再生可能エネルギー

GX(グリーントランスフォーメーション)とは?わかりやすく目的・実施内容を解説

GX(グリーントランスフォーメーション)とは
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「GXってどのような取り組みなの?」
「なぜGXが必要とされているの?」
「GXはどのように企業と関係してくるの?」

日本で取り組まれているGX(グリーントランスフォーメーション)について、詳しい概要を知らない方も多いのではないでしょうか?また、自社に関係のある取り組みなのか気にしている人もいるはずです。

この記事では、以下についてわかりやすく解説します。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは?わかりやすく解説

GXの取り組み

GX(グリーントランスフォーメーション・Green Transformation)とは、石油や石炭といった化石燃料を使った社会構造から、再生可能エネルギー(太陽光発電・風力発電など)といったクリーンエネルギーを中心とした社会構造へ転換する取り組みのことです。

たとえば近年、地球環境全体で問題視されている「地球温暖化」「気候変動」といった問題解決のために、取り組みを実施します。また、企業を取り組みの対象とすることで、環境保護と同時に社会競争力の向上を目指すのがGXの目的です。

なお、GXでは以下に示す2つの目標が掲げられています。

GXで掲げられている目標
  • 2030年:温室効果ガス46%削減
  • 2050年:カーボンニュートラルの実現

GXとカーボンニュートラルの違い

GXとカーボンニュートラルは、両方とも脱炭素社会の実現を目指す取り組みですが、次の違いがあります。

GXカーボンニュートラル
対象者主に企業といった組織国・企業・国民
目的・エネルギーの効率化
・資源の再利用
・発電のクリーン化
・温室効果ガスの排出量を削減
・植林などで温室効果ガスを吸収

GXが主に企業向けの内容である一方、カーボンニュートラルは国民も含め地球上で生活するすべての人たちが対象です。目的についても、GXは社会システムの転換、グリーントランスフォーメーションは温室効果ガスの削減・吸収というように内容が異なります。

カーボンニュートラルや宣言内容について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。

関連記事 カーボンニュートラルとは

GXとDXの違い

GXと同じく「X(トランスフォーメーション)」という名前がつく言葉のひとつに、DX(デジタルトランスフォーメーション)があります。

DXとは、企業の生産性向上を図る目的としてデジタル技術の導入・活用を推進し、改革によるビジネスの競争力を高める取り組みです。GXのような環境方面の対策ではなく、ビジネス方面における少子高齢化や人材不足といった課題を解決するために立案されました。

GXが必要とされる背景

GXは、2023年5月12日に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)」が国会で成立されたことで始まりました。なぜGXが取り組まれることとなったのか、成立に至った背景を紹介します。

地球温暖化による環境への被害が悪化したため

GXが必要とされるのは、世界中で深刻化している地球温暖化といった環境問題が関係しています。たとえば、地球温暖化により発生する以下の問題を解決するひとつの動き方として、化石燃料の取り扱いが着目されました。

  • 水害(洪水・ゲリラ豪雨)
  • 海面上昇
  • 生態系の損失(砂漠化)
  • 水不足

地球温暖化を加速させる二酸化炭素を含む「温室効果ガス」の多くは、化石燃料を使う人類の社会活動が原因で発生しています。地球のまわりを囲んでいるオゾン層を破壊し、地球の平均気温を上昇させる原因となることから、早急に排出量を減らさなければなりません。

根本的な原因である化石燃料を使わない社会をつくり、クリーンエネルギーへ移行していくことを目的にGXが立案されました。

日本の重点投資分野として位置づけられたため

2022年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」のなかで、クリーンエネルギーの転換が日本の重点投資分野と位置付けられたことも、GXが生まれるきっかけとなりました。

実行計画には以下に示す投資分野が掲げられており、2020年以降から始まった新型コロナウイルスのまん延などに伴う経済の立て直しや経済成長、日本全国の企業を成長軌道に乗せることが立案の根底にあります。

  • 人への投資
  • 科学技術・イノベーションへの投資
  • スタートアップへの投資
  • GX及びDXへの投資

電力需給ひっ迫を踏まえ、同様の事態が今後も起こり得ることを想定し、供給力の確保、電力ネットワークやシステムの整備をはじめ、取り得る方策を早急に講ずるとともに、脱炭素のエネルギー源を安定的に活用するためのサプライチェーン維持・強化に取り組む。

引用:内閣官房「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」

また、実行計画が閣議決定されたのち、経済産業省にて今後10年間のGX実現を見据えた「GX 実現に向けた基本方針」が作成されています。

経済産業省が定めた「GX実現に向けた基本方針」とは

前述した経済産業省が定める「GX実現に向けた基本方針」で取り上げられている内容について、重要なポイントを項目に分けて紹介します。

GX実行会議

GX実行会議は「GX実現に向けた基本方針」のロードマップを決定するために開催された会議です。首相官邸にGX実行会議を設置し、以下の人員構成で会議が実施されました。

