グリッドパリティとは? 計算方法やストレージパリティとの違いを解説

グリッドパリティとは
momohiki011

「グリッドパリティって何?」
「ストレージパリティと何が違う?」

再生可能エネルギーの運用に関わるグリッドパリティについて、概要や具体的な意味がよくわからない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、グリッドパリティの意味や目的、計算に関する以下について、わかりやすく解説します。

グリッドパリティとは

風力発電とソーラーパネル 再生可能エネルギー

「グリッドパリティ(Grid Parity)」とは、再生可能エネルギーを運用する際の発電コストが、以下に示すような既存の発電方法の発電コストよりも抑えられるかを示す言葉です。

  • 火力発電
  • 風力発電
  • 水力発電
  • 原子力発電

「グリッド=送電網」「パリティ=同等」という意味があり、コスト状況を数値指標としてよく用いられています。

グリッドパリティと太陽光発電の関係

グリッドパリティは、太陽光発電の分野でよく登場し、太陽光発電の運用がうまくいっているのかを判断するための指標です。

たとえば、太陽光発電の1kwh当たりにかかるコストが、火力発電にかかるコストやNEDOが定めるグリッドパリティのコスト(円/kW)よりも安価であれば「主要の発電方法と同等の能力を期待できる」と言えます。

また、グリッドパリティを達成することで得られるのが次のメリットです。

  • FIT・FIP制度に頼ることなく発電の利益を得やすくなる
  • 電力会社レベルの売電が可能となる
  • 太陽光発電のトータルコストを抑えられる

「グリッドパリティを達成する=所有者が有利になる&太陽光発電の普及が実現しつつある」と言えることから、太陽光発電を運用している人はグリッドパリティを軸にコスト計画を立てることが必須となってきました。

住宅用太陽光発電(家庭用ソーラーパネル)はもちろん、事業用の太陽光発電システムの両方で利用できるため、近年では導入前にグリッドパリティを検討する個人・事業者なども出てきています。

グリッドパリティとストレージパリティとの違い

グリッドパリティとストレージパリティの違い

グリッドパリティとは別に「ストレージパリティ」という指標があります。

ストレージパリティは、太陽光発電に蓄電池を導入した場合に、導入前よりも利益を出せるのかを示す指標です。

たとえば、以下に示すコストを見つつ、ストレージパリティを達成できているのかを計算します。

  • 蓄電池の導入費用
  • 放電される電力分の費用
  • ほかの発電所から電力を供給した際の費用

蓄電池が導入されていない場合、悪天候が続く日などは太陽光発電とは別の方法(発電所)から電気料金をかけて電力を供給しなければなりません。対して、蓄電池を導入して同じ状況で運用した場合にどれくらいのコストを抑えられるのか見るのがストレージパリティの目的です。

「導入したは良いものの、正しく費用対効果が出ているのか」をチェックする際など、持続的に利用できる電源として蓄電池を導入した太陽光発電の所有者がストレージパリティをチェックします。

ストレージパリティは蓄電池容量によって変化

ストレージパリティは、太陽光発電の電力を蓄電することで評価できる指標であることから、導入する蓄電池の容量によって達成状況が変化しやすいです。

蓄電池容量が大きければ長時間の電力を蓄電できますが、一方で料金が高くなり導入コストが増えてしまいます。蓄電池の導入費用と容量のよい塩梅を見つけることがストレージパリティの達成に必要です。

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グリッドパリティにおけるパリティコストとは

パリティコストとは、グリッドパリティの価格の同等性を示す言葉です。

一般的に太陽光発電の場合は、そのままグリッドパリティという指標を用い、パリティコストという呼び方は利用しません。主にパリティコストという言葉を使うのは水素・アンモニアを利用して燃焼・発電する現場です。

