蓄電池

産業用蓄電池はやめたほうがいい?元が取れない企業・法人の特徴と対処法

アスグリ編集部

産業用の蓄電池は、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入に合わせて、電気料金の高騰対策や非常用電源の確保、BCP(事業継続計画)対策として注目されています。一方で、導入した企業・法人のなかには、

  • 思ったより効果が出ない
  • 投資した費用をなかなか回収できない

と感じているケースも少なくありません。特に初期費用や制度変動の影響を見誤ると、設備が負担になる可能性もあります。

そこでこの記事では、蓄電池の導入や運用を判断する目安として、以下の内容を解説します。

企業・法人の蓄電池投資はやめたほうがいいと言われる理由

企業・法人の蓄電池投資はやめたほうがいいと言われる理由

蓄電池は、太陽光発電により生み出した電気を蓄電し、自家消費や売電に利用できる利点を持つ設備です。しかし、すべての企業に適した投資ではなく、条件を外すと収益性が崩れやすい設備であることから、一部で「投資をやめたほうがいい」という声も出ています。

ここでは、企業・法人が蓄電池投資で慎重になるべき主な理由をまとめました。

この章の結論

「蓄電池投資をやめたほうがいい」と言われているのは

  • 高額な導入コストがかかりやすいため
  • 電気料金をまかなうだけでは費用を回収しにくいため
  • 導入設備の更新費が継続的に発生するため

初期投資が数百万円〜数千万円と高額である

蓄電池は発電した電気を蓄える便利な設備ですが、初期費用が高額になりやすく、業者ごとの見積り差や費用対効果の判断によって投資結果が大きく変わる点に注意が必要です。

経済産業省の「定置用蓄電システムの現状と課題」の資料によると、産業用の蓄電池の価格は、2023年時点で10.6万円/kWh程度であると説明されています。これをもとに以下の電力消費量を満たす蓄電池を導入した場合、コストが数百万円以上に膨らむのがポイントです。

1日当たりの
電力消費量の例
導入コスト
(2023年時点における10.6万円/kWの場合)
10kWh106万円
50kWh530万円
500kWh5,300万円
1,000kWh1億600万円
※電力消費量はあくまで目安です

同資料より、2030年には業務産業用の蓄電池のコストを6万円/kWhまで下げる目標が掲げられていますが、それでも高額であることには変わりません。

初期段階で資金負担が大きくなり、資金繰りに余裕がない企業・法人では運用リスクが高まるため、導入をやめたほうがいいと言われることがあります。

また、蓄電池だけではなく太陽光発電にも費用がかかる点に注意が必要です。パネル1枚当たりの価格や設置費用を知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

電気料金削減だけでは投資回収が難しい

蓄電池は電気料金の削減を目的に導入されることが多い一方、電力会社ごとの料金体系や時間帯別料金(深夜電力など)を考慮しないと、投資回収につながらないケースがあります。

参考として、東京電力の「業務用電力(契約電力500kW未満)」で公開されている電気使用量に当てはめて、1日当たり500kWhを使用する企業・法人の投資回収年数を計算しました。

1日当たりの
電力消費量の例
1か月の電気料金1年間の電気料金導入コスト投資回収年数
500kWh(約20円/kWh×500kWh×30日)=300,000円360万円5,300万円約14.7年
※電力量料金のみで試算(別途基本料金がかかります)

実際にはここに、太陽光発電設備の導入・運用やメンテナンスのコストなども発生するため、投資回収にはさらに時間がかかる可能性があります。また、回収の途中で設備の更新が必要になることも少なくありません。

電気代削減だけを前提に導入すると、回収期間が長期化する可能性があることから、導入前に削減シミュレーションを具体的に確認し、他の収益手段も含めて検討することが重要です。

10〜15年で更新費用が発生する

蓄電池は永続的に使える設備ではなく、一定期間で交換や更新が必要になります。一般的に10〜15年程度でバッテリーの寿命による性能低下が進み、点検や保証期間を踏まえた更新計画が必要です(状態がよければ20年の利用も可能)。