  • 議長:内閣総理大臣
  • 副議長:GX実行推進担当大臣、内閣官房長官
  • 構成員:大手企業代表、組合会長など

会議のなかでは、GX投資の項目などが話し合われており、2030年までに以下の構成で年17兆円の投資をすると決定しました。

投資項目投資額
電源脱炭素化・燃料転換年5兆円
製造工程の脱炭素化など年2兆円
エンドユース年4兆円
インフラ整備年4兆円
研究開発など年2兆円
引用:環境省「GX実行会議について」

10年間で約150兆円の投資となることから、電源のクリーン化はもちろん経済発展に寄与できると期待されています。

GXリーグ

GXリーグ公式サイト
出典:GXリーグ公式サイト

GXリーグは、GXに取り組む企業群が協働する場のことです。GXが立案されたことに伴い、日本企業や官公庁、学校法人の情報共有や取り組み実施の場として設置されました。

またGXリーグでは、以下の内容について取り組みます。

  • 排出量取引制度(GX-ETS)
  • ルール形成を通じたグリーン市場の創造(市場ルール形成WG)
  • ビジネス機会創発 (スタートアップ連携等)
  • 企業間交流の促進(GXスタジオ/GXサロン)

出典:GXリーグ公式サイト

参加企業がGXの目標を定めたり、ワーキンググループを形成して情報発信をしたりと、参加企業群で協力してGXの目標達成を目指します。

GX経済移行債

GX経済移行債は、GXが成立したことに基づき日本政府が発行している債券です。

国民からの税収だけでGXに取り組むのではなく、企業や投資家から資金を集めつつ、電源脱炭素化・燃料転換・電源クリーン化を進めていきます。なお、現在20兆円規模での先行投資支援が実施されており、集まった資金は次の予算に組み込まれました。

予算割り当ての項目
令和6年度・GXサプライチェーン構築支援事業
・排出削減が困難な産業におけるエネルギー/製造プロセス転換支援事業
・蓄電池の製造サプライチェーン強靱化支援事業 など
令和5年度・高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金
・クリーンエネルギー自動車導入促進補助金
・断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業
引用:経済産業省「GX経済移行債を活用した投資促進策について」

成長志向型カーボンプライシング構想

成長志向型カーボンプライシング構想は、規制・先行投資支援を組み合わせて、企業がGXに取り組みやすくなる環境をつくる仕組みのことです。参考として、構想のなかで講じられた措置を以下にまとめました。

  • 先行投資支援
  • GX投資先行インセンティブ
  • 新たな金融手法の活用

また構想には、経済産業省が定めた「GX実現に向けた基本方針」の具体的な内容が記載され、投資や取引、課税などに関する詳しい数値や計算方法などがまとめられています。

GX投資がビジネスに影響する理由とは

GXとビジネスの関係

現在、国が主体となり取り組みを実施しているGX投資は、企業経営に関わるポイントがあります。なかでも企業経営を有利に進めるポイントをまとめました。

個人・事業向けの補助金が提供される

GXの施策のひとつとして、税収や債券で得た資金をもとに、個人・事業者向けの補助金が提供されています。主に再生可能エネルギーの導入や事業・ソリューションの強化などを支援するものであり、導入や整備にかかった費用の一部を補助してもらえるのが魅力です。

補助金の事例
  • 再生可能エネルギー導入拡大に向けた系統用蓄電池等の電力貯蔵システム導入支援事業
  • 高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金
  • 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金

とくに、再生可能エネルギーの導入は、企業のライフライン(電気料金)のコスト負担を減らす際に役立ちます。通常だと全額負担である太陽光発電システムや蓄電池の導入のハードルを下げられるため、ビジネスにおいて利益を生み出しやすい傾向です。

環境対策への取り組みが求職者からの評価につながる

就職活動中の大学生を対象に、志望先企業の環境対策への貢献に関する研究が実施された「企業の環境配慮が大学生の就職活動先の選択に与える影響-ヒアリング調査に基づく考察(2012)」によると、環境対策をしている企業への興味が高まりやすいことがわかりました。

また、回答者のなかには「温暖化の抑制に貢献できる会社が良い」「公害を起こしてはいけない」といった考えをもつ学生も多いようです。求職者などからの評価を高めたいと考えているなら、環境対策がひとつの対策として役立つ可能性があります。

