パワコンとは発電した直流電流を交流電流に変換する設備
パワコンとは、太陽光パネルで発電した電気の種類を変換する役割を持つ設備です。直流で発電した電気を、売電や自家消費できる交流に変換します。
電気の変換以外で、パワコンには以下のような機能も備わっています。
- 運転制御機能
- 系統連系保護機能
- 自立運転機能
安全に発電しつつ適切な発電量を得るために、太陽光発電システムの中でパワコンは重要な役割を果たす機器です。
太陽光パネルと比較すると寿命が短いため、より丁寧なメンテナンスによる維持管理が欠かせません。
業者と相談しながら、自宅の太陽光発電に最適なパワコンを見つけてみてください。