この更新費用を見込まずに導入すると、将来的に追加負担が発生します。長期のライフサイクルコストまで含めて判断し、更新費用を織り込んだ計画を立てましょう。

蓄電池投資で後悔する企業・法人の特徴

蓄電池の導入後に想定外のコストや効果不足に直面する企業・法人には、いくつかの共通点があります。ここでは、後悔につながりやすい典型パターンを整理しました。

蓄電池の導入を検討中、もしくは導入済みの企業・法人は、条件にあてはまるかを確認してみてください。

蓄電量よりも電力使用量が少なかった

毎月、蓄電量が電力消費量を上回って余分な電力が生まれてしまうと、蓄電池が十分に稼働せず投資回収が難しくなります。

特に、充電・放電の運用設計や出力設定が適切でない場合、余剰電力を活用しきれず、設備性能を最大限に引き出せないケースもあるため注意が必要です。

蓄電池は貯めた電力を使い切ることで効果が出る設備ですが、電力使用量が少ないと設備の強みを活用しきれません。容量に対して消費量が少ない状態では、ピークカットや電気料金削減の効果が限定的になります。

まずは電力データを確認し、自社の負荷特性に合うかを見極めることが現実的な対応です。

補助金前提で投資判断した

補助金ありきで蓄電池の導入を決めてしまうと、想定どおりに採択されなかった場合に収支計画が崩れます。

日本国内では、複数の自治体から補助金が提供されていますが、年度ごとに予算が限られているため、毎年必ず受給できるものではありません。また、入金までに時間がかかることもあり、資金繰りへの影響も出やすくなります。

補助金がなくても成立するかを基準に導入の判断をし、制度はあくまで後押しとして捉えることが重要です。

営業提案だけで導入した

営業資料の試算だけを根拠に導入すると、前提条件のズレに気づかず収支が合わなくなる可能性があります。

電力契約や使用状況は企業ごとに異なるため、シミュレーション通りの結果が出ないケースも少なくありません。実際、Yahoo!不動産などでも同様の質問・回答などが寄せられています。

リスク要因を反映して正しい試算をするためにも、複数社の見積もりを比較し、専門家による第三者診断や事前調査を取り入れ、数値の妥当性を確認することが欠かせません。

投資回収を正確に計算していなかった

投資回収年数の前提が甘いまま蓄電池や太陽光発電設備を導入すると、想定よりも収益性が低くなるリスクがあります。

参考として、設備導入・運用に影響する費用項目を整理しました。

  • 導入費用(製品・工事費用など)
  • 保守・メンテナンス費用
  • 更新費用
  • 電力単価の変動

これらの情報を反映せずに蓄電池を導入すると、実際の収支と乖離が生じます。蓄電池は長期運用が前提の設備であるほか、タイプやモデルごとに容量・出力・サイズ・温度管理性能などが異なるため、機種選定の段階で比較検討を行うことが重要です。

企業・法人が蓄電池投資を続けるリスク

蓄電池(太陽光も含む)は、電力制度や市場環境の変化によって、当初の想定よりも効果が下がるケースがあります。ここでは、導入後に見落とされがちなリスクを整理しました。

電力制度変更によって収益性が下がる可能性がある

電力制度やエネルギー供給の仕組みが変わると、これまで見込んでいた削減効果や収益性が低下する可能性があります。

たとえば九州電力では、2025年4月以降の電気料金単価や市場価格の調整等の見直しが行われました。このように、電力料金の仕組みなどは定期的に見直されており、契約条件が変わることでピークカットの効果が薄れることもあります。

また、売電に関わるFIT制度の過去の買取額の傾向を見ると、年々減少傾向にあり収益性が薄れてきている状況です。このように、電力単価の変動や料金体系の変更は、蓄電池などの収益性に直接影響します。

大きな損失を生み出さないためにも、この機会に長期シミュレーションを実施し、投資回収の可能性を確認しましょう。

設備が負債化する可能性がある

想定どおりに効果が出ない状態が続くと、蓄電池は資産ではなく負担として残る可能性があります。

初期投資や維持費が回収できないまま運用を続けると、減価償却や保守コストだけが発生し、キャッシュフローが圧迫されます。さらに、更新時期が近づくと追加投資の判断も必要です。

そのため、収益性が低下している場合は、継続だけでなく売却や撤去も含めて見直すことが重要です。

企業・法人の蓄電池は本当に元が取れないのか

蓄電池は元が取れないと言われがちですが、実際は設備そのものではなく「使い方と設計」で結果が変わります。

まず、電気代が下がらないケースの多くは、以下のように発電量と使用量のバランスや収支設計にズレがあることが原因です。

  • 自家消費率が低く、発電した電気を使い切れていない
  • 初期費用が相場より高く、回収年数が伸びている
  • 売電や補助金を前提にしており、収支が崩れやすい