企業がGXに取り組むメリット

企業がビジネス・環境対策という面でGXに取り組むことには、複数のメリットがあります。参考として、企業経営に良い影響をおよぼすポイントを整理しました。

GXに取り組むメリット

追加予算を期待できる

企業がGXに取り組んで社会経済を回すことができれば、今後さらなる追加予算が組まれやすくなります。

GX投資の予算を増やすためには、現在用意されている予算を使い企業経営を加速することが不可欠です。逆にGX投資の予算を使わなければ、社会経済の転換につながらない影響で、徐々に補助金などが打ち切られやすくなります。

今後、さまざまな補助金や助成金を受け取りながら事業投資をしていきたいなら、今ある補助金制度などに申請することから始めてみてください。

ライフラインのコストを削減しやすくなる

企業がGX投資を活用して「新たな事業の開始」「既存事業への投資」を進めていけば、次第に企業としてのポテンシャルが高まり、生産性向上を実現しやすくなります。

また、GX投資のメインとなるクリーンエネルギー社会への転換により、自社に太陽光発電といったクリーンな設備を導入できるのが魅力です。会社経営のために利用していた電気代をすべて自社発電でまかないやすくなることも含めて、経費削減も可能となります。

ほかにも、太陽光発電から生み出した電力を電力会社などに売電し、新たに収益を確保するという方法も選択可能です。GXを活用すれば企業を成長させやすくなるため、ぜひGXリーグなどに参加して、環境対策をスタートしてみてください。

企業がGXに取り組むデメリット

経済支援という部分でメリットの多いGXですが、逆に取り組むことでデメリットに感じるポイントもあります。

GXに取り組むデメリット

導入コストが発生する

GX投資の補助金を活用すれば、導入費用の一部を補助してもらえますが、補助されない部分の費用は自社で捻出しなければなりません。

もし1億円の費用をかけて太陽光発電製品や設備の導入に投資をする場合、そのうちの半分が補助金でまかなえたとしても、残り5,000万円の負担は実質自社での支払いが必要です。中小企業など、予算の捻出が難しい企業の場合には積極的な対応が難しいかもしれません。

補助金があるから好きに投資をできるのではなく「投資の一部負担を減らせる」という認識で補助金制度を活用するように気を付けてください。

設備設置スペースなどが必要になる

GX投資の事業を活用して、太陽光発電といったクリーンエネルギーを導入する際には、設備だけでなく次のような設置場所を確保する必要があります。

  • 屋上
  • 敷地内の空きスペース
  • 使っていない自社の土地

企業によっては、ビルのフロアを間借りしているだけであり、既存スペースに設置できないという場合も少なくありません。単純に設備費用だけで済むのではなく、土地代などが必要になる場合もあるので、十分に注意してください。

一方で、土地代が安い地域で事業・業務を実施する企業や、空地や使っていない土地などを所有する企業なら、少ないコストで再生可能エネルギーを導入でき、短期間で投資コストの回収が可能となります。

GXについてよくある質問

GXについて、よくある質問をまとめました。

Q
日本と海外のGXは何が違うの?

GXの考えは、日本も海外もほとんど変わりません。

たとえば、スマートフォン事業で有名なAppleでは、サプライチェーン全体のカーボンニュートラル化を実現するために、再生材料の導入や、工場で利用するレアメタルの効率回収などの研究を進めています。また、ECサイトのAmazonでも、配送車の電気自動車化などに取り組んでいる状況です。

ただし日本と異なる点として、世界規模で事業を展開している会社が多いことから、GXへの取り組みのスケールが大きいという違いがあります。

Q
自動車分野におけるGXとは?

ガソリン(石油)といった化石燃料を利用する自動車分野は、クリーンエネルギーへの転換が求められるGXと近い位置にある産業です。

たとえば、ガソリンの使用率を減らして温室効果ガスの排出量を削減するために、電気自動車・水素自動車といった次世代自動車の開発が進められています。

Q
GX関連の投資銘柄にはどのような種類がある?

GX関連の投資銘柄として、国内では次のような企業の銘柄があります。

  • 鹿島建設
  • ユーグレナ
  • 旭化成
  • 太平洋セメント

上記の銘柄は一例です。GXの取り組みをスタートしている企業の多くが投資銘柄を発行しているため、投資分野に興味がある方は、ぜひ気になる銘柄に投資をしてみてください。

GXについてまとめ

GXの取り組みは、化石燃料を利用している現代社会から、再生可能エネルギーといったクリーンエネルギーを使用した新たな社会への転換のために実施され、世の中の注目を集めています。

とはいえ、2030年目標・2050年目標など社会の変革を実現するまで、まだ先の長い取り組みです。国から補助金制度なども提供されているため、GXに取り組みたい企業は、この機会にGXリーグへの参画や補助金の活用にチャレンジしてみてください。

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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