パリティコストの事例

運送業では、荷物を運ぶトラックにおいて、従来の軽油・ディーゼルトラックと、水素を利用したFCトラックについてパリティコストが試算されています。

FCトラックにおけるパリティコスト
出典:経済産業省「水素・アンモニアサプライチェーン投資促進・
需要拡大策について」

上画像より、小型トラックの場合は水素を利用したFCトラックのほうが、ガソリンよりも安価に利用できることがわかっています。

グリッドパリティの計算方法

グリッドパリティは、以下に示す計算式を用いて達成の有無を評価できます。

(kWあたりのシステム価格 + メンテナンス費用)÷ 耐用年数(寿命)÷ 年間発電量

  • kWあたりのシステム価格|円/kW
  • メンテナンス費用|設備交換費用、修繕費用、廃棄費用など(円)
  • 耐用年数(寿命)|おおよそ20〜30年
  • 年間発電量|1年間の総発電量(kW)

導入している太陽光発電システムの種類、性能によってグリッドパリティが変化します。自身が導入している設備の条件をもとに計算してみてください。

グリッドパリティの計算シミュレーション

達成状況を確認する参考として、次の条件でグリッドパリティを計算してみます。

計算条件1計算条件2
kWあたりのシステム価格30万円/kW30万円/kW
メンテナンス費用2,000円/kW2,000円/kW
耐用年数20年30年
年間発電量1,000kWh1,000kWh
計算結果15.1円/kWh10.1円/kWh
※計算の数値は1kW当たりの太陽光発電システムの相場を参考

上記の場合、耐用年数が延びるほどグリッドパリティの達成に近づきやすくなるイメージです。またシステム価格の減少・メンテナンス費用の減少などが、グリッドパリティを達成しやすくします。

逆に「耐用年数が短い」「システム価格が高い」といった蓄電池を設置すると、損益リスクが高まるほか、環境に悪いといったデメリットがあるため、蓄電池のメーカーなどに注意しながら比較検討してみてください。

日本におけるグリッドパリティの達成状況

日本においてグリッドパリティは、現在第1段階である23円/kWhの目標を達成しました。

まず、グリッドパリティの達成目標は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が策定している「2030年に向けた太陽光発電ロードマップ(PV2030)」において、次のように定められています。

(縦軸:グリッドパリティの目標料金、横軸:グリッドパリティの達成目標年)

グリッドパリティの達成状況
出典:NEDO「2030年に向けた太陽光発電ロードマップ(PV2030)
  • 第1段階(2010~2020):23円/kWh
  • 第2段階(2020~2030):14円/kWh
  • 第3段階(2030~2050):7円/kWh
  • 汎用段階(2050年以降):7円/kWh以下

今後は第2段階の目標達成に向けて、さらなるグリッドパリティの低下を目指していく計画となっています。

ストレージパリティのために利用できる補助金

蓄電池を導入することで評価できるストレージパリティについて「ストレージパリティ補助金」を利用できます。ただし、現時点では公募中の補助金がありません。

参考として、過去に実施された補助金を一覧にまとめました。今後再募集がかかる可能性もあるため、チェックしてみてください。

グリッドパリティについてまとめ

グリッドパリティは、今後の太陽光発電の利用価値を示す指標であり、火力発電といった主要発電方法と比べて、低コストで運用が可能なのかを判断する重要な材料です。

太陽光発電を運用して収益を得るためには、あらかじめグリッドパリティを把握し、適切な利益計画を立てることが欠かせません。本記事の情報を参考に、グリッドパリティの進展をチェックしてみてください。

監修
アスグリ編集部
アスグリ編集部
株式会社GRITZ
運営元である株式会社GRITZは、野立て太陽光発電所を土地取得-開発-販売まで自社で行っています。自然環境に影響が出ないように、耕作されていない農地(休耕地)に野立て建設しています。自然エネルギーの普及は、脱炭素社会を目指すうえでは欠かせません。当社のビジネスを通じて、カーボンニュートラルな地球に貢献することをミッションとしています。
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