これらに当てはまる場合は回収が難しくなりますが、条件が整えば10年前後で回収できるケースもあります。まずは電力使用量と設備価格をもとに回収年数を確認し、自社に合うかを見極めることが重要です。

元が取れるかどうかについて詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

関連記事 太陽光+蓄電池は元が取れない? 後悔するケースと回収年数・利回りを解説

蓄電池を導入した企業・法人の撤退判断

企業や法人は、蓄電池(太陽光発電を含む)を導入した後も、更新(継続)・撤退(撤去・売却)の判断を定期的に見直す必要があります。

ここでは、導入後の判断ポイントについてまとめました。収益性が低下している場合でも、すぐに失敗と決めるのではなく、運用改善や設備状況を踏まえて判断することが重要です。

この章の結論
  • 電力使用量の削減が見込めるなら「更新」
  • 電力の使用量の削減が見込めず、設備の価値がないなら「撤去」
  • 電力の使用量の削減が見込めず、設備の価値があるなら「売却」

設備更新するべきケース

設備の劣化が進んでいるものの、電力使用量が多く今後も削減効果が見込めるなら更新を検討しましょう。

蓄電池や関連機器は10〜15年で性能が低下しますが、使用条件が合っていれば更新後も効果を維持できます。特に自家消費率が高い場合は、更新によって収益性が回復する可能性があります。

撤去するべきケース

電力使用量が少なく、削減効果がほとんど出ていないなら撤去を検討しましょう。

稼働機会が少ない設備は維持費だけが発生し、長期的に負担になるのが特徴です。回収の見込みが立たない状態で運用を続けるよりも、早期に撤去してコストを止める判断が必要になる場合もあります。

売却を検討するべきケース

設備に一定の価値が残っており、回収が難しい状態が続いているなら売却を検討しましょう。

中古市場では太陽光設備や蓄電池の需要もあり、条件次第で資金回収が可能です。運用を続けるか迷う場合は、まず査定を受けて現在の価値を把握することをおすすめします。

導入済みの太陽光・蓄電池は売却という選択肢もある

蓄電池や太陽光発電の導入をした後、回収が難しいと感じている場合でも、すぐに放置や撤去を選ぶ必要はありません。

太陽光や蓄電池は中古市場での需要もあり、条件次第では売却によって資金回収が可能です。特に設備価値が残っている段階であれば、負担を軽減する手段として現実的な選択肢になります。以下の条件にあてはまる方は売却も視野に入れましょう。

  • 自家消費率が低く、発電した電気を使い切れていない
  • 初期費用が相場より高く、当初の計画より回収年数が伸びた
  • 売電価格の減少で収益化が難しくなった
  • 補助金に通らず維持コストが上昇した

運用を続けるほど価値は下がるため、判断が遅れると売却額も低下します。まずは現在の設備価値を把握することが重要です。

関連記事 太陽光パネルの買取相場はいくら?

企業・法人の蓄電池に関するよくある質問

Q
蓄電池の欠点は何ですか?

蓄電池の欠点は、初期費用が高く回収に時間がかかる点と、10〜15年で更新費用が発生する点です。さらに電力使用量が少ない場合は十分に活用できず、期待した削減効果が出にくくなります。導入前に費用と運用条件を確認することが重要です。

Q
蓄電池は本当に必要ですか?

蓄電池はすべての企業に必要な設備ではありません。昼間の電力使用量が多く、自家消費率を高められる企業では効果が出やすい一方、使用量が少ない場合は導入メリットが限定的です。まずは電力データをもとに必要性を判断することが重要です。

蓄電池は導入後も「継続か撤退か」を判断すべき

蓄電池は導入すれば終わりではなく、運用状況によって継続か撤退かを見直すことが重要です。ただし、収益性が低下している場合でも、改善や売却など選択肢は複数あります。

  • 自家消費率と削減効果が出ているか
  • 維持費や更新費を含めて投資回収できるか
  • 売却や撤去のほうが合理的ではないか

これらを定期的に確認し、自社にとって最適な判断をすることで、無理のない運用が可能となります。